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滲出液の流れを意識する
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第44回日本熱傷学会総会・学術集会のランチョンセミナーで講演しました。
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滲出液の流れを意識する
1.
滲出液の 流れ を意識する JCHO 中京病院 救急科 黒木
雄一 第44回 日本熱傷学会総会・学術集会 ランチョンセミナー 協賛:メンリッケヘルスケア株式会社
2.
日本熱傷学会総会・学術集会 利益相反 開示 JCHO中京病院救急科 黒木雄一 演題発表に関連し、開示すべき利益相反関係にある 企業などはありません。 様式1
3.
4.
帝京大学病院と同じ板橋区内の病院で研修していた頃
5.
6.
7.
清流とドブ川のちがい 清流 流れが良い ドブ川 流れが悪い
8.
「きれいな」 キズとは 滲出液の流れが良い状態 つまり 「ドレナージが利いている」 状態である
9.
滲出液の流れを妨げるもの 1. 乾燥に起因するもの 凝固した滲出液 痂皮 2. 水疱膜 3.
血腫 4. 焼痂 5. バイオフィルム
10.
滲出液の流れを妨げるもの 1. 乾燥に起因するもの 凝固した滲出液 痂皮 2. 水疱膜 3.
血腫 4. 焼痂 5. バイオフィルム
11.
発赤 熱感 疼痛 腫脹
12.
痂皮を除去 適切な被覆材 で改善
13.
不良肉芽をピンセットで除去 ↓ ドレナージ孔をつくる ↓ 滲出液の流れ ↓ 感染予防効果
14.
滲出液の流れを妨げるもの 1. 乾燥に起因するもの 凝固した滲出液 痂皮 2. 水疱膜 3.
血腫 4. 焼痂 5. バイオフィルム
15.
水疱膜は原則としてデブリする
16.
滲出液の流れを妨げるもの 1. 乾燥に起因するもの 凝固した滲出液 痂皮 2. 水疱膜 3.
血腫 4. 焼痂 5. バイオフィルム
17.
18.
創面に血腫を残さない工夫 Tangential excisionの際は,シリコンゲルド レッシングで圧迫止血 採皮創はアルギン酸にて止血 翌日にワセリンを塗布し、固着したアルギン酸を創 面から遊離 翌々日にアルギン酸除去
19.
滲出液の流れを妨げるもの 1. 乾燥に起因するもの 凝固した滲出液 痂皮 2. 水疱膜 3.
血腫 4. 焼痂 5. バイオフィルム
20.
31歳 男性 火焔熱傷 受傷24時間以内にデブリードマンと分層植皮術
21.
超早期手術について • 受傷原因(火焔>熱湯)、患者背景(高齢> 若年)、輸液反応性(輸液/尿量比)などから、 適応を決定している • やると全身管理が楽になる印象
22.
滲出液の流れを妨げるもの 1. 乾燥に起因するもの 凝固した滲出液 痂皮 2. 水疱膜 3.
血腫 4. 焼痂 5. バイオフィルム
23.
バイオフィルムとは? Nature Review Microbiology
2010 集簇した菌体とマトリックスか ら構成される マトリックスは菌体外多糖 (EPS; Extracellular polysaccharide) のほか,タンパク,核酸などから なる 抗菌薬や消毒薬に抵抗性を示す 臨床的には急性期よりも慢性期 の創傷治癒遅延に関与している
24.
25.
26.
バイオフィルム対策 物理的除去 ハチミツによるバイオフィルム形成予防 銀によるバイオフィルム形成予防
27.
バイオフィルム対策 物理的除去 ハチミツによるバイオフィルム形成予防 銀によるバイオフィルム形成予防
28.
バイオフィルム対策 物理的除去 ハチミツによるバイオフィルム形成予防 銀によるバイオフィルム形成予防
29.
30.
31.
高浸透圧⇒バイオフィルム変性 浮腫改善
pH4-5⇒バイオフィルム変性 ペロキシダーゼ⇒抗菌効果 マヌカハニーはMethylglyoxal含有⇒より高い抗菌性
32.
ガス産生菌による壊死性筋膜炎・敗血症性ショック の症例(90歳女性 膵腫瘍・DM既往)
33.
夜中に緊急デブリ 悪臭を伴う大量の膿汁 外腹斜筋はほぼ壊死⇒切除
34.
ハチミツによる洗浄を連日継続
35.
36.
37.
38.
バイオフィルム対策 物理的除去 ハチミツによるバイオフィルム形成予防 銀によるバイオフィルム形成予防
39.
銀による抗菌作用 銀イオンが細胞壁から侵入し,菌を破壊する
40.
緑膿菌によるEPS産生 銀により抑制 ブドウ球菌によるEPS産生 銀により抑制 Biointerfaces
2010 銀によるバイオフィルム形成抑制
41.
滲出液の流れを妨げるものを 除去した上で 適切な被覆材を選択し 滲出液の流れを維持する
42.
ド ラ イ ウ ェ ッ ト 開放性閉鎖性 ガーゼ ラップ ハイドロコロイド NPWT ポリウレタンフォーム 非固着性被覆材
43.
ド ラ イ ウ ェ ッ ト 開放性閉鎖性 ガーゼ ラップ ハイドロコロイド NPWT ポリウレタンフォーム 非固着性被覆材 開放性ドライ
44.
ガーゼは被覆材として使えるか? 一時的には滲出液を吸収するが、すぐに吸収能力 を失う 創面は痂皮を形成し、ガーゼに固着する 滲出液は凝固し、流れがストップする ガーゼ以外に創傷被覆材がない場合に、軟膏を 伸ばして創面に当てるくらいしか使い道はない
45.
ド ラ イ ウ ェ ッ ト 開放性閉鎖性 ガーゼ ラップ ハイドロコロイド NPWT ポリウレタンフォーム 非固着性被覆材 閉鎖性ウェット
46.
閉鎖性ウェットドレッシング • 密封療法(ODT)と同義 • 創傷治癒能は高まる反面,閉鎖することによる感染リ スクがある •
陰圧閉鎖療法(NPWTまたはVAC)は滲出液の流れを 作り出すうえで理想的な方法であるが,閉鎖性であること にかわりはないので,感染への注意が必要になる • 当科では,顔面や手などの小範囲2度熱傷にハイドロコ ロイドを使う程度である
47.
ド ラ イ ウ ェ ッ ト 開放性閉鎖性 ガーゼ ラップ ハイドロコロイド NPWT ポリウレタンフォーム 非固着性被覆材 開放性ウェット
48.
開放性ウェットドレッシング 紙オムツを台所用穴あきゴミ袋で包んだものが原型 滲出液をドレナージ⇒開放性 適度な滲出液が創面に残り,固着しない⇒ウェット
49.
「非固着性被覆材」として 販売されている 開放性ウェットドレッシング
50.
開放性ウェットドレッシングは 三層構造 ②:吸収層 ③ 保護層 ① 接触層
滲出液 創
51.
開放性ウェットドレッシングの構造 ① 接触層(Contact layer) ①
接触層 滲出液 創 創面に接着するパーツ ポリエチレンフィルムなど創面に固着しない素 材が用いられている 穴の大きさや密度によって,滲出液の通過性が変 わる
52.
開放性ウェットドレッシングの構造 ② 吸収層 Absorption
layer ② 吸収層 滲出液 創 浸出液を吸収するパーツ ポリマービーズやポリウレタンフォームなど が用いられている この吸収能により,滲出液のドレナージ効果が変 わる
53.
開放性ウェットドレッシングの構造 ③ 保護創 Protection
layer 滲出液 創 創面を外部から保護するパーツ 紙などが用いられている 創面を保護すると同時に,透湿性をコントロール する ③ 保護層
54.
55.
ドレッシングの進化 従来の被覆材 隙間 ソフトシリコン
56.
創面のフェーズによって 被覆材を使いわける
57.
熱傷処置は毎日行うべきか? • 滲出液が多いフェーズでは1日1回以上すべき • 感染徴候がなく,滲出液が減少してきたら,処置 間隔を延ばしたほうがメリットが大きい •
メピレックスAgは最大で7日間銀イオンを放出 し続けるため,その抗菌作用と抗バイオフィルム 作用により,処置間隔を延ばすことに耐えうる特性 を持っている
58.
2度熱傷の被覆 時期 滲出液 被覆材
交換頻度 1~3日 多 ワセリンをのばし た非固着性被覆材 (除痛) 毎日 3~7日 中 非固着性被覆材 毎日 7日~ 少 メピレックスAg 3~5日毎
59.
60.
植皮創の被覆 時期 滲出液 被覆材
交換頻度 1~3日 多 ①シリコンメッシュ ②穴あきフィルム ③タイオーバー 毎日 3~7日 中 非固着性被覆材 毎日 7日~ 少 メピレックスAg 3~5日 毎
61.
62.
63.
採皮創の被覆 時期 滲出液 被覆材
交換頻度 1日 多 ①アルギン酸 ②非固着性被覆材 (止血) 毎日 2日 多 ワセリンをのばした 非固着性被覆材 (アルギン酸遊離) 毎日 3~7日 中 非固着性被覆材 毎日 7日~ 少 メピレックスAg 3~5日 毎
64.
65.
まとめ 滲出液の流れを妨害する要因を除去した上で, 開放性ウェットドレッシングにより滲出液の 流れを維持する 滲出液が多いフェーズにおいては,低コストの 被覆材を連日交換する 滲出液が減少してきたら,メピレックスAgを 3-5日毎交換にすることで,患者の負担軽減 につながると思われる
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