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インフルエンザの二次感染 ～市中型MRSA感染の合併～
- 2. 67歳 男性 【主訴】呼吸苦 【既往歴】特記すべきことなし 【現病歴】2月1日より発熱あり．2月2日は，仕事でトラックを 運転中に脱輪事故を二回起こしていた．帰宅後，呼吸が苦しそう なことに気づいた妻が救急要請し，2月3日未明に来院した． 【嗜好・生活歴】飲酒：機会程度 喫煙：20本×30年（やめて 15年） ペット飼育なし 海外渡航歴なし 2枚目/11枚
- 3. 来院時現症 【バイタルサイン】 意識清明 血圧110/70 脈拍120 呼吸数40 SpO2 98%（15L リザーバーマスク） 体温39.2℃ 【身体所見】 • 頸部に狭窄音（吸気時）を聴取した • 全身発赤を認めた 3枚目/11枚
- 4. 血液検査 WBC 14500 RBC 440 Hb 13.7 Ht 40 Plt 16.3 4枚目/11枚 CK 69938 BUN 46 Cre 3.44 Na 136 K 3.7 Cl 95 Ca 7.9 AST 876 ALT 182 PT-INR 1.04 APTT 35 FDP 8.9 T-Bil 0.9 Alb 3.9 AMY 106 CRP 12 Lactate 36 mg/dL
- 7. 感染症検査 • インフルエンザ迅速検査：A＋ • 痰グラム染色：グラム陽性球菌多数で，貪食像あり • 高感度MRSA検査（鼻腔）：陽性 • 痰培養：MRSA & B群Streptococcus • 血液培養：MRSA 7枚目/11枚 MRSAの抗菌薬感受性（βラクタムと抗MRSA薬以外） 抗菌薬 MIC 感受性判定 GM ＜1 S CLDM ＜0.5 R EM ＞4 R MINO ＜2 S ST ＜1 S
- 8. 経過 8枚目/11枚 0 500 1000 1500 2000 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 CHDF HD 尿量(ml/day) Nad Max: 0.5μg/kg/min Ventilator_14 days LINEZOLID PCG+CLDM Peramivir 透析を離脱し 39病日に 独歩退院
- 9. 考察１：市中型MRSAの特徴 ①入院48時間以内にMRSAが分離され ②過去1年以内に入院歴，透析，長期療養施設 の利用歴がなく ③カテーテルや医療器具の体内留置がなく ④以前にMRSAが検出さ れたことがない 場合に市中型MRSAとする Naimi TS, et al. Comparison of community- and health care-associated MRSA infection. JAMA 290 : 2976-84, 2003. 臨床的には，①小児や健常者に多い ②皮膚・軟部組織感染が多い ③ときとして壊 死性肺炎を起こす などの特徴を有する． 細菌学的には，①βラムタム系以外のCLDM，EM，MINOなどに感受性を有することが 多い ②遺伝子タイプがSCCmec IV型（↔院内型はI-III型）が多い ③PVLという壊死性 肺炎の発症に関与する毒素を産生することがある という特徴を有する． 本症例も市中型MRSA感染と考えられるが，遺伝子検査や毒素産生能検査を行わなかっ たのは反省点である． 9枚目/11枚
- 10. 考察２：インフルエンザとMRSAの共感染 • インフルエンザウィルスとブドウ球菌には，たがいに増殖・感染を促進しあう協力関係がある と言われている Tashiro M, et al. Role of Staphylococcus protease in the influenza pneumonia. Nature 325: 536-37, 1987. • 2009年のパンデミックの際に，オーストラリアの２つの病院に入院したA型インフルエンザ （H1N1）患者252名中，MRSA感染を合併していた患者は5名であった RJ Murray, et al. Community acquired pneumonia due to pandemic A (H1N1) 2009 influenza virus and MRSA co-infection. Plos one 5(1): e8785, 2010. • 本邦においては現時点でこのような報告はなく，頻度はより低いと考えられるが，今後増える ことが予想される • マウスの実験モデル において，このような共感染が起こった場合は，VCMよりもLZDのほうが 有効であることが示唆されている Bhan U, et al. Linezolid has unique immunomodulatory effects in post-influenza community acquired MRSA pneumonia. Plos one 10(1): e0114574, 2015. 10枚目/11枚