What ABEMA thinks and does based on its service mission and current business model is described in this presentation. It finally leads to a criterion of how we decide what to support as a service.

1. 2021 年春 ABEMA が
Internet Explorer 11 の
サポートを終了
五藤 佑典 @ 株式会社 AbemaTV
- サービスがサポート対象を判断するときに考えるべきこと -
2021.05.21 Muddy Web #1

2. 五藤 佑典
YUSUKE GOTO
https://ygoto3.com/
@ygoto3_
● California State University, San Bernardino グラフィックデザイン専攻
● ソフトウェアエンジニア @ サイバーエージェント
● ABEMA 開発本部
○ New Device チーム
あらゆるデバイスにAbemaTV を展開するための技術を提供するチーム
○ Streaming Client チーム
AbemaTV の再生品質を軸にUX エンジニアリングにコミットするチーム
○ 動画技術エバンジェリスト
世界各国に足を運び動画技術に関する情報をキャッチアップし、
社内外の動画サービスの発展に貢献するロール
○ DesignOps 推進バックエンド
大規模組織でスケールできるプロダクトデザイン開発組織を構築する活動

3. in Video Technology and Product Design

4. in Video Technology and Product Design
5 年前は Web チームのリードエンジニア
AbemaTV（※現 ABEMA）の Web（https://abema.tv/）を
立ち上げたときに書いた本

7. https://abema.tv/

8. 2021.01

10. 2021.04

12. 2021.05

13. https://blogs.windows.com/windowsexperience/2021/05/19/the-future-of-internet-explorer-on-windows-10-is-in-microsoft-edge/

14. https://blogs.windows.com/windowsexperience/2021/05/19/the-future-of-internet-explorer-on-windows-10-is-in-microsoft-edge/

15. 時代は変わります

16. 長くサービスを運用していると、
サポートの継続を停止するタイミングが
訪れます

17. サービスが
サポートすべき環境を判断するときに
何を確認すべきか？

18. 本日は Internet Explorer 11 の
サポートを終了することを決定したときの
ABEMA の裏側のお話をします

19. サポートする環境を判断するときに確認すべきこと
● 費用対効果
○ 事業にもたらす価値
○ サポートコスト
● 市場状況
○ 他社のサポート状況
● 潜在リスク
○ サポート停止により発生しうる弊害

20. 費用対効果

21. 事業にもたらす価値 vs サポートコスト

22. 事業にもたらす価値 vs サポートコスト
何はともあれ事業価値がコストを上回らなければ
サービスは継続できません

23. 事業にもたらす価値
Internet Explorer 11 が ABEMA にもたらしている事業価値を考える
● ユーザーシェア
● 視聴時間
● 広告収入
● 課金収入

24. Internet Explorer 11 のユーザーシェア
ABEMA Web アプリケーションユーザーのうち
11% ※ 当時

25. Internet Explorer 11 のユーザーシェア
ABEMA Web アプリケーションユーザーのうち
11%
1 割は無視できない数字
※ 当時

26. https://docs.microsoft.com/en-us/lifecycle/announcements/m365-ie11-microsoft-edge-legacy

27. Internet Explorer 11 のユーザーシェア
従来 ABEMA ではユーザーシェアを基準にサポート継続有無を判断していた
Microsoft が自社サービスのサポート停止を
アナウンスしても Internet Explorer のサポートを
停止する判断には至れないでいた

28. サポートコスト
ABEMA における Internet Explorer 11 のサポートコスト
● 機能追加開発におけるコスト
● UI 実装におけるコスト
● デバッグ難易度によるコスト
● 視聴障害リスク

29. コストを計測する
機能追加開発におけるコスト
過去の機能追加案件における工数から技術的負債量を計測
開発機能名 全体開発工数 IE11 にかかった開発工数
追っかけ再生 6 人月 1 人月
AVOD 6 人月 2 人月

30. コストを計測する
機能追加開発におけるコスト
過去の機能追加案件における工数から技術的負債量を計測
開発機能名 全体開発工数 IE11 にかかった開発工数
追っかけ再生 6 人月 1 人月
AVOD 6 人月 2 人月

31. MPEG-
DASH +
fMP4
HLS +
TS

32. MPEG-
DASH +
fMP4
HLS +
TS

33. MPEG-
DASH +
fMP4
HLS +
TS

34. MPEG-
DASH +
fMP4
HLS +
TS
そもそも Web ブラウザ上の
動画機能開発は
他プラットフォームに比べて重め

35. DRM サポートコストの例
PlayReady x Internet Explorer 11 の苦しみ
● PlayReady の License Persistence 機能が正しく動作しない
○ 1 回目の PlayReady 再生はライセンスチャレンジを実施するため再生できるが、
2 回目以降の保存されたライセンスを使用すると復号に失敗する
○ 同じ Microsoft 製 Edge では動作する
● 搭載されている PlayReady CDM によって Audio/Video Key ID のハンドリングに
制限がある？
○ A/V Key ID が同一でないとハンドルできていないような現象

37. かなりブラックボックスな挙動も多い

38. Chrome の EME Logger のようなものがあれば
まだデバッグがしやすいかもしれない

39. DRM でなくても、
デコードが失敗したり、
ストールするのではあれば、
Media Internals 的なものが
欲しくなる

40. コストを計測する
動画に関わらずデバッグ難易度が高い
● 通信で取得したデータの中身が見れない
● 長時間のデバッグツール起動はできない
○ Internet Explorer 11 を搭載する PC モデルは古い
○ 結果的にデバイスのスペックがデバッグツールの長時間使用に耐えられない

41. コストを計測する
UI 実装におけるコスト
● Internet Explorer 11 でしか必要がない Polyfill
● Flexbox の不具合バリエーション
● デコード時の想定しない挙動
○ 動画上のアルファ処理が効かない
○ GPU と同時に処理した DRM 再生で
動画が表示されない

42. コストを計測する
UI 実装におけるコスト
● Internet Explorer 11 でしか必要がない Polyfill
● Flexbox の不具合バリエーション
● デコード時の想定しない挙動
○ 動画上のアルファ処理が効かない
○ GPU と同時に処理した DRM 再生で
動画が表示されない
実装時にワークアラウンドを必要とする

43. コストを計測する
視聴障害リスクによるコスト
周辺環境も Internet Explorer 11 のサポートを終了していく中
外部コンポーネントとの
整合性不備による視聴リスクも
無視できなくなってきた

44. サポートコストは高くついている

45. サポートコストは高くついている
このコストとともに
サービスミッションを達成できるのか？

46. サービスミッションを達成できるのか
ABEMA はテレビを時間と場所から解放するというミッションがある
報道
生中継
同時性
場所からの解放
● スマートフォン
● テレビ
● デスクトップ
● タブレット
● スマートスピーカー
● スマートディスプレイ
時間からの解放
● タイムシフト視聴
● 追っかけ視聴
● 倍速視聴

47. サービスミッションを達成できるのか
ABEMA はテレビを時間と場所から解放するというミッションがある
パーソナライズド広告再生
追っかけ再生
低遅延再生
Manifest Manipulation
ダウンロード再生
DRM
ABR 最適化
次世代コーデック

48. サービスミッションを達成できるのか
ABEMA はテレビを時間と場所から解放するというミッションがある
パーソナライズド広告再生
追っかけ再生
低遅延再生
Manifest Manipulation
ダウンロード再生
DRM
ABR 最適化
次世代コーデック
アグレッシブに実装できないと
スピード感が足りない

49. サービスミッションを達成できるのか
ABEMA はテレビを時間と場所から解放するというミッションがある
パーソナライズド広告再生
追っかけ再生
低遅延再生
Manifest Manipulation
ダウンロード再生
DRM
ABR 最適化
次世代コーデック
開発における
攻めと守りのバランスが重要

50. 本当にユーザーシェア基準で
判断していいのだろうか？

51. 事業にもたらす価値を KPI = 視聴時間で測る
Internet Explorer 7.5%

52. 事業にもたらす価値を KPI = 視聴時間で測る
ABEMA Web アプリケーションユーザーのうち
11%※ 当時
Web ユーザーの総視聴時間のうち
7.5%※ 当時

53. 事業にもたらす価値を KPI = 視聴時間で測る
ABEMA Web アプリケーションユーザーのうち
11%※ 当時
Web ユーザーの総視聴時間のうち
7.5%※ 当時
他の Web アプリケーションユーザーよりも
ABEMA のコンテンツを楽しんでいる時間が短い

54. 収益という直接的な事業基準を
判断軸に足してみる

55. https://pdf.cyberagent.co.jp/C4751/bxTh/MDAa/KRIL.pdf

56. https://pdf.cyberagent.co.jp/C4751/bxTh/MDAa/KRIL.pdf

57. 事業にもたらす価値を広告収入に対する貢献量で測る
Internet Explorer 11 ユーザーの全広告接触に対する割合
Web browser 月 Web ユーザーの全広告接触に対する割合
IE11 12月 2.22%
IE11 1月 2.26%
IE11 2月 1.95%

58. 事業にもたらす価値を広告収入に対する貢献量で測る
Web ユーザーの総視聴時間のうち
7.5%※ 当時
Web ユーザーの全広告接触のうち
2.1%※ 当時
他の Web アプリケーションユーザーよりも
広告に接触していない

59. IE11 のユーザーデモグラ
M3/F3
が大多数を占める※ 当時
デモグラフィック広告配信の価格テーブル
※ 現在は価格が異なります

60. https://pdf.cyberagent.co.jp/C4751/bxTh/MDAa/KRIL.pdf

61. 事業にもたらす価値を課金収入に対する貢献量で測る
Internet Explorer 11 ユーザーが課金している割合
Web browser 月 プレミアムユーザー率
IE11 12月 0.20%
IE11 1月 0.20%
IE11 2月 0.20%
課金率
0.2%※ 当時

62. 事業にもたらす価値を広告／課金収入で測る
Web ユーザーの全広告接触のうち
2.1%※ 当時
課金率
0.2%※ 当時

63. 事業にもたらす価値を広告／課金収入で測る
Web ユーザーの全広告接触のうち
2.1%※ 当時
課金率
0.2%※ 当時
他の Web ブラウザよりも収益に対する貢献量は
ユーザーシェアで見えている以上に少ない

64. 市場状況

65. 他社動画サービスのサポート状況
調査時サポート状況は 50% 程度
サービス名 サポート状況 参照URL 備考
Hulu △ https://help.hulu.jp/faq/show/1547?site_domain=jp Windows 7 はサポート外
Netflix ○ https://help.netflix.com/ja/node/23742
niconico × https://blog.nicovideo.jp/niconews/121272.html
DAZN ○ https://my.dazn.com/help/about-recommended-devices-jp
TVer × https://tver.jp/info/faq.html IE は未推奨（が動く）
楽天 △ https://tv.faq.rakuten.net/detail/000001876 IE は Silverlight による対応
YAHOO!（GYAO!） △ https://support.yahoo-net.jp/SccGyao/s/article/H000008307 IE は Silverlight 3.0 までの対応
Web 標準ではなく Silverlight 等でサポートしているサービスも

66. 潜在リスク

67. サポート停止により発生しうる弊害
● Internet Explorer は官公庁案件などでサポートが必要になる可能性もある
○ 『渋谷オンラインスタディ』など ABEMA では官公庁案件も対応する

68. https://www.city.shibuya.tokyo.jp/assets/edu/000048783.pdf

69. サポート停止により発生しうる弊害
● Internet Explorer は官公庁案件などでサポートが必要になる可能性もある
○ 『渋谷オンラインスタディ』など ABEMA では官公庁案件も対応する
リスクとして飲む
（そもそも官公庁も前進すべきだ）

70. サポート停止により発生しうる弊害
● Internet Explorer は官公庁案件などでサポートが必要になる可能性もある
○ 『渋谷オンラインスタディ』など ABEMA では官公庁案件も対応する
● シェアが高いアクセシビリティ支援技術の Internet Explorer 依存
○ 国内スクリーンリーダーのトップシェア（ 80%）の PC-Talker が Internet Explorer に依存している

71. サポート停止により発生しうる弊害
ABEMA の conte というデザインシステム／DesignOps には
アクセシビリティ・タスクフォースがある
https://www.slideshare.net/ygoto3q/conte-abemas-design-system

72. PC-Talker とスクリーンリーダーの現状
conte アクセシビリティ・タスクフォースで確認
● PC-Talker も最新版は Chromium ベースになり、技術移行が進んでいる
● オープンソースのスクリーンリーダーも存在しており、避難先がある

73. PC-Talker とスクリーンリーダーの現状
conte アクセシビリティ・タスクフォースで確認
● PC-Talker も最新版は Chromium ベースになり、技術移行が進んでいる
● オープンソースのスクリーンリーダーも存在しており、避難先がある
むしろスクリーンリーダーの移行を
促していくべき

74. 潜在リスク

75. 既存ユーザーの移行先を考える
Internet Explorer 11 で ABEMA を使ってくれているユーザーの想定環境で
移行できる
Windows 7
Windows 10

76. ここまでまとめて役員に提案

77. ここまでまとめて役員に提案
決議

78. サポート終了までにユーザーに提供するもの

79. 残されるユーザーに対するケア
● 3 ヶ月前からアナウンスする
○ できる限り多くの人に伝える
○ 移行先に適切に案内する
● サポート終了後もアカウント設定機能だけは提供し続ける
○ アカウントさえ失うことがなければ移行は可能

80. 実施：アナウンス
プロダクト上の案内掲載と避難先への誘導
● ABEMA ユーザーに直接伝える

81. 実施：アナウンス
SNS を使ったアナウンス
● ライトユーザー／離脱ユーザーにも
できる限り届ける

82. 実施：サポート終了後のアカウント設定機能
機能 要不要
アカウント情報（ ID/アカウント名/画像） ○
アカウント編集 ✗
メールアドレスとパスワード情報 ○
メールアドレスとパスワード変更 ✗
パスワードの再設定 ○
ワンタイムパスワード発行 ○
アカウント切り替え ✗
必要かつ最小限の機能に絞り提供

83. モデルケースの汎用化

85. 汎用手順の確立
● 判断軸の統一
● サポート終了までの手順の統一
● ユーザーへのケア観点の統一
● ケアの方法はインストール型アプリとホステッド型アプリと分ける
○ 今回 Internet Explorer 11 はホステッド型だった
○ インストール型はサポートを終了しても使えなくなるわけではない

86. まとめ
サポートする環境を適切に判断
● 費用対効果
○ 事業にもたらす価値
○ サポートコスト
● 市場状況
○ 他社のサポート状況
● 潜在リスク
○ サポート停止により発生しうる弊害
未来を含めてサービスの利益になるような
アグレッシブな開発をしよう

87. Global Video Tech Meetup
2021.05.27 19:00 JST : ABEMA の動画技術開発における攻めと守りのバランスの話をします
https://megameetup.video/

88. 五藤 佑典
YUSUKE GOTO
https://ygoto3.com/
@ygoto3_
ありがとうございました