20151128_SMeNG_態度は変えられるのか

2015/11/28 次世代医療教育研究会＠⾼知県⽴⼤学
態度は変えられるのか？
〜あらゆる問題を「態度の問題」にしないために
12015/11/28 © 2015 TAKAORI HIROE; DEPARTMENT OF BIOSTATISTICS, KYOTO UNIVERSITY SCHOOL OF PUBLIC HEALTH
京都⼤学⼤学院医学研究科
Kyoto University Graduate School of Medicine
医療統計学分野 / 医学教育推進センター
Department of Biostatistics / Center for Medical Education
廣江貴則 Takanori Hiroe（t-hiroe@umin.ac.jp）

Introduction
•「態度教育」の問題
•（⽤語として）安易に使われる傾向がある？
•熱⼼に教育をしても態度を変えられない悩み
• 本当に態度の問題なのか？
• どうやって変えるのか
• 態度を変える以外のアプローチはないのか？
• そもそも，態度は測定（観測）可能なのか？

態度を変えるのは難しい？
仮説
•気になるあの⼦を振り向かせる
• 態度を変えることと似ているのではないか？
•振り向かせるノウハウはいろいろある
• ぶりっ⼦，猫なで声，壁ドン，床ドン，ツンデレ
• ヤンデレ，眼鏡，王⼦様，⼥王様，ドジっこ，etc.
•「ただイケ」問題
• ただしイケメンに限る
• ノウハウがだけでは態度は変えられない？

ノウハウがあっても…
*画像削除

逆に意識していなくても…

今⽇のおしながき
pというわけで，気楽に楽しんでください
p我々も答えは持ち合わせていません
pフリートークを進めながら考えるきっかけになれば
p異論・反論・批判・罵倒なんでも可
1. 態度は変えられるのか？（前半）
2. 態度を「評価」できるのか？（後半）

MKタクシー（京都）の態度教育

態度は変えられない？
•できるの？態度教育
• ANA・オリエンタルランドと並んで有名らしい
• 映像は新⼊社員教育の様⼦
•研修センター⻑⽈く
• タクシー業界は「最後に来るところ」
• 声出しが本質ではなく，諦めさせることが⽬的
• 同業他社からの中途採⽤はしない（変えられない）
•多段発進！と叫ぶその横で…
• 従業員の⾃家⽤⾞が⼀時停⽌せずに通り過ぎていく
• 「それでも⾔い続けるしかない」

ひとつめの問い
•どうなれば「態度が変わった」と⾔える？
• 隣の⼈と10分間話してみる
• ⾃⾝の経験も踏まえつつ…

A病院のはなし（1/5）
•約200床・外来150⼈/⽇程度
•外来受付で患者の取り違えが頻発
• 同姓同名の別の患者を受付・診療録を表⽰
• 診察室でエラーに気づいて訂正
•インシデント・レポートが量産される
• プロジェクトチームができて，対策を⽴てた
• 「確認を徹底します！」（おいおいw）
• 相談があったが，様⼦をみてみることにした

•その後「確認の徹底」（笑）がなされたが…
• 状況は変わらず
• 組織上層部から悲鳴が届いた
•仕⽅がないので観察してみる
• 取り違えに新患・再診で差はなさそう
• 全員がIDカードを持参しなかった患者
• 履歴等の検索は⽒名のみで⾏われていた
•原因が分かった
• とりあえずその報告だけしてみる

•原因が分かったのでマニュアルを改訂
• 「⽒名のほか，必ず⽣年⽉⽇でも検索をすること」
• グループウェアで周知された
• 既読になったかどうかで確認した（らしい）
•相変わらず取り違えは発⽣
•ただ…
• 受付担当は改訂されたマニュアルの存在を知っている
• 受付担当は検索の⽅法を知っている
• 受付担当は取り違えのリスクを知っている
• 受付担当は⼆重にチェックする必要性を知っている

ふたつめの問い
•これは態度の問題なのでしょうか？
•どう対処しますか？

•望まれる⾏動が分かっているのにやらない
• 組織上層部「これは態度の問題ですっ！」
• 「命を預かっているという意識が⾜りない」
• 受付担当「私たちだって忙しいんですっ」
•態度教育が必要ですっ！
• と⾔われましても…
•観察を続けると，現場は確かに忙しい
• 組織上層部「事務処理のスピードが遅い」
• 電話交換業務も同時にやっていた

•これは態度の問題なのか？
• 確かに望まれる⾏動ができないけれども
• その制約が他にあるのではないか
•もう少し観察してみた
• 受付の奥に「デキる」⼈がいた！
• こっそりお願いしてチェックしてもらうことに
• 訂正した数もカウントしておいてもらう
•態度が変わってインシデントが減ったと報告
• 実質的には発⽣数は減っていない

態度は変わったのか？
•こういうことは現場でよくある
• 書類上は「態度は変わった」
• 「真に」態度は変わったのか？
• 変えられたのか？
•⼿洗いの問題
• 消毒液を（ばれないように）捨てるテクニック
•「態度を観測しているつもり」になっていないか
• ⾝近な例を挙げて考えてみる

B病院のはなし（1/5）
•約500床・基幹病院
•かつて外来受付で患者の取り違えが頻発
• 間違えると別⼈の診療録（紙）が届く
• 新患ならまだいいけれど…
• マニュアルを整備して教育し，徹底した
• 結果，取り違えはなくなった
•同時に⾝元不明患者の扱いについても変更
• 15⼈/⽉程度来て混乱していた
• 当初想定していた以上に運⽤が上⼿くいった

•ある⽇，重症外傷の⼦供が意識不明で搬送
• かかりつけとの情報
• 家族付き添い（気が動転している）
• 家族が（正しい）⽣年⽉⽇を書けなかった
• 証明できる公的書類などは⼀切持参せず
•事務職員は「別⼈」として取り扱った
• 患者と親の顔を⾒て「ほぼ間違いない」と考えたが，
マニュアルに従って⾝元不明者とした
• 診療録は⾝元確定まで医療チームの⼿に渡らず

•救急医が声をかける
• 「この⼈は○○科のかかりつけ，診療録を」
• 「それらしい患者がいるのは確かだが…」
ü（テーブルの上にはその⼈の分厚い診療録）
• 「⾝元確認が取れないので規則上出せない」
•別の医師が怒りだした
• なぜほぼ特定していながら情報を出さないのか
• 診療情報が重要なことは分かっているはず
• 命の現場で働いているという意識が⾜りない
• これは「態度の問題です！」

みっつめの問い
•これ，どうしますか？
• 態度の問題？
• どうにかできますか？

•ルールを破ることも態度なのか
• 態度を変えればルールは守られない
• ルール＝組織にとって望ましい⾏動
•望ましい⾏動＝その⼈にとって都合のいい⾏動？
• 道を外れる決断をするのも専⾨職の仕事ではあるが
•そもそも態度の問題？
• もしそうであるなら，誰の態度の問題なのか

•院内でも問題＋話題になった
• 特に⼀部診療科はすごく怒っている
•なんとかしてくれという依頼
• ルールを柔軟にして運⽤させてみる
• 「⼩児の場合に限り，公的書類が確認できなくても
状況証拠が揃えば本⼈と判断してよい」
• 意図的にルール変更を当該診療科には伝えない
•事務職員の態度が変わったと医師から感謝された
• なんかデータをとっていたらしいが…
• 態度は全く変えていない（ルールを変えただけ）

よっつめの問い
•B病院の事務職員は変わったのか？
• 少なくとも感謝はされた
•問題は解決した！
• 運⽤（ルール）を変えただけ
• 態度は変わっていない
• 意図的にルール変更を当該診療科には伝えない
•事務職員の態度が変わったと医師から感謝された
• なんかデータをとっていたらしいが…
• 態度は全く変えていない（ルールを変えただけ）

態度は測れるのか？
•⼀般的な評価ツールはいろいろ開発されている
•（実はそのあたりが専⾨だったり…）
•どれか使えるものはないか？
•そもそも態度は測定できるのか？
• 測定できないものは評価できない

1. 360度評価
7. 患者からの評価（満⾜度
に関するアンケートなど）2. Chart Stimulated
Recall(CSR)
3. チェックリスト評価
（直接観察あるいは録画）
8. ポートフォリオ
9. カルテレビュー
4. 概略評価
（直接観察あるいは録画）
10. シミュレーション
5. Objective Structured
Clinical Exams (OSCEs)
11. ⼝頭試問
6. ログ（⼿技や患者に関す
る事後の記録）
12. 模擬患者による評価
13. 筆記試験
評価⽅法はたくさんあるけれど…
（出所：ACGME; Assessment Toolbox）

客観的ってなに？
•これを話すと⻑くなるけれど…
•あなたの考える「客観的」とは？
•「客観的な評価」は可能なのか？
• みんな「客観的」というけれど…
• あなたの「客観」とみんなの「客観」は同じ？

観察で評価できる？
•観察は妥当な⽅法かも知れないが…
• そこでの評価に信頼性はあるか？
• 「態度が良い」と判断される技術の有無でない
•ツールの限界を意識する

いま現在のこたえは？
•上司から態度をなんとかして欲しいと⾔われた
• まず，なにを使って現状を評価する？
• その後，どうやって介⼊する？
•改めて，態度は変えられる？

20151128_SMeNG_態度は変えられるのか

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