More Related Content
Similar to 京極:4条件メソッド In 精神科講演20131123
Similar to 京極:4条件メソッド In 精神科講演20131123 (20)
京極:4条件メソッド In 精神科講演20131123
- 15. 作業機能障害の種類と非構成的評価
• 作業疎外(OccupaTonal
AlienaTon)
– 自分が原因で生活行為を統制できず,生活行為
に対して意味を見だせなくなった状態である
• 非構成的評価の方法例
– 会話の場合:「最近,調子どうですか?」「やりた
いことできてますか?」「やらなアカンこといろいろ
あると思いますけどそうゆうの大丈夫?」など
– 観察の場合:病棟やOT室,デイケア等の様子か
ら心身の障害の影響で生活行為ができなくなっ
ているところを整理,推察していく
- 20. 4条件とは?
• 4条件
• 条件1・・・評価者の想定した暗黙の前提を,第三者が共有
しやすい.
• 条件2・・・提示された事実は面接や観察から直接得られた
もので,作業遂行を通して変化が認められる.
• 条件3・・・事実の表記は省略が少なく,概念が明確である.
• 条件4・・・判断は作業有能性に焦点を当てており,論理的
に適正で明瞭である.
• 4条件は「納得」の感度を支える
• 非構成的評価でクライエントの変化を評価したら,基
本的に「いくつかの事実からクライエントの変化につい
て判断を導く」という構造になる
- 21. 納得の感度
• 納得の感度とは「これは確かだ!」と感じられるこ
とである
• 納得の感度は特定の条件下で成立する
• 構成的評価は納得の感度が高い
– 構成的評価の納得の感度を支える諸条件
• 統計学を使って研究開発されちるから,評価結果の信頼性,
妥当性が確率論的に担保されている,
• 現象の数量化によって主観の恣意的な思いこみを排除できる
• これまで受けてきた教育から「量的研究=現象の客観化」と
いう知識がすりこまれている,など
- 22. 納得の感度
• 非構成的評価の納得の感度は低い
– 非構成的評価の納得の感度の低さを支える諸条
件
• 変化を示す事実が省略されている
• 文章のまとまりが悪い
• 概念が不明瞭である
• 曖昧な印象を与える
• 評価者の視点がわからない,など
• 逆に言えば,これらの諸条件を埋めるように
していけば,非構成的評価の納得の感度を
高めることができる
- 24. 4条件とは?
• 4条件
• 条件1・・・評価者の想定した暗黙の前提を,第三
者が共有しやすい.
• 条件2・・・提示された事実は面接や観察から直
接得られたもので,作業遂行を通して変化が認
められる.
• 条件3・・・事実の表記は省略が少なく,概念が明
確である.
• 条件4・・・判断は作業有能性に焦点を当てており,
論理的に適正で明瞭である.
• 4条件は「納得」の感度を支える
- 26. 条件1:評価者の想定した暗黙の前
提を,第三者が共有しやすい
• 暗黙の前提は「内省」によって自覚する
• 内省のポイントは問いの立て方にある
– 私がこの事実に注目した理由は何だろうか?
– 私の判断の基準になったものは何だろうか?
– 私の解釈の枠組みになったものは何だろうか?
– 私の考察を支える枠組みは何だろうか?
– 私の実践にはどのような慣習があるのだろうか?
– 私はどのような非構成的評価の経験を積んできたか?
– これまでの非構成的評価の経験から,私はどのような
知恵を身につけてきたのだろうか? など
- 28. 条件1が欠けた評価結果の具体例
• 具体例
– クライエントは,気分障害を持つ前は一般企業に勤める
サラリーマンで,仕事一筋で生きてきた.しかし,気分障
害になってからは何事に対しても意欲を持てないでいる.
クライエントに作業療法プログラムを提供しても,かたくな
に拒否してきた.しかし,クライエント自身がやりたいプロ
グラムで実施していくことにしたところ,作業療法士に「孫
に手紙を書きたいんだ」と打ち明けた.クライエントと作業
療法士の関係が作られてきたと判断した.
• 先行研究では,対象となった作業療法士のうち約
60%が,例3の内容に同意するのは難しいと判断して
いる
• その理由として,上記の例は暗黙の前提が共有しにく
いことが挙げられる
- 29. 暗黙の前提の見抜き方
• 評価結果を分解し,文と文との関係を検討する
– ①クライエントは,気分障害を持つ前は一般企業に
勤めるサラリーマンで,仕事一筋で生きてきた.
– ②しかし,気分障害になってからは何事に対しても
意欲を持てないでいる.
– ③クライエントに作業療法プログラムを提供しても,
かたくなに拒否してきた.
– ④しかし,クライエント自身がやりたいプログラムで
実施していくことにしたところ,作業療法士に「孫に手
紙を書きたいんだ」と打ち明けた.
– ⑤クライエントと作業療法士の関係が作られてきた
と判断した.
- 30. 条件2:提示された事実は面接や観察から直接得ら
れたもので,作業遂行を通して変化が認められる
• 具体例
– 病棟における脳血管障害患者の基本的ADLは自立して
いた.作業療法士は家族に,退院指導のために使用す
る自宅家屋の見取り図を用意してもらった.作業療法
士は,その見取り図を見ながら,病棟と同じように自宅
でも基本的なADLが自立できるかどうかを検討した.そ
の結果,作業療法士は,患者は自宅でも病棟と同様に,
基本的ADLは自立して行えるだろうと判断した.
• この例は条件2が欠けている.先行研究でも役8
5%の対象者が確かな結果ではないと判定してい
る.
- 33. 条件3:事実の表記は省略が少なく,
概念が明確である
• 具体例
– 作業療法室で,自分のいる場所を見つけることができ
ず,スタッフに助けを求めることが多かったが,自ら他
患のいない席へ席を移動するなど見られ,自分の環境
を整えられるようになってきたと判断した.
• 具体例の分解
– ①作業療法室で,自分のいる場所を見つけることがで
きず,
– ②スタッフに助けを求めることが多かったが,
– ③自ら他患のいない席へ席を移動するなど見られ,
– ④自分の環境を整えられるようになってきたと判断した
- 34. 条件3:事実の表記は省略が少なく,
概念が明確である
• 事実の表記の省略が少ないとは?
– 事実の表記は多すぎても少なすぎても駄目
• 事実表記のポイント
– 具体的に書く
• たとえば,例5の②の記述の場合,具体的にどのように助け
を求めてきたのかを書くようにすればよい
– 事実と事実の間が飛躍しすぎないように書く
• たとえば,例5の②と③の間で,スタッフに援助を求めたクラ
イエントに対して,作業療法士が「自分が『すごしやすい』と思
える環境を見つけてみませんか」というように提案していたと
したら,そのことを「クライエントの訴えに対して,居心地の良
い場所を探索するよう提案した」と書くようにすればよい
- 35. 条件4:判断は作業有能性に焦点を当てており,
論理的に適正で明瞭である
• 条件4の意味
– ①クライエントの仕事,日常生活,遊び,休息へ取り組
む状態に関する判断を示していること
– ②判断は示された事実に対して,過剰であったり飛躍
したりしていないこと
• 具体例
– 抑うつ状態にあるクライエントは,作業療法士が何かを
提案しても常に「できない」と言っていた.作業療法士が
クライエントを誘い,OT室内を見学する機会を作ったと
ころ,クライエントは籐細工に興味を示した.そこで作業
療法士がクライエントに籐細工を勧めたところ,その提
案に対しクライエントがうなずいた.クライエントの抑う
つ状態が改善しはじめたと判断した.
- 36. 条件4:判断は作業有能性に焦点を当てており,
論理的に適正で明瞭である
• 分解に基づく検討
– ①抑うつ状態にあるクライエントは,作業療法士が何
かを提案しても常に「できない」と言っていた.
– ②作業療法士がクライエントを誘い,OT室内を見学す
る機会を作ったところ,クライエントは籐細工に興味を
示した.
– ③そこで作業療法士がクライエントに籐細工を勧めた
ところ,その提案に対しクライエントがうなずいた.
– ④クライエントの抑うつ状態が改善しはじめたと判断し
た.
- 42. 4条件吟味法
• 4条件吟味法による吟味の指標
– ①評価結果は首尾一貫した観点のもとで記述されてい
るか
– ②評価結果に記された事実(作業遂行の変化を含む)
は,評価者によって実際に確認されたものか
– ③評価結果の内容に対して「信頼できる」という確信が
成り立たないぐらい事実が省かれ,あいまいな概念が
使用されていないか
– ④論理的に適正で明瞭であり,作業有能性に焦点を
当てた判断が示されているか,です.
- 53. 4条件メソッドの練習問題
4条件記述法
• 以下の文を読み,どう修正すれば4条件を満た
せるかを検討し,修正してください.
• 脳卒中を持つ患者の病院内における生活様式は,テ
レビを見る,リハビリテーションを行うのみで構成され
ていた.しかし,家族によれば,自宅へ退院した後,
猫の世話をする,妻とともに近所を散歩するといった
活動を行うようになった.また,看護師が訪問したと
きも,「やっぱり家のほうが好きなことできていいです
ね」と語ったという.作業療法士は,病院から自宅と
いう環境の変化によって,患者は病人から家族の一
員としての役割を取り戻しつつあると判断した.
京極真:作業療法士のための非構成的評価トレーニングブック 4条件メソッド.誠信書房、2010