31. 作成者: 2013 年度入職初期研修医
聖隷三方原病院 Resident Manual
【主たる鑑別診断】
① 前房出血:受傷直後は出血で瞳孔が確認不能
② 硝子体出血:赤色瞳孔を評価
③ 網膜振盪症:受傷側の眼球で視力低下・対光反射↓
④ 網膜剥離:歪視、超音波でフラップ像を確認
⑤ 眼球破裂:眼球変形
⑥ 眼窩壁骨折:内壁と下壁の骨折が多い。
【症状】複視・眼痛・眼球運動制限・眼球運動時痛(特に骨折部と対側を見た時に増強)
*若年の絞扼型(外眼筋が骨折部に挟み込まれる)では眼痛と嘔気・嘔吐が強い
【診断】顔面骨CT撮影:冠状断(できれば矢状断)も撮影
→眼球運動障害あれば、形成外科Dr.に緊急オペを相談
(3)化学外傷
次のステップで対応
① 直ちに生理食塩水で洗浄(2Lを要する事もしばしば)
② 洗浄しつつ、眼に入ったものについてよく問診
アルカリ薬傷:深部傷害を来し得る
酸薬傷・有機溶剤・消毒用アルコール:通常上皮傷害に留まる。
③ 洗浄しつつ、眼科Call
(4)外傷性視神経症
【誘引】前頭部や前額部(特に眉毛部)を強打して発症
【症状】受傷後より、外傷同側の視力低下・対光反射の減弱~消失
→疑わしければ眼科Call(早期のステロイドパルスを要する)
(5)電気性眼炎
【誘引】紫外線への長時間暴露で発症(溶接光・殺菌灯・スキー場での雪目)
【症状】異物感・眼痛・流涙・結膜充血(特に眼痛の訴えが強い)
紫外線暴露から数時間の潜伏期あり(溶接での電気性眼炎は22 時以降の受診が多い!)
2日以内に自然治癒する。
【治療】タリビット眼軟膏1日4回、ロキソニン頓服処方で翌日眼科受診
心配なら眼科Call(痛みが強く、とにかく患者の訴えが強い)
(6)急性緑内障発作
【疫学】40 歳以上、男性<女性。片眼性が多い。ほとんどが遠視。
【症状】視力低下・霧視・眼痛・頭痛・悪心・嘔吐
【所見】結膜充血、瞳孔の中等度散大(対光反応↓)、角膜混濁、虹彩膨隆
→疑わしければ眼科Call(緊急オペ必要)
疑った時点で眼科 Call
32. 作成者: 2013 年度入職初期研修医
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( カ)創傷処置
【治療原則】
① 異物は感染源となるため十分な洗浄・デブリードマンを行う
② 創部は消毒してはいけない。
【皮膚欠損創】
① 汚染創では創を十分に洗浄。疼痛のため洗浄困難である場合にはキシロカインゼリーを塗布
しラップにて被覆し 3~5 分後に洗浄。必要に応じてデブリードマンを行う。
② 被覆材を用いる
※明確な基準はなく、あくまで一例なので適宜被覆材を使い分けて下さい
【局所浸潤麻酔】
① 局所麻酔薬でアレルギーを起こしたことがないかを問診
② 1%キシロカインを用いる。出血が多い場合には E 入りキシロカインを用いる(※ただし E 入
りは手指、足趾、鼻尖、耳介、陰茎など終末動脈を有する部位では禁忌)。
③ 刺入部は創面から。
④ なるべく細い針でゆっくりと注入。
⑤ 極量に注意!キシロカインでは 4.5mg/kg、E 入りキシロカインは 7mg/kg
33. 作成者: 2013 年度入職初期研修医
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【切創】
① 局所浸潤麻酔を行った後、十分に洗浄
② 基本的にステープラーは使用せず縫合糸により縫合。泣き叫ぶ子供の 1 針だけの頭部創など
ではステープラーも考慮。小児の浅い顔面外傷ではステリーを用いる。
縫合糸の目安
頭部:3.0~4.0、顔面:5.0~6.0、体幹・四肢:4.0~5.0 (ただし関節面では 3.0 も考慮)
指・趾:5.0~6.0
③ 縫合後、出血が認められる場合にはアルゴダームにて被覆。
切創のみである場合にはシルキーポアでも何でも被覆可能。表皮欠損創を伴う場合には、デ
ュオアクティブやハイドロサイトなども考慮する。
【熱傷】
Ⅰ度:プロペト or リンデロン VG 軟膏塗布 (※ゲンタシンのアレルギーを問診)
Ⅱ・Ⅲ度:①水疱形成を認め緊満している場合には 18G 針にて穿刺し除圧。
②既に破れている場合はそのまま。
③感染が疑われれば、水疱膜を切除し除去。その後、プロペトを塗布しサンドガー
ゼにて被覆。サンドガーゼは処方できないため、自宅にあるものでの処置としてはプ
ロペトを塗布しサランラップにて被覆の上ガーゼで覆う。
【動物咬傷】
① まずはよく洗浄する。
② 創感染となるため、基本的には縫合しない。
・刺創型であればナイロン糸によるドレナージを行う
・創が大きい場合にはビニールドレーンやペンローズドレーンを用いる。
③ 破傷風トキソイド施行し、抗菌薬を忘れずに処方。
人・猫では感染率が高い。
【抗菌薬について】
・抗菌薬の予防的投与には明確な基準はない。
・抗菌薬予防的投与が推奨される患者は以下の通り
重度の免疫不全患者、開放骨折もしくは間接へと達する創、腱・軟骨に達する創、肉眼的
に汚染されており異物の残存の可能性がある、動物咬傷、口腔内の創、受診までに 18 時間
以上を要した場合など
・処方例
・基本的には第 1 世代のセファロスポリン(当院ではケフラール)を用いる。
・汚染が強い場合や動物咬傷では成人ではオーグメンチン、小児ではクラバモックス。
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( キ)外傷の画像診断
胸部 X-P(AP 臥位 or PA 立位)
Primary survey:大量血胸・気胸、重症肺挫傷、多発肋骨骨折、チューブ類
気胸→肺野の陰影、気管の偏位
血胸→両側 C-P angle が鋭 or 鈍
肋骨骨折→明らかな転位のみ
Secondary survey:PATBED(肺挫傷、大動脈損傷、気道損傷、鈍的心損傷、食道損傷)
気 管・気管支:連続性、偏位、気管内異物
胸 腔と肺実質:血胸、気胸(Deep sulcus sign)
縦 隔:縦隔気腫、縦隔拡大
横 隔膜:連続性、左右差
骨 性胸郭:鎖骨骨折、肩甲骨骨折、肋骨骨折、胸骨骨折
軟 部組織:皮下気腫、
チ ューブ類:挿管チューブ、胃管、チェストチューブ
骨盤 X-P(AP 臥位)
Primary survey:不安定骨盤骨折の有無
① 骨盤輪・小骨盤輪の破綻
② 恥骨結合の離開
③ 上下左右への転位・変形
Secondary survey
① 全体:棘突起の配列(正面性)・腸骨翼の大きさ・左右差(対称性)
② 前方:恥骨・坐骨骨折、閉鎖孔左右差、恥骨結合の離開(≧2.5cm)
③ 後方:腸骨骨折、仙腸関節の左右差・開大、仙骨孔の左右差、仙骨棘突起から
仙腸関節までの距離、L5 横突起骨折
④ 寛骨臼・股関節周囲の骨折の有無
頸椎 X-P(頸椎 3 方向)
側面: Alignment:4 つのライン(次頁参照)
Bone:骨傷
Cartilage:椎間板、椎間関節距離の不整
Distance of soft tissue(次頁参照)
・環椎歯突起前面間距離 ADI
・環椎軸椎亜脱臼/脱臼
・棘突起間の開き
・椎体前縁、軟部組織間の距離 C2~4:7mm 以下 C6:22mm 以下
開口:歯突起骨折
C1 外側縁突出(C2 外側縁と比較)