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激動!日本のデジタル規制改革の最新動向
©2021 Mori Hamada & Matsumoto all rights reserved
森・濱田松本法律事務所
パートナー 増 島 雅 和
January 14, 2021
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増 島 雅 和(ますじま まさかず)
2001 弁護士登録
2006 米国ウィルソン・ソンシーニ法律事務所(シリコンバレーオフィス)
2007 ニューヨーク州弁護士登録
2010 金融庁監督局保険課(銀行第一課兼務)
日経CSISバーチャルシンクタンク・フェロー
金融と知財の力で我が国産業構造のイノベーションを加速する“Startup Innovators”主宰(http://startupinnovators.jp/)
2013 経済産業省 新事業創出支援関係者会議 委員
2015 IMF外部カウンセル(米国FSAP:金融破綻処理法制担当)
日本ベンチャーキャピタル協会顧問、日本フィンテック協会顧問、日本ブロックチェーン協会顧問、暗号資産ビジネス協会アドバイザー
2016 内閣官房ベンチャー・チャレンジ2020 アドバイザリーボードメンバー
内閣官房IT総合戦略本部 シェアリングエコノミー検討会合 委員
2017 経済産業省 研究開発型ベンチャー企業と事業会社の連携加速に向けた調査検討会 委員
森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士
2018 内閣府 革新的事業活動評価委員会 委員
特許庁 知的財産国際権利化戦略推進事業有識者委員会 委員
2019 総務省 AIインクルージョン推進会議 委員
経済産業省 Society5.0における新たなガバナンスモデル検討会 委員
内閣官房 デジタル市場競争会議WG委員
特許庁 オープンイノベーションを促進するための支援人材育成及び契約ガイドライン研究会 委員
内閣府 規制改革推進会議 専門委員
2020 内閣官房 ブロックチェーン官民推進会合 委員
内閣官房 Trusted Web協議会 委員
デジタル通貨研究会 委員
オンライン名刺交換用QRコード
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激動の時代、パラダイムを変える日本のビジネス法を武器とした新しいビジネスの戦い方を、
日本最大の法律事務所のトップパートナー陣が指南!
12月15日発売 1,800円(税抜)
• サステナビリティ、人権、ソフトロー(澤口実)
• ソサイエティ5.0時代のガバナンスの仕組みと日本の大戦略(増島雅和)
• ソフトローを中心に代わり続けるコーポレート・ガバナンスのルール(石井裕介)
• M&Aの新展開(石綿学)
• 金融の世界の枠組みが変わる、サステナブルファイナンス・ESG投資と超高齢化社会に
おける金融サービス(佐藤正謙)
• リスクマネーの供給に向けた資本市場の動き(鈴木克昌)
• 第四次産業革命とルール作りで存在感を示し始めるアジア(小松岳志)
• 雇用の柔軟化と進む雇用オペレーションシステムのアップデート(荒井太一)
• データやプラットフォームをめぐる新しいルールと今後の動向(岡田淳)
• フィンテックをめぐるルール(堀天子)
• ヘルスケア分野のイノベーションと規制(浦岡洋)
ルール・チェンジ 武器としてのビジネス法
森・濱田松本法律事務所 編
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本日のトピック
1.菅政権におけるデジタルの位置づけ
2.セミナーの告知後年末にかけて明らかになった政府のデジタル戦略
(1)デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針
(2)データ戦略
3.民間部門におけるデジタルの競争戦略
(1)ガバナンスイノベーションーアジェンダとその背景
(2)国の統治構造のリ・デザイン
(3)デジタルプラットフォーム規制
4. まとめ
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学習達成度とネクストステップ
120
100
75
40
世界のデジタル・データ戦略をより深く知りたい
日本のデジタル・データ戦略を深く理解することができた
デジタル化とルール、ガバナンスの話のつながりがまだ十分
理解できていない
抽象的な話ではなく具体例を知りたい
20 大所高所の話よりも、わが社のデジタルトランスフォーメーション
はどうやればよいかを知りたい
EU、シンガポールの政策ペーパーを研究することをおすすめ
します。
日本政府がこのように動くことを踏まえ、自社が先回りして
展開するべき戦略、経営リソースの投下戦略をぜひ検討し
てみてください。
ガバナンス・イノベーションの第二弾レポートが近々公表され
ますので、アーキテクチャに対する学習を深めてみてください。
デジタル文脈で自社トピックにあったセミナーも随時承ってい
ますので、お気軽にお声掛けください。
政策起点でのデジタルトランスフォーメーション戦略のコンサ
ルティングも承っておりますので、お気軽にお声掛けください。
NEXT STEP
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8つのトピックとデジタル戦略との関係
1.新型コロナウィルス対策と経済の両立
3.グリーン社会の実現
4.活力ある地方の創造
5.新たな人の流れの創造
6.安心の社会保障
7.復興・災害対策
2.デジタル社会の実現とサプライチェーン
-コロナにより行政・民間のデジタル化の遅れが浮き彫りに
-デジタル規制改革によるウィズコロナ・ポストコロナの新しい社会を創る
① デジタルガバメントの推進(行政手続きのワンストップ化)
② ウィズコロナ・ポストコロナ時代の働き方改革(テレワーク推進による地域格
差解消)
③ 医療・教育の地域格差の解消
-推進のための個別施策
① 行政のデジタル化(5年以内)
② デジタルID・マイナンバーカードの普及(2年半以内)
③ デジタル庁の設立(2021.9)
④ デジタル教育
⑤ 新しい働き方の支援(テレワーク/ワーケーション)
-書面、押印の廃止
⑥ サプライチェーン強靭化
8.外交・安全保障
自由で公正な経済圏の拡大、多角的自由貿易体制を維持・強化
イ
ネ
ー
ブ
ラ
ー
と
し
て
の
デ
ジ
タ
ル
と
ル
ー
ル
形
成
菅内閣総理大臣による所信表明演説(2020.10.26)
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デジタル(ソフトウェア)はルールによらずに間接的に人の行動を制約する
中央省庁 下位部局 市民
通
達
・
監
督
指
針
国・地方 市民
ルール(自然言語によるコード)
行
政
執
行
機械
国
地方
基盤提供コード
ソ
フ
ト
ウ
ェ
ア
実
装
自
動
化
市民
 フィジカルなインフラのもとでも人々の行動は規制によらずに制約されてきた(フェンス、橋のかけ方、高速道路の設置場所)
 デジタルツインのもとサイバー空間にも同様に空間アーキテクチャによる制約がある(承諾ボタンを押さないと先に進めない)
デジタルとルールの関係
デジタル化とは、法律によらない社会の作り変えを意味し、既得権益の打破という意味で規制改革と同じものを目指している
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置換技術は社会から拒絶され、補完技術は社会に受容される
技術の2つの側面:置換技術と補完技術
欧州中世時代の技術革新
 支配層は土地を中心とした資産から収益を獲得
 支配層は支配の維持を重視し、技術革新による成長を求めるインセンティブがなかった
 新興勢力による新しい発明による技術革新は、雇用を奪い社会を不安定化するものとして支配層により禁止
- イノベーターの取るリスクが高すぎる社会規範が敷かれ、技術革新の担い手がいなかった
欧州産業革命前後の技術革新(蒸気と工場制の革命)
 多くの国では、ギルドや職能工が、機械を導入した工場に押し入って機械を打ち壊し
- 支配層もこれを止めなかった
 17世紀末以降のイギリスでは支配層の入れ替えと重商主義的政策により、機械の導入をサポートする政策へ転換
- テクノロジー失業と児童労働、貧富の差の急速な拡大など社会のひずみ(-1830年代)
- その後に実質賃金の向上、食糧生産性の向上による生活改善(1840年代以降-)
米国による技術革新(電力と工作機器・大量生産の革命)
 1880年代の電力の産業化以降、1909年までに工場の電力化を推進(工場レイアウト革命の裏方としての動力革命)
 モジュール化を可能とする工作機械と大量生産技術により、機械は家電技術として展開
 補完技術としての特性から、抵抗を受けずに急速に拡大
- 技術者の能力を拡張する工作機械
- 主婦を家事労働から解放する家電
技術がシステムとして根付いたことによる
スピルオーバーの発生
デジタル技術を、雇用を脅かし格差を拡大する置換技術としてではなく、社会課題を解決するイネーブラー(補完技術)
と位置づけ、ルール(法)とデジタル(技術)の両輪のアップデートをすべて「すべての人の幸福な社会の実現」に資することに
つなげるのが、菅政権が打ち出した我が国のデジタル規制改革の神髄
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本日のトピック
2.セミナーの告知後年末にかけて明らかになった政府のデジタル戦略
(1)デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針
(2)データ戦略
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基本方針は、IT基本法の大改訂とデジタル庁の設置を柱に据える
デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(2020.12.25)①IT基本法
現状
コロナ
機能不全が発覚
・行政デジタル化の遅れを取り戻す
・データ利活用による行政サービスの質の向上
ウィズコロナ・ポストコロナの新たな日常
を構想する必要性 ・デジタルを用いて社会の課題を解決する
・デジタルによる経済成長
IT基本法の全面的な見直し
デジタル庁の設置
多様な国民がニーズに合ったサービスを選択でき、国民一人ひとりの幸福に資する「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化」
<目指すビジョン>
<ビジョン実現の方法>
デジタル技術の善用により、データを狡猾的に活用した多様な価値・サービスを創出する
社会課題の解決
(国内安定)
持続的かつ健全な発展
(経済成長)
国際競争力の強化
(経済安全保障)
<実現する価値>
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<5つの取組事項>
ネットワークの整備・維持・充実
• 高度情報通信ネットワークの整備
• IoTを想定した整備
• 災害発生時の利用を念頭に置いた整備
• 国際的な通信インフラの多様化状況に着目
データ戦略の観点からは「インフラ」を
ネットワークのみでなくより広く定義す
る必要があるのではないか?
データ流通環境の整備
• データ標準化
• データ連携基盤の整備
• APIの整備・公開
データ標準や品質を整備し、トラストを確保する
政府のデジタルプラットフォーム化
行政・準公共分野における
サービスの質の向上
• マイナンバー関連制度のUI/UXの向上
• 国・地方公共団体が保有するデータのオープン化の推進
• 基幹データベース(ベース・レジストリ)の整備
人材の育成、
教育・学習の振興
• デジタル人材の育成
• デジタルリテラシの教育・学習
デジタル環境の安全性
• サイバーセキュリティの確保
• パーソナルデータの保護対策
• 信頼性のある情報の自由かつ安全な流通(DFFT)の確保
• 災害時も機能する強靭なネットワークの確保
デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(2020.12.25) ①IT基本法
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<官民の枠割分担に関する原則>
デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(2020.12.25)①IT基本法
 デジタル社会の創造は民間主導、官は環境整備を図る役割を担う
 行政サービスについても、民間企業に知見があるものは民間の知見を積極的に活用(UIなど)
 コラボレーション・アプローチ(オープンイノベーション)
 国が地方公共団体が共通して用いることができる基盤を全国的に統一して整備、
地方公共団体はこれらを活用して地方の実情に応じた施策を講ずる
政府のデータ連携基盤への民間
サービスのAPI連携を通じたサービス
提供国、地方公共団体、事業者の連携と協力
<国際協調>
 信頼性のある情報の自由かつ安全の流通の確保(DFFT)のため、日本がグローバルなサイバー空間のガバナンスを先導
デジタルプラットフォーム規制
Trusted Web構想
デジタル取引基盤の整備
<重点計画の策定>
 デジタル社会の形成のために重点計画を定め、具体的な施策と達成時期を明記
民間投資への予見可能性と財政的な支援を通じ、民間主導のデジタル社会の創出を支援
 グローバルなルールの形成を主導することで、民間事業のスケール化、グローバル展開を支援
 デジタル社会における日本のソフトパワーの強化
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DFFTは、デジタル時代におけるデータ流通のあり方について日本政府が世界に向けて提言した
Society5.0のグローバル展開のための戦略的イニシアチブ
 Data Free Flow with Trust(信頼性ある自由なデータ流通)は、2019年1月にダボス会議で
安倍前首相により提唱され、6月に大阪で開催されたG20首脳会議から、グローバルなデータガバナンスの
先駆けとして紹介されたコンセプト
‐ Data Free Flow:自由で開かれたデータ流通
‐ with Trust:データの安心・安全を実現
 プライバシーやセキュリティ、知的財産の安全を確保したうえで、「データは自由な流通を確保される必要がある」
という原則的な考え方を示すことで、データに対する基本的な規範を各国で共有することを狙ったもの
‐ 特定の主体によるデータの囲い込みを否定
✖ 国家によるデータ支配を否定(立憲民主主義と相容れない)
✖ 超国家的大企業によるデータ支配を否定(公正な競争が確保されない)
△ 人権保障のナラティブによって地域によるデータ支配の優位性を確保
「法の支配という価値観を共有する信頼できる事業者が、データの取扱いに関する共通ルールを遵守することで、人々
からの信頼のもとで資本主義社会における健全な競争を通じてサービスを切磋琢磨し、データやプライバシーの安全が
高い水準で確保された高付加価値社会を築く」という理念に基づくもの
(参考)DFFTについて
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デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(2020.12.25)②デジタル庁の基本設計
デジタル庁は、デジタル社会の形成に関する首相直属の司令塔として、強力な総合調整機能と地方からのリ
モートワークなど柔軟な運営体制を持ち、地方職員との連携対話を重視する、500人体制の組織
企画立案と各省庁や地方公共団体の統括・監理のみでなく、重要な設備は自ら整備する実行官庁としての役割を果たす
国の情報システムの統括
 国の情報システムを3区分に分類しなおし
- デジタル庁システム
- デジタル庁・各府省庁共同プロジェクト型システム
- 各府省庁システム
事業の統括・監理、標準化・統一化により相互連携を確保
地方共通のデジタル基盤
 総務省と連携して
①地方公共団体の情報誌市うテムの標準化・共通化に関する企画と総合調整を実施
②政府全体の方針の策定と推進
③補助金が交付されるシステムについての統括・監理 住民税、住民基本台帳まわりのシステムへのアクセスを狙う
マイナンバー制度
 マイナンバー制度全般(マイナンバー、マイナンバーカード、公的個人認証)の企画立案を一元的に行う
 総務省と連携して、2022年中に全国民マイナンバーカードがいきわたることを目標に加速策を講ずる
 マイナンバー関連業務の体制の抜本強化のため、地方公共団体システム機構(J-LIS)の改革
 行政手続きをend to endでオンラインで行う
 蓄積・分析したデータを活用してプッシュ型の行政サービスを提供
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デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(2020.12.25)②デジタル庁の基本設計
データ利活用
 関係法所管府省と共管してデータのトラスト確保のための枠組みを整備
- 法人・個人を一意に特定・識別するID制度
- 電子署名、商業登記電子証明書の情報と発信者の真正性を保証する制度
 制度所管府省、地方公共団体とベース・レジストリとして整備する情報の明確化と整備
サイバーセキュリティ
 情報システムの整備・管理の基本的な方針にて、サイバーセキュリティに関する基本的な方針を提示
 セキュリティ専門チームを設置し、デジタル庁が整備・運用するシステムの検証・監査を実施
 体制強化したNISCが国の行政機関等のシステムに関するセキュリティ監査を実施
民間・準公共部門の
デジタル化支援
 国・地方・事業者のデジタル化に向けた役割の規定
 重点計画を策定し、具体的な政策と達成時期等を明記
<民間部門のデジタル化支援>
<準公共部門のデジタル化支援>
企業の生産性・付加価値の向上を支援
重複投資の排除・成長の加速化
 準公共部門:医療、教育、防災など正確に密接に関連していることにより国民の期待の大きい分野
 デジタル庁が、情報システムに関する整備方針を関係不調と共同で策定・推進
行政手続きのワンスオンリー化を実現
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デジタル社会ではデータが国際競争力の基盤であるとして、世界の主要国は、
ここ1-2年で包括的・具体的なデータ戦略を策定
EU:European Data Strategy
2020.2
 データアクセスと利用のため分野横断的ガ
バナンス枠組み
 データへの投資・インフラの強化
 個人のエンパワー、スキル・中小企業への
投資
 戦略的分野と公益領域に関わる欧州共
通データ空間の構築
UK:National Data Strategy
2020.12
 経済全体でのデータ価値の解放
 成長志向かつ信頼性あるデータ法制
 政府によるデータ利活用のトランスフォー
メーション
 データ基盤のセキュリティ・強靭性の確保
 国際的なデータ流通の擁護
US:Federal Data Strategy
2019.6
[Mission]
倫理的ガバナンス、意識的デザイン、学習文
化の実践を通じて連邦データの価値をフル活
用する
[基本原則]
 データ重視の文化形成と公共利用の促進
 データのガバナンス、管理、保護
 データ利用の効率性促進と適切性確保
2030年頃までにデジタル社会の総合的基盤を構築することを期している
データ
ルール
アーキテクチャ
<共通してみられる要素>
国民IDなど社会の基本情報となるベース・レジストリの整備
トラスト、プライバシー、セキュリティを確保するための規律の整備
データ連携の基盤となるアーキテクチャの整備
日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
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日本のデータ戦略のビジョン(目標)、ミッション(理念)、バリュー(原則)
ビジョン サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、新たな価値を創出する
人間中心の社会を創造する
デジタルツイン 経済発展と社会的課題の解決の両立
=
Society5.0のビジョンと同じ!
データ利活用の視点からは、
「自由なデータの流通と活用と、データの信頼性・安全性のバランスが取れた社会を創造すること」といえる
HOW? 「サイバー空間上に国家・社会を再構築し、国・地方の行政機関が我が国最大のプラットフォームとしての
役割を果たすこと」 によって実現
デジタルツインを前提とした国全体のリエンジニアリング 目指すのは行政機関のDXにとどまらない
諸手続きがデジタルで完結する
だけではなく
デジタルだからこそ可能となるきめ細かい
プッシュ型サービス
日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
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日本のデータ戦略のビジョン(目標)、ミッション(理念)、バリュー(原則)
理念 ① データに対する信頼の確保
 データのサプライチェーンの全体を通じたデータへの信頼の確保
 データ自体の信頼性に加えて、データ提供者、データ利用者の信頼も確保される必要
② データ利活用による社会の公正の確保
 私益との適正なバランス データ囲込みや過度な財産権/プライバシー主張
 公正性確保が実感されることで、より多くのデータの利活用が可能
信頼性と公正性
データを安心して効率的に使える
仕組みを構築
世界から日本のデータや生成・
流通の仕組みへの信頼確保
世界が日本産のデータを
安心して活用
世界が日本にデータを
安心して提供
日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
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日本のデータ戦略のビジョン(目標)、ミッション(理念)、バリュー(原則)
原則 ① 自分で決められる 勝手に使われない(コントローラビリティ・プライバシー)
(例:情報銀行、データポータビリティ、データ保護)
② つながる(相互運用性・重複排除・効率性向上)
(例:データ連携基盤、アノテーションルール整備、API・機械判読性強化、国際標準化)
③ いつでもどこでもすぐに使える(可用性・迅速性・広域性)
(例:行政オープンデータ、ベース・レジストリやカタログサイト)
④ 安心して使える(セキュリティ・真正性・信頼)
(例:ID・データの真正性や関税性の担保、トレーサビリティ、ID連携のトラストフレームワーク)
⑤ みんなで創る(共創・新たな価値の創出・プラットフォーム性)
(例:共同規制、データ取引市場)
日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
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データ戦略のビジョン実現のためには、日本全体で構築するデータ枠組みのアーキテクチャを
社会全体で共有する必要がある
Society5.0のリファレンス・アーキテクチャをベースに構築された、現時点でのデータ戦略のアーキテクチャ
Society5.0リファレンス・アーキテクチャ
セ
キ
ュ
リ
テ
ィ
/
認
証
アセット
データ連携
データ
利活用機能
ビジネス
組織
ルール
戦略・政策
データ戦略のアーキテクチャ
インフラ
データ
(ベース・レジストリ等)
連携基盤
• 連携ツール
• データモデル
利活用環境 • 情報銀行
• データ取引市場
ルール
行政 民間
重点分野
戦略目標:つながることで新たな価値を創出する
医療・教育・防災・農業・インフラ・スマートシティ
• データ標準
• データ品質
トラスト
• ワンストップ
• ワンスオンリー • 標準化
• 共通化
• データ流通
• データ活用
プラットフォームが
提供
デ
ー
タ
環
境
整
備
社
会
実
装
・
業
務
改
革
日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
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データ戦略のビジョン実現のために喫緊で取り組むべきこととして
①トラスト枠組みの整備、②プラットフォームの整備、③データの整備
ルール  データの真正性の確保
 データ流通基盤の信頼性の確保
データのサプライチェーンを通じてこれらが確保されている必要
トラストの要素
① 「誰が」:主体・意思
• ヒトの意思表示の信頼性の担保
• 「本人によるものであること」+「改竄されていない
こと」
② 「何を」:事実・情報
• 情報の発行元の信頼性の担保
• 発行元はヒト以外にも組織や機器などがある
③ 「いつ」:存在・時間
• 特定の時点で、ある情報が存在し、それ以降改
ざんされていないこと
トラストサービス(民間)
① デジタルID
② 自然人:①により確保
組織:法人ID、デジタル委任状
機器:機器ID
③ タイムスタンプ
政策
• 国の関与によりトラストサービスへの
信頼性をどこまで担保するか
• 分野ごとに客観的な基準を整備
• サービスや事業者の基準適合性を
認証
• 信頼性を利用者に情報提供する
仕組み
① トラスト枠組みの整備
日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
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データ戦略のビジョン実現のために喫緊で取り組むべきこととして
①トラスト枠組みの整備、②プラットフォームの整備、③データの整備
ルール
② プラットフォームの整備
連携基盤
分野間データ連携基盤のイメージ
内閣府データ連携基盤サブワーキンググループ
第3回 資料1より抜粋
分野横断で検討すべき共通
項目はなにか?
分野ごとに検討すべき項目
はなにか?
日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 23 ‐
データ戦略のビジョン実現のために喫緊で取り組むべきこととして
①トラスト枠組みの整備、②プラットフォームの整備、③データの整備
ルール
② プラットフォームの整備
連携基盤
分野横断で検討すべき共通項目
 共通アーキテクチャの整備
- スマートシティリファレンスアーキテクチャが存在
 データ連携に必要な共通ルールの整備
- データ提供主体/データの真正性の扱い
• ①トラスト枠組みの整備にて説明済
- データの取扱いに関する契約ひな形
- パーソナルデータの取扱い
- 標準的なデータ交換モデル
- データ品質の考え方の整理
 分野間データ連携基盤に用いるツールの開発
• データカタログ検索、データ交換、データ連携契約機能
• dataex.jpによるポータルサイト運営(API連携を前提にOSS展開)
フレームワーク開発が必要
分野ごとに検討すべき項目
 重点的に取り組む分野
健康、医療、教育、防災、農業、インフラ、スマートシティ
 関係省庁が官民共同の検討の場で検討、デジタル庁発
足までにプラットフォームのあり方を整理
 2025年までの実装を目指す
日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 24 ‐
データ戦略のビジョン実現のために喫緊で取り組むべきこととして
①トラスト枠組みの整備、②プラットフォームの整備、③データの整備
データ
③ データの整備
1 ベースレジストリ整備の推進
 ベースレジストリとはなにか?
 社会活動の基礎となる公的機関に登録されたデータのこと
 具体的に何がベースレジストリに当たるのか決まっていなかった ワンストップの行政サービスを提供しようにも、
「ベース」が定義すらされていなかったため、
実現しなかった
データは有効活用されず EBPMも進まず
まずベースレジストリに当たるものを定めることから始める
 なにをベースレジストリとするか?
<公的分野>
 「人」「法人」「土地」「建物」「資格」をまず対象
 その後対象となるデータの範囲を拡大(「法律」「制度」「公共施設」「インフラ」)
<準公共分野>
 「医療」「教育」につき、官民連携により、分野ごとに様々な手続きにより参照可能な基盤データを整備
<民間>
 産業・社会活動において共有することが有用な基盤データは、社会全体で共有するインセンティブ設計、ガイドライン
作成等によりデータマネジメントのあり方を明確化
ベ
ー
ス
レ
ジ
ス
ト
リ
日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 25 ‐
データ戦略のビジョン実現のために喫緊で取り組むべきこととして
①トラスト枠組みの整備、②プラットフォームの整備、③データの整備
2 カタログサイト/ID・コードの整備
 カタログサイト
 ベースレジストリをはじめとする各種データを見つけやすくするため、一覧化したサイト
 ID・コードの整備
 コード:データを分類
 ID:データ間をつなぐためにデータにIDを附番
3 オープンデータの推進
<現状> オープンデータ基本指針(政府CIOポータル)
- 原則公開、とあるだけで具体的な開示内容、方法が決まっていない
- 機械判読性も徹底されていない
• 公開推奨データの具体化
• 機械判読性原則の強化
4 包括的なデータマネジメントの推進
• データ標準、データ品質管理フレームワーク(IT総合戦略室)のさらなる活用
日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
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データ戦略のビジョン実現のために今後さらに検討されるべき事項を列挙
1 データ利活用の環境整備
 情報銀行、データ取引市場を活用したデータ流通の活性化
<課題> データが提供されない、データ流通量が小さい、データの加工・仲介・分析を行う市場の厚みがない
<打ち手> - データ提供が進まない企業サイドの課題を分析
- データブローカー、加工・分析業者の課題を分析
<所管> IT総合戦略室
<時期> デジタル庁発足まで
 進捗中のアジェンダ
- 大規模デジタルプラットフォームの取引透明化
 本丸のデジタル広告に迫る最終レポートを近日中に公表
- 国・地方の個人情報保護法制と所管の一本化
2 民間保有データの更なる活用
 民間が生成する公益性の高いデータの活用策
<課題> プライバシー保護、収集・加工・蓄積する民間事業者の投資回収
<検討事項>
- 何を「公共性の高いデータ」とするか
- 公益性とデータ提供者の利害の調整方法
- 公共性の高いデータへの公的機関・研究機関によるアクセスに関するルール
<時期> 2021年度内
日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
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データ戦略のビジョン実現のために今後さらに検討されるべき事項を列挙
 民間データ流通を推進するためのデータ取扱ルールの策定
<課題> データの第三者提供が低調
- データ生成・収集・加工・蓄積に関与する多数の者の利害をアラインする方法が開発されていない
- 提供されたデータのコントローラビリティを確保する方法が開発されていない
- データ提供先が信頼できるか不安
<打ち手> 関係省庁でルール作りの議論を開始
<時期> 2021年度中
3 デジタルインフラの整備・拡充
 デジタルインフラ概念の再考
- これまでの通信インフラに加えて、クラウドインフラ、計算インフラ、半導体デバイス、トラストインフラがありうる
- デジタル社会のインフラを再定義し、これを整備するための戦略を構築
 デジタルインフラの持続可能性の向上
- 人口減少下で各分野のデジタルプラットフォームをどの規模で維持するか
- サービス持続性確保のために必要なデータのメンテナンス・品質確保、ツールの開発等
 デジタルインフラの高度化
- beyond 5G、高度な計算資源の開発、クラウドインフラの構築戦略
- 半導体、センサー、アクチュエーターの改良によるエッジ処理能力の強化
 デジタルインフラの安全・安心の確保
- ネットワークセキュリティの確保
- 機器に依存しないネットワークコントロールの仕組みの構築
 インターネットの再構築
 アクセシビリティの向上
日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
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(参考)データ戦略 諸施策のタイムライン
<喫緊に取り組む事項>
<引き続き検討すべきもの>
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本日のトピック
3.民間部門におけるデジタルの競争戦略
(1)ガバナンスイノベーションーアジェンダとその背景
(2)国の統治構造のリ・デザイン
(3)デジタルプラットフォーム規制
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サイバー空間と現実世界(フィジカル空間)が一体化して運用されるサイバー・フィジカル・システム
サイバー空間
蓄積 精製 生成
実データ/生データ データセット 学習済モデル
アルゴリズム
ヘルスケア
利活用サービス
金融
モビリティ
メンテナンス
価値創造と社会課題の解決
医療費増
介護負担
労働力不足
パンデミック
資源枯渇
温暖化
フィジカル空間
モノ(施設)・ヒト・組織
IoT機器、センシング、デジタル化
データ送信
Inclusiveness
(包摂性)
Sustainability
(持続可能性)
Dependability
(高信頼性)
追求する
社会の価値観(ビジョン)
=
Society5.0
ネットワーク化
ガバナンスイノベーション 背景としての新たな社会システム
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付加価値創造のカギとなるサイバー空間と、これがフィジカル空間と融合する社会構造を、
現行の制度が認知・想定して体系(システム)として組み込めていない
Society5.0(ポスト情報社会)の特徴
 超高速・大容量で超低遅延な通信が超多数同時接続するインフラ
 モノとモノ、ヒトとヒト、ヒトとモノが複雑につながるネットワーク
• ヒトには「個人」と「組織」があるため、ネットワークはさらに複雑になる
 モノのデジタル化とヒトやモノの活動のデータ化
 データ化・デジタル化された情報が人間を介在させずに処理される
上記の特徴を実現するための社会全体の見取り図・設計図(アーキテクチャ)はどのようなものか?
ヒト・モノ・組織がフラットなネットワークのもとつながり、ネットワークを流れるデータのインテリジェントな機械により
社会のルーティンが自動処理されていくなかで、ヒトと組織は協力しながら創造的な活動に従事することで、
社会を維持しつつ、よりよい社会に発展させていく
 設計図がなければ、データをつなげることができない
 設計図がなければ、ヒトや組織の分業・協業は実現しない
 設計図がなければ、社会の安心・安全(privacy/security/fairness)は確保されない
結論:社会の仕組み(ガバナンス)の再設計が必要
ガバナンスイノベーション 背景となる問題意識
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Society5.0のビジョンを実現するため、日本社会のあらゆるレイヤーで再設計(リ・デザイン)
のための課題設定と政策的なアプローチが始まっている
技術・社会規範
制度・ルール
ビジネス
個人
AI, IoT, クラウド、ビッグデータ分析 etc.
• ガバナンスイノベーション(ガバナンスイノベーション報告書)
• 行政デジタルトランスフォーメーション(デジタル庁)
• 民間デジタルトランスフォーメーション
(デジタルガバナンスコード、DX銘柄選定 etc)
• 人材戦略(人材版伊藤レポート)
• 教育(GIGAスクール構想)
<現在の日本のデジタル政策の立ち位置>
- AIによる判断・制御の自動化やビジネスへの応用のためには、まずビジネスプロセスのデジタル化を進める必要がある
‐ デジタル化は一連のプロセスにわたるものである必要があり、途中にアナログが入ってしまうとこれがボトルネックになり、
効率化の実が上がらないためデジタル投資に至らない
 プロセスを止めるボトルネックが「紙」、紙が求められるのは正規の情報保存のためであり、正規性を確保するために押印を要求
 しかし、押印はもはや正規性を確保しておらず、単に惰性による形式と化している
• デジタル庁の創設による行政デジタルトランスフォーメーションの体制が整う2021年9月以降までに、
書面と押印が法律要件となっている民間から行政への手続きの書面・押印要件をほぼ撤廃
• 法令改正が不要なものはできるものから即時に見直し
ガバナンスイノベーション ビジョン実現のために必要なアーキテクチャの再設計
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法規制、社会規範、市場規律、ソフトウェア(コード)を組み合わせ、政府、非政府機関、事業者、利用者が協調して
テクノロジーを社会の発展にプラスに生かしていくホリスティックな枠組みをデザインしていくことが目標
事業者
規約/アーキテク
チャによる規律
市場原理による
規律
政府
法規制に
よる規律
非政府機関
倫理規範や
ガイドラインに
よる規律
レピュテーション/一般規
範への転換(不法行為
/善管注意義務)
信
認
事業者
提供者 利用者
法規制 規範
規約/アーキテクチャ
権利義務/責任を配分
政府 非政府機関
法規制と規範、市場規律、事業者規
約とコードにより全体として究極目的を
達成するためのデザインを立案
法・コード・規範を
組み合わせて利用
デジタルガバメントの
設計
政府の役割は、各プレイヤーが期待される機能を果たすことに
よって規範、事業者規約とコード、市場規律が適切に機能す
るようなSystem of Systemsをデザインすること
制度は法規制のみによって成り立っているものではない。
4つの規律の組み合わせを理解する必要
ガバナンスイノベーション そのメカニズム
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規模の大きなデジタルプラットフォーマーに対し、複数の規制分野のルールを組み合わせることで
個人データ保護、公正競争の確保、今後の事業展開に対するモニタリングを課す法整備を実施
デジタルプラットフォーマー(Google, Apple, Facebook, Amazonなど)
①ネットワーク効果により寡占・独占に陥りやすく、②囲い込み効果が大きい
消費者
②個人情報保護法の見直し
利用停止等の請求権範囲の拡大等
2020年6月5日成立
④消費者に対する優越的地位
の濫用への対応(独禁法)
2019年12月17日ガイドライン策定
企業買収を通じたデータ独占等による競争制限のおそれ
③企業結合審査にデータの価値評価を踏まえる対応
2019年12月17日企業お結合審査ガイドライン改訂
取引先事業者
①デジタルプラットフォーム取引透明化法
取引条件等の開示、自主的な体制整備
運営状況の報告とモニタリングレビュー(共同規制)
対象:ECモール、アプリストア
2020年5月27日成立
⑤デジタル広告市場の競争状況の評価
寡占化、プライバシー懸念、透明性、データ利活用、垂直統合
手続等の公正性
2020年6月16日中間とりまとめ
デジタルプラットフォーム規制 デジタル市場のルール整備
Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 35 ‐
特定デジタルプラットフォーム取引透明化法は、ガバナンスイノベーション報告書の示唆を受け、
マルチステークホルダーによる共同規制アプローチを法制に組み込み
特定デジタルプラットフォーマーの役割
取引条件等の情報開示 自主的な手続・体制整備
利用者に対する取引条件開示、
変更等の事前通知による
透明性の向上
指針に基づく必要な措置をとり、
公正な手続・体制を整備する
• 取引条件の内容及び理由
• 他のサービスの利用を要請する
場合、その内容と理由
• データの利用範囲
• 出品の拒否・停止の理由
• 検索順位を決する基本的事項
• 必要な措置に関する基本的事項
• 取引の公正さを確保するための手
続・プロセスの整備
• 取引先事業者に適切な対応をする
ための態勢整備
• 国内管理人等の設置
行政の役割
レビューの実施
特定デジタルプラットフォームの運営状
況につき、取引先事業者や消費者、学
識経験者等も関与してレビューを行い、
結果を公表
所管省庁:経産省
運営状況の報告
評価結果を踏まえた自主
的な改善
指針案につきパブコメ中
流通総額国内売上高3000億円+の
ECプラットフォーム
流通総額国内売上高2000億円+の
アプリストア
特定デジタルプラットフォーム取引透明化法
Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 36 ‐
デジタル市場競争会議は、デジタルプラットフォームはSociety5.0時代における重要なビジネスモデルと
して、イノベーションによりデジタル化のメリットを最大限享受できるよう競争環境のあり方を提言
デジタル市場をめぐる現状分析と将来のリスク
 強み: ネットワーク効果で利用者をロックイン。顧客接点を生かしてデータ収集し、AI等で分析し、顧客に新たな価値を
提供
 今後の動き
 顧客接点の拡張・深化(身体の近くへ、意思決定の近くへ)
 フィジカル空間への進出(モビリティ、ヘルスケア、金融etc)
 上流への進出(仲介だけではなく、自社製品・サービスを販売)
 将来のリスク
 勝者総取りによる競争の制限
 個人の判断がコントロールされる懸念
 データの信頼性の欠如による産業へのネガティブな影響
 IoT進展に対応できないデータ処理とコスト
日本が目指すべき方向性
 理念: デジタル市場でのダイナミックな競争を通じたイノベーション創発により、Society5.0の実現を加速し、より良い
世界を実現する
 デジタル市場が目指す姿
 「一握りの巨大企業への依存」でも「監視社会」でもない、第三の道の模索
‐ 多様な主体による競争
‐ トラストの基盤となる「データ・ガバナンス」の確保
‐ トラストをベースとしたデジタル市場の実現
短期と中長期の時間軸で、ビジネス環境、ルール、テクノロジー
等の視点から変化に柔軟に対応しつつ3つの施策を講ずる
デジタル市場会議(デジタル市場競争に関する中期展望レポート、2020.7.8)
Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 37 ‐
デジタルプラットフォームの寡占状況の固定化を回避するため、競争相手となりうるデジタル事業者の
創出、市場変化に対応できる柔軟なルール整備、インターネットの再構築の3つの施策を掲げる
デジタル市場での多様なプレイヤーを創出するためのDXの促進(短期)
 現状分析:危機感の共有がなされていない、企業文化改革の遅れ、両利きの経営を展開するマネジメントが未達、人材
戦略が未達など、さまざまなボトルネックがある
 対応策: コロナを契機に日本企業のDXを一気に加速させる
 経営改革支援:DX推進指標等のツールの開発、活用促進、ベストプラクティスの共有、スタートアップの
連携促進等
 障害となる規制の改革:サンドボックス制度、デジタル推進のため書面・対面手続きの見直し
 行政のDX
市場変化に柔軟に対応できる法令(独禁法、透明化法)の執行体制とルール整備(短中期)
 デジタル市場に対応したルール執行体制の整備
‐ 公取委における専門人材登用、外部連携等による端緒機能の強化、審査体制の強化
‐ 経産省における透明化法の執行体制整備、共同規制の詳細設計
 アルゴリズム処理により取引がブラックボックスとなる傾向に対して、公正性を外部から検証する仕組みなどの開発
 メガプラットフォームによる他市場進出による寡占化リスク等への対応に対する方策の検討
デジタル市場会議(デジタル市場競争に関する中期展望レポート、2020.7.8)
Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 38 ‐
デジタルプラットフォームの寡占状況の固定化を回避するため、競争相手となりうるデジタル事業者の
創出、市場変化に対応できる柔軟なルール整備、インターネットの再構築の3つの施策を掲げる
データガバナンスのあり方をテクノロジーで変革するTrusted Web構想(中長期)
 Trusted Web: データへのアクセスのコントロールを、データ主体自身が行い、データの活用から生じる価値をマネジでき
る仕組み
 インターネット構造に「データ・ガバナンス」レイヤーを付加することで、データ社会における「信頼」を再構築する
 理念に共感する国内外のコミュニティと協調し、ユースケースを通じて人材を引き付け、技術とビジネスをリード
デジタル市場競争に係る中期展望レポートより抜粋
デジタル市場会議(デジタル市場競争に関する中期展望レポート、2020.7.8)
Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 39 ‐
総務省では、電気通信事業者に対する通信の秘密保護とプラットフォームサービスのフェイクニュース
対策の側面から、デジタルプラットフォームに対するルール整備を図っている。
テレコミュニケーション規制との関係(プラットフォームサービスに関する研究会)
1.利用者情報の適切な取扱いの確保
 国外にのみ電気通信設備を設置する事業者でも、国内にある者に電気通信役務を提供する場合には、電気通信事
業法を適用
 国内代表者を定めて登録・届出を義務化(2020.5.22 改正電気通信事業法)
 通信の秘密保護の規定、電気通信事業者における個人情報保護ガイドラインが国外のデジタルプラットフォーム事
業者にも適用される
 業務改善命令の発動基準に関する指針を設定(2020.12.5 パブコメ開始)
 通信の秘密に関する同意取得のあり方に関する参照文書公表(同)
2.フェイクニュース対策
 インターネット上の誹謗中傷に対する政策パッケージを公表(2020.9.1)
 ユーザの情報モラル・ICTリテラシー向上のための啓発活動
 プラットフォーム事業者の自主的取組みの支援と透明性・アカウンタビリティ向上
 発信者情報開示の在り方に関する研究会「最終とりまとめ」(2020.12.22)
 相談対応の充実に向けた連携と体制整備
2021年6月に中間とりまとめを予定
Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 40 ‐
グリーン戦略とデジタル戦略の掛け算のなかに、自社の長期戦略を位置付けていくことが必須に
まとめ
 2030年の次世代通信ネットワーク(6G, beyond 5G)のスタートに向けて、2025年までに自社をAI・デジタル社会
Readinessな状態に持っていくことがまず達成しなければならない目標
5G
高速・大容量 低遅延 多数同時接続
超高速・大容量 超低遅延 超多数同時接続
5Gの10x5Gの1/10
アクセス通信速度
5Gの10x
コア通信速度
現在の100x
超低消費電力
現在の1/100
無対策だとIT関連消費電
力が現在の36倍になってし
まう
自律性
機器が自律的に連携
無線・有線を超えた最適な
ネットワークの構築
拡張性
衛星・HAPSとのシームレスな接続
端末・窓などを基地局化
端末の相互接続
超低消費電力
セキュリティの常時確保
災害や障害からの
即時復旧
Beyond5G(6G)
 第二次産業革命を経てアメリカが不動の経済大国としての地位を謳歌
する要因となった技術応用は、組織・働き方のイノベーションが決め手
 デジタルの価値はend to endなデジタル化を実現しないと発揮されな
い点で、米国が成し遂げた工場の電化プロセス実現によるイノベーション
に似ている。
 プロセス全体のデジタル化を実現した先に、リスクベースでのAI導入戦
略が来る
 リスクベースフレームワークに従ったAI導入のプロセスを全社的に回せるよ
うになるところまで、2025年までにもっていかなければならない
“人間がやらなくてよい単純作業をなくして
重要な仕事にフォーカスできる”という
価値訴求の罠
 製造業、エッジに強みを持つ日本が国内に産業を残してデータを競争力
の源泉としていくためには、同時に2050年カーボンニュートラル実現のた
めの技術開発と投資が必要に
 インクリメンタルなクローズ技術開発と、デジタル領域に重要なオープン技術開発の双方を組み合わせた開発体制の確立
 オープン型の技術開発の実現のための新たな知財戦略の確立、そのための組織と人材の革新が不可欠に
-内閣府 知的財産戦略推進事務局「知的財産推進計画2021に向けた検討課題」(2020.12.21)
-同「標準の戦略的活用尾に向けた取組」(2020.12.21)
 自社の事業成長を国家戦略目標とアラインするよう、自社の長期戦略を打ち立て、政府の個別政策に働きかける
政府エンゲージメント戦略の高度化
Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 41 ‐
JOIN IN OUR FUTURE!
弁護士 増 島 雅 和
森・濱田松本法律事務所
tel. 03.5220.1812
email. masakazu.masujima@mhm-global.com
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Digital regulatory reform update in japan

  • 1. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 0 ‐ 激動!日本のデジタル規制改革の最新動向 ©2021 Mori Hamada & Matsumoto all rights reserved 森・濱田松本法律事務所 パートナー 増 島 雅 和 January 14, 2021
  • 2. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 1 ‐ 増 島 雅 和(ますじま まさかず) 2001 弁護士登録 2006 米国ウィルソン・ソンシーニ法律事務所(シリコンバレーオフィス) 2007 ニューヨーク州弁護士登録 2010 金融庁監督局保険課(銀行第一課兼務) 日経CSISバーチャルシンクタンク・フェロー 金融と知財の力で我が国産業構造のイノベーションを加速する“Startup Innovators”主宰(http://startupinnovators.jp/) 2013 経済産業省 新事業創出支援関係者会議 委員 2015 IMF外部カウンセル(米国FSAP:金融破綻処理法制担当) 日本ベンチャーキャピタル協会顧問、日本フィンテック協会顧問、日本ブロックチェーン協会顧問、暗号資産ビジネス協会アドバイザー 2016 内閣官房ベンチャー・チャレンジ2020 アドバイザリーボードメンバー 内閣官房IT総合戦略本部 シェアリングエコノミー検討会合 委員 2017 経済産業省 研究開発型ベンチャー企業と事業会社の連携加速に向けた調査検討会 委員 森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 2018 内閣府 革新的事業活動評価委員会 委員 特許庁 知的財産国際権利化戦略推進事業有識者委員会 委員 2019 総務省 AIインクルージョン推進会議 委員 経済産業省 Society5.0における新たなガバナンスモデル検討会 委員 内閣官房 デジタル市場競争会議WG委員 特許庁 オープンイノベーションを促進するための支援人材育成及び契約ガイドライン研究会 委員 内閣府 規制改革推進会議 専門委員 2020 内閣官房 ブロックチェーン官民推進会合 委員 内閣官房 Trusted Web協議会 委員 デジタル通貨研究会 委員 オンライン名刺交換用QRコード
  • 3. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 2 ‐ 2
  • 4. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 3 ‐ 3 激動の時代、パラダイムを変える日本のビジネス法を武器とした新しいビジネスの戦い方を、 日本最大の法律事務所のトップパートナー陣が指南! 12月15日発売 1,800円(税抜) • サステナビリティ、人権、ソフトロー(澤口実) • ソサイエティ5.0時代のガバナンスの仕組みと日本の大戦略(増島雅和) • ソフトローを中心に代わり続けるコーポレート・ガバナンスのルール(石井裕介) • M&Aの新展開(石綿学) • 金融の世界の枠組みが変わる、サステナブルファイナンス・ESG投資と超高齢化社会に おける金融サービス(佐藤正謙) • リスクマネーの供給に向けた資本市場の動き(鈴木克昌) • 第四次産業革命とルール作りで存在感を示し始めるアジア(小松岳志) • 雇用の柔軟化と進む雇用オペレーションシステムのアップデート(荒井太一) • データやプラットフォームをめぐる新しいルールと今後の動向(岡田淳) • フィンテックをめぐるルール(堀天子) • ヘルスケア分野のイノベーションと規制(浦岡洋) ルール・チェンジ 武器としてのビジネス法 森・濱田松本法律事務所 編
  • 5. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 4 ‐ 本日のトピック 1.菅政権におけるデジタルの位置づけ 2.セミナーの告知後年末にかけて明らかになった政府のデジタル戦略 (1)デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針 (2)データ戦略 3.民間部門におけるデジタルの競争戦略 (1)ガバナンスイノベーションーアジェンダとその背景 (2)国の統治構造のリ・デザイン (3)デジタルプラットフォーム規制 4. まとめ
  • 6. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 5 ‐ 学習達成度とネクストステップ 120 100 75 40 世界のデジタル・データ戦略をより深く知りたい 日本のデジタル・データ戦略を深く理解することができた デジタル化とルール、ガバナンスの話のつながりがまだ十分 理解できていない 抽象的な話ではなく具体例を知りたい 20 大所高所の話よりも、わが社のデジタルトランスフォーメーション はどうやればよいかを知りたい EU、シンガポールの政策ペーパーを研究することをおすすめ します。 日本政府がこのように動くことを踏まえ、自社が先回りして 展開するべき戦略、経営リソースの投下戦略をぜひ検討し てみてください。 ガバナンス・イノベーションの第二弾レポートが近々公表され ますので、アーキテクチャに対する学習を深めてみてください。 デジタル文脈で自社トピックにあったセミナーも随時承ってい ますので、お気軽にお声掛けください。 政策起点でのデジタルトランスフォーメーション戦略のコンサ ルティングも承っておりますので、お気軽にお声掛けください。 NEXT STEP
  • 7. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 6 ‐ 8つのトピックとデジタル戦略との関係 1.新型コロナウィルス対策と経済の両立 3.グリーン社会の実現 4.活力ある地方の創造 5.新たな人の流れの創造 6.安心の社会保障 7.復興・災害対策 2.デジタル社会の実現とサプライチェーン -コロナにより行政・民間のデジタル化の遅れが浮き彫りに -デジタル規制改革によるウィズコロナ・ポストコロナの新しい社会を創る ① デジタルガバメントの推進(行政手続きのワンストップ化) ② ウィズコロナ・ポストコロナ時代の働き方改革(テレワーク推進による地域格 差解消) ③ 医療・教育の地域格差の解消 -推進のための個別施策 ① 行政のデジタル化(5年以内) ② デジタルID・マイナンバーカードの普及(2年半以内) ③ デジタル庁の設立(2021.9) ④ デジタル教育 ⑤ 新しい働き方の支援(テレワーク/ワーケーション) -書面、押印の廃止 ⑥ サプライチェーン強靭化 8.外交・安全保障 自由で公正な経済圏の拡大、多角的自由貿易体制を維持・強化 イ ネ ー ブ ラ ー と し て の デ ジ タ ル と ル ー ル 形 成 菅内閣総理大臣による所信表明演説(2020.10.26)
  • 8. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 7 ‐ デジタル(ソフトウェア)はルールによらずに間接的に人の行動を制約する 中央省庁 下位部局 市民 通 達 ・ 監 督 指 針 国・地方 市民 ルール(自然言語によるコード) 行 政 執 行 機械 国 地方 基盤提供コード ソ フ ト ウ ェ ア 実 装 自 動 化 市民  フィジカルなインフラのもとでも人々の行動は規制によらずに制約されてきた(フェンス、橋のかけ方、高速道路の設置場所)  デジタルツインのもとサイバー空間にも同様に空間アーキテクチャによる制約がある(承諾ボタンを押さないと先に進めない) デジタルとルールの関係 デジタル化とは、法律によらない社会の作り変えを意味し、既得権益の打破という意味で規制改革と同じものを目指している
  • 9. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 8 ‐ 置換技術は社会から拒絶され、補完技術は社会に受容される 技術の2つの側面:置換技術と補完技術 欧州中世時代の技術革新  支配層は土地を中心とした資産から収益を獲得  支配層は支配の維持を重視し、技術革新による成長を求めるインセンティブがなかった  新興勢力による新しい発明による技術革新は、雇用を奪い社会を不安定化するものとして支配層により禁止 - イノベーターの取るリスクが高すぎる社会規範が敷かれ、技術革新の担い手がいなかった 欧州産業革命前後の技術革新(蒸気と工場制の革命)  多くの国では、ギルドや職能工が、機械を導入した工場に押し入って機械を打ち壊し - 支配層もこれを止めなかった  17世紀末以降のイギリスでは支配層の入れ替えと重商主義的政策により、機械の導入をサポートする政策へ転換 - テクノロジー失業と児童労働、貧富の差の急速な拡大など社会のひずみ(-1830年代) - その後に実質賃金の向上、食糧生産性の向上による生活改善(1840年代以降-) 米国による技術革新(電力と工作機器・大量生産の革命)  1880年代の電力の産業化以降、1909年までに工場の電力化を推進(工場レイアウト革命の裏方としての動力革命)  モジュール化を可能とする工作機械と大量生産技術により、機械は家電技術として展開  補完技術としての特性から、抵抗を受けずに急速に拡大 - 技術者の能力を拡張する工作機械 - 主婦を家事労働から解放する家電 技術がシステムとして根付いたことによる スピルオーバーの発生 デジタル技術を、雇用を脅かし格差を拡大する置換技術としてではなく、社会課題を解決するイネーブラー(補完技術) と位置づけ、ルール(法)とデジタル(技術)の両輪のアップデートをすべて「すべての人の幸福な社会の実現」に資することに つなげるのが、菅政権が打ち出した我が国のデジタル規制改革の神髄
  • 10. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 9 ‐ 本日のトピック 2.セミナーの告知後年末にかけて明らかになった政府のデジタル戦略 (1)デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針 (2)データ戦略
  • 11. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 10 ‐ 基本方針は、IT基本法の大改訂とデジタル庁の設置を柱に据える デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(2020.12.25)①IT基本法 現状 コロナ 機能不全が発覚 ・行政デジタル化の遅れを取り戻す ・データ利活用による行政サービスの質の向上 ウィズコロナ・ポストコロナの新たな日常 を構想する必要性 ・デジタルを用いて社会の課題を解決する ・デジタルによる経済成長 IT基本法の全面的な見直し デジタル庁の設置 多様な国民がニーズに合ったサービスを選択でき、国民一人ひとりの幸福に資する「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化」 <目指すビジョン> <ビジョン実現の方法> デジタル技術の善用により、データを狡猾的に活用した多様な価値・サービスを創出する 社会課題の解決 (国内安定) 持続的かつ健全な発展 (経済成長) 国際競争力の強化 (経済安全保障) <実現する価値>
  • 12. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 11 ‐ <5つの取組事項> ネットワークの整備・維持・充実 • 高度情報通信ネットワークの整備 • IoTを想定した整備 • 災害発生時の利用を念頭に置いた整備 • 国際的な通信インフラの多様化状況に着目 データ戦略の観点からは「インフラ」を ネットワークのみでなくより広く定義す る必要があるのではないか? データ流通環境の整備 • データ標準化 • データ連携基盤の整備 • APIの整備・公開 データ標準や品質を整備し、トラストを確保する 政府のデジタルプラットフォーム化 行政・準公共分野における サービスの質の向上 • マイナンバー関連制度のUI/UXの向上 • 国・地方公共団体が保有するデータのオープン化の推進 • 基幹データベース(ベース・レジストリ)の整備 人材の育成、 教育・学習の振興 • デジタル人材の育成 • デジタルリテラシの教育・学習 デジタル環境の安全性 • サイバーセキュリティの確保 • パーソナルデータの保護対策 • 信頼性のある情報の自由かつ安全な流通(DFFT)の確保 • 災害時も機能する強靭なネットワークの確保 デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(2020.12.25) ①IT基本法
  • 13. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 12 ‐ <官民の枠割分担に関する原則> デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(2020.12.25)①IT基本法  デジタル社会の創造は民間主導、官は環境整備を図る役割を担う  行政サービスについても、民間企業に知見があるものは民間の知見を積極的に活用(UIなど)  コラボレーション・アプローチ(オープンイノベーション)  国が地方公共団体が共通して用いることができる基盤を全国的に統一して整備、 地方公共団体はこれらを活用して地方の実情に応じた施策を講ずる 政府のデータ連携基盤への民間 サービスのAPI連携を通じたサービス 提供国、地方公共団体、事業者の連携と協力 <国際協調>  信頼性のある情報の自由かつ安全の流通の確保(DFFT)のため、日本がグローバルなサイバー空間のガバナンスを先導 デジタルプラットフォーム規制 Trusted Web構想 デジタル取引基盤の整備 <重点計画の策定>  デジタル社会の形成のために重点計画を定め、具体的な施策と達成時期を明記 民間投資への予見可能性と財政的な支援を通じ、民間主導のデジタル社会の創出を支援  グローバルなルールの形成を主導することで、民間事業のスケール化、グローバル展開を支援  デジタル社会における日本のソフトパワーの強化
  • 14. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 13 ‐ DFFTは、デジタル時代におけるデータ流通のあり方について日本政府が世界に向けて提言した Society5.0のグローバル展開のための戦略的イニシアチブ  Data Free Flow with Trust(信頼性ある自由なデータ流通)は、2019年1月にダボス会議で 安倍前首相により提唱され、6月に大阪で開催されたG20首脳会議から、グローバルなデータガバナンスの 先駆けとして紹介されたコンセプト ‐ Data Free Flow:自由で開かれたデータ流通 ‐ with Trust:データの安心・安全を実現  プライバシーやセキュリティ、知的財産の安全を確保したうえで、「データは自由な流通を確保される必要がある」 という原則的な考え方を示すことで、データに対する基本的な規範を各国で共有することを狙ったもの ‐ 特定の主体によるデータの囲い込みを否定 ✖ 国家によるデータ支配を否定(立憲民主主義と相容れない) ✖ 超国家的大企業によるデータ支配を否定(公正な競争が確保されない) △ 人権保障のナラティブによって地域によるデータ支配の優位性を確保 「法の支配という価値観を共有する信頼できる事業者が、データの取扱いに関する共通ルールを遵守することで、人々 からの信頼のもとで資本主義社会における健全な競争を通じてサービスを切磋琢磨し、データやプライバシーの安全が 高い水準で確保された高付加価値社会を築く」という理念に基づくもの (参考)DFFTについて
  • 15. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 14 ‐ デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(2020.12.25)②デジタル庁の基本設計 デジタル庁は、デジタル社会の形成に関する首相直属の司令塔として、強力な総合調整機能と地方からのリ モートワークなど柔軟な運営体制を持ち、地方職員との連携対話を重視する、500人体制の組織 企画立案と各省庁や地方公共団体の統括・監理のみでなく、重要な設備は自ら整備する実行官庁としての役割を果たす 国の情報システムの統括  国の情報システムを3区分に分類しなおし - デジタル庁システム - デジタル庁・各府省庁共同プロジェクト型システム - 各府省庁システム 事業の統括・監理、標準化・統一化により相互連携を確保 地方共通のデジタル基盤  総務省と連携して ①地方公共団体の情報誌市うテムの標準化・共通化に関する企画と総合調整を実施 ②政府全体の方針の策定と推進 ③補助金が交付されるシステムについての統括・監理 住民税、住民基本台帳まわりのシステムへのアクセスを狙う マイナンバー制度  マイナンバー制度全般(マイナンバー、マイナンバーカード、公的個人認証)の企画立案を一元的に行う  総務省と連携して、2022年中に全国民マイナンバーカードがいきわたることを目標に加速策を講ずる  マイナンバー関連業務の体制の抜本強化のため、地方公共団体システム機構(J-LIS)の改革  行政手続きをend to endでオンラインで行う  蓄積・分析したデータを活用してプッシュ型の行政サービスを提供
  • 16. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 15 ‐ デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(2020.12.25)②デジタル庁の基本設計 データ利活用  関係法所管府省と共管してデータのトラスト確保のための枠組みを整備 - 法人・個人を一意に特定・識別するID制度 - 電子署名、商業登記電子証明書の情報と発信者の真正性を保証する制度  制度所管府省、地方公共団体とベース・レジストリとして整備する情報の明確化と整備 サイバーセキュリティ  情報システムの整備・管理の基本的な方針にて、サイバーセキュリティに関する基本的な方針を提示  セキュリティ専門チームを設置し、デジタル庁が整備・運用するシステムの検証・監査を実施  体制強化したNISCが国の行政機関等のシステムに関するセキュリティ監査を実施 民間・準公共部門の デジタル化支援  国・地方・事業者のデジタル化に向けた役割の規定  重点計画を策定し、具体的な政策と達成時期等を明記 <民間部門のデジタル化支援> <準公共部門のデジタル化支援> 企業の生産性・付加価値の向上を支援 重複投資の排除・成長の加速化  準公共部門:医療、教育、防災など正確に密接に関連していることにより国民の期待の大きい分野  デジタル庁が、情報システムに関する整備方針を関係不調と共同で策定・推進 行政手続きのワンスオンリー化を実現
  • 17. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 16 ‐ デジタル社会ではデータが国際競争力の基盤であるとして、世界の主要国は、 ここ1-2年で包括的・具体的なデータ戦略を策定 EU:European Data Strategy 2020.2  データアクセスと利用のため分野横断的ガ バナンス枠組み  データへの投資・インフラの強化  個人のエンパワー、スキル・中小企業への 投資  戦略的分野と公益領域に関わる欧州共 通データ空間の構築 UK:National Data Strategy 2020.12  経済全体でのデータ価値の解放  成長志向かつ信頼性あるデータ法制  政府によるデータ利活用のトランスフォー メーション  データ基盤のセキュリティ・強靭性の確保  国際的なデータ流通の擁護 US:Federal Data Strategy 2019.6 [Mission] 倫理的ガバナンス、意識的デザイン、学習文 化の実践を通じて連邦データの価値をフル活 用する [基本原則]  データ重視の文化形成と公共利用の促進  データのガバナンス、管理、保護  データ利用の効率性促進と適切性確保 2030年頃までにデジタル社会の総合的基盤を構築することを期している データ ルール アーキテクチャ <共通してみられる要素> 国民IDなど社会の基本情報となるベース・レジストリの整備 トラスト、プライバシー、セキュリティを確保するための規律の整備 データ連携の基盤となるアーキテクチャの整備 日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
  • 18. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 17 ‐ 日本のデータ戦略のビジョン(目標)、ミッション(理念)、バリュー(原則) ビジョン サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、新たな価値を創出する 人間中心の社会を創造する デジタルツイン 経済発展と社会的課題の解決の両立 = Society5.0のビジョンと同じ! データ利活用の視点からは、 「自由なデータの流通と活用と、データの信頼性・安全性のバランスが取れた社会を創造すること」といえる HOW? 「サイバー空間上に国家・社会を再構築し、国・地方の行政機関が我が国最大のプラットフォームとしての 役割を果たすこと」 によって実現 デジタルツインを前提とした国全体のリエンジニアリング 目指すのは行政機関のDXにとどまらない 諸手続きがデジタルで完結する だけではなく デジタルだからこそ可能となるきめ細かい プッシュ型サービス 日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
  • 19. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 18 ‐ 日本のデータ戦略のビジョン(目標)、ミッション(理念)、バリュー(原則) 理念 ① データに対する信頼の確保  データのサプライチェーンの全体を通じたデータへの信頼の確保  データ自体の信頼性に加えて、データ提供者、データ利用者の信頼も確保される必要 ② データ利活用による社会の公正の確保  私益との適正なバランス データ囲込みや過度な財産権/プライバシー主張  公正性確保が実感されることで、より多くのデータの利活用が可能 信頼性と公正性 データを安心して効率的に使える 仕組みを構築 世界から日本のデータや生成・ 流通の仕組みへの信頼確保 世界が日本産のデータを 安心して活用 世界が日本にデータを 安心して提供 日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
  • 20. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 19 ‐ 日本のデータ戦略のビジョン(目標)、ミッション(理念)、バリュー(原則) 原則 ① 自分で決められる 勝手に使われない(コントローラビリティ・プライバシー) (例:情報銀行、データポータビリティ、データ保護) ② つながる(相互運用性・重複排除・効率性向上) (例:データ連携基盤、アノテーションルール整備、API・機械判読性強化、国際標準化) ③ いつでもどこでもすぐに使える(可用性・迅速性・広域性) (例:行政オープンデータ、ベース・レジストリやカタログサイト) ④ 安心して使える(セキュリティ・真正性・信頼) (例:ID・データの真正性や関税性の担保、トレーサビリティ、ID連携のトラストフレームワーク) ⑤ みんなで創る(共創・新たな価値の創出・プラットフォーム性) (例:共同規制、データ取引市場) 日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
  • 21. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 20 ‐ データ戦略のビジョン実現のためには、日本全体で構築するデータ枠組みのアーキテクチャを 社会全体で共有する必要がある Society5.0のリファレンス・アーキテクチャをベースに構築された、現時点でのデータ戦略のアーキテクチャ Society5.0リファレンス・アーキテクチャ セ キ ュ リ テ ィ / 認 証 アセット データ連携 データ 利活用機能 ビジネス 組織 ルール 戦略・政策 データ戦略のアーキテクチャ インフラ データ (ベース・レジストリ等) 連携基盤 • 連携ツール • データモデル 利活用環境 • 情報銀行 • データ取引市場 ルール 行政 民間 重点分野 戦略目標:つながることで新たな価値を創出する 医療・教育・防災・農業・インフラ・スマートシティ • データ標準 • データ品質 トラスト • ワンストップ • ワンスオンリー • 標準化 • 共通化 • データ流通 • データ活用 プラットフォームが 提供 デ ー タ 環 境 整 備 社 会 実 装 ・ 業 務 改 革 日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
  • 22. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 21 ‐ データ戦略のビジョン実現のために喫緊で取り組むべきこととして ①トラスト枠組みの整備、②プラットフォームの整備、③データの整備 ルール  データの真正性の確保  データ流通基盤の信頼性の確保 データのサプライチェーンを通じてこれらが確保されている必要 トラストの要素 ① 「誰が」:主体・意思 • ヒトの意思表示の信頼性の担保 • 「本人によるものであること」+「改竄されていない こと」 ② 「何を」:事実・情報 • 情報の発行元の信頼性の担保 • 発行元はヒト以外にも組織や機器などがある ③ 「いつ」:存在・時間 • 特定の時点で、ある情報が存在し、それ以降改 ざんされていないこと トラストサービス(民間) ① デジタルID ② 自然人:①により確保 組織:法人ID、デジタル委任状 機器:機器ID ③ タイムスタンプ 政策 • 国の関与によりトラストサービスへの 信頼性をどこまで担保するか • 分野ごとに客観的な基準を整備 • サービスや事業者の基準適合性を 認証 • 信頼性を利用者に情報提供する 仕組み ① トラスト枠組みの整備 日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
  • 23. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 22 ‐ データ戦略のビジョン実現のために喫緊で取り組むべきこととして ①トラスト枠組みの整備、②プラットフォームの整備、③データの整備 ルール ② プラットフォームの整備 連携基盤 分野間データ連携基盤のイメージ 内閣府データ連携基盤サブワーキンググループ 第3回 資料1より抜粋 分野横断で検討すべき共通 項目はなにか? 分野ごとに検討すべき項目 はなにか? 日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
  • 24. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 23 ‐ データ戦略のビジョン実現のために喫緊で取り組むべきこととして ①トラスト枠組みの整備、②プラットフォームの整備、③データの整備 ルール ② プラットフォームの整備 連携基盤 分野横断で検討すべき共通項目  共通アーキテクチャの整備 - スマートシティリファレンスアーキテクチャが存在  データ連携に必要な共通ルールの整備 - データ提供主体/データの真正性の扱い • ①トラスト枠組みの整備にて説明済 - データの取扱いに関する契約ひな形 - パーソナルデータの取扱い - 標準的なデータ交換モデル - データ品質の考え方の整理  分野間データ連携基盤に用いるツールの開発 • データカタログ検索、データ交換、データ連携契約機能 • dataex.jpによるポータルサイト運営(API連携を前提にOSS展開) フレームワーク開発が必要 分野ごとに検討すべき項目  重点的に取り組む分野 健康、医療、教育、防災、農業、インフラ、スマートシティ  関係省庁が官民共同の検討の場で検討、デジタル庁発 足までにプラットフォームのあり方を整理  2025年までの実装を目指す 日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
  • 25. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 24 ‐ データ戦略のビジョン実現のために喫緊で取り組むべきこととして ①トラスト枠組みの整備、②プラットフォームの整備、③データの整備 データ ③ データの整備 1 ベースレジストリ整備の推進  ベースレジストリとはなにか?  社会活動の基礎となる公的機関に登録されたデータのこと  具体的に何がベースレジストリに当たるのか決まっていなかった ワンストップの行政サービスを提供しようにも、 「ベース」が定義すらされていなかったため、 実現しなかった データは有効活用されず EBPMも進まず まずベースレジストリに当たるものを定めることから始める  なにをベースレジストリとするか? <公的分野>  「人」「法人」「土地」「建物」「資格」をまず対象  その後対象となるデータの範囲を拡大(「法律」「制度」「公共施設」「インフラ」) <準公共分野>  「医療」「教育」につき、官民連携により、分野ごとに様々な手続きにより参照可能な基盤データを整備 <民間>  産業・社会活動において共有することが有用な基盤データは、社会全体で共有するインセンティブ設計、ガイドライン 作成等によりデータマネジメントのあり方を明確化 ベ ー ス レ ジ ス ト リ 日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
  • 26. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 25 ‐ データ戦略のビジョン実現のために喫緊で取り組むべきこととして ①トラスト枠組みの整備、②プラットフォームの整備、③データの整備 2 カタログサイト/ID・コードの整備  カタログサイト  ベースレジストリをはじめとする各種データを見つけやすくするため、一覧化したサイト  ID・コードの整備  コード:データを分類  ID:データ間をつなぐためにデータにIDを附番 3 オープンデータの推進 <現状> オープンデータ基本指針(政府CIOポータル) - 原則公開、とあるだけで具体的な開示内容、方法が決まっていない - 機械判読性も徹底されていない • 公開推奨データの具体化 • 機械判読性原則の強化 4 包括的なデータマネジメントの推進 • データ標準、データ品質管理フレームワーク(IT総合戦略室)のさらなる活用 日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
  • 27. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 26 ‐ データ戦略のビジョン実現のために今後さらに検討されるべき事項を列挙 1 データ利活用の環境整備  情報銀行、データ取引市場を活用したデータ流通の活性化 <課題> データが提供されない、データ流通量が小さい、データの加工・仲介・分析を行う市場の厚みがない <打ち手> - データ提供が進まない企業サイドの課題を分析 - データブローカー、加工・分析業者の課題を分析 <所管> IT総合戦略室 <時期> デジタル庁発足まで  進捗中のアジェンダ - 大規模デジタルプラットフォームの取引透明化  本丸のデジタル広告に迫る最終レポートを近日中に公表 - 国・地方の個人情報保護法制と所管の一本化 2 民間保有データの更なる活用  民間が生成する公益性の高いデータの活用策 <課題> プライバシー保護、収集・加工・蓄積する民間事業者の投資回収 <検討事項> - 何を「公共性の高いデータ」とするか - 公益性とデータ提供者の利害の調整方法 - 公共性の高いデータへの公的機関・研究機関によるアクセスに関するルール <時期> 2021年度内 日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
  • 28. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 27 ‐ データ戦略のビジョン実現のために今後さらに検討されるべき事項を列挙  民間データ流通を推進するためのデータ取扱ルールの策定 <課題> データの第三者提供が低調 - データ生成・収集・加工・蓄積に関与する多数の者の利害をアラインする方法が開発されていない - 提供されたデータのコントローラビリティを確保する方法が開発されていない - データ提供先が信頼できるか不安 <打ち手> 関係省庁でルール作りの議論を開始 <時期> 2021年度中 3 デジタルインフラの整備・拡充  デジタルインフラ概念の再考 - これまでの通信インフラに加えて、クラウドインフラ、計算インフラ、半導体デバイス、トラストインフラがありうる - デジタル社会のインフラを再定義し、これを整備するための戦略を構築  デジタルインフラの持続可能性の向上 - 人口減少下で各分野のデジタルプラットフォームをどの規模で維持するか - サービス持続性確保のために必要なデータのメンテナンス・品質確保、ツールの開発等  デジタルインフラの高度化 - beyond 5G、高度な計算資源の開発、クラウドインフラの構築戦略 - 半導体、センサー、アクチュエーターの改良によるエッジ処理能力の強化  デジタルインフラの安全・安心の確保 - ネットワークセキュリティの確保 - 機器に依存しないネットワークコントロールの仕組みの構築  インターネットの再構築  アクセシビリティの向上 日本のデータ戦略(データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ、2020.12.21)
  • 29. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 28 ‐ (参考)データ戦略 諸施策のタイムライン <喫緊に取り組む事項> <引き続き検討すべきもの>
  • 30. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 29 ‐ 本日のトピック 3.民間部門におけるデジタルの競争戦略 (1)ガバナンスイノベーションーアジェンダとその背景 (2)国の統治構造のリ・デザイン (3)デジタルプラットフォーム規制
  • 31. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 30 ‐ サイバー空間と現実世界(フィジカル空間)が一体化して運用されるサイバー・フィジカル・システム サイバー空間 蓄積 精製 生成 実データ/生データ データセット 学習済モデル アルゴリズム ヘルスケア 利活用サービス 金融 モビリティ メンテナンス 価値創造と社会課題の解決 医療費増 介護負担 労働力不足 パンデミック 資源枯渇 温暖化 フィジカル空間 モノ(施設)・ヒト・組織 IoT機器、センシング、デジタル化 データ送信 Inclusiveness (包摂性) Sustainability (持続可能性) Dependability (高信頼性) 追求する 社会の価値観(ビジョン) = Society5.0 ネットワーク化 ガバナンスイノベーション 背景としての新たな社会システム
  • 32. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 31 ‐ 付加価値創造のカギとなるサイバー空間と、これがフィジカル空間と融合する社会構造を、 現行の制度が認知・想定して体系(システム)として組み込めていない Society5.0(ポスト情報社会)の特徴  超高速・大容量で超低遅延な通信が超多数同時接続するインフラ  モノとモノ、ヒトとヒト、ヒトとモノが複雑につながるネットワーク • ヒトには「個人」と「組織」があるため、ネットワークはさらに複雑になる  モノのデジタル化とヒトやモノの活動のデータ化  データ化・デジタル化された情報が人間を介在させずに処理される 上記の特徴を実現するための社会全体の見取り図・設計図(アーキテクチャ)はどのようなものか? ヒト・モノ・組織がフラットなネットワークのもとつながり、ネットワークを流れるデータのインテリジェントな機械により 社会のルーティンが自動処理されていくなかで、ヒトと組織は協力しながら創造的な活動に従事することで、 社会を維持しつつ、よりよい社会に発展させていく  設計図がなければ、データをつなげることができない  設計図がなければ、ヒトや組織の分業・協業は実現しない  設計図がなければ、社会の安心・安全(privacy/security/fairness)は確保されない 結論:社会の仕組み(ガバナンス)の再設計が必要 ガバナンスイノベーション 背景となる問題意識
  • 33. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 32 ‐ Society5.0のビジョンを実現するため、日本社会のあらゆるレイヤーで再設計(リ・デザイン) のための課題設定と政策的なアプローチが始まっている 技術・社会規範 制度・ルール ビジネス 個人 AI, IoT, クラウド、ビッグデータ分析 etc. • ガバナンスイノベーション(ガバナンスイノベーション報告書) • 行政デジタルトランスフォーメーション(デジタル庁) • 民間デジタルトランスフォーメーション (デジタルガバナンスコード、DX銘柄選定 etc) • 人材戦略(人材版伊藤レポート) • 教育(GIGAスクール構想) <現在の日本のデジタル政策の立ち位置> - AIによる判断・制御の自動化やビジネスへの応用のためには、まずビジネスプロセスのデジタル化を進める必要がある ‐ デジタル化は一連のプロセスにわたるものである必要があり、途中にアナログが入ってしまうとこれがボトルネックになり、 効率化の実が上がらないためデジタル投資に至らない  プロセスを止めるボトルネックが「紙」、紙が求められるのは正規の情報保存のためであり、正規性を確保するために押印を要求  しかし、押印はもはや正規性を確保しておらず、単に惰性による形式と化している • デジタル庁の創設による行政デジタルトランスフォーメーションの体制が整う2021年9月以降までに、 書面と押印が法律要件となっている民間から行政への手続きの書面・押印要件をほぼ撤廃 • 法令改正が不要なものはできるものから即時に見直し ガバナンスイノベーション ビジョン実現のために必要なアーキテクチャの再設計
  • 34. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 33 ‐ 法規制、社会規範、市場規律、ソフトウェア(コード)を組み合わせ、政府、非政府機関、事業者、利用者が協調して テクノロジーを社会の発展にプラスに生かしていくホリスティックな枠組みをデザインしていくことが目標 事業者 規約/アーキテク チャによる規律 市場原理による 規律 政府 法規制に よる規律 非政府機関 倫理規範や ガイドラインに よる規律 レピュテーション/一般規 範への転換(不法行為 /善管注意義務) 信 認 事業者 提供者 利用者 法規制 規範 規約/アーキテクチャ 権利義務/責任を配分 政府 非政府機関 法規制と規範、市場規律、事業者規 約とコードにより全体として究極目的を 達成するためのデザインを立案 法・コード・規範を 組み合わせて利用 デジタルガバメントの 設計 政府の役割は、各プレイヤーが期待される機能を果たすことに よって規範、事業者規約とコード、市場規律が適切に機能す るようなSystem of Systemsをデザインすること 制度は法規制のみによって成り立っているものではない。 4つの規律の組み合わせを理解する必要 ガバナンスイノベーション そのメカニズム
  • 35. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 34 ‐ 規模の大きなデジタルプラットフォーマーに対し、複数の規制分野のルールを組み合わせることで 個人データ保護、公正競争の確保、今後の事業展開に対するモニタリングを課す法整備を実施 デジタルプラットフォーマー(Google, Apple, Facebook, Amazonなど) ①ネットワーク効果により寡占・独占に陥りやすく、②囲い込み効果が大きい 消費者 ②個人情報保護法の見直し 利用停止等の請求権範囲の拡大等 2020年6月5日成立 ④消費者に対する優越的地位 の濫用への対応(独禁法) 2019年12月17日ガイドライン策定 企業買収を通じたデータ独占等による競争制限のおそれ ③企業結合審査にデータの価値評価を踏まえる対応 2019年12月17日企業お結合審査ガイドライン改訂 取引先事業者 ①デジタルプラットフォーム取引透明化法 取引条件等の開示、自主的な体制整備 運営状況の報告とモニタリングレビュー(共同規制) 対象:ECモール、アプリストア 2020年5月27日成立 ⑤デジタル広告市場の競争状況の評価 寡占化、プライバシー懸念、透明性、データ利活用、垂直統合 手続等の公正性 2020年6月16日中間とりまとめ デジタルプラットフォーム規制 デジタル市場のルール整備
  • 36. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 35 ‐ 特定デジタルプラットフォーム取引透明化法は、ガバナンスイノベーション報告書の示唆を受け、 マルチステークホルダーによる共同規制アプローチを法制に組み込み 特定デジタルプラットフォーマーの役割 取引条件等の情報開示 自主的な手続・体制整備 利用者に対する取引条件開示、 変更等の事前通知による 透明性の向上 指針に基づく必要な措置をとり、 公正な手続・体制を整備する • 取引条件の内容及び理由 • 他のサービスの利用を要請する 場合、その内容と理由 • データの利用範囲 • 出品の拒否・停止の理由 • 検索順位を決する基本的事項 • 必要な措置に関する基本的事項 • 取引の公正さを確保するための手 続・プロセスの整備 • 取引先事業者に適切な対応をする ための態勢整備 • 国内管理人等の設置 行政の役割 レビューの実施 特定デジタルプラットフォームの運営状 況につき、取引先事業者や消費者、学 識経験者等も関与してレビューを行い、 結果を公表 所管省庁:経産省 運営状況の報告 評価結果を踏まえた自主 的な改善 指針案につきパブコメ中 流通総額国内売上高3000億円+の ECプラットフォーム 流通総額国内売上高2000億円+の アプリストア 特定デジタルプラットフォーム取引透明化法
  • 37. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 36 ‐ デジタル市場競争会議は、デジタルプラットフォームはSociety5.0時代における重要なビジネスモデルと して、イノベーションによりデジタル化のメリットを最大限享受できるよう競争環境のあり方を提言 デジタル市場をめぐる現状分析と将来のリスク  強み: ネットワーク効果で利用者をロックイン。顧客接点を生かしてデータ収集し、AI等で分析し、顧客に新たな価値を 提供  今後の動き  顧客接点の拡張・深化(身体の近くへ、意思決定の近くへ)  フィジカル空間への進出(モビリティ、ヘルスケア、金融etc)  上流への進出(仲介だけではなく、自社製品・サービスを販売)  将来のリスク  勝者総取りによる競争の制限  個人の判断がコントロールされる懸念  データの信頼性の欠如による産業へのネガティブな影響  IoT進展に対応できないデータ処理とコスト 日本が目指すべき方向性  理念: デジタル市場でのダイナミックな競争を通じたイノベーション創発により、Society5.0の実現を加速し、より良い 世界を実現する  デジタル市場が目指す姿  「一握りの巨大企業への依存」でも「監視社会」でもない、第三の道の模索 ‐ 多様な主体による競争 ‐ トラストの基盤となる「データ・ガバナンス」の確保 ‐ トラストをベースとしたデジタル市場の実現 短期と中長期の時間軸で、ビジネス環境、ルール、テクノロジー 等の視点から変化に柔軟に対応しつつ3つの施策を講ずる デジタル市場会議(デジタル市場競争に関する中期展望レポート、2020.7.8)
  • 38. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 37 ‐ デジタルプラットフォームの寡占状況の固定化を回避するため、競争相手となりうるデジタル事業者の 創出、市場変化に対応できる柔軟なルール整備、インターネットの再構築の3つの施策を掲げる デジタル市場での多様なプレイヤーを創出するためのDXの促進(短期)  現状分析:危機感の共有がなされていない、企業文化改革の遅れ、両利きの経営を展開するマネジメントが未達、人材 戦略が未達など、さまざまなボトルネックがある  対応策: コロナを契機に日本企業のDXを一気に加速させる  経営改革支援:DX推進指標等のツールの開発、活用促進、ベストプラクティスの共有、スタートアップの 連携促進等  障害となる規制の改革:サンドボックス制度、デジタル推進のため書面・対面手続きの見直し  行政のDX 市場変化に柔軟に対応できる法令(独禁法、透明化法)の執行体制とルール整備(短中期)  デジタル市場に対応したルール執行体制の整備 ‐ 公取委における専門人材登用、外部連携等による端緒機能の強化、審査体制の強化 ‐ 経産省における透明化法の執行体制整備、共同規制の詳細設計  アルゴリズム処理により取引がブラックボックスとなる傾向に対して、公正性を外部から検証する仕組みなどの開発  メガプラットフォームによる他市場進出による寡占化リスク等への対応に対する方策の検討 デジタル市場会議(デジタル市場競争に関する中期展望レポート、2020.7.8)
  • 39. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 38 ‐ デジタルプラットフォームの寡占状況の固定化を回避するため、競争相手となりうるデジタル事業者の 創出、市場変化に対応できる柔軟なルール整備、インターネットの再構築の3つの施策を掲げる データガバナンスのあり方をテクノロジーで変革するTrusted Web構想(中長期)  Trusted Web: データへのアクセスのコントロールを、データ主体自身が行い、データの活用から生じる価値をマネジでき る仕組み  インターネット構造に「データ・ガバナンス」レイヤーを付加することで、データ社会における「信頼」を再構築する  理念に共感する国内外のコミュニティと協調し、ユースケースを通じて人材を引き付け、技術とビジネスをリード デジタル市場競争に係る中期展望レポートより抜粋 デジタル市場会議(デジタル市場競争に関する中期展望レポート、2020.7.8)
  • 40. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 39 ‐ 総務省では、電気通信事業者に対する通信の秘密保護とプラットフォームサービスのフェイクニュース 対策の側面から、デジタルプラットフォームに対するルール整備を図っている。 テレコミュニケーション規制との関係(プラットフォームサービスに関する研究会) 1.利用者情報の適切な取扱いの確保  国外にのみ電気通信設備を設置する事業者でも、国内にある者に電気通信役務を提供する場合には、電気通信事 業法を適用  国内代表者を定めて登録・届出を義務化(2020.5.22 改正電気通信事業法)  通信の秘密保護の規定、電気通信事業者における個人情報保護ガイドラインが国外のデジタルプラットフォーム事 業者にも適用される  業務改善命令の発動基準に関する指針を設定(2020.12.5 パブコメ開始)  通信の秘密に関する同意取得のあり方に関する参照文書公表(同) 2.フェイクニュース対策  インターネット上の誹謗中傷に対する政策パッケージを公表(2020.9.1)  ユーザの情報モラル・ICTリテラシー向上のための啓発活動  プラットフォーム事業者の自主的取組みの支援と透明性・アカウンタビリティ向上  発信者情報開示の在り方に関する研究会「最終とりまとめ」(2020.12.22)  相談対応の充実に向けた連携と体制整備 2021年6月に中間とりまとめを予定
  • 41. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 40 ‐ グリーン戦略とデジタル戦略の掛け算のなかに、自社の長期戦略を位置付けていくことが必須に まとめ  2030年の次世代通信ネットワーク(6G, beyond 5G)のスタートに向けて、2025年までに自社をAI・デジタル社会 Readinessな状態に持っていくことがまず達成しなければならない目標 5G 高速・大容量 低遅延 多数同時接続 超高速・大容量 超低遅延 超多数同時接続 5Gの10x5Gの1/10 アクセス通信速度 5Gの10x コア通信速度 現在の100x 超低消費電力 現在の1/100 無対策だとIT関連消費電 力が現在の36倍になってし まう 自律性 機器が自律的に連携 無線・有線を超えた最適な ネットワークの構築 拡張性 衛星・HAPSとのシームレスな接続 端末・窓などを基地局化 端末の相互接続 超低消費電力 セキュリティの常時確保 災害や障害からの 即時復旧 Beyond5G(6G)  第二次産業革命を経てアメリカが不動の経済大国としての地位を謳歌 する要因となった技術応用は、組織・働き方のイノベーションが決め手  デジタルの価値はend to endなデジタル化を実現しないと発揮されな い点で、米国が成し遂げた工場の電化プロセス実現によるイノベーション に似ている。  プロセス全体のデジタル化を実現した先に、リスクベースでのAI導入戦 略が来る  リスクベースフレームワークに従ったAI導入のプロセスを全社的に回せるよ うになるところまで、2025年までにもっていかなければならない “人間がやらなくてよい単純作業をなくして 重要な仕事にフォーカスできる”という 価値訴求の罠  製造業、エッジに強みを持つ日本が国内に産業を残してデータを競争力 の源泉としていくためには、同時に2050年カーボンニュートラル実現のた めの技術開発と投資が必要に  インクリメンタルなクローズ技術開発と、デジタル領域に重要なオープン技術開発の双方を組み合わせた開発体制の確立  オープン型の技術開発の実現のための新たな知財戦略の確立、そのための組織と人材の革新が不可欠に -内閣府 知的財産戦略推進事務局「知的財産推進計画2021に向けた検討課題」(2020.12.21) -同「標準の戦略的活用尾に向けた取組」(2020.12.21)  自社の事業成長を国家戦略目標とアラインするよう、自社の長期戦略を打ち立て、政府の個別政策に働きかける 政府エンゲージメント戦略の高度化
  • 42. Copyright © 2021 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 41 ‐ JOIN IN OUR FUTURE! 弁護士 増 島 雅 和 森・濱田松本法律事務所 tel. 03.5220.1812 email. masakazu.masujima@mhm-global.com facebook. https://www.facebook.com/startupinnovators オンライン名刺交換用QRコード