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多職種連携教育
(Interprofessional education: IPE)
大西弘高
東京大学医学系研究科医学教育国際研究センター
患者中心の医療?
患者
医師
歯科
関係
薬剤
師
看護
師
リハ
介護
多職種連携劇場(1)
<iframe width="560" height="315"
src="https://www.youtube.com/embed/U3a94qH3w
nI" frameborder="0" allowfullscreen></iframe>
多職種連携劇場(1)
 Think, Pair, Share
 なぜ専門職同士の連携がうまくいっていない
のでしょうか
 どのようなことが障害になっているのか考えて
ください
多職種協働,協働的実践
Interprofessional Work/Practice
(IPW/IPP), Collaborative Practice
 最善の健康アウトカムを生み出すために,医療専
門職と患者・利用者・家族と地域が互いに有効な
協働関係を発展させ維持するプロセス
 要素には相互尊重,信頼,共同意思決定,パー
トナーシップが含まれる
 実践を変革するだけでなく,教育も重要
A National Interprofessional Competency Framework,
Canadian Interprofessional Health Collaborative: CIHC
用語の違い
ケアプランケアの評価個々の領域
並列診療
Parallel
Practice
多職種診療
Multiprofessional
Practice
多職種協働
Interprofessional
Practice
患者
医療専門職間のやり取りは最小限
医療専門職間の協力ややり取りが増加
医療専門職間の信頼関係ができ,共同決断
Journal of Physical Therapy
Education 15 (2), 2001
患者
患者
IPWの障害となる要因
 チーム内での異なる目標
 情報共有不足
 コミュニケーションの機会の不足
 役割の明確さの不足
 同僚との協調・支援の不足
 時間不足
 疲労・業務過多
 権威勾配(ヒエラルキー)
 職種間の対立 TeamSTEPPS, 2006
多職種連携劇場(2)
<iframe width="560" height="315"
src="https://www.youtube.com/embed/QA1CXjqL
2KA" frameborder="0" allowfullscreen></iframe>
 Think, Pair, Share
 なぜ専門職間の連携がうまくいっていないの
でしょうか?
 先ほどのIPWの阻害要因の用語で考えて
みましょう
協働に向けたステージ
 コミュニケーション: 一時・計画的情報交換
 コンサルテーション: 一方が他方に助言や指示をもらうため
のコミュニケーション
 協力(Cooperation): 短期間の非公式な関係
 統合(Coordination): 共通の目標やより構造・計画を
持つ公式な関係
 コラボレーション: 共同の解決策を求めて権限を持つ者同
士が協力する
 協働(Collaborative practice): 互いに専門性を有し,
シナジー効果のある多職種連携チームが臨床アウトカムを
よくするためによい関係を築き上げる
IPWコンピテンシー
 専門職間のコミュニケーション
 患者・家族中心のケアの追求
 役割の明確化
 チームワークを機能させる
 協働型リーダーシップ
 専門職間の対立解消
A National Interprofessional Competency Framework,
Canadian Interprofessional Health Collaborative: CIHC
Sickness, Disease, Illness
(Young A, 1982)
 Sickness:疾病=包括的概念
 Disease:医療者から見た「疾患」
 Illness:患者から見た「病い」
疾病(Sickness)
対応する疾患
がない部分
対応する病い
がない部分
疾患(Disease)
病い(Illness)
患者中心の医療の方法
PATIENT-CENTERED CLINICAL Method
 臨床技法モデルの一つ
 ウエスタンオンタリオ大学家庭医療学講座
 M. Stewartらにより開発(1980年代)
 1995年初版,2002年第2版, 2014年第3版
 様々な研究による理論的背景
 BPSモデル ⇒ あとで説明します
 外来診察を撮影したビデオ映像の解析に基づく研究
 家庭医・看護師など多様な職種による探索的研究など
 世界的な卒前・卒後医学教育システムにも利用
 臨床研究に有効性が示されつつある
 患者満足度のみならず、様々な健康指標などにも有効
性である研究結果も
問題
目標
役割
3. 共通基盤を
見出す
患者中心の医療の方法
1. 健康観と疾患と病の経験を明らかにする
Stewart M, et al: Patient-
Centered Medicine:
Transforming the Clinical
rd
2. 患者を全人的にとらえる
近位コンテクスト
病疾病
健康観
遠位コンテクスト
疾患 病
病歴
診察
検査
感情
期待
考え
影響
健康 healthについ
ての認識・経験
意味
願望
統合的な理解
4. 患者-医師関係を強化する
思いやりと共感,力,癒やしと希望
自己認識と実践知,転移と逆転移
研修医の頭の中
1. 健康観と疾患と病の経験を
明らかにする
病歴:3週間以上続
く咳嗽、最初は咽頭痛、
鼻汁あり
診察:異常なし肺雑
音、心雑音なし
検査:胸部X線、肺
機能検査、血液検査
解釈:風邪が長引い
ている、お客のタバコの
影響かも
期待:早く咳を止めて
ほしい、抗生剤
感情:長くびく変な病
気かも
影響:仕事に差し支
える
かきかえ
意味・願望
仕事に支障がない状態が健康
2. 患者を全人的にとらえる
 近位コンテクスト
家族 家計
教育 職業
余暇 社会的サポート
 遠位コンテクスト
地域コミュニティー
文化 経済状況
ヘルスケアシステム
社会的・歴史的経緯
地理的条件
マスメディア
2.患者を全人的にとらえる
BPSモデルの
家族的背景
社会的背景
近位コンテクスト
病疾病
健康観
遠位コンテクスト
BPS(生物心理社会)モデル
 個別ケアを実践する上では、まず患者がある疾患に罹患
した際に生じる多様な反応が「なぜ生じるのか」についての
理解が重要
 理解の際の基盤となるのが「生物-心理-社会モデル(
Bio-Psycho-Social Model)」(Engel.1977)
一般医学(生物医学モデル)
家庭医/プライマリ・ケア医
公衆衛生・医療政策
一般医学的なアプローチ
 亜急性咳嗽
 感染後咳嗽?上気道咳嗽症候群(UACS)?
 ウイルス感染による咳感受性の亢進? 気道過
敏性は?
 好酸球の関与?
地球 国 地域 家族 個人 臓器 組織 細胞 原子
BPSモデルを用いたアプローチ
 生物学的要因(Biological factor)
亜急性咳嗽、咳感受性の亢進
 心理学的要因(Psychological factor)
仕事に影響する心配 何か病気といわれる不安
 社会学的要因(Social factor)
受動喫煙 仕事がなかなか休めない環境
前職場の倒産
健康問題
を立体的
に把握
地球 国 地域 家族 個人 臓器 組織 細胞 原子
Source: WHO, 2010. Framework for Action on IPE and CP
WHO 2010
健康
アウトカム
の改善
地域の
保健ニーズ
保健人材
保健・教育システム
協働に関する研究
地域の文脈
現在と将来の
保健人材
適切な
保健
サービス
断片化した
保健システム
Interprofessional
Education
Collaborative
Practice
強化された
保健システム
IPEを作るプロセス
協働の
できる
医療職
現在と
将来の
医療職
Interprofessional
Education
職員教育
個人へのサ
ポート 管理サイド
の貢献
学習
アウトカムチャン
ピオン
雑務と
日程
プログラム
内容
出席の
義務化
目標の
共有
成人学習
理論
学習方法
現場文脈
での学習
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メカニズム
カリキュラムの
メカニズム
IPWを整えるプロセス
最適な
保健
サービス
協働準備
のできた
専門職
Interprofessional
Education
ガバナンス
のモデル
業務用の
共有資源
人材の
ポリシー
サポートの
管理
整った
手順
コミュニケー
ション戦略
葛藤の解決
のポリシー
共同意思
決定の
プロセス 完成された
環境
スペースの
デザイン
施設のサポート
メカニズム
環境の
メカニズム
施設
職場文化の
メカニズム
IPEで目指すべきコンピテンシー
1. チームワーク
2. 役割と責任
3. コミュニケーション
4. 学習と省察
5. 患者との関係,患者ニーズの把握
6. 倫理感を持った実践
(WHO 2010)
日本での多職種連携教育
 日本保健医療福祉連携教育学会(Japan
Association for Interprofessional
Education: JAIPE)が2008年6月発足
 複数の医療系学部・学科を備えた大学で取
り組みが開始されている
多職種連携教育
Interprofessional Education: IPE
 複数の医療専門職が,協力し合い,診療
の質を改善するために,相互に学び合う
 理由
 ケアの複雑化,期待の上昇,職種の多様化,
地域基盤型ケア,チームワーク,職種間の衝突,
新しいモデルの診療,医療専門職の再定義,
上手く機能したIPW(Interprofessional work)
の効果
価値に基づく診療
Values-based Practice: VBP
 英国で広がりつつある新しい患者-医療専門職に
よる意思決定モデル・プロセス
 Narrative-based medicine, 臨床倫理など
従来EBMと組み合わせられてきた意思決定手法
を包含し,よりスキルの集合体として教育しやすく
構成されている
 様々な医療領域に応用可能
VBPの全体図
共有された価値という
枠組みにおける
バランスのとれた意思決定
価値の違いに対する
相互の敬意
パートナーシップ
二本の足の原則 軋む車輪の原則 科学主導の原則
当人中心の診療 多職種のチームワーク
気づき 推論 知識 コミュニケーション技法
到達点
プロセス
前提
事例
 サービス付き高齢者住宅に居住の80歳男性.
 軽度認知症と高血圧で有床診療所からの訪問診療を行っ
ている.
 施設の介護福祉士より,5日前に38度台の発熱がみられそ
の翌日に診療所に往診依頼.他の医師が感冒と診断し,
解熱剤を処方した.
 その後施設で経過をみていたが,食事摂取が出来ない状態
が続き,体重が2kg減ったとのことで本日の定期訪問時に
息子を交えて話し合いを持ちたいという.
 訪問診療の主治医は,2週間前の定期訪問が訪問診療
主治医の交代後初めての診察であったこと,その際は元気
にしていたことなどを思い起こし,4日前に往診した非常勤医
師の診療録を確認した.その時点でも食事摂取量はかなり
低下していたものの,それ以外は便通も大きな異常はなく,
炎症反応は軽度のみ,電解質,甲状腺ホルモン,他の生
化学にも異常はなかった.また,軽度の倦怠感はあるが,う
つ状態のような興味の減退などはなかった.
 当日も患者から簡単に話を聞き,診察をしたが,発熱や感
冒症状は治まり,前回と大きな違いはないように思えた.「
調子悪いんだったら,入院するかどうか考えないといけないん
だけど…」と問いかけると,「確かに,食事はあまり入らないん
だけど,まあ,先生のいいようにして下さい」との答えだった.
 施設長(介護福祉士),患者の長男,主治医,訪問看護師
の4者での話し合いでは,まずは施設長が「食事が出来ず,一日
一日と体力が落ちていくと,介護度が高くなると退去するという基
準に達するおそれがあります.早めに入院などの対応も含めて考え
るべき時期だと思います」と口火を切った.長男は,「私はふだん
は週1回ぐらい見に来ていますが,この4,5日で食事が入らな
いということで,どうなるのかなと心配です」とのことだった.
 訪問看護師は,「施設長さんにとっては,今すぐにでも入院して欲
しいという感じですか?」と質問した.施設長は,「今すぐにとは言
いませんが,入院したいと言って緊急的にばたばたすると,そちらの
診療所のベッドが空いてないというようなこともありますからね」と先を
見越しての判断であることを明らかにした.
 主治医は,「いつから服用しているのか今は調べられな
いのですが,アリセプトという認知症の薬をのんでおられ
ますね.実はこの薬は食欲低下を起こすことがあるんで
すが,認知症の状況はどうですか?」と質問した.する
と息子は,「ギャンブル好きの親父で,さっきも新聞を読
んで俺に何番の馬券買ってこいとか言ってます.元々認
知症は軽いと思いますよ.だから,もしその薬が食欲低
下につながっている可能性があるんだったら,やめて様子
みるのでもいいと思います」と提案してきた.
Ipe多職種連携教育

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Notas del editor

  1. 答えは、患者中心の医療の方法を用いたからにさせてください。 これは、臨床技法モデルの一つで、ウエスタンオンタリオ大学家庭医療学講座のMoira Stewart(モイラ・スチュワート)らによって1980年代に開発されました。 1995年初版で日本ではこの初版の翻訳が出ています。 2002年に第2版が、そして昨年に第三版が出ました。本日の内容は、第三版に準じて実施させて頂きます。 患者中心の医療の方法は、様々な研究による理論的背景の集大成で、このうちBPSモデルについてはあとで紹介します。 北米やヨーロッパなど、世界的な卒前・卒後医学教育システムにも利用されていて、様々な臨床研究で有効性が示されつつあります。
  2. では、まず第一の 健康観と疾患と病の経験を明らかにする から御説明致します。私たち医師は、主に疾患を病歴・診察・検査から診断しようとします。
  3. 恐らく、先ほど登場した研修医の頭のなかは、亜急性咳嗽というキーワードから、こんなことを浮かべていたと思います。 (時間により、スライドの単語をいくつか述べてもOK)
  4. しかし、実際の患者さんは疾患と同時にそれに伴う病いの体験をしていますし、独自の健康感も持っています。 患者さんが医療機関を受診する際、その理由の方が診断名よりも重要なこともありますし、健康感との関係も重要でしょう。 このため、身体症状の原因を積極的に探すとともに、一つには患者の病いの体験の4つの側面、 即ち、よく「かきかえ」 と言われているものですが、 患者さんの病いについての考え方や解釈、そこからくる感情、何をしてほしいかという期待、 そして、日常機能への影響に注意を払う必要があります。 また、患者さんが考える「健康な状態」は個人により異なり、今回のロールプレイでは、 仕事に支障がない状態が健康ということになるでしょう。 このように、疾患と病いの体験そして健康感のについて考えていかなければなりません。
  5. 次に、患者中心の医療の第二の要素は、「地域・家族を含め全人的に理解する」こと、 即ち、患者のライフサイクルと人生の文脈まで含めた全人的な理解を伴った疾患と病いの概念の統合です。 患者自身がもつ多様な背景、これをコンテクストと言いますが、これは、様々な重みをもって、診療に影響を与えます。 コンテキストには、家族等の近位のものと地域コミュニティなどの遠位のものが考えられます。 これらはBPSモデルの家族的背景や社会的背景に相当するものです。 ※コメント ・家族:最も身近な存在であり、病気の原因にもなると同時に、病気に対処する際の医療資源にもなる。 ・家計:治療の選択が限られるケースも ・教育:収入や生活レベルに直結し、死亡率にも影響 ・職業:労働災害や心理的ストレスなど。職業を通しての社会的地位や教育、人生観なども知ることができる。 ・余暇:高齢者では死亡率低下に相関するという研究も。
  6. では、ここで少し生物心理社会モデル、BPSモデルについて整理しておきましょう。 個別ケアを実践する上では、まず患者さんがある疾患に罹患した際に生じる多様な反応が「なぜ生じるのか」についての理解が重要です。 この理解の方法として、BPSモデルが、1977年に、ロチェスター大学精神科医のEngel(エンゲル)により提唱されました。 疾患に関わるものとしてはこのように様々なレベルのものがあり立ち位置により守備範囲がありますが、   スライド進める
  7. いわゆる、一般医学的なアプローチとしては、このあたりを相手にすることになります。 亜急性咳嗽として、感染性なのか、ウィルスや好酸球の関与は  という感じでしょうか。
  8. これに対して、BPSモデルでは、病をもっと大きな枠組みでとらえようというものです。 個人を中心としてスライド右側の生物学的な理解は必要ですが、 同時に人としての側面、他人との関係、家族や地域といった側面も理解していきます。(スライド進み) 生物学的要因、心理学的要因、社会学的要因のこれらは は互いに影響し合っていますが、どのように、患者の疾患や症状、感情、生活に反映されているかを考えます。(スライド進む) BPSモデルとは、このように、患者個人の健康問題を立体的に把握しようとするものです。