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チーム医療と信念対立




     真のチーム医療の構築を目指して
開発背景
現状
「チーム医療」と言われて久しいが、「チーム医療とは?」と

いう解釈が不明確なままに、言葉だけが独り歩きしている感
がある。
アメリカ心臓協会(AHA)では、心肺蘇生コースにおいて「チー

ムダイナミックス」という概念を提唱し、浸透(?)したよ
うに見える。しかし、「チームダイナミックス」はトレーニ

ングコースの「急変シナリオ」の中でのチームリーダー中心
の役割分担に過ぎない。

これは、本当のチーム医療なのか?




                                                 AHA ACLS G2005 Team Dynamics
                       チーム医療というと聞こえがよい             ど)も含まれる)から重症を見抜
チーム医療の定義
                       が、コメディカルは医師のサポート役           くアプローチ。
チ ーム医療とは、患者を中心に各種 (手足)であり、多職種であること
                                   * 共通理念は患者安全、共通目標は
の医療専門職が、共通の理念を基盤 の強みが活かされていない。                     「患者の重症に早く気付き、安定
に、それぞれの専門性を活かし、共 (*コメディカルという言葉自体が医                 させる」。
有した目標に向かって協働して医療を 師中心であることを示している。)
                                                 すなわち、そこには信念対立が存
実践することである。(「チーム医
療と看護」川島みどり著)           しかし、それぞれの専門性を活かすの 在するわけです。それを無理矢理、医
上記の「それぞれの専門性を活か        は、医学的アプローチ(思考)だけ 師側の信念側に持ってきているのが
                                                 現状。(信念対立を否定しようとす
し」というのがポイント!           では不十分。
                       看護学的アプローチ(思考)などの る)
実情                     各職種毎のアプローチが共通理念の
し か し 、 現 状 の チ ー ム 医 療 の 大 半 基に同時的に働いているのが理想。
は、医師がチームリーダーとなり(例 * 例えば、医師は臨床推論的に鑑別
外もありますが)他の職種はリーダー        診断を重視する。看護師は生理
の考え(医学寄りの信念)の基にサ         的・フィジカルアセスメント(超
ポートするというのが実際。            急性期でなければ、現場の調整
あくまで医師中心のチーム。            (コミュニケーション・倫理な
目指すべきは、、、                   まずは、互いの職種間の信念対立 ある程度の時間で「ワードカフェ」
                         を解明するためのワークショップの                 のようメンバーを入れ替えるのも良
 多職種がミッションのもとに、そ
                                                          し。
れぞれの特性を活かしつつ、相乗的         企画がStartした。
                                                          ⑤各職種の信念対立を明らかにす
                            1)コース目標
に協働するチーム医療。                                               る。(ここで、各職種が混ざったグル
                         ★それぞれの職種によるアプローチ
 それぞれのパートを活かしつつ共                                          ープ分けに再編し、ディスカッション
                         (信念)の違いを理解する。
通コードの上で臨機応変に対応して                                          してもらってもよい)
                         ★互いの信念を尊重したうえでの多職
いく。
                         種間のディスカッションができる。
 そう、まるでJazz   sessionの   2)コース手法
ような、、、                   ①各職種毎のグループに分かれてもら
                         う。(医師・看護師・薬剤師・な
                         ど、医師を上級医組と研修医組に分
                         ければ指導医研修にも応用可能)
                         ②各テーブル毎に「気付きコース」で
                         使用しているビデオ*(信念対立が明
                         らかになるように、なるべく重症過

Gapを埋めるには?               ぎない症例の方が望ましい。)
                         *病院に到着した患者の様子を模擬
 我々は、まず多職種間の信念の違
                         患者(役者)を使って撮影した映像
いを明らかにすることを第1歩と考え
                         で、映像から様々な症状・徴候を評
た。                       価することを目的として制作。
 同質性を前提としたチ              ③各テーブル毎にDVDを視て、どう
                         いう思考でこの患者にどうアセスメ
ームワークから異質性を前             ントし、行動するかをまとめる(ア
提としたチームビルディン             プ ロ ー チ 法 は 定 型 化 せ ず、 自 由 に )
                         (マインドマップなど使うと、定型
グへ!                      的なアプローチにならず、思考の部分
                         まで見える化できそう)
                         ④各テーブル毎に発表してもいいし、
やってみた!


試作コース開催                 る。よって、あえて『チーム医療』を       特に、患者評価の部分において両
  2012年1月16日∼26日にかけて当   意識したことはない。」との回答。      者の違いが毎回見受けられた。
院に救命士の再教育研修の一環とし          これは我々の「チーム医療は異質       救急隊の場合、職務上、素早く推
て、「プレホスピタルとホスピタルの       性を前提とする」という持論と偶然に     定疾患(重症度だけでない)を導き出
信念対立」と銘打ち、救命士と当院看       も一致するものであった。          し病院選定、搬送するという職務があ
護師とのグループワークショップを計         続いて、今回のルール説明。特に     る。そのため、話せる患者に対して
4回開催した。                 縛られることなく、自由に「気づいた     は、疾患に結びつけるためのいわゆる

                        点」「知りたい点」「どう行動す       「Closed Question」(OPQRSなどの
                        る?」などを各グループ毎で話し合っ     症状に特化した問診)を用いる傾向に
                        てもらうよう説明した。           ある。

                          患者(今回は呼吸苦とアナフィラ
                        キシーショック)DVD*を映写し、そ

                        れぞれのグループで話し合い、その後
                        グループ毎に発表してもらった。
開催報告                    (*我々が現在、開発中の「救急外来医学
  「チーム医療とは何か?」という       コース」の導入DVD を使用)
問いから、ワークショップStart。「個    結果
人個人の能力を協力して行う」など、         それぞれの職種の発表をホワイト
予想された回答のなか印象的だったの       ボードにまとめると、評価方法におい
は、ある救命士から出た「自分らは、       て、職種の違いを認めた。
いつも1つのチームとして動いてい
救命士の患者評価




                    看護師の患者評価




                    度だけでなく、疾患によって選定す    とされる報告について話し合っても
 一方、看護師側は、疾患を推論す
                    る(逆に言えば患者を受けてもらえ    らった。
るというより、重症度について生理
                    る)必要があるからであり、このア      書籍中で「良い例」とされる報告
学的に評価する。
                    プローチはむしろ医師のアプローチ    例は様々な疾患に結びつくKeyword
 つまり、患者に最初に接触するプ
                    に近い。また、最近の救急活動のコ    が散りばめられているが、救命士の
レホスピタルの救命士の方が、後に接
                    ミュニケーションに関する書籍を見    グループからは「こんなに疾患を断定
する病院側の看護師よりも臨床推論
                    ても、医師側が救急隊に「予想され    していいのか?」「医師によって推測
的アプローチを用いているという事
                    る疾患名」を求めている。        疾患名を求める場合と、疾患名を出
が興味深い点であった。
                    追加モジュール             すと機嫌を損ねる場合がある。」と
 (また、今回「看護師→医師」
                     今回、救急隊と病院側の信念対立 の意見が出た。
「救命士→医師」という報告も行っ
                    の場面として多いと思われる「患者      この書籍中の「良い例」は医師に
てもらったが、アプローチの違いが
                    収容要請の電話」にスポットをあ     よって書かれたものであり、医師側
そのまま報告様式にも表れる結果と
                    て、「理想的な患者収容要請と      の信念に近づけようと取れなくもな
なった。)
                    は?」について話し合ってみた。     い。今後、医師グループ含めたワーク
 これは、現在の救急隊の業務のな
                     方法として「救急活動コミュニケ    ショップ開催の必要性を示唆すると
かで「病院選定」というものが重要
                    ーションスキル(坂本哲也 他著)」 言えよう。
な位置を占めており、生理学的重症
                    を用いて、書籍中で、良い例・悪い例
今後の展開
多職種による信念対立ワークショッ      医師と看護師の役割について興味      (*M.ジョンソン&マーチン 稲
プの開催                 深い記述がある。*それは、看護師   田八重子他訳「看護婦の役割につい
  今回は、救命士と看護師のみの参 の活動は「治療的環境を整えるこ       ての社会的分析ー看護の本質、現代
加であったが、今後この試みを多職  と」すなわち「安楽で心地よい物理      社1981.)
種、また同職種であっても、「指導     的環境を作り出すことから、説明し      つまり、医師という職種は診断・
医VS研修医」「急性期病棟看護師VS   たり、安心させたり、理解したり、   治療における専門職であって、全体
慢性期病棟看護師」など、様々な医     支えたり、受け入れたりするとい    を見て、場をコーディネイトするとい
療スタッフ 参加のワークショップを    う、より直接的に養育的な活動にま   うのに必要なGeneralな視点は持ち合
開催していきたい。            でわたる。これらの行為は、患者の   わせていないということになる。
 また、今回のワークショップで      緊張度を低め、患者に直接的満足感      そういった意味において、医師は
は、評価・報告の違いを明らかにす     を与えるというところに主たる意味   治療の指示をだす「コマンダー」に
るものにとどまったが、今後もっ      がある。」といい、また、「診察し   はなり得ても「チームリーダー」には
と、それぞれの職種毎の思考にまで     たり、診断したり、処方したり、治   決して適任とは言えない。
お互いが気づくようなファシリテー     療したりという医師の活動は、直接      チームリーダーは場面により、変
ションが必要と感じられ、今後の課     的には患者に満足を与えない。患者   化、時には看護師が、時にはケアマ
題と思われた。              はこれらの活動が回復にとって必要   ネーシャーが、また患者自身がリー
医師中心のチーム医療からの脱却      であるとは理解しているが、それ自   ダー(在宅療養などの場合)とさえな
 現在「チーム医療」と呼ばれてい  体は、困惑させる、痛みのある、不  り得るのである。
るものは、医師がリーダーで他の職種 安を引き起こすものであると、感じ    今後、それぞれの職種の「信念対
は「チームメンバー」という名の医師 ている。」とある。(川島みどり著  立」を解明することによって「医師
の手足となり、医師の価値観・アプ  「チーム医療と看護」看護の科学   中心のチーム医療からの脱却」「異
ローチに基づいて行動している。      社)                 質性を前提としたチームの構築」に

                                        つなげていきたい。
信念対立解明アプローチ




「信念対立解明アプローチ」@チー        ③コミュニケーションの価値を巡る
ム医療推進協議会                信念の衝突
    2012年2月6日にチーム推進医療   などである。
協議会主催で行われた京極真先生の
                        信念対立解明
講演を聴いてきました。今回は特に
                         京極氏は「解決よりも解明を重
「チーム医療における信念対立」に
                        視」と強調する。
ついて講演頂き、京極先生ともお話
                         解明とは、「問題が発生する条件
しする機会も持つことができ、今
                        を変えることによって、問題が問題
後、我々の活動のなかでご指導頂こ
                        化しないように終わらせること」
うと思っております。
                        で、時として問題をさらに強化させて
『チーム医療」における信念対          しまう解決とは異なるものである。
立
    チーム医療を行うにあたって信念
対立が生じる場面は、

①患者と専門職中心という相反する
信念の衝突

②チーム医療のリーダー的役割を巡る
信念の衝突
チーム医療における信念対立の      次に、そこから「さしあたり(実 だけど、、、」などと、言語化し、
                   際には確実な実践は存在しないの    強調していく行為が重要である。こ
問題点
                   で)有効なやり方は?」と方法を探   れが、京極氏の言う「回路を繋いで
 我々は、ついつい「チーム医療の
                   っていく。              いく」作業となる。
実践方法」という方法論から学習し
                   「誰がリーダーか?」「患者中心?    京極氏は著書の中で、信念対立解
ていく。そうすると「正しい実践」
                   専門職中心?」            明アプローチを「解明術壱号」「解
(実際には、実践はやってみなけれ
                    チーム医療において最も信念対立 明術弐号」「解明術参号」に分け
ば分からない)があるという確信に
                   が起こりやすい問題だが、この回答   (次ページスライド参照)、解明術
ため、信念対立が起こりやすくな
                   は、状況と目的によって変わる。    壱号は「契機と志向性を意識化す
る。
                    つまり、「状況と目的」       る」行為で、解明術参号は「人々の
チーム医療における信念対立解                        回路を繋ぐ(共通の状況・目的の共
                   によってチーム医療のやり
明アプローチ                                有)」行為であると説明している。
                   方を変える必要がある。
 重要なのは、「方法論」でなく、
「目的」から入り、それを共有する    一方、このやり方は多様性を保証

ことである。つまり、「きっかけは   できる反面、チームを突き動かすド

何?」「状況は?」「何の為に?」   ライバーに欠けるとも言える。そこ

「目的は?」といった問いかけか    で、重要なのが共通の状況・目
ら、共通の目的・状況を共有するこ
                   的の共有である。実際には、
とが重要。
                   「我々(私)の今の状況は、〇〇〇
今後のチーム医療のあり方          レーション訓練だけでは不十分で、その
                      ための方法も再度検討していく必要があ
 京極氏の主張のように、チーム医療
のやり方は、状況と目的によって変わる    ると感じた。
                       今後、様々な方々の意見を伺いなが
べきと思われる。(例1:「超急性期」
                      ら、より良い方向性が見いだせればと思
なのか?「慢性期」なのか?)(例2:
心肺蘇生においてはACLSのような一人   います。

のコマンダーをリーダーとしたアルゴリ
ズム的が適しているが、慢性期疾患で

は、Ns中心のチームが適しているかも
しれない)
 つまり、チームの方法論を一定化す

るのでなく、多様性に富んだチーム医療
(その部分においては認知プロセスの強

化が重要かもしれない)
 そして、チームの多様性を保証する
一方で、今まで以上に共通した状況・目

的の共有を図ることが重要となる。
 今後、今までのようなアルゴリズム

をなぞるようなシナリオベースのシミュ
チームビルディングワークショップ




チーム医療プロジェクト         状とのGapを埋めるための方略をブレ この目標を大きく分けると2つの状

 真のチーム医療構築のために、ま インストーミングした。                 況確認と安定化すなわち

ず第一歩として「信念対立解明アプ    コンセプト:                   ①患者の状況確認・安定化

                      「異質性を前提としたチーム医         ②場の状況確認・安定化
ローチ」ワークショップの開発に着
                    療」というコンセプト。そのために         であり、特に②については今までの
手したが、もちろんそれだけでは不
十分である。              は、「信念の多様性を保証」では、         既存のコースでは、あまり触れられな

  今回、我々は「チーム医療プロジ 片手落ちで、チームとして協働的に動 かった部分であり、今回重要視する
ェクト」の構成要素として、多職種  くために、より強い「目的・状況の  部分である。

                    共有」が重要となる。「尊重」「共         ①患者の状況確認と安定化
や立場の違いによって生じる信念対
                    感」「対話」というキーワードが考         患者の急変の予兆を早期に認識する
立を解明する①「信念対立解明アプ
ローチ」ワークショップ。異質性を前 えられ、特にディベートではない「対 いわゆる「気付き」からはじまり、

提としたチームビルディングに重点を 話(ダイアローグ)」が重要と考えら 適切にACDAサイクルをまわすのは、
おいた②「チームビルディング」ワー れた。一方で、「目的・情報の共有           既存コースでも示されてきたが、今回
                                             のワークショップでは、チームリーダ
クショップ。また、「真のチーム医療 手段」は具体的にどうするかが検討
                    課題となった。                  ーは医師以外を想定しているため、
構築」のためには、個々の変化だけ
                                             「Decision Making」を重要視した。
では不十分であり、「組織をどう、    コース目標:
                                             医師以外の職種(おもにNs)が
変革・成長させていくか?」に趣を      下記の項目をコース目標として挙
おいた③「ホールシステムアプローチ げた。                        Decision Makingをする際には、様々
                                             な障壁が存在する。
(学習する組織)」ワークショップ    ①病態変化(の予兆)に気づくこと
                                             今回のワークショップでは、この部
(仮)を3本柱として考えた。      が出来る。
                                             分をいかに克服するかがkeyの1つと
                    ②適切な初期対応(処置・報告・招
「チームビルディング」ワ                                 言える。
                    集)ができる。
ークショップ開発
                    ③Communicationと適切な役割分担
 「チームビルディング」ワークシ
                    ができる。
ョップを企画するのあたり、理想の
                    ④リスクを最小限にする場のコン
チームビルディングの姿、および、現
                    トロールが出来る。
Decision Making




②場の状況確認と安定化            という能力が必要であり、これらを
今回の構想の特徴でもあるが、今ま       コース内にどう埋め込み、評価してい
では医療的指示を出す「コマンダ        くかが課題である。
ー」が「チームリーダー」であった。
しかし、医療的指示が適切であって

も「チーム医療」はうまく機能しな
い。コマンダー=リーダーで必ずしも

ある必要はなく、上手く場をコント
ロールする能力がリーダーには求めら
れる。そのために、

①Task Management
②Situation Awareness

③Communication
コース方略                   a)「それぞれの職種の立場で発揮でき う。時間軸によってチーム形態も変
                        る力(処置・報告・処置)はなにだ          化(災害医療時の「折りたたみ可能
  従来の超急性期病態のコースにあ
るようなアルゴリズムをなぞるよう        ったか?」(自身・他者の役割)につ         な組織」のように)
                        いて話し合う。                   c)チームビルディングのロールプレ
な方法はとらない。
                        b)「この場の共通した目標は何だった イ:それぞれが医師役・Ns役などを
  なぜなら、今回の目指すべきチー
ムとは、病態や経過によって臨機応        か?」を話し合う。                 演じる。(それぞれの職種・職歴・

変に変化していくチームであり、それ c)「協働するとは何か?」を話し合               性格などの背景を設定)その後、お

は、施設によっても(組織体系・マ  う。                              互いに気づいた点をディスカッショ

ンパワー・地域性など)目指すべき形 ③提示ストーリーについて、気付き                ン。
                  →Categorize→Decision Making→報
態が変化するものであり、それは画
一化されたアルゴリズム至上主義の        告(患者の評価・安定化だけでな           今後の課題
コースでは達成出来ないからである。 く、場を評価し、安定化することも                 今後、試作コースを展開しなが

(部分的にはアルゴリズムを用いる  同時に行う)の流れをNsをリーダー               ら、改善点を見いだしていくことに
                        としてやってみる。                 なるが、現時点での問題点は、「チ
部分もあるかもしれない)
                        方法としては、                   ームビルディング」ワークショップの
  実際には、
①ある場面(従来のコースよりは時間 a)マネキンを使ったシミュレーション 評価方法をどうするかという点。
                  b)机上訓練:災害医療訓練(例:     また、この「チーム医療構想」に
的に余裕があるような病態から導入
を考えている)を想定したストーリ        Hospital MIMMS)のように、それぞれ は、組織側の変革も必須であり、現
                        の施設にあったマンパワー・組織形          在、「ホールシステムアプローチ(学
ー(DVDなどで提示)を導入として
                        態・急変時対応体制に沿って、(Dr         習する組織)」ワークショップも企
用いる。
②①の提示ストーリーを題材として        がすぐに来ない場合やDrが専門医の         画中である。

「異質性を前提としたチームビルディ 場合、研修医の場合など、その施設
ング」について話し合う。(以下)  毎によくあるケースを設定)話し合
コース方略の転換




                                             毎日のように繰り返される不毛な会議。
                                             医療関係者は対話・問題解決が苦手。と
                                             かく方法論の議論に陥りやすい

信念対立解明アプローチ入門編       キルやコミュニケーションスキルな

として                  ど)を向上させるのが目的であり、草

 職種毎の信念の違いを明らかに      木(人材)一本一本を対象にしたもの

し、理解した上で、真のチーム医療を    と言える。一方、今回の問題解決アプ

構築するには信念対立解明が必要とな    ローチの改善は、いわゆる組織の

る。しかし、我々、医療関係者は対話    「場」(Social Field)を耕す行為と言え
や問題解決が苦手であり、結論の出な    る。「真のチーム医療」を実現するに
い(結論が出ても全員の総意でなく、    は、個々のスキルアップも重要だが、
意見の強い者の意見が押し通る場面な    問題(望まれた事柄と認識された事柄
ど多々みられる)不毛な会議など、そ    の相違)が生じた際に、対話がしやす
の典型例である。             い「場」であることが重要で、そのよう          Social Fieldを耕す
 医療者どおしの議論はとかく方法     な「場」でなければ、多職種のスキル
論に陥りやすい。             の総和以上のものを生み出すことは難
 問題とは、「望まれた事柄と認      しい。今回の「問題解決アプローチ」

識された事柄の相違」であり、問題     を組織毎に行うことが、真のチーム医

解決には「目標」と「現状」の把握が    療を構築する組織づくりに有効と考え

先決であり重要となる。しかし、医療    た。

者どおしの議論は、とかく方法論に陥

りやすく、これはチーム医療における
信念対立においても同様である。そこ

で、まず「信念対立」に限らず、問題が
生じた際の問題解決アプローチを学ぶ
ことから始めてみた。



組織ファシリテーションとして
 既存のコースや教材は、大部分が
個人それぞれのスキル(認知・運動ス
ワークショップ方略
思考ツールの利用
ワークショップツール
 今回、我々は受講生の深層の意識にアプローチするために様々なツールを利用した。
具体的には

 1)MindMap(職種毎の信念対立を明らかにする)

 2)デザイン思考(問題解決)

 3)U理論(深層心理・思考へのアプローチ)
 などのいくつかのツールを組み合わせて利用した。



1.MIND MAP
1-1 Mind Mapとは?
Mind Mapについて
マインドマップは、英国の教育者トニー・ブザンが開発した自然な形で脳の力を引き出す思考
技術です。
それはまさに自然を模倣したかのように放射状にノートを取る方法で、思考が整理され、記憶
力が高まり、発想力が飛躍的に向上するなど、さまざまな能力を高めることができます。
ビル・ゲイツ、アル・ゴアをはじめとするグローバルリーダーが活用していることでも有名
で、また、IBM、ディズニー、BMW、ナイキなどの国際企業では研修が行われ、マインドマッ
プで会議が行われることもしばしばです。


1-2 Mind Map活用の利点
 Mind Map活用の利点
   Mind Mapは複雑に同時進行する思考・行動を
 表すのに適していると言えます。

   また、MindMapは、右脳も活用することから、
 行動に表れない水面下のスキルや思考経路を表現で

 きることから、本人達も気づかない各職種毎の思考
 経路・視点の違いなどを表出するのに適しており、
 今回、自分達も気づかない信念対立を明らかにする

 のに有効なツールであった。
2.問題解明ツール
デザイン思考・U理論の応用
 今回、信念対立を解明する第一歩として、問題解決
のアプローチ法を学ぶワークをまず取り入れた。

我々、医療者どおしの議論は、とかく方法論に終始し
がちになる。今回のワークでは、例題を通して表面的
な問題の捉え方でなく、「問題を抱えているのは誰

か?」「あなたの問題の本質は何か?」という問いを
突き詰めることにより、それぞれの固定観念の枠組み

を越えた問題の本質を捉える事が出来た。
 また、信念対立を「解決でなく解明」するために
は、お互い、行動→態度→価値観さらには、本人さえ

も自覚していない深層心理まで掘り下げることが必要
で、これには「U理論」および「デザイン思考」のツー

ルが効果的であり、とくにデザイン思考で使われる
「共感マップ」は対立相手側が「何を見て」「何を感
じて」「何を考え」「何を聞いて」「何の行動をとる
                            共感マップ
か?」という事を相手(時に自分)の立場に立って、表
出するツールであり、コレが京極氏の言うところの

「諸志向」「諸契機」の掘り下げ、「連携可能性の確
                                U理論
保」(共通認識・共通目標の確認)に有用であると思
われた。




               デザイン思考
ワークショップ開催




                                            MindMap




「チーム医療と信念対立」ワークショップ開催
 今回、我々は当院で行われた「NST専門療法士研修」のカ
リキュラムの中で「チーム医療と信念対立」ワークショップ
を開催した。参加者は、医師・看護師・薬剤師・検査技師・
栄養士・事務職と職種は多岐に及んだ。


                                           共感マップ

 職種による視点の違いを           共感マップを用いた対立解明       開。その上で、自分の「共感出来る

 MIndMapで描出             次に、個人個人で信念対立のケー 部分と出来ない部分」を洗い出し、

   今回は、NST研修の一環でもある    スを挙げてもらい、その中からグル     それぞれを深層心理まで掘り起こ

 ことから、NSTの症例呈示を行い、     ープで一例ずつ選んでもらった。     すようにファシリテーション(U理論

 それぞれの職種のグループ毎で、気に      「NST導入したいNsと抵抗する   やNLPの技法を利用)することで、そ

 なる点(重視したい点)をMindMap   Nsの対立」や「上司と部下の対立」   の場(他のグループ含めて)(時には

 で抽出。それぞれMIndMapを全員で   「プライベートでの同性どおしの対    自ずから)から、解明策が発現し

 鑑賞(ただ、字面だけ追うのでな       立」に至までテーマは多岐にわたっ    た。(連携可能性の確保)

 く、まるで草花を観賞するかのよう      た。                  共感マップの今後の活用展開
 にMindMapのブランチの分かれ方・    それぞれのケースについて、グル     職場での学習、また職場の組織・
 伸び方まで五感で感じるように)       ープ毎に対立相手が「何を見て」「何 環境改善をするためには、デブリーフ

 し、その後お互い感じた事をシェア      を感じて」「何を考え」「何を聞い    ィングで、気づいたこと、疑問、発
 した。それぞれが職種毎の視点の違      て」その結果「どういう行動をとっ    見、学びを安心してグループで話し合
 いを感じたようだった。(相対可能      てるのか?」という項目毎に、相手の   える事である
 性の確保)                 立場になって「共感マップ」上に展
デブリーフィングの方法について      で掘り下げ事ができ、より効果的な
は、いくつかあるが2008年ピッツバ      デブリーフィングが出来ると考えら

ーグ大学医学部のWISERシミュレー      れ、今後活用予定である。
ションセンターでは、AHA(アメリ
心臓協会)と共同開発し、デブリーフ

ィングの方法を3つの段階に分けた
「G.A.Sメソッド」(別表)を提唱し

ている。
   このG(情報収集)の段階で共感マ
ップを使用することで、表面的な情報

にとどまらず、思考経路の深い部分ま




  今後の展開
  今回は「信念対立解明アプローチ」入門

編という位置づけで、解明術のまえに「問題
解明アプローチ」 を学ぶワークショップを
展開した。

  今後は、この入門編の続編として実際の
臨床現場における信念対立ケースを題材に

「解明アプローチ」ワークショップを検討中
である。
  具体的には、

  ①まずは良くある信念対立場面のDVDを
上映し、これを題材に解明アプローチの方法

を学ぶ。
  ②次に、それぞれが抱えている信念対立
ケースにたいして解明を行っていく。

  このワークショップ個人個人がOff the
Job Trainingとして学ぶというよりも、施設

毎で開催することにより、組織ファシリテー
ションともなり有効であると感じており、今
後、施設毎の開催を検討中である。

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チーム医療と信念対立 ハンドアウト2012.09.25

  • 1. チーム医療と信念対立 真のチーム医療の構築を目指して
  • 2. 開発背景 現状 「チーム医療」と言われて久しいが、「チーム医療とは?」と いう解釈が不明確なままに、言葉だけが独り歩きしている感 がある。 アメリカ心臓協会(AHA)では、心肺蘇生コースにおいて「チー ムダイナミックス」という概念を提唱し、浸透(?)したよ うに見える。しかし、「チームダイナミックス」はトレーニ ングコースの「急変シナリオ」の中でのチームリーダー中心 の役割分担に過ぎない。 これは、本当のチーム医療なのか? AHA ACLS G2005 Team Dynamics チーム医療というと聞こえがよい ど)も含まれる)から重症を見抜 チーム医療の定義 が、コメディカルは医師のサポート役 くアプローチ。 チ ーム医療とは、患者を中心に各種 (手足)であり、多職種であること * 共通理念は患者安全、共通目標は の医療専門職が、共通の理念を基盤 の強みが活かされていない。 「患者の重症に早く気付き、安定 に、それぞれの専門性を活かし、共 (*コメディカルという言葉自体が医 させる」。 有した目標に向かって協働して医療を 師中心であることを示している。) すなわち、そこには信念対立が存 実践することである。(「チーム医 療と看護」川島みどり著) しかし、それぞれの専門性を活かすの 在するわけです。それを無理矢理、医 上記の「それぞれの専門性を活か は、医学的アプローチ(思考)だけ 師側の信念側に持ってきているのが 現状。(信念対立を否定しようとす し」というのがポイント! では不十分。 看護学的アプローチ(思考)などの る) 実情 各職種毎のアプローチが共通理念の し か し 、 現 状 の チ ー ム 医 療 の 大 半 基に同時的に働いているのが理想。 は、医師がチームリーダーとなり(例 * 例えば、医師は臨床推論的に鑑別 外もありますが)他の職種はリーダー 診断を重視する。看護師は生理 の考え(医学寄りの信念)の基にサ 的・フィジカルアセスメント(超 ポートするというのが実際。 急性期でなければ、現場の調整 あくまで医師中心のチーム。 (コミュニケーション・倫理な
  • 3. 目指すべきは、、、 まずは、互いの職種間の信念対立 ある程度の時間で「ワードカフェ」 を解明するためのワークショップの のようメンバーを入れ替えるのも良 多職種がミッションのもとに、そ し。 れぞれの特性を活かしつつ、相乗的 企画がStartした。 ⑤各職種の信念対立を明らかにす 1)コース目標 に協働するチーム医療。 る。(ここで、各職種が混ざったグル ★それぞれの職種によるアプローチ それぞれのパートを活かしつつ共 ープ分けに再編し、ディスカッション (信念)の違いを理解する。 通コードの上で臨機応変に対応して してもらってもよい) ★互いの信念を尊重したうえでの多職 いく。 種間のディスカッションができる。 そう、まるでJazz sessionの 2)コース手法 ような、、、 ①各職種毎のグループに分かれてもら う。(医師・看護師・薬剤師・な ど、医師を上級医組と研修医組に分 ければ指導医研修にも応用可能) ②各テーブル毎に「気付きコース」で 使用しているビデオ*(信念対立が明 らかになるように、なるべく重症過 Gapを埋めるには? ぎない症例の方が望ましい。) *病院に到着した患者の様子を模擬 我々は、まず多職種間の信念の違 患者(役者)を使って撮影した映像 いを明らかにすることを第1歩と考え で、映像から様々な症状・徴候を評 た。 価することを目的として制作。 同質性を前提としたチ ③各テーブル毎にDVDを視て、どう いう思考でこの患者にどうアセスメ ームワークから異質性を前 ントし、行動するかをまとめる(ア 提としたチームビルディン プ ロ ー チ 法 は 定 型 化 せ ず、 自 由 に ) (マインドマップなど使うと、定型 グへ! 的なアプローチにならず、思考の部分 まで見える化できそう) ④各テーブル毎に発表してもいいし、
  • 4. やってみた! 試作コース開催 る。よって、あえて『チーム医療』を 特に、患者評価の部分において両 2012年1月16日∼26日にかけて当 意識したことはない。」との回答。 者の違いが毎回見受けられた。 院に救命士の再教育研修の一環とし これは我々の「チーム医療は異質 救急隊の場合、職務上、素早く推 て、「プレホスピタルとホスピタルの 性を前提とする」という持論と偶然に 定疾患(重症度だけでない)を導き出 信念対立」と銘打ち、救命士と当院看 も一致するものであった。 し病院選定、搬送するという職務があ 護師とのグループワークショップを計 続いて、今回のルール説明。特に る。そのため、話せる患者に対して 4回開催した。 縛られることなく、自由に「気づいた は、疾患に結びつけるためのいわゆる 点」「知りたい点」「どう行動す 「Closed Question」(OPQRSなどの る?」などを各グループ毎で話し合っ 症状に特化した問診)を用いる傾向に てもらうよう説明した。 ある。 患者(今回は呼吸苦とアナフィラ キシーショック)DVD*を映写し、そ れぞれのグループで話し合い、その後 グループ毎に発表してもらった。 開催報告 (*我々が現在、開発中の「救急外来医学 「チーム医療とは何か?」という コース」の導入DVD を使用) 問いから、ワークショップStart。「個 結果 人個人の能力を協力して行う」など、 それぞれの職種の発表をホワイト 予想された回答のなか印象的だったの ボードにまとめると、評価方法におい は、ある救命士から出た「自分らは、 て、職種の違いを認めた。 いつも1つのチームとして動いてい
  • 5. 救命士の患者評価 看護師の患者評価 度だけでなく、疾患によって選定す とされる報告について話し合っても 一方、看護師側は、疾患を推論す る(逆に言えば患者を受けてもらえ らった。 るというより、重症度について生理 る)必要があるからであり、このア 書籍中で「良い例」とされる報告 学的に評価する。 プローチはむしろ医師のアプローチ 例は様々な疾患に結びつくKeyword つまり、患者に最初に接触するプ に近い。また、最近の救急活動のコ が散りばめられているが、救命士の レホスピタルの救命士の方が、後に接 ミュニケーションに関する書籍を見 グループからは「こんなに疾患を断定 する病院側の看護師よりも臨床推論 ても、医師側が救急隊に「予想され していいのか?」「医師によって推測 的アプローチを用いているという事 る疾患名」を求めている。 疾患名を求める場合と、疾患名を出 が興味深い点であった。 追加モジュール すと機嫌を損ねる場合がある。」と (また、今回「看護師→医師」 今回、救急隊と病院側の信念対立 の意見が出た。 「救命士→医師」という報告も行っ の場面として多いと思われる「患者 この書籍中の「良い例」は医師に てもらったが、アプローチの違いが 収容要請の電話」にスポットをあ よって書かれたものであり、医師側 そのまま報告様式にも表れる結果と て、「理想的な患者収容要請と の信念に近づけようと取れなくもな なった。) は?」について話し合ってみた。 い。今後、医師グループ含めたワーク これは、現在の救急隊の業務のな 方法として「救急活動コミュニケ ショップ開催の必要性を示唆すると かで「病院選定」というものが重要 ーションスキル(坂本哲也 他著)」 言えよう。 な位置を占めており、生理学的重症 を用いて、書籍中で、良い例・悪い例
  • 6. 今後の展開 多職種による信念対立ワークショッ 医師と看護師の役割について興味 (*M.ジョンソン&マーチン 稲 プの開催 深い記述がある。*それは、看護師 田八重子他訳「看護婦の役割につい 今回は、救命士と看護師のみの参 の活動は「治療的環境を整えるこ ての社会的分析ー看護の本質、現代 加であったが、今後この試みを多職 と」すなわち「安楽で心地よい物理 社1981.) 種、また同職種であっても、「指導 的環境を作り出すことから、説明し つまり、医師という職種は診断・ 医VS研修医」「急性期病棟看護師VS たり、安心させたり、理解したり、 治療における専門職であって、全体 慢性期病棟看護師」など、様々な医 支えたり、受け入れたりするとい を見て、場をコーディネイトするとい 療スタッフ 参加のワークショップを う、より直接的に養育的な活動にま うのに必要なGeneralな視点は持ち合 開催していきたい。 でわたる。これらの行為は、患者の わせていないということになる。 また、今回のワークショップで 緊張度を低め、患者に直接的満足感 そういった意味において、医師は は、評価・報告の違いを明らかにす を与えるというところに主たる意味 治療の指示をだす「コマンダー」に るものにとどまったが、今後もっ がある。」といい、また、「診察し はなり得ても「チームリーダー」には と、それぞれの職種毎の思考にまで たり、診断したり、処方したり、治 決して適任とは言えない。 お互いが気づくようなファシリテー 療したりという医師の活動は、直接 チームリーダーは場面により、変 ションが必要と感じられ、今後の課 的には患者に満足を与えない。患者 化、時には看護師が、時にはケアマ 題と思われた。 はこれらの活動が回復にとって必要 ネーシャーが、また患者自身がリー 医師中心のチーム医療からの脱却 であるとは理解しているが、それ自 ダー(在宅療養などの場合)とさえな 現在「チーム医療」と呼ばれてい 体は、困惑させる、痛みのある、不 り得るのである。 るものは、医師がリーダーで他の職種 安を引き起こすものであると、感じ 今後、それぞれの職種の「信念対 は「チームメンバー」という名の医師 ている。」とある。(川島みどり著  立」を解明することによって「医師 の手足となり、医師の価値観・アプ 「チーム医療と看護」看護の科学 中心のチーム医療からの脱却」「異 ローチに基づいて行動している。 社) 質性を前提としたチームの構築」に つなげていきたい。
  • 7. 信念対立解明アプローチ 「信念対立解明アプローチ」@チー ③コミュニケーションの価値を巡る ム医療推進協議会 信念の衝突 2012年2月6日にチーム推進医療 などである。 協議会主催で行われた京極真先生の 信念対立解明 講演を聴いてきました。今回は特に 京極氏は「解決よりも解明を重 「チーム医療における信念対立」に 視」と強調する。 ついて講演頂き、京極先生ともお話 解明とは、「問題が発生する条件 しする機会も持つことができ、今 を変えることによって、問題が問題 後、我々の活動のなかでご指導頂こ 化しないように終わらせること」 うと思っております。 で、時として問題をさらに強化させて 『チーム医療」における信念対 しまう解決とは異なるものである。 立 チーム医療を行うにあたって信念 対立が生じる場面は、 ①患者と専門職中心という相反する 信念の衝突 ②チーム医療のリーダー的役割を巡る 信念の衝突
  • 8. チーム医療における信念対立の 次に、そこから「さしあたり(実 だけど、、、」などと、言語化し、 際には確実な実践は存在しないの 強調していく行為が重要である。こ 問題点 で)有効なやり方は?」と方法を探 れが、京極氏の言う「回路を繋いで 我々は、ついつい「チーム医療の っていく。 いく」作業となる。 実践方法」という方法論から学習し 「誰がリーダーか?」「患者中心? 京極氏は著書の中で、信念対立解 ていく。そうすると「正しい実践」 専門職中心?」 明アプローチを「解明術壱号」「解 (実際には、実践はやってみなけれ チーム医療において最も信念対立 明術弐号」「解明術参号」に分け ば分からない)があるという確信に が起こりやすい問題だが、この回答 (次ページスライド参照)、解明術 ため、信念対立が起こりやすくな は、状況と目的によって変わる。 壱号は「契機と志向性を意識化す る。 つまり、「状況と目的」 る」行為で、解明術参号は「人々の チーム医療における信念対立解 回路を繋ぐ(共通の状況・目的の共 によってチーム医療のやり 明アプローチ 有)」行為であると説明している。 方を変える必要がある。 重要なのは、「方法論」でなく、 「目的」から入り、それを共有する 一方、このやり方は多様性を保証 ことである。つまり、「きっかけは できる反面、チームを突き動かすド 何?」「状況は?」「何の為に?」 ライバーに欠けるとも言える。そこ 「目的は?」といった問いかけか で、重要なのが共通の状況・目 ら、共通の目的・状況を共有するこ 的の共有である。実際には、 とが重要。 「我々(私)の今の状況は、〇〇〇
  • 9. 今後のチーム医療のあり方 レーション訓練だけでは不十分で、その ための方法も再度検討していく必要があ 京極氏の主張のように、チーム医療 のやり方は、状況と目的によって変わる ると感じた。 今後、様々な方々の意見を伺いなが べきと思われる。(例1:「超急性期」 ら、より良い方向性が見いだせればと思 なのか?「慢性期」なのか?)(例2: 心肺蘇生においてはACLSのような一人 います。 のコマンダーをリーダーとしたアルゴリ ズム的が適しているが、慢性期疾患で は、Ns中心のチームが適しているかも しれない) つまり、チームの方法論を一定化す るのでなく、多様性に富んだチーム医療 (その部分においては認知プロセスの強 化が重要かもしれない) そして、チームの多様性を保証する 一方で、今まで以上に共通した状況・目 的の共有を図ることが重要となる。 今後、今までのようなアルゴリズム をなぞるようなシナリオベースのシミュ
  • 10. チームビルディングワークショップ チーム医療プロジェクト 状とのGapを埋めるための方略をブレ この目標を大きく分けると2つの状 真のチーム医療構築のために、ま インストーミングした。 況確認と安定化すなわち ず第一歩として「信念対立解明アプ コンセプト: ①患者の状況確認・安定化 「異質性を前提としたチーム医 ②場の状況確認・安定化 ローチ」ワークショップの開発に着 療」というコンセプト。そのために であり、特に②については今までの 手したが、もちろんそれだけでは不 十分である。 は、「信念の多様性を保証」では、 既存のコースでは、あまり触れられな 今回、我々は「チーム医療プロジ 片手落ちで、チームとして協働的に動 かった部分であり、今回重要視する ェクト」の構成要素として、多職種 くために、より強い「目的・状況の 部分である。 共有」が重要となる。「尊重」「共 ①患者の状況確認と安定化 や立場の違いによって生じる信念対 感」「対話」というキーワードが考 患者の急変の予兆を早期に認識する 立を解明する①「信念対立解明アプ ローチ」ワークショップ。異質性を前 えられ、特にディベートではない「対 いわゆる「気付き」からはじまり、 提としたチームビルディングに重点を 話(ダイアローグ)」が重要と考えら 適切にACDAサイクルをまわすのは、 おいた②「チームビルディング」ワー れた。一方で、「目的・情報の共有 既存コースでも示されてきたが、今回 のワークショップでは、チームリーダ クショップ。また、「真のチーム医療 手段」は具体的にどうするかが検討 課題となった。 ーは医師以外を想定しているため、 構築」のためには、個々の変化だけ 「Decision Making」を重要視した。 では不十分であり、「組織をどう、 コース目標: 医師以外の職種(おもにNs)が 変革・成長させていくか?」に趣を 下記の項目をコース目標として挙 おいた③「ホールシステムアプローチ げた。 Decision Makingをする際には、様々 な障壁が存在する。 (学習する組織)」ワークショップ ①病態変化(の予兆)に気づくこと 今回のワークショップでは、この部 (仮)を3本柱として考えた。 が出来る。 分をいかに克服するかがkeyの1つと ②適切な初期対応(処置・報告・招 「チームビルディング」ワ 言える。 集)ができる。 ークショップ開発 ③Communicationと適切な役割分担 「チームビルディング」ワークシ ができる。 ョップを企画するのあたり、理想の ④リスクを最小限にする場のコン チームビルディングの姿、および、現 トロールが出来る。
  • 11. Decision Making ②場の状況確認と安定化 という能力が必要であり、これらを 今回の構想の特徴でもあるが、今ま コース内にどう埋め込み、評価してい では医療的指示を出す「コマンダ くかが課題である。 ー」が「チームリーダー」であった。 しかし、医療的指示が適切であって も「チーム医療」はうまく機能しな い。コマンダー=リーダーで必ずしも ある必要はなく、上手く場をコント ロールする能力がリーダーには求めら れる。そのために、 ①Task Management ②Situation Awareness ③Communication
  • 12. コース方略 a)「それぞれの職種の立場で発揮でき う。時間軸によってチーム形態も変 る力(処置・報告・処置)はなにだ 化(災害医療時の「折りたたみ可能 従来の超急性期病態のコースにあ るようなアルゴリズムをなぞるよう ったか?」(自身・他者の役割)につ な組織」のように) いて話し合う。 c)チームビルディングのロールプレ な方法はとらない。 b)「この場の共通した目標は何だった イ:それぞれが医師役・Ns役などを なぜなら、今回の目指すべきチー ムとは、病態や経過によって臨機応 か?」を話し合う。 演じる。(それぞれの職種・職歴・ 変に変化していくチームであり、それ c)「協働するとは何か?」を話し合 性格などの背景を設定)その後、お は、施設によっても(組織体系・マ う。 互いに気づいた点をディスカッショ ンパワー・地域性など)目指すべき形 ③提示ストーリーについて、気付き ン。 →Categorize→Decision Making→報 態が変化するものであり、それは画 一化されたアルゴリズム至上主義の 告(患者の評価・安定化だけでな 今後の課題 コースでは達成出来ないからである。 く、場を評価し、安定化することも 今後、試作コースを展開しなが (部分的にはアルゴリズムを用いる 同時に行う)の流れをNsをリーダー ら、改善点を見いだしていくことに としてやってみる。 なるが、現時点での問題点は、「チ 部分もあるかもしれない) 方法としては、 ームビルディング」ワークショップの 実際には、 ①ある場面(従来のコースよりは時間 a)マネキンを使ったシミュレーション 評価方法をどうするかという点。 b)机上訓練:災害医療訓練(例: また、この「チーム医療構想」に 的に余裕があるような病態から導入 を考えている)を想定したストーリ Hospital MIMMS)のように、それぞれ は、組織側の変革も必須であり、現 の施設にあったマンパワー・組織形 在、「ホールシステムアプローチ(学 ー(DVDなどで提示)を導入として 態・急変時対応体制に沿って、(Dr 習する組織)」ワークショップも企 用いる。 ②①の提示ストーリーを題材として がすぐに来ない場合やDrが専門医の 画中である。 「異質性を前提としたチームビルディ 場合、研修医の場合など、その施設 ング」について話し合う。(以下) 毎によくあるケースを設定)話し合
  • 13. コース方略の転換 毎日のように繰り返される不毛な会議。 医療関係者は対話・問題解決が苦手。と かく方法論の議論に陥りやすい 信念対立解明アプローチ入門編 キルやコミュニケーションスキルな として ど)を向上させるのが目的であり、草 職種毎の信念の違いを明らかに 木(人材)一本一本を対象にしたもの し、理解した上で、真のチーム医療を と言える。一方、今回の問題解決アプ 構築するには信念対立解明が必要とな ローチの改善は、いわゆる組織の る。しかし、我々、医療関係者は対話 「場」(Social Field)を耕す行為と言え や問題解決が苦手であり、結論の出な る。「真のチーム医療」を実現するに い(結論が出ても全員の総意でなく、 は、個々のスキルアップも重要だが、 意見の強い者の意見が押し通る場面な 問題(望まれた事柄と認識された事柄 ど多々みられる)不毛な会議など、そ の相違)が生じた際に、対話がしやす の典型例である。 い「場」であることが重要で、そのよう Social Fieldを耕す 医療者どおしの議論はとかく方法 な「場」でなければ、多職種のスキル 論に陥りやすい。 の総和以上のものを生み出すことは難 問題とは、「望まれた事柄と認 しい。今回の「問題解決アプローチ」 識された事柄の相違」であり、問題 を組織毎に行うことが、真のチーム医 解決には「目標」と「現状」の把握が 療を構築する組織づくりに有効と考え 先決であり重要となる。しかし、医療 た。 者どおしの議論は、とかく方法論に陥 りやすく、これはチーム医療における 信念対立においても同様である。そこ で、まず「信念対立」に限らず、問題が 生じた際の問題解決アプローチを学ぶ ことから始めてみた。 組織ファシリテーションとして 既存のコースや教材は、大部分が 個人それぞれのスキル(認知・運動ス
  • 14. ワークショップ方略 思考ツールの利用 ワークショップツール 今回、我々は受講生の深層の意識にアプローチするために様々なツールを利用した。 具体的には 1)MindMap(職種毎の信念対立を明らかにする) 2)デザイン思考(問題解決) 3)U理論(深層心理・思考へのアプローチ) などのいくつかのツールを組み合わせて利用した。 1.MIND MAP 1-1 Mind Mapとは? Mind Mapについて マインドマップは、英国の教育者トニー・ブザンが開発した自然な形で脳の力を引き出す思考 技術です。 それはまさに自然を模倣したかのように放射状にノートを取る方法で、思考が整理され、記憶 力が高まり、発想力が飛躍的に向上するなど、さまざまな能力を高めることができます。 ビル・ゲイツ、アル・ゴアをはじめとするグローバルリーダーが活用していることでも有名 で、また、IBM、ディズニー、BMW、ナイキなどの国際企業では研修が行われ、マインドマッ プで会議が行われることもしばしばです。 1-2 Mind Map活用の利点 Mind Map活用の利点 Mind Mapは複雑に同時進行する思考・行動を 表すのに適していると言えます。 また、MindMapは、右脳も活用することから、 行動に表れない水面下のスキルや思考経路を表現で きることから、本人達も気づかない各職種毎の思考 経路・視点の違いなどを表出するのに適しており、 今回、自分達も気づかない信念対立を明らかにする のに有効なツールであった。
  • 15. 2.問題解明ツール デザイン思考・U理論の応用 今回、信念対立を解明する第一歩として、問題解決 のアプローチ法を学ぶワークをまず取り入れた。 我々、医療者どおしの議論は、とかく方法論に終始し がちになる。今回のワークでは、例題を通して表面的 な問題の捉え方でなく、「問題を抱えているのは誰 か?」「あなたの問題の本質は何か?」という問いを 突き詰めることにより、それぞれの固定観念の枠組み を越えた問題の本質を捉える事が出来た。 また、信念対立を「解決でなく解明」するために は、お互い、行動→態度→価値観さらには、本人さえ も自覚していない深層心理まで掘り下げることが必要 で、これには「U理論」および「デザイン思考」のツー ルが効果的であり、とくにデザイン思考で使われる 「共感マップ」は対立相手側が「何を見て」「何を感 じて」「何を考え」「何を聞いて」「何の行動をとる 共感マップ か?」という事を相手(時に自分)の立場に立って、表 出するツールであり、コレが京極氏の言うところの 「諸志向」「諸契機」の掘り下げ、「連携可能性の確 U理論 保」(共通認識・共通目標の確認)に有用であると思 われた。 デザイン思考
  • 16. ワークショップ開催 MindMap 「チーム医療と信念対立」ワークショップ開催  今回、我々は当院で行われた「NST専門療法士研修」のカ リキュラムの中で「チーム医療と信念対立」ワークショップ を開催した。参加者は、医師・看護師・薬剤師・検査技師・ 栄養士・事務職と職種は多岐に及んだ。 共感マップ 職種による視点の違いを 共感マップを用いた対立解明 開。その上で、自分の「共感出来る MIndMapで描出 次に、個人個人で信念対立のケー 部分と出来ない部分」を洗い出し、 今回は、NST研修の一環でもある スを挙げてもらい、その中からグル それぞれを深層心理まで掘り起こ ことから、NSTの症例呈示を行い、 ープで一例ずつ選んでもらった。 すようにファシリテーション(U理論 それぞれの職種のグループ毎で、気に 「NST導入したいNsと抵抗する やNLPの技法を利用)することで、そ なる点(重視したい点)をMindMap Nsの対立」や「上司と部下の対立」 の場(他のグループ含めて)(時には で抽出。それぞれMIndMapを全員で 「プライベートでの同性どおしの対 自ずから)から、解明策が発現し 鑑賞(ただ、字面だけ追うのでな 立」に至までテーマは多岐にわたっ た。(連携可能性の確保) く、まるで草花を観賞するかのよう た。 共感マップの今後の活用展開 にMindMapのブランチの分かれ方・ それぞれのケースについて、グル 職場での学習、また職場の組織・ 伸び方まで五感で感じるように) ープ毎に対立相手が「何を見て」「何 環境改善をするためには、デブリーフ し、その後お互い感じた事をシェア を感じて」「何を考え」「何を聞い ィングで、気づいたこと、疑問、発 した。それぞれが職種毎の視点の違 て」その結果「どういう行動をとっ 見、学びを安心してグループで話し合 いを感じたようだった。(相対可能 てるのか?」という項目毎に、相手の える事である 性の確保) 立場になって「共感マップ」上に展
  • 17. デブリーフィングの方法について で掘り下げ事ができ、より効果的な は、いくつかあるが2008年ピッツバ デブリーフィングが出来ると考えら ーグ大学医学部のWISERシミュレー れ、今後活用予定である。 ションセンターでは、AHA(アメリ 心臓協会)と共同開発し、デブリーフ ィングの方法を3つの段階に分けた 「G.A.Sメソッド」(別表)を提唱し ている。 このG(情報収集)の段階で共感マ ップを使用することで、表面的な情報 にとどまらず、思考経路の深い部分ま 今後の展開 今回は「信念対立解明アプローチ」入門 編という位置づけで、解明術のまえに「問題 解明アプローチ」 を学ぶワークショップを 展開した。 今後は、この入門編の続編として実際の 臨床現場における信念対立ケースを題材に 「解明アプローチ」ワークショップを検討中 である。 具体的には、 ①まずは良くある信念対立場面のDVDを 上映し、これを題材に解明アプローチの方法 を学ぶ。 ②次に、それぞれが抱えている信念対立 ケースにたいして解明を行っていく。 このワークショップ個人個人がOff the Job Trainingとして学ぶというよりも、施設 毎で開催することにより、組織ファシリテー ションともなり有効であると感じており、今 後、施設毎の開催を検討中である。