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お金のなくなる日
貨幣の歴史とお金のない世界における生存戦略
ブルー・マーリン・パートナーズ代表
シェアーズ代表
山口 揚平
早稲田大学政治経済学部卒、東京大学大学院修士
1999 年より大手コンサルティング会社で M&A に従事し
カネボウやダイエーなどの企業再生に携わった後、独立・起業。
企業の実態を可視化するサイト「シェアーズ」を運営し
証券会社や個人投資家に情報を提供する。2010 年に同事業を売却。
現在は、コンサルティング会社をはじめ、複数の事業・会社を運営する傍ら
執筆・講演活動を行っている。専門は貨幣論・情報化社会論。
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目次
はじめに
1章 貨幣の歴史 — お金の起源とビットコイン
2章 貨幣の未来 — お金のなくなる日
3章 ネットワーク社会 — 「円」から「縁」へ
4章 21世紀のビジネス — 「モノ」から「コト」へ
5章 21世紀のリテラシー — 今意識するべき4つの方向性
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はじめに
この小冊子を手に取ってくださった方へ。
ありがとうございます。
この小冊子は、2017 年 4 月 21 日に行われた「フィンテック・ブロックチェーンなどのテクノロ
ジーの進化の先、お金のなくなる時代?! ~21 世紀のお金のリテラシー~」セミナーの内容を
要約したものです。
M&A という企業価値を分析し、買収するという現場で培った知と、大学院での貨幣について
の研究から得た知を結集しています。皆さまが 21 世紀をより豊かに生き抜く糧になれば幸い
です。
どうぞ、ゆっくりとお読みくださいませ。
ブルー・マーリン・パートナーズ代表
シェアーズ代表
山口揚平
yy@bluemarl.in
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第 1 章 貨幣の歴史 — お金の起源とビットコイン
なぜピカソはお金持ちでゴッホは貧乏だったのか?
これからお金にまつわるとっても面白い話を始めます。
最初に、有名な画家ピカソについて、少しお話をしたいと思っています。なぜならこのピカソこ
そがお金の天才だったからです。彼はお金の正体、その本質を知っていました。実際、ピカソ
が亡くなる時には 3000 億もの資産を持っていたいと言われます。
ピカソの本名、ご存知ですか?
パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメデ
ィオス・シブリアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソというのが全体の名前
です。長いですよね。様々な聖人や親戚、親友の名前をもらって付け加えていったからだと言
われています。
するとピカソは様々な縁、今で言うネットワークを広げ深めてゆくことになったのです。
その名をつなげることでピカソは縁者と協力者を募っていきました。貨幣の本質、すなわち貨
幣とはコミュニケーションのための言語であって、その価値はネットワークと信用であるとわかっ
ていたのです。
そしてピカソは一流の売り手でもありました。通常の画家は絵を画商に託して、自らは創作活
動をするわけですが、ピカソはそうではなくて、絵を書き上げたら画商達を集めて、絵を見せる
前に 1 時間くらい話します。この絵にどのような背景があり、どのような心象風景を描いたもの
なのかを話すのです。そして最後にぱっと絵を見せます。すると絵に物語がついてくるのです。
人はモノを買うのではなく、物語を買う、それがわかっていたのですね。そうやって絵の価値を
上げていったわけです。
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シャトー・ムートン・ロートシルトという有名なワインがあります。そのラベルのひとつはピカソが
描いたものです。現在でいうと一本約 16 万円です。このワインのラベルを描きましたが、ピカソ
は「その代金をお金でなくワインでください。」というわけですね。なぜならその方が、将来的に
は価値が上がるからです。ロートシルト男爵もお金の本質を分かっている人ですね。年数が経
つと、当然ワインの値段が上がるわけですね。そしてピカソも創作活動をするため、有名にな
っていきます。そうするとワインの熟成年数とピカソの名声の上がり方の掛け算で値段が上が
っていきます。一挙両得。画家は通常、自分が最初に売った絵がその後いくら高値で取引さ
れても一銭も入ってこない。しかし、このワインなら違う。どんどん値が上がりしかもそれを画家
である自分が保有しているわけですからピカソにとって最高の投資先になったわけです。
またピカソは日常生活の少額の支払いであっても好んで小切手を使っていました。例えば金
物を買ったりするときに、小切手を出していたのですがなんでしょうか?普通は小切手を渡さ
れたら、換金しますよね?でもピカソからもらった小切手は、ピカソのサインが書いてあるので、
店主は銀行で換金しないのですね。だからピカソは実際的には代金を払わずに済んだという
話です。自分のサインに価値がありそれは貨幣となりうる、ということまで喝破していたわけです
から賢いですよね。
ピカソにまつわるこういう話はいくらでもあります。ピカソほどおそろしく頭の切れるアーティスト
はいませんでした。彼は本当の天才でした。ものの本質を見抜いていたわけです。それがお
金というとても抽象的なものであったとしても、です。
さて、これから皆さんに、そのめくるめくお金の世界を披露してゆきましょう。
不可解で謎が多いお金。その正体は何なのでしょうか?
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お金が物々交換から始まったのは嘘?
まずは、お金の起源から見ていきましょう。
お金ができる前はいったいどうしていたのでしょう?
物々交換をしていた、おそらく皆さん、そう習ったのではないでしょうか?
しかし、最近の言説ではお金が物々交換から始まったのは嘘だと言われています。
物々交換とは以下のような形のことですよね。
たとえば、山の民族と海の民族がいます。まず森の中にある交換所に海の民族が物品を置い
ていく。
そしてその 1 時間後に山の民族の代理がやってきて、海の民族が置いていったものと自分が
持ってきたものの価値がマッチすると思えば、自分が持ってきたものを置いて、その海の民族
のものを持って帰る。そしてそのまた 1 時間後に海の民族がやってきて、山の民族が置いてい
ったものを海の民族が持っていくという形ですよね。そういう神聖な儀式でした。
私達が習ってきた貨幣については、そもそも物々交換が元々あり、物々交換の不便さを解消
するために貨幣が生まれましたよ、という話ではなかったでしょうか?
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お金の起源は動かせないほど巨大な石だった?
図 1 ヤップ島
これはミクロネシアのヤップ島です。
ヤップ島という小さな島の中にフェイという大石があります
図 2 フェイ(巨石)
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このフェイが、お金の代わりだと言われるですが、よく見てください。大きすぎて持ち運べませ
んよね。これをどうしたかというと、実はここにナマコとかヤシとか、もらったもの、あげたものを刻
んでいきます。つまり、お金という便利なツールがあったのではなく、記帳(記録)から始まって
いるということです。お互いの貸借の記帳がお金の起源なのです。そしてこれは面白い話です
が、たとえこの大石のフェイが海の中に沈んでも、あそこの家は金持ちだったなどということが
ずっと言い伝えられているのですね。だからもはや記帳しなくても、記憶されていくということが
起こっていったりするのです。ある種の権威や信用になっているということです。
今は、ブロックチェーンが注目されていますが、ブロックチェーンとは何かというと、分散台帳シ
ステムと言って、暗号化された取引を各々が持つ台帳に記帳されるわけです。つまり、あらゆる
人が分散台帳を持つ、ということです。これは一本改ざんしても他を改ざんすることができない
ので、嘘がつけない仕組みになっています。その記帳のプログラムをどんどん堅牢にしてゆく
人がいてそのひとたちにビットコインが配られるわけです。
よく考えてみてください。
これはフェイを使った記帳がヤップ島という小さな島を超えて、グローバルされたとも考えられ
ませんか?つまりお金は記帳からはじまって、価値の単位や数字となった。それがまた記帳へ
と戻ってきた。ぐるりと一周したという見方もできます。記録・信用から単なる数字へと、そしてま
た記録・信用へと回帰しつつあるのです。
そして、フェイの書かれた記帳から楔形文字が生まれたと言われおり、文字より先にお金があ
ったということです。これもまた面白いです。いかに人間という種にとってお金というコミュニケ
ーションツールが重要だったか、を物語っているからです。
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民族内から国内への広がり 〜ヴェニスの商人〜
図 3 ヴェニスの商人
この記帳の中心言語である簿記自体はメソポタミアでずっと昔に生まれています。中世ヨーロ
ッパの商人の話は皆さん、シェイクスピアでご存知なのではないでしょうか。ヨーロッパの大商
人たちは自分たちの私的なネットワークをつかって膨大な貸借を貯めて行って、年に一度、リ
ヨンに集まって精算していました。一般の市民にはいったい何が行われているのか、さっぱり
わからなかったでしょうね。この記帳や帳簿の偉大さを知りたい人は、ぜひ「帳簿の歴史」を読
んでみてください。
さて僕は、金の始まりは「記帳」にあったといいました。
ではお金の本質はなんですか?と言われれば、それは記帳を元にした「信用取引・精算のシ
ステム」と答えます。
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ちょっと難しいでしょうか?そもそもなぜ記帳がそんなに重要なのかというと、それは「相手を信
用する」という人間本来の性質にもとづいているからなのです。お金とは人間という種の賢さの
表れです。人々が経済取引をするときにリアルタイムにほしいもの同士を物々交換するのでは
なく、上げたもの、もらったもの、その価値や数量を記帳してゆく、という記録のシステムです。
そしてその記録と各人の信用に基づいて、そこに今、現物の価値ある資産がなくても「信用」
する、ということ。これこそが大発明です。
伊坂幸太郎の小説、「ゴールデン・スランバー」に人間の最大の特徴は、「信用と習慣」だとい
う一節が出てきます。この相手を信用する、ということが取引と分業を中心に発展してきた所以
なのです。ヤクザ同士の取引ではそうはいきません。チャカを片手に港の倉庫で現物同士を
交換しなければなりません。なぜならそこには「信用」がないからです。このような非効率なこと
をやっていればやはりヤクザ業界も廃れていってしまいます。賢い人間は相手を信用するの
です。
もっと深淵な話をしましょう。
人間を生物の一種として捉えるならば、種にとって信用が重要であるということは明らかです。
なぜなら「人間とは、分業と取引によって栄え、“違い”と”社会”によって補完しあうことを選択
した種」だからです。違うことこそが価値、そして違う個体が社会の中で共存し、分業し取引す
ることによって、パンデミックを防ぐことができる、そういうすごい生き残り戦略を選択した生物種
だということです。そのような生物にとって亜人(自分と違う人)を“信用”し、取引することが可
能になったこの帳簿・信用取引システムは最高の発明だったということです。
今回の話を通して、未来を、そしてその時お金がどうなっていくかということをぼんやりつかん
で欲しいと思っています。20 世紀的な考えでいうと、お金多く欲しい、もっと欲しいという感じに
なるのですが、お金は本来、記帳であり、記帳とは信用、貸借ですよね。そして 21 世紀のブロ
ックチェーンテクノロジーはお金を本来の形、つまり信用と貸借の記帳に戻ろうとしています。
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だからこそいま必要なのは、今のお金(100 万円とか)を貯めることではないということです。そう
いうことがわかってほしいと思っています。
「信用取引・精算のシステム」という定義の他に、もう一つお金について定義があります。
お金とは「譲渡可能な債務(信用)」というものです。これも難しいですよね。これはお金という
のは単なる信用ではなく、外部化、つまり個人から切り離せるものだよ、ということです。信用と
は人や組織についてしまうのですが、このような有機体(生物)につく信用はやがて外部化さ
れうる。そして外的なものであり譲渡・売買可能な形になりうると。そうなるとお金として完成され
るのです。
この仕組みがわかると、世界のお金のうちほとんどが起業家・創業者からうまれる、という理由
がわかります。お金の本質から戻ると非常に分かりやすいのです。起業とは何かというと、会社
を作ることなのですね。そして、会社とは何かというと、「その株を売り買いできるようにすること」
なんです。つまりそれは最初から譲渡可能な形となった「箱」を作るということに他ならない。
起業家は、その箱の中に価値をつくり、それらを結びつけて事業を形作っていく。それが会社
であり、その会社の株の価値が上がっていくにつれてお金という財と化すというわけです。ただ
価値を作るのではなく、株という形で譲渡可能にしておくからこそ、彼らはお金持ちになるわけ
です。
繰り返します。お金は譲渡可能な信用ですから、譲渡可能な形にするためには、仕組みから
考えないといけないということなのです。ここにポイントがあるのです。お金持ちになるかどうか
は、価値を作ったかというのではない。どんなに価値があったとしても役に立たないのは、譲渡
可能なシステム、箱を持っていないからです。
サラリーマン社長はどんなに大企業でも大金持ちにはなれない。なぜならどんなに大きな価値
を創り出してもその箱を持たなかったからです。起業家がお金を持っていくのは、最初に箱を
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作った人だからですね。「起業するなら IPO を目指せ。」などと言われますが、IPO は会社の株
が広く譲渡されるような場があるということなのです。譲渡売買が行われるマーケットがある。だ
から IPO するわけですよね。
まとめると 20 世紀にお金持ちになるには 3 つのステップが必要でした。
1.まず譲渡可能な「箱」を造り、2.「価値」を積み上げてゆく、3.最後にその「箱」を譲渡する、
ということでした。このトリックに気がついているかということが大切でした。
しかし、この仕組みは、きっと 21 世紀には通用しないでしょう。なぜならお金そのものがまった
く別のものに変わってゆくからです。そこにブロックチェーンテクノロジーの時代、つまり『超記
帳時代』のからくりがあるのです。その話は後半でします。
記帳として始まったお金は、その後どういう風にいわゆるお金になってゆくのでしょうか。
2 つの見方でその進化を追っていきましょう。
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お金の発展 — 商品の王様として成立した貨幣
図 4 貨幣商品説の説明
最初の見方はボトムアップでお金となるケースです。これには貨幣商品説が挙げられます。よ
く言われるものとして、これはカール=メンガーのお金の定義である「販売可能性が高い商品」
というものがあります。メンガーは僕の修士論文のテーマでした。
図をみてください。1 次財、2 次財、高次財と書いてあります。例えば、木屑よりも木、木よりも森
の方が高次だということです。上にいくほど汎用性がある。つまり下にあるものを補完できる。だ
からより高次な、つまりみんなが欲しがるものの頂点にあるのがお金であるという考え方です。
ボトムアップで発生したものがお金ですね。皆さんがよく知っている鉱物資源がお金になって
います。
金(きん)が商品の王様、お金だった時代があります。皆さんは実は忘れているかもしれません。
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今はお金を金(きん)に交換してくれないですよね。では未だに金(きん)はお金なのか?とい
うとお金とは言えないですね。金を皆さん誰か持っていますか?持ってないですよね?金の延
べ棒とか持っているでしょうか?金が好きな人はもう偏っているのです。一般にインド人が好き
なのですが、先進国の価値観とかでは金ではもうないですよね。若い人は金の時計とか持っ
てないですよね。自己顕示欲が強いと観られてしまう。鉱物としての金は有益性があっていろ
いろなものに使えますが、機能的にももっといいものが出てきていますから、金(きん)はお金
にならないぞという風になってきました。みんなが求めないものはもはやお金ではなりえないの
です。
このようにボトムアップのお金はあくまで流動的なのです。
お金の発展 — ソブリンの権威と信用母体によって生まれたお金
図 5 貨幣信用説の説明
もう一つはトップダウンから生まれたお金です。
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17 世紀の終わりにはもともと国内で取引を行っていた商人が集まって、ヨーロッパでは国際金
融ネットワークができていました。すでに述べたように彼らは膨大な貸借を行っています。信用
できるクラブでの私的取引で、互いの信用をもとにした貸借ができるようになってきた。記帳と
いうのは時間を超えますよね。貸して 1 年後に却ってくる。これが行われるというのは、ある特
定の信用に基づいて行われています。信用が元になってくるのです。そういう効率化が極まっ
ていた。
もう一つの動きとして、イギリス王様ウイリアムス2世がオランダとの戦争でお金がないぞというこ
とになってきていた。お金はないが権威があるのが王様です。権威と権力の両陣営が組んで
できたのが 1696 年イングランド銀行という初めての中央銀行でした。
図 6 中央銀行
皆さんが知っている中央銀行は日本銀行ですね。
株主構成を見ると国際機関ではなく意外に民間機関なのです。これがもとになってよくユダヤ
人が世界を支配しているという言われ方をしたりしていますよね。でもそれは違います。お金を
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支配することなど誰にもできません。そのあたりは一通り陰謀論を読んだあとで、自分で考えて
みてください。
さて現在このような形でお金が発行されているのですが、人々の共通認識である「お金」とはど
こから来ているのでしょうか?
今のお金は、権威や権力が結びつかないとお金として成立しません。有名な貨幣論者の岩井
克人先生は「お金はお金であるから、お金である。」と言っています。これは循環論法と言いま
して、みんながお金と思っているからお金であるということです。お金とは、信用がありなんとか
引き取ってくれる人がいるということを前提として成り立っているということを意味しています。な
んだか禅問答みたいです。
一般的に、通貨の価値は母体の信用と利用者の数、すなわち汎用性で決まります。
さて、現在、先進国で行われていることはなにかというと、各国ともじゃんじゃん擦っているとい
うことです。もちろん日本も、です。輸出を増やすために、自国の通貨を低くする、ということを
やっています。その競争が行われています。これは本当に不自然な現象です。母体の価値を
通貨政策によってあげようということですが、そうは簡単にはいきません。結局は、徴税か戦争、
そのセットでケリをつけてきたのが国家通貨の歴史です。
あらゆる古今東西の戦争は経済戦争です。どんな王様も国も戦争も子供の戦争みたいに始め
ないです。経済的な動機が必ず背景にあります。NHKの大河ドラマみたいにならない。日露戦
争の本当の立役者は誰ですか?というと、みんなが好きなのは司馬遼太郎の秋山兄弟がかっ
こいいということになりますが、がそういうわけではないですよね。やはりなぜ戦争をすることに
なったのか、その経済的動機と、戦費をどうやって調達してきたのか、そこに目を向けなけれ
ば戦争の本質はみえてきません。最近、「お金の流れでわかる世界の歴史」など、戦争の背景
にかならず潜むお金の動機を書いた本も出てきているのでご興味があればぜひ。
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図 7 ビットコイン
きな臭い話から少し変えて新しいお金の話をしましょう。
今話題になっているのがビットコインの B が大文字の方が仮想通貨、そして小文字のこっちは
ブロックチェーンです。
Bitcoin のやりとりは儲かるの?儲からないの?ということに関してはコメントがしづらいですが、
その背後で起こっていることを掴むことによって、各自で考えて欲しいと思っています。
無国籍通貨というのは中央銀行と国家にとっては厄介な存在なわけですね。だって無国籍の
通貨の発行と対応しなきゃいけない。そうすると秩序が保たれない。しかし、考えて欲しいのは、
Bitcoin の価値はどのように決定されるかということなのです。国家の信用が下がれば無国籍通
貨の価値は上がるというそれだけの話ですよね。国家は存続するかどうか、ということを考えて
みれば、自ずと答えが出るのではないかと思っています。
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ブロックチェーンについては、その本質をしっかり知っておくと良いかもしれません。
まずインターネットとブロックチェーンは別ものだということです。
その違いを説明するのは難しいです。例えば、A さんと B さんがいます。A さんの 100 万円が B
さんに移る時、どうするでしょうか?
インターネットでは、A さんの口座から B さんの口座にデジタル上のネットワーク(TCPIP 規格)
を通ってデータが流れます。デジタルデータですから当然コピーが発生する。B さんの口座に
100 万円のデータが表示されたと同時に A さんの口座からその金額を消さなければならない。
これはわかりますよね。
ではブロックチェーンとは何か?今度はパラパラ漫画を思い浮かべてください。
ブロックチェーンではデータは「移動」しません。まず一枚目の紙には A さんの口座に 100 万
円が書いてあります。B さんにはなにもなしです。しかし 2 枚目をめくるとあら不思議、A さんの
口座にはなにもなく、B さんの口座に 100 万円と書いてある。パラパラ漫画やアニメのしくみと
はパラパラとセルをめくるとあたかも動いているように見えます。しかし実際には動いていない。
視覚のトリックです。ブロックチェーンも同じです。これは A さん、B さんの取引を記帳したわけ
です。そしてその世界中の膨大な取引の記帳を毎時間、記帳し続ける。その記帳の束(ブロッ
ク)が連なっている(チェーン)から、ブロックチェーンなのです。
インターネットが世界をデジタル化して、コミュニケーションを加速させる技術ならブロックチェ
ーンは、世界を『上書き』し続ける技術。インターネットと同じインパクトをブロックチェーンが持
つといわれるのは、前者は空間を広げ、後者は時間を刻むからです。いかがでしょう?少しだ
けでもしくみがわかるといいのですが。
ここまでは過去のお金の話です。
ではこれからのお金について話しましょう。
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第 2 章 貨幣の未来 — お金のなくなる日
お金の本質は数字である
図 8 コミュニケーションの関係図
お金とは、信用だという話を今までにしてきました。
今度は、コミュニケーションのためのメディアの一つとしてお金をとらえてみましょう。汎用性つ
まり使える人が多いこと、そしてコンテキストつまりどれくらい深い文脈を伝えられるかという深さ
の 2 つの軸のマトリクス上に存在します。人間のコミュニケーションにはいろんなメディアがある
のですが、その中に言語やお金などがあるし、ボディランゲージなどもあります。
僕は、お金とは譲渡可能な信用だと持っていますが、お金の本質はなんですか?と言われた
時には、数字であると答えています。数字で表されるというところにお金の本質が表されると思
っているのです。数字とは、ありとあらゆる人が使える共通言語です。ここにお金のトリックがあ
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ります。人は、数字で表現したとたんに、そこに意識が吸着していくというものなのです。数字と
いうのは汎用性がありあらゆる人が使えるメディアであるから注目を集めやすいというわけです。
その最たるものがお金ではないかと思うのです。
お金が数値であるというこの一点が、実はお金をお金足らしめている所以ではないかと疑って
います。お金だけではありません。私達は若い時から偏差値やランキングなど数字に対して強
く執着し、固執してしまう傾向があります。数字は意識を吸着する強力なメディアです。まさに
それこそが、世界 80 億人が数字を使う所以でもあるのです。
そして、お金は現在、信用を担保するという基本から、離れつつあるのではないかと思ってい
ます。お金が過度に数字化されるということによって信用という裏付けはないのだけれど、それ
に価値があるような形で流通し価値交換ツールとして成り立っているのです。
実際、お金(数字)の量的・質的拡大は今世紀に入って急激に起こってきました。
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お金の量的拡大 — “ザ・マネー”の拡大
図 9 実質経済と金融経済の関係図
これはリーマンショックの前の数字ですが、実体経済が 1.4 倍の成長しかないときに、お金は
90 兆から 270 兆億、つまり 3 倍くらいになっているのです。もちろん、実態の裏付けがなく、お
金だけがどんどんと膨らんでいます。これはレバレッジと呼び、実体経済と金融経済の差が広
がりすぎると、ぷつりと糸が切れ、バブルが崩壊し、実態経済が機能しなくなります。
金融業とは、信用の卸業者のことです。決して信用を創るわけではない。信用は、価値創造・
一貫性・コミットメントをブレンドして発酵させた結果作られるものです。しかしながら金融業者
が信用を土台とせず、お金をつくり続けた結果、このような事態になりました。
今ものすごい数のお金を擦って大規模に金融緩和が起こっていますが、金融破綻のサイクル
はどんどん短くなっていきます。
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お金の質的拡大 — 汎用性の向上
量の拡大と同時に、お金の質的な拡大も進行しています。
お金の汎用性がどんどんと拡大していることにみなさんもお気づきかと思います。車ですとか、
角膜とかもネットで検索すれば普通に売っていますよね。廃棄物の Co2 とか、別れさせ屋とか
…遺伝子とか、結婚も金で買えますよね。お金で買っていいという線引きをするところに倫理
観の議論され始めているのですが、気がつかないうちにどんどん侵食されていきます。
僕らは有機的な人間です。お金は無機的な存在です。水と油のような存在です。しかしそれと
は裏腹にどんどんとお金に触れる時間が増えていっているのです。
さて、生物種として人間をあらためて見たときに、決してお金は適切なコミュニケーションの道
具ではありません。繰り返しになりますが、人間の種としての生存戦略の本質は異なる個体の
分業と交配による自立分散であり、一方、お金とはエネルギーの偏在を促進してしまう統一基
準だからです。資本主義はパンデミックの危機をはらみます。むしろ人間に合っているのは
個々人の信用をもとにしたゆるやかで有機的なネットワーク社会なのだと思われます。
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世界の 3 層構造
図 10 世界の 3 層構造
お金の変化とともに、世界の構造も変化してきました。
これは、世界は今どんな風に分かれてきているのかということを表した図です。
国家の上に、企業つまりグローバルカンパニーがありそしてその上に紐帯すなわちネットワー
クがあります。国家の中にこのようなネットワークがあるのではなく、国と同レベルにグローバル
カンパニーがあり、同レベルで個人間のネットワークがあるのです。
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国家と企業の力は同程度になっている
図 11 世界の GDP 順位
これは世界の GDP 順位トップ 100 を示したものです。
これは若干古く 2010 年くらいの資料ですが、アメリカなどが上位に並んでいる一方で 25 位に
ウォールマートだとか、41 位にトヨタなど国家よりも経済的におおきなものができ始めています。
ということは国家だけでなく個人というものも、大きくなっていっていると言えるのではないでしょ
うか。テイラースイフトは何十億人というフォロワーを持っていますよね。そういう人たちが貨幣
を発行できないのかというとそうではありません。VALU というサービスが少し流行りましたが、
個人が通貨を発行するのはもはや当然の動きとなりました。
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そして、その裏で起こっていることとは何かというと、お金の信用母体の変化なのです。果たし
てこの状態がずっと続くのでしょうか?
信用母体の変遷 — 資源から国家、そして企業と個人へ
図 12 主要貨幣の信用度と汎用性
これは主要通貨の信用度と汎用度について示した図です。
国家の信用は、GDP と生産量、利用者(=汎用性)によって測定できます。そうすると、USD な
どは現地通貨になっていますが、円は非常に弱いですよね。
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信用母体が企業になるとすると何がいいのかというと、利用者が加速度的に増えるという点に
あります。国家が発行する貨幣の利用者は主に国民であり、国民の増加は出生率に依存しま
す。一定倍率以上は、増えないようになっていますよね。ですが企業は、増加率に上限があり
ません。楽天は、国家と比べると恐るべきスピードで利用者が増加しています。楽天ポイントな
どは、利用人数が増えると“貨幣性が上がって”いくともいえるでしょう。
“貨幣性が上がっていく”という表現に違和感がある人も多いのではないでしょうか。貨幣は、
「貨幣であるかないか」という風に分けられるものではなく、程度の問題なのです。貨幣は「お
金だ」と考えるのではなく、「ちょっとお金だ」とかいう「程度」なのです。
図 13 お金の変遷
お金の変遷を、信用母体の変遷を中心にまとめてみます。
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図を見てください。昔は希少性のある金鉱物がお金の価値を担保していました。そこからお金
というものを発行していったのですが、今のお金は国家によって担保された信用によって流通
していますが、信用の裏付けがあるかどうかは怪しい状態です。
そしてそろそろ企業や個人がお金を発行する時代に差し掛かってきました。
続いて、「貨幣・市場経済」と「贈与・共有経済」を比べてみましょう。
「貨幣・市場経済」と「贈与・共有経済」の対比
図 14 貨幣・市場経済と贈与・共有経済の比較
貨幣・市場経済と贈与・共有経済はどのような違いがあるのかということを説明していきたいと
思います。
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貨幣・市場経済昔は信用国家で取引していましたが、これから始まる贈与・共有経済はもっと
濃いネットワークの中で、それぞれの個人の信用が担保され、やり取りをする形です。この横
社会では、広大なネットワークの海を自らのつながりと信用を使って自由に泳げる者が勝者と
なります。それまでの国家が発行した貨幣を使う時代は完全な縦社会でした。匿名のエネルギ
ー(金)を使って現実社会をコントロールできる者が勝者でした。しかし覇権はシフトし、両者の
力関係が逆転するのは 2020 年頃だと思われます。
貨幣の分類と進化
図 15 貨幣の進化まとめ
様々な価値流通の手段の分類を通して、貨幣の進化についてまとめてみます。縦軸は「信用
の外部化の度合い」であり、質的な変化を表します。そして横軸は「信用がある範囲の拡大、
つまり社会的・地域的な拡大」です。
まず縦軸から説明します。信用がどうやって外部化してゆくのかそのステップです。
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最初は、信用は外部化しない形、つまり「贈与」持ち寄りの時代でした。原始的な共同体にお
いては、生産物は個人ではなく集団の持ち物だったのです。ここでは「贈与」という価値観もな
いままに消費される段階です。共同体の最小単位である家族内においても価値の交換は行
われません。財は家族全体でシェアされ、それがゆえに構成員は安心と信頼を得るのです。
その前提として婚姻制度を中心とした共同体を規定するしくみがありました。人類 20 万年の歴
史の中で、多くが贈与経済を用いた部族間の交換であり、一方が何かを贈与すると、それに
対して返礼する。それが永遠と繰り返されるという形で財の交換がなされていました。
次に信用が一歩外部化され、個人間の取引になります。ここでは、会計の仕組みによって
個々人が互いの取引を記帳することによって、財の交換を行いました。この段階においては、
個人間の信用関係を基礎としています。
次の段階として、交換通貨の発行、金に変えられる通貨の発行です。貴金属などとの交換を
前提として、信用を持ち運ぶことができる形態に変化した段階です。
そしてその次の段階は、不換通貨の発行です。信用の前提を貴金属などに置くのではなく、
その信用を権威つまり、王権や政府に置くものであり、現代の貨幣はここにあたります。
単なる交換から、貸借になり、そのうちみんなが欲しがる財が通貨となり、それに信用が集中し
ていきます。そこから貴金属等に信用母体が変化し、その後王様が金を定義するという流れで
す。
次は横軸、「信用がある範囲の拡大、つまり社会的・地域的な拡大」です。
こちらは共同体内、国家内、国家間そして無国籍(グローバル)に整理することができます。本
来は、共同体を超えた取引は、価値基準に関して合意することは難しいのですが、価値流通
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においてお金が用いられる場合は、その強制的な拡大が可能です。それは、お金が数字によ
って表現されているからなのだと思います。
お金とはこの 2 軸で発展してきました。
最初、原始共産制があり、そして記帳が増える、その記帳がグローバルに展開していき商人の
取引が大きくなり、そして現代のロスチャイルドのように子供 4 人をそれぞれ別の国に送り、国
際商人になっていく家族グループが現れ、ネットワーク取引という時代がありました。すでに 14
世紀半ばには、トスカーナ、ジェノバ、バルセロナなどの都市国家では、小切手などの借用書
による支払いが一般的になりつつありました。現存する最古の小切手は、フィレンチェの貴族
階級であるトルナクィンチ家が銀行家のカステリャーニ家に振り出した 1368 年の小切手です。
16 世紀半ばには、ヨーロッパを中心に国際商人の私的なネットワークによって商業取引の国
際化が行われてきました。各国において使用範囲が限定され、王権によって管理されるソブリ
ンマネーを超えて新しい商業経済を成長させるために、ヨーロッパの国際商人は階層型の信
用体系を創りだしたのです。
国際商人は、四半期ごとに大商会の一団がリヨンの大市に集まって、帳簿を清算するようにな
りました。大市の最初の二日間は大量の売買が行われ、新しい勘定の記入の古い勘定の整
理が行われました。二日目の終わりに四半期分の帳簿を締め、商会間の残高を照合し、三日
目に、為替銀行業者だけが集まって「コント 」を作成する。コントは貿易金融システム全体の
軸になっていて国際商人ネットワークと彼らの用いた帳簿精算システムによって大規模な商取
引が可能となったのです。
やがて、商業と政治の融和の結果として 17 世紀に登場したのが中央銀行制度です。最初の
中央銀行は、イングランド銀行であり、ウィリアム・パターソンの発案で 1694 年に設立され、
1709 年には、イギリス国内での銀行券の発行を事実上独占する権利を与えられました。これ
によって国際商人のプライベートネットワークとソブリン通貨の融合が実現しました。
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現代の経済取引システムは中央銀行を中心とした信用管理のもと行われている基本的には不
換通貨です。現代の貨幣は、貨幣価値は流動的なものであり、政府と中央銀行の権威と信頼
の薄氷の上に漂う不安定な存在となっています。「国全体に流通しているマネーの大部分は、
物理的な実体を持っていない。たとえば、アメリカの場合は約 90%、イギリスの場合は 97%、物
理的な実体がまったくない」 それにもかかわらず、世界の多くの国がこの貨幣による取引を前
提とした資本主義を採用しすべてがたがいに影響しあう世界が形成されているという不思議な
世界になりました。
そして今、問題になっているのが仮想通貨です。
これは質と量の観点で見ると、非交換通貨でありながら、無国籍通貨ということです。図の一番
右上の最終段階です。
まだ萌芽段階であるものの Bitcoin 等をはじめとするブロックチェーンを用いたアルゴリズム通
貨・代替通貨などの存在感は、政府の信用管理の限界とその結果生まれる高不況のサイクル
が徐々に短くなる事態によって年々大きくなっています。
これら無国籍通貨を、一定の期間で膨張と暴落を繰り返す法定通貨のリスクをヘッジする代替
通貨としてのみなす人々も現れています。
これらコンピュータのアルゴリズムの強度を信用保全の前提とする無国籍通貨は、国家の通貨
と異なり、その発行に限度なく、その本質においてなんら財としての価値や信用の前提を持た
ないという点においてこれまでの貨幣とは性質が異なります。これらの通貨の存立の前提はそ
の流動性にあります。再現なく発行されるアルゴリズム通貨はいずれもっとも流動性・流通性の
強いもの集約されます。だが最終的に残りうるいずれの通貨もその信用の前提の欠如および
高度な流動性が生み出す投機的動機によって破綻する不安定さを常に抱えています。
それでも人々はこの曖昧な信用を前提とした通貨群をその流通性ゆえにおびえながらも一般
生活の経済活動において採用せざるを得ない状況にあります。
これが貨幣の進化のまとめです。ちょっと難しかったですね。
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貨幣を構成する 4 つの要素と発生するコスト
図 16 発生する 4 つのコスト
「信用の外部化の度合い」と「地理的・社会的広がり」を軸として価値流通手段を整理すると、
それぞれの手法について 4 つの要素とコスト(課題)が浮かび上がってきます。
4 つの社会的課題とは、1. 貨幣化(信用の外部化)に伴う信用のコントロールの課題(つまり近
年の大規模な金融緩和における課題)、2. 社会的基盤・文化的文脈を異にする共同体間に
おける経済的価値の概念の合意形成上の課題、3. 貨幣という数字によって取引されることに
よるそれぞれの財の文脈(歴史や物語)の喪失という課題、4. 貨幣化を洗濯しない場合の合
意コストの肥大化という課題です。
左下の適合のコストとは、物々交換で欲望が一致せず、物々交換だと取引コストが高いという
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ことです。もう少しくだけた言い方をすると「A さんが手放そうと思っている物は B さんが欲しが
っている物である」という第一の一致と、「B さんが手放そうと思っている物は A さんが欲しがっ
ている物である」という第二の一致が同時に成り立つという状況は極めて難しいという課題です。
ですがこのコストは、ネットワーク上で個人や組織の信用を基盤としたつながりができ始めてい
ることから、ネットワーク上で自分が持っているものと欲しいものを即座に直接交換できるように
なってくることが予想されます。
左上の信用管理コストとは、信用が担保されるのが難しくなるという課題です。リーマンショック
以来、バブルが発生し、極端に貨幣価値が大きくなり、やがて崩壊するというサイクルが短くな
っているということが通貨の安定性に負の影響を与えていることは皆さんも感じていることなの
ではないでしょうか。
右下のコミュニケーションコストとは、お金で数字をやり取りするに当たって、物の価値というも
のは全然人によって違うため、価値の合意が困難であるということです。例えば、フェリックス
マーティンが書いているように「記念建造物を保存するのは、それに歴史的な価値があるから
である。絵画に感嘆するのは、絵に芸術的な価値があるからだ。うそをついたり、ものを盗んだ
りしないのは、そうすることに道徳的価値があるからだ。禁酒して、1 日 5 回礼拝するのは、宗
教的な価値があるからだ。祖母の安物の宝飾品を大切にとっておくのは、情緒的な価値があ
るからである。これはどれも用途が限定された価値の概念です。
つまり、それぞれの領土の中では支配者でいられるが、そこから一歩出ると、治世はおよばな
いのです。馬の背の高さ、海の深さ、網の幅についての古い物理量の概念と同じで、情緒的
な価値、芸術的な価値、宗教的な価値は、特定の活動の文脈で考え出された特定の意味を
持つ概念です。それらの『標準化』という点では、物理量の古い測定単位以上に進んでいない
ように見えるでしょう。情緒的な価値の国際標準など聞いたことありませんね。社会的現実は村
ごとにちがうだけでなく、人それぞれにも大なり小なりちがう。だから『蓼食う虫も好き好き』とい
う言葉があるのだ。」という風に、文化によって“価値”は異なり、合意が取れづらいのです。も
っと身近な例で言うと、ペットボトルの緑茶は僕にとっては十円ですが、誰かにとっては十円で
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はないですよね。本当は価値が違うにかかわらず均一化されていくということです。
そして右上の文脈毀損コストとは、交換において生じる人間間のつながりと、交換財の引き継
ぐ物語(歴史)等の文脈を貨幣取引により毀損するコストです。ここでも文脈とは、平たく言うと
交換を通してできる人間間でのつながりと、交換財が引き継ぐ物語または歴史のことです。そ
して、貨幣の本質的な問題は、実はここにあります。貨幣というのは数字で表しますよね。価値
というのは文脈を保全しているのであって、「誰が幾ら」としてしまうと、分断が起こってしまいま
す。
トマ・ピケティの書籍が流行し「資本主義の問題点は格差である」という考え方が通説となって
いますが、私は格差が問題ではないと考えます。貨幣の本質的な問題は、格差ではなく文脈
の毀損ではないかと思うのです。現代において、あらゆるものが最終形態として金融商品化さ
れています。そこでは多くが株価という数字や記号で表現され、単純化されて、比べることがで
きる形にすることで取引が可能になっています。しかしその金融商品の背景には、企業や
人々の営みがあり固有の物語があります。それらは、数値で表現し比較できるものではないは
ずなのです。
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お金の進化の行き着く先、3 つの方向性
図 17 お金の進化の方向性
それでは今後どうなるのかというと、以下の 3 つの方向性があると思っています。
1 段階目に、無国籍通貨が短期的に勃興し、続いてに通貨が時間になり、そして最後にグロ
ーバルレベルでの贈与経済が起こる、という三つです。
今後主流になるのは無戸籍通貨であるというように思われていますが、僕は懐疑的です。なぜ
なら信用の担保が難しいからです。国家は 170 しかないために、発行できる通貨もせいぜいそ
のくらいですが、一方で無国籍通貨はビットコイン以外でも 350 くらいあります。そのうちどれが、
信用があるのでしょうか?というと、どれもないわけです。
お金の本質は数字であり、数字自体は意識を吸着する力が強いですから、一時的には無国
籍通貨に関心が集まりバブルは起こるのですが、過去のバブルと同じようにいつかは破綻す
ると思っています。中央銀行の金融政策の失敗で、代替通貨に注目が集まるが、内部に本質
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的に信用を保全しておらず、流動性を頼りにした投機的存在に終わるだろうということです。
そしてその次に、信用管理コストの肥大化によって経済取引が停滞すると、信用回帰が起こり、
個人の数字である「時間」に落ち着き、そしてそのあとにグローバルレベルでの贈与経済が起
こります。
お金は、水などのコモディティには便利なのですが、日用品にしか使わないわけです。他のも
のは意味がないです。例えば、芸能人の友達に相談するとか、自分が講義を持って講義する
とか、それを可能にするのはお金ではなくて、信頼関係でしかないですよね。じゃあ何がお金
の代わりをするかというと時間です。すると時間が通貨として存在し始める。
みんなが餓えで死ぬというのがない世界ですから、したがってその次の欲求である社会的な
欲求に入ってきます。
人々の欲望が生存から社会的欲求へと変化した際に、それを貨幣によって購入することは難
しくなります。それを得るためには貨幣でなく、時間が必要です。大富豪が大統領になるには
社会的承認が必要だし、裕福な家庭においても、子供にはお金よりも時間をかけなければな
らない。効用に比例するものは貨幣ではなく、自らの時間だということです。
社会的欲求の充足には人間関係・価値意識の醸成が求められ、それは時間によって生産・蓄
積されるのです。お金が時間に変化し始めるのは自然な動きです。
通貨としての時間が便利なのはその性質にもあります。
高度に抽象化され信用の希薄化された現代の中央銀行発行通貨はそのコントロールが限界
に来ています。一方で、時間とは国家や社会集団の信用ではなく、個人(individual)の信用に
帰属する数字です。Individual とは本来“分け(dividual)”“がたい(in)”という意味であり、信用
の母体の最小単位となりえます。そして、この個人が“発行”できる外部化された信用こそが
「時間」なのです。
時間は、信用の最小単位である個人(individual)が発行できる最大の汎用言語である数字で
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あることによって、最高に有効な通貨としての地位を担保できるのです。
また不平等の解消という意味でも時間通貨は有効です。現代の貨幣はすでに偏在が激しく、
世界の民主化が進む中でこのような富の偏在は不公平を助長し、結果として社会の不安を拡
大し、経済の安定性を脅かしています。米国において CEO の給料が一般社員の 1000 倍であ
り、金融機関の上級社員のボーナスを含む給料が一般企業の管理職の 10 倍である現状に対
して、いまさら言及する必要がないほどその価値対価と報酬に対して不整合が存在していま
す。じかし人の時間は個別差こそ多少あれ、大きな差異がないので機会について公平といえ
ます。
時間は、貨幣がもっている文脈の毀損に対する保全効果もあります。文脈価値は、貨幣化(数
字化)によって損なわれていきます。一方で、文脈価値は、時間(歴史・つながり)によって生
産されます。信頼のおける個人間(知識・社会的承認など時間をかけて紡いできた人々)の直
接的なやりとりによって文脈価値は保全できるのです。そのため時間通貨は有効といえます。
2 つ目の動きは、地域通貨が勃興するのではないかということ、最後の一つは、記帳は面倒だ
なということで、贈与経済の形に変容していくのはないかと思っています。時間通貨は、市場・
貨幣経済から贈与・共有経済への橋渡しとなる概念なのです。
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社会システムの変遷 — 貨幣から贈与、時間へ
図 18 経済システムの整理
これは今までの市場貨幣経済、贈与共有経済、時間通貨の 3 つを書いてあります。
これらが整理された上で、なぜこのようは変遷をたどるのか?ということを明らかにしなければ
なりません。贈与を含めたモデルが貨幣であり、価値流通メディアを通して流通される「価値」
が変化したことが貨幣の変化につながるはずだからです。
私たちが欲しがるものが変化したから貨幣も変化するという流れが必ずあるはずです。その辺
の話をここからしていきます。
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貨幣についてまとめ
貨幣について改めてまとめます。
まず、21 世紀のビジネスは、上や物不足に対応するものではなく、承認と尊敬をもとにして供
給しあう寄り合いプラットフォームのような形になってゆくでしょう。しかもそれがグローバルなレ
ベルで行われる。そして生存欲求を満たすモノに関してはほとんど経済的価値がなくなる。
そして二つ目、経済の中心が生存を担保するものではなく承認を担保するものに変化していく
と生産と消費が一体化するということです。これはどういうことかというと、社会的欲求の生成に
は、生産者と消費者という概念がなく、みんなが参加しなければならない。たとえばパーティー
をする。楽しかったね、と言ってみんなの心が満たされる。だれがだれかに価値を提供するわ
けではない。みんなで価値をつくりだして分け合うことになる。これはいままでの経済原理とは
全く違います。つまり質量保存の法則が成り立っていないわけです。20 世紀までの経済、つま
り物がこちらからあちら側へと移動するのでは質量は変化しませんが、社会的欲求はそうでは
ない。意識をともにする人々が集まって時間を共有することで価値が生まれる。だから、誰が
消費者とか生産者ではなく、全員が Giver になる。誰が与えて誰が受け取るかということではな
くなります。
そして、繰り返しますが、時間が価値流通メディアに一時的になってゆくでしょう。それは、財の
取り扱いの原材料が意識になり、意識の主体は個人だからです。意識が共有されるのは時間
であり、数字として可視化できるものだからです。
そしておそらく代替通貨・仮想通貨が短期的に隆盛をほこります。なぜ優位になるかというと、
一つは中央銀行が金融政策に失敗するからです。そしてなぜ短期的かというと、勃興しその
結果信用が担保できなくなるからです。
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そして、おそらく貨幣の本質は(譲渡可能な)信用でなく、数字というメディア属性にあるという
ことです。これは数字という情報が、人のアテンション(意識の焦点)を吸着しやすいからです。
また貨幣の本質的問題は分断(文脈毀損)にある。それは社会関係資本を損なうこと。そして
ブロックチェーン(分散台帳システム)がそれを補完することです。
社会関係資本と人々の健康には大きな関係があるということです。これはデータがありまして、
健康に影響があるのは酒とかタバコではなくてネットワークがあるものに原因がある。国家はで
すね、通貨の信用のコントロールに失敗します。価値基準の統一化の世界的広がりは止まら
ないはずです。
そして贈与・共有経済は社会的安定をもたらすこと。
最後に共有社会(シェアエコノミー)では余剰物も財になりうるということ。
以上です。
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第 3 章 ネットワーク社会 — 「円」から「縁」へ
今までお話しした内容は、貨幣というものがどういう風に貨幣が変わってきて、信用の裏付けを
亡くしながら徐々にテクノロジーによって無国籍通貨の発行に向かっていくということでした。
そしてそれを直接的につなぐネットワーク社会とはどういう社会かということを今から話していき
ます。
マジョリティ/マイノリティの接近
図 19 マイノリティマジョリティ比率
これまで作り上げてきた世界・システムを維持・運営する組織・人をマジョリティと言い、そこから
あぶれているが、新しいしくみを創りだそうとする層をマイノリティと言います。両者の価値に差
はありませんが、現在、戦後のシステムが出来て 60 年たち、マジョリティシステムが崩れようとし
ていることは事実です。なぜなら、その比率が逆転しようとしているからなのです。
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日本のマジョリティ層は正規雇用労働者、従業員 1,000 人以上の会社での勤務、専門職、公
務員およびその家族であり、マイノリティ層はニート(60 万人、疾病ニート、コミュ障ニート、高
学歴ニート等)、若年派遣労働者、LGBT(15人に1人)、シングルマザー(70万人)、独居老人
(100 万人)、年収 200 万円以下(1000 万人)などです。その比率は今や、6:4 ぐらいにまでな
っているのです。
昔は、80〜90%がマジョリティでした。でも今は、車椅子は 7%ですし、ニートの比率も高いで
すよね。LGBT だって、50 種類くらいいらっしゃいますよね。性的な嗜好も多様化しています。
一般化したとはいえまだ社会の中で偏見や差別に苦しんでいる人も多くいます。
大きな変化は感じられないかもしれませんが、マイノリティマジョリティが逆転するというのは、
社会構造が変化するという点で重大な変化です。
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「タテ」のマジョリティ、「ヨコ」のマイノリティ
図 20「タテ」と「ヨコ」の組織図
マジョリティとマイノリティの違いは、構造に現れています。
すでに出来上がったマジョリティのシステムは基本的に「タテ」。それに対し、円心をくりぬかれ
た周辺部に位置するマイノリティは「ヨコ」でつながるようになります。
マジョリティとは、中心にいて縦のラインが強固であり、マイノリティはどこにいるかというと周辺
にいるのです。真ん中が空洞で、縦のラインを作りようがないのでしょうがなくネットワークを作り
出します。これが一番大きな違いです。
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図 21「タテ」社会の特徴
マジョリティの基本的な発想は、資源を吸い上げて、上からシャワーのように降らすことです。
これは出来上がったシステムなのであたりまえですよね。マジョリティが提供するものは、生活
(衣(医)食住)に必要な「コモディティ(匿名の製品・サービス。たとえばカネ/票/エネルギ
ー)」です。生活に必要なのはコモディティだから、人々が生存欲求を求めている時はこちらが
便利ですね。そしてタテというのはお金が便利です、マジョリティが集めて上から降らせますよ
ね。お金とかコモディティとかであればこれが便利です。金融庁→都銀→地銀→信金とお金
が流れ、エネルギーは東電などで流していきます。
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45
図 22「ヨコ」社会の特徴
マイノリティは同心円を繰り抜かれており、分散しています。
だから、ヨコでつながることが基本となるのです。ネットの普及はマイノリティのつながりを一層
強化しつつあります。マイノリティは、必要に応じて、資源をヨコで融通しあいます。それは、相
互扶助のしくみであり、それぞれの社会的欲求(承認欲求・つながり欲求)を満たすことに適し
ています。逆に、大量生産が有利に働くコモディティの流通には適しません。
お金は、必要に応じてプロジェクト単位でクラウドファンディングで集めますし、知識や情報もヨ
コのネットワークで調達します。エネルギーは、電気を大量に「作る」のでなく、個別にためてお
いて、必要に応じて「配分」(スマートグリッド)し、政治も、みんなの意見を吸い上げて共有しま
す。
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46
欲求構造と人権の範囲、社会システムの変化
図 23 欲求構造と社会システム
欲求構造と人権の範囲、社会システムの変化を整理します。
では、人は今、何を求めているのでしょうか?
人々の基本的な欲求構造が上位にシフトすれば、それに応じて当然社会システムも進化しま
すよね。いまや生存欲求は脳に刷り込まれた習慣であり、本能ではありません。人は本能的に
社会的欲求を求めている段階です。それはヨコ社会が主役になるということなのです。
「カネ(数字)という言語が有効なのは、衣(医)食住を満たす領域においてです。なぜならそ
れらはコモディティであり、一つ一つの製品・サービスに独自性を求められないからです。しか
し、承認欲求の段階では、それを満たすためには、常に文脈が求められ、それはカネでは買
えないのです。
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47
図 24 欲求構造・財の携帯・価値流通の手法の関係
社会で求められる欲求が変化することで、それを提供する財やサービスが変化し、価値流通
の手法が変化していきます。今後の流れをこの図に沿ってみていきましょう。
皆さんが知っているマズローの欲求段階説で生存から承認、創造があります。安全は国家や
土地が担保し、衣食住などは貨幣が使えますが、承認欲求は、お金だと流通しづらくなってき
ます。貨幣とは間接的に人を繋げますから勝手が悪いのです。ですから時間になったり、知識
になったりしてゆくのです。
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お金で尊敬は買えない
図 25 中国のことわざ
これは、中国のことわざなのですが、ここからもわかるように幸福はお金で買えませんよね。
幸福はレセプターの問題であって、お金の問題ではないからです。お金を通してモノを買い、
それを五感で認識して幸福を感じるか、それとも直接的に「私は幸福である」と認識するか、あ
なたはどちらを選ぶのでしょうか?
幸福の本質は「一体性」にあります。周りの人や期待との一体性です。例えば僕は、映画を見
に行くと「つまらない、つまらない、つまらない…」と見る前に言い続ける。そうすると、期待値を
下げることができるから、以外と面白く感じて幸福感が味わえます(笑)。幸福とは解釈から生ま
れます。つまり何があるかではなく、自分がどう想うかだということです。
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友達の数で寿命が決まる
図 26 友達の数と寿命
先ほども申し上げたように、友達の数で寿命は決まると言われています。
タバコや酒ではないのです。要するに社会参加した方が健康にいいし、職を持っていたりネッ
トワークを持っていたりした方が健康にいいよ、ということですね。
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価値概念の変化 〜需要と供給から文脈価値へ〜
図 27 一般的な価値の概念と文脈概念
価値流通の手法が変化すると、価値概念も変化してゆきます。
需要と供給で決まる一般的な価値概念は経済のお金の定義ですね。
消費者の需要量と、生産者の供給量で価格が決定するというものなのですが、承認欲求を満
たす財やサービスへと変化する過程で、この前提は当てはまらなくなっていると思います。な
ぜなら、承認欲求を満たす際に、消費と生産という境界線は曖昧になっていくからです。
現代において価値というのは文脈価値があり、つながりと物語の 2 つによって成り立っていま
す。空間軸的には送り手から受け手に、時間軸的にいうと過去から未来へと対象物が移動す
る際に価値が生まれます。つながりとは財に関係する人間間の関係であり、物語とは一定の期
間を経ることによって蓄積される価値のことです。すなわち文脈価値とは、時間の連続性と他
者との一体性の複合体なのです。
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文脈があればあるほど、価値のあるものが伝わります。今必要なのはつながりと物語であり、文
脈があればあるほど価値があるのです。必要なのは、AIや IoT だと言われていますが、そういう
ことではないということがわかると思います。人の気持ちがわかる人が求められてくるのです。
ですから皆さんも、徐々に徐々に周りの人や財と物語を作っていくことがお勧めです。
それでは次から、新しい価値創造の具体例をみていきましょう。
新しいつながりと物語の作り方
クラウドファンディングは、不特定多数の人がインターネット経由で他の人々や組織に資金提
供を行うサービスです。これは単に、資金調達の 1 手段ではありません。お金を集めるというの
は、信用を外部化するだけでなく、コミュニティを形成するということでもあります。
これは私が関わり、初期にクラウドファンディングで成功を収めた物語を作った向田麻衣さん
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です。彼女はネパールに行って、ネパールで化粧をすることで人の精神的な支援に行ってい
ます。
これは僕の家ですが、 Airbnb を使って 1 室を貸していました。お金が欲しいとかそういうので
はなくて、新しいグローバルコミュニティを作る目的で行っていました。今はやっていません。
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53
私は今、軽井沢と六本木の 2 拠点生活をしています。
面白いのは、六本木は完全なる貨幣経済、軽井沢は非貨幣経済だということです。軽井沢で
はお金は役に立ちません。もちろん住むまでにお金はかかりますが、住んでからはお金がか
からないですね。家を含め、車もベッドもソファもほとんどのものは頂いたか安価でお借りして
いるものです。Facebook にはみんなと居る写真を載せていますが、基本は一人で過ごしお金
は使いません。軽井沢ではコミュニティに貢献できなければ孤独な時間を過ごすことになりま
す。2 拠点生活は新しいリテラシーを身につける絶好の機会になっています。
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54
資本主義社会とネットワーク社会のまとめ
資本主義社会とネットワーク社会についてまとめます。
ご覧の通り、「タテ」と「ヨコ」では何もかもが違うのです。
「タテ」だった頃は円錐型だったものが、だんだんと円状に変化していきます。そして、ネットワ
ーク社会はハブが圧倒的な影響力を持つようになるのです。
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55
図 28 ネットワークの基本構造
ネットワークの基本的な構造は上のようになっています。
このようにあらゆるネットワークはこういう風に必ず大きな円があり、そこにそれぞれ必ずハブが
あって人がいる。そしてその人を介して繋がっていきます。
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56
資源を集約する方法はたった二つ
図 29 資源集約の 2 つの方法
なにかを起こすにはエネルギーが必要であり、エネルギーとは集約された資源のことです。
資源を「閉じ込める」ことのできる明確な言語は 2 つしかない。それは、「数字」か「個人」です。
お金の本質は、それが数字であるということです。数字というもっとも明確な膜の内側に信用と
価値を閉じ込めることができます。
個人の英語(individual)とは、もともとは、これ以上、分けることができない、という意味です。分
かちがたい最小単位という膜の内側にも、信用と価値を閉じ込めることができるのです。
タテ社会の言語は数字であり、ヨコ社会の言語は個人ですので、社会の言語が「円」から「縁」
へと変容しているという言い方もできるでしょう。
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57
コミュニティの変遷
図 30 コミュニティの変遷
ネットワーク社会内でのコミュニティは今までどのように変容してきたのでしょうか。
断絶の時代、遍在・オープンな時代を経て、これからは 1 人の人間が多層的なコミュニティに
それぞれが所屬する時代になります。つまり、コミュニティ・ポートフォリオを持つということが必
要になってきます。
コミュニティは上の図のように変遷していて、昔は断絶した国家があったのですが、windows 時
代の過渡期を経て、google の時代は企業によって繋がっていきあらゆるものが偏在していまし
た。その後に、Facebook がやってきて仲間分けが起こっていき、そこからコミュニティができて
きた。そして今ではある程度コミュニティ分けが終了し、今から福祉や教育、通貨などインフラ
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58
の整備の時代に入ってきています。
この多層的なコミュニティのある時代で何が必要かというと、当然個人のクレジットが必要です。
あとは、業界の中にいるのではなくて、業界と業界の間に価値があります。
ビジネス業界とそれ以外の業界の間に価値があるのです。ベストセラーになった小説「もしドラ」
も、そうですよね。ドラッカーとアニメ業界をまたがっている。今後、いろんな業界の間に立って
いる、すなわち、インターメディエイトな人が尊ばれる。業界や人との間である層を作っていけ
る人ということです。21 世紀の貨幣は何かというと、ネットワーク*クレジットの掛け算でしかあり
ません。これがその人の財産になります。つまりクレジットは今、どんどん溜まっていますよ、と
いうことです。クレジットというのは根拠が必要ですが、ネットワークというのは業界を超えないと
いけないので、根拠の作り方が煩雑です。
ネットワーク社会というのは貨幣の原理が通用しなくなるというのが本質です。時間を共有する
方向に流れていくため、グローバルの中にネットワークを作っていかないといけないと思ってい
ます。
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59
21 世紀で生き残るためのネットワーキング
図 31 21 世紀のネットワーキング
さて、21 世紀には、ビジネスの変化に呼応してネットワーキングの方法も変化させていく必要
が出てくるでしょう。
これからの働き方として、多くの人が IC(インディペンデント・コントラクター)になり、プロジェクト
ごとにチームが入れ替わる時代に入ってゆきます。仕事では、スキルや実績への信頼だけで
はなく、その人の信用が大切になってきます。
この働き方において重要になってくるのが、距離感のマネジメントです。今まではゼロかイチか
という判断でしかなかったですが、契約等によって期待値を言語化し、コミットメントの明確化
通して距離感を微調整することが求められます。
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60
それだけでなく、信頼残高を積みながら、相手の言語(愛と条件)の範囲を把握し、価値観の
一致を図ってゆくことも重要です。
コミュニケーションとは距離感のマネジメント
図 32 コミュニケーション概念図
コミュニケーションとは一言で言うと距離のマネジメントです。それぞれの人との関係を精神的
距離・公私の関係で整理することが良好な人間関係を構築するために最も必要なことです。
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61
21 世紀における心構え
図 33 21 世紀における心構え
21 世紀において社会構造が「タテ」社会から「ヨコ」社会に変化すると、当然その中で共有され
るルールや規範も変化してきます。
ヨコ社会において「個人」にエネルギーが寄っていきます。
エネルギー集約体である「個人」の欠点は、数字であるお金には摩擦がないのに対し、摩擦コ
ストがあるということです。「物々交換よりは、ヤフオクの方がやっぱり楽だよね」という感覚は皆
さんもお持ちなのではないでしょうか。ヨコ社会をうまくまわすためには、この摩擦コストをうまく
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62
受容するしくみ・考え方が必要になってきます。
黒歴史もコンプレックスも、自分の Google カレンダーも何もかも晒し、交渉するというよりは創
造することに力を注ぎ、価値連鎖を信じることです。そして他者をブロックせず、距離感の調整
のみを行うことです。その上で、できる限りコミットメント(契約/宣言)をすることです。人をタテ
に見ず、すべての人をリスペクトすることも必要でしょう。そして、自分が上場するということに気
づき、戦略的にコミュニケーションをとるということです。
21 世紀におけるアイデンティティ
図 34 21 世紀のアイデンティティ
家族やシェアハウスの仲間、職場・仕事仲間、価値観の合う仲間など、一人が様々なコミュニ
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63
ティを同時に所属するようになると、自分を新しい捉え方をする必要があります。それが、「分
人的」に捉えるということです。
分人的に捉えるとは、「自分とは、様々な人格のポートフォリオ」だと考えるということです。これ
が気楽に生きるコツになってきます。
これまでの捉え方は、中心に「本当の自分」が存在し、場面ごとに仮面(ペルソナ)を使い分け
るという考え方が一般的であり、終わらない自分探しの旅に陥ってしまいます。これからは、本
当の自分などなく、幾つかの人格の組み合わせが自分であるという考え方を持つと「ヨコ」社会
にも適応して生きていけるようになります。
ここからは財が変わると流通する手段が変わっていくという話の続き、これからのビジネスは一
体どういう風になっていくのか?ということを話していきましょう。
20170712「お金のなくなる日」小冊子.ver 1
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  • 2. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 2 目次 はじめに 1章 貨幣の歴史 — お金の起源とビットコイン 2章 貨幣の未来 — お金のなくなる日 3章 ネットワーク社会 — 「円」から「縁」へ 4章 21世紀のビジネス — 「モノ」から「コト」へ 5章 21世紀のリテラシー — 今意識するべき4つの方向性
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  • 5. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 5 シャトー・ムートン・ロートシルトという有名なワインがあります。そのラベルのひとつはピカソが 描いたものです。現在でいうと一本約 16 万円です。このワインのラベルを描きましたが、ピカソ は「その代金をお金でなくワインでください。」というわけですね。なぜならその方が、将来的に は価値が上がるからです。ロートシルト男爵もお金の本質を分かっている人ですね。年数が経 つと、当然ワインの値段が上がるわけですね。そしてピカソも創作活動をするため、有名にな っていきます。そうするとワインの熟成年数とピカソの名声の上がり方の掛け算で値段が上が っていきます。一挙両得。画家は通常、自分が最初に売った絵がその後いくら高値で取引さ れても一銭も入ってこない。しかし、このワインなら違う。どんどん値が上がりしかもそれを画家 である自分が保有しているわけですからピカソにとって最高の投資先になったわけです。 またピカソは日常生活の少額の支払いであっても好んで小切手を使っていました。例えば金 物を買ったりするときに、小切手を出していたのですがなんでしょうか?普通は小切手を渡さ れたら、換金しますよね?でもピカソからもらった小切手は、ピカソのサインが書いてあるので、 店主は銀行で換金しないのですね。だからピカソは実際的には代金を払わずに済んだという 話です。自分のサインに価値がありそれは貨幣となりうる、ということまで喝破していたわけです から賢いですよね。 ピカソにまつわるこういう話はいくらでもあります。ピカソほどおそろしく頭の切れるアーティスト はいませんでした。彼は本当の天才でした。ものの本質を見抜いていたわけです。それがお 金というとても抽象的なものであったとしても、です。 さて、これから皆さんに、そのめくるめくお金の世界を披露してゆきましょう。 不可解で謎が多いお金。その正体は何なのでしょうか?
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  • 8. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 8 このフェイが、お金の代わりだと言われるですが、よく見てください。大きすぎて持ち運べませ んよね。これをどうしたかというと、実はここにナマコとかヤシとか、もらったもの、あげたものを刻 んでいきます。つまり、お金という便利なツールがあったのではなく、記帳(記録)から始まって いるということです。お互いの貸借の記帳がお金の起源なのです。そしてこれは面白い話です が、たとえこの大石のフェイが海の中に沈んでも、あそこの家は金持ちだったなどということが ずっと言い伝えられているのですね。だからもはや記帳しなくても、記憶されていくということが 起こっていったりするのです。ある種の権威や信用になっているということです。 今は、ブロックチェーンが注目されていますが、ブロックチェーンとは何かというと、分散台帳シ ステムと言って、暗号化された取引を各々が持つ台帳に記帳されるわけです。つまり、あらゆる 人が分散台帳を持つ、ということです。これは一本改ざんしても他を改ざんすることができない ので、嘘がつけない仕組みになっています。その記帳のプログラムをどんどん堅牢にしてゆく 人がいてそのひとたちにビットコインが配られるわけです。 よく考えてみてください。 これはフェイを使った記帳がヤップ島という小さな島を超えて、グローバルされたとも考えられ ませんか?つまりお金は記帳からはじまって、価値の単位や数字となった。それがまた記帳へ と戻ってきた。ぐるりと一周したという見方もできます。記録・信用から単なる数字へと、そしてま た記録・信用へと回帰しつつあるのです。 そして、フェイの書かれた記帳から楔形文字が生まれたと言われおり、文字より先にお金があ ったということです。これもまた面白いです。いかに人間という種にとってお金というコミュニケ ーションツールが重要だったか、を物語っているからです。
  • 9. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 9 民族内から国内への広がり 〜ヴェニスの商人〜 図 3 ヴェニスの商人 この記帳の中心言語である簿記自体はメソポタミアでずっと昔に生まれています。中世ヨーロ ッパの商人の話は皆さん、シェイクスピアでご存知なのではないでしょうか。ヨーロッパの大商 人たちは自分たちの私的なネットワークをつかって膨大な貸借を貯めて行って、年に一度、リ ヨンに集まって精算していました。一般の市民にはいったい何が行われているのか、さっぱり わからなかったでしょうね。この記帳や帳簿の偉大さを知りたい人は、ぜひ「帳簿の歴史」を読 んでみてください。 さて僕は、金の始まりは「記帳」にあったといいました。 ではお金の本質はなんですか?と言われれば、それは記帳を元にした「信用取引・精算のシ ステム」と答えます。
  • 10. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 10 ちょっと難しいでしょうか?そもそもなぜ記帳がそんなに重要なのかというと、それは「相手を信 用する」という人間本来の性質にもとづいているからなのです。お金とは人間という種の賢さの 表れです。人々が経済取引をするときにリアルタイムにほしいもの同士を物々交換するのでは なく、上げたもの、もらったもの、その価値や数量を記帳してゆく、という記録のシステムです。 そしてその記録と各人の信用に基づいて、そこに今、現物の価値ある資産がなくても「信用」 する、ということ。これこそが大発明です。 伊坂幸太郎の小説、「ゴールデン・スランバー」に人間の最大の特徴は、「信用と習慣」だとい う一節が出てきます。この相手を信用する、ということが取引と分業を中心に発展してきた所以 なのです。ヤクザ同士の取引ではそうはいきません。チャカを片手に港の倉庫で現物同士を 交換しなければなりません。なぜならそこには「信用」がないからです。このような非効率なこと をやっていればやはりヤクザ業界も廃れていってしまいます。賢い人間は相手を信用するの です。 もっと深淵な話をしましょう。 人間を生物の一種として捉えるならば、種にとって信用が重要であるということは明らかです。 なぜなら「人間とは、分業と取引によって栄え、“違い”と”社会”によって補完しあうことを選択 した種」だからです。違うことこそが価値、そして違う個体が社会の中で共存し、分業し取引す ることによって、パンデミックを防ぐことができる、そういうすごい生き残り戦略を選択した生物種 だということです。そのような生物にとって亜人(自分と違う人)を“信用”し、取引することが可 能になったこの帳簿・信用取引システムは最高の発明だったということです。 今回の話を通して、未来を、そしてその時お金がどうなっていくかということをぼんやりつかん で欲しいと思っています。20 世紀的な考えでいうと、お金多く欲しい、もっと欲しいという感じに なるのですが、お金は本来、記帳であり、記帳とは信用、貸借ですよね。そして 21 世紀のブロ ックチェーンテクノロジーはお金を本来の形、つまり信用と貸借の記帳に戻ろうとしています。
  • 11. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 11 だからこそいま必要なのは、今のお金(100 万円とか)を貯めることではないということです。そう いうことがわかってほしいと思っています。 「信用取引・精算のシステム」という定義の他に、もう一つお金について定義があります。 お金とは「譲渡可能な債務(信用)」というものです。これも難しいですよね。これはお金という のは単なる信用ではなく、外部化、つまり個人から切り離せるものだよ、ということです。信用と は人や組織についてしまうのですが、このような有機体(生物)につく信用はやがて外部化さ れうる。そして外的なものであり譲渡・売買可能な形になりうると。そうなるとお金として完成され るのです。 この仕組みがわかると、世界のお金のうちほとんどが起業家・創業者からうまれる、という理由 がわかります。お金の本質から戻ると非常に分かりやすいのです。起業とは何かというと、会社 を作ることなのですね。そして、会社とは何かというと、「その株を売り買いできるようにすること」 なんです。つまりそれは最初から譲渡可能な形となった「箱」を作るということに他ならない。 起業家は、その箱の中に価値をつくり、それらを結びつけて事業を形作っていく。それが会社 であり、その会社の株の価値が上がっていくにつれてお金という財と化すというわけです。ただ 価値を作るのではなく、株という形で譲渡可能にしておくからこそ、彼らはお金持ちになるわけ です。 繰り返します。お金は譲渡可能な信用ですから、譲渡可能な形にするためには、仕組みから 考えないといけないということなのです。ここにポイントがあるのです。お金持ちになるかどうか は、価値を作ったかというのではない。どんなに価値があったとしても役に立たないのは、譲渡 可能なシステム、箱を持っていないからです。 サラリーマン社長はどんなに大企業でも大金持ちにはなれない。なぜならどんなに大きな価値 を創り出してもその箱を持たなかったからです。起業家がお金を持っていくのは、最初に箱を
  • 12. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 12 作った人だからですね。「起業するなら IPO を目指せ。」などと言われますが、IPO は会社の株 が広く譲渡されるような場があるということなのです。譲渡売買が行われるマーケットがある。だ から IPO するわけですよね。 まとめると 20 世紀にお金持ちになるには 3 つのステップが必要でした。 1.まず譲渡可能な「箱」を造り、2.「価値」を積み上げてゆく、3.最後にその「箱」を譲渡する、 ということでした。このトリックに気がついているかということが大切でした。 しかし、この仕組みは、きっと 21 世紀には通用しないでしょう。なぜならお金そのものがまった く別のものに変わってゆくからです。そこにブロックチェーンテクノロジーの時代、つまり『超記 帳時代』のからくりがあるのです。その話は後半でします。 記帳として始まったお金は、その後どういう風にいわゆるお金になってゆくのでしょうか。 2 つの見方でその進化を追っていきましょう。
  • 13. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 13 お金の発展 — 商品の王様として成立した貨幣 図 4 貨幣商品説の説明 最初の見方はボトムアップでお金となるケースです。これには貨幣商品説が挙げられます。よ く言われるものとして、これはカール=メンガーのお金の定義である「販売可能性が高い商品」 というものがあります。メンガーは僕の修士論文のテーマでした。 図をみてください。1 次財、2 次財、高次財と書いてあります。例えば、木屑よりも木、木よりも森 の方が高次だということです。上にいくほど汎用性がある。つまり下にあるものを補完できる。だ からより高次な、つまりみんなが欲しがるものの頂点にあるのがお金であるという考え方です。 ボトムアップで発生したものがお金ですね。皆さんがよく知っている鉱物資源がお金になって います。 金(きん)が商品の王様、お金だった時代があります。皆さんは実は忘れているかもしれません。
  • 14. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 14 今はお金を金(きん)に交換してくれないですよね。では未だに金(きん)はお金なのか?とい うとお金とは言えないですね。金を皆さん誰か持っていますか?持ってないですよね?金の延 べ棒とか持っているでしょうか?金が好きな人はもう偏っているのです。一般にインド人が好き なのですが、先進国の価値観とかでは金ではもうないですよね。若い人は金の時計とか持っ てないですよね。自己顕示欲が強いと観られてしまう。鉱物としての金は有益性があっていろ いろなものに使えますが、機能的にももっといいものが出てきていますから、金(きん)はお金 にならないぞという風になってきました。みんなが求めないものはもはやお金ではなりえないの です。 このようにボトムアップのお金はあくまで流動的なのです。 お金の発展 — ソブリンの権威と信用母体によって生まれたお金 図 5 貨幣信用説の説明 もう一つはトップダウンから生まれたお金です。
  • 15. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 15 17 世紀の終わりにはもともと国内で取引を行っていた商人が集まって、ヨーロッパでは国際金 融ネットワークができていました。すでに述べたように彼らは膨大な貸借を行っています。信用 できるクラブでの私的取引で、互いの信用をもとにした貸借ができるようになってきた。記帳と いうのは時間を超えますよね。貸して 1 年後に却ってくる。これが行われるというのは、ある特 定の信用に基づいて行われています。信用が元になってくるのです。そういう効率化が極まっ ていた。 もう一つの動きとして、イギリス王様ウイリアムス2世がオランダとの戦争でお金がないぞというこ とになってきていた。お金はないが権威があるのが王様です。権威と権力の両陣営が組んで できたのが 1696 年イングランド銀行という初めての中央銀行でした。 図 6 中央銀行 皆さんが知っている中央銀行は日本銀行ですね。 株主構成を見ると国際機関ではなく意外に民間機関なのです。これがもとになってよくユダヤ 人が世界を支配しているという言われ方をしたりしていますよね。でもそれは違います。お金を
  • 16. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 16 支配することなど誰にもできません。そのあたりは一通り陰謀論を読んだあとで、自分で考えて みてください。 さて現在このような形でお金が発行されているのですが、人々の共通認識である「お金」とはど こから来ているのでしょうか? 今のお金は、権威や権力が結びつかないとお金として成立しません。有名な貨幣論者の岩井 克人先生は「お金はお金であるから、お金である。」と言っています。これは循環論法と言いま して、みんながお金と思っているからお金であるということです。お金とは、信用がありなんとか 引き取ってくれる人がいるということを前提として成り立っているということを意味しています。な んだか禅問答みたいです。 一般的に、通貨の価値は母体の信用と利用者の数、すなわち汎用性で決まります。 さて、現在、先進国で行われていることはなにかというと、各国ともじゃんじゃん擦っているとい うことです。もちろん日本も、です。輸出を増やすために、自国の通貨を低くする、ということを やっています。その競争が行われています。これは本当に不自然な現象です。母体の価値を 通貨政策によってあげようということですが、そうは簡単にはいきません。結局は、徴税か戦争、 そのセットでケリをつけてきたのが国家通貨の歴史です。 あらゆる古今東西の戦争は経済戦争です。どんな王様も国も戦争も子供の戦争みたいに始め ないです。経済的な動機が必ず背景にあります。NHKの大河ドラマみたいにならない。日露戦 争の本当の立役者は誰ですか?というと、みんなが好きなのは司馬遼太郎の秋山兄弟がかっ こいいということになりますが、がそういうわけではないですよね。やはりなぜ戦争をすることに なったのか、その経済的動機と、戦費をどうやって調達してきたのか、そこに目を向けなけれ ば戦争の本質はみえてきません。最近、「お金の流れでわかる世界の歴史」など、戦争の背景 にかならず潜むお金の動機を書いた本も出てきているのでご興味があればぜひ。
  • 17. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 17 図 7 ビットコイン きな臭い話から少し変えて新しいお金の話をしましょう。 今話題になっているのがビットコインの B が大文字の方が仮想通貨、そして小文字のこっちは ブロックチェーンです。 Bitcoin のやりとりは儲かるの?儲からないの?ということに関してはコメントがしづらいですが、 その背後で起こっていることを掴むことによって、各自で考えて欲しいと思っています。 無国籍通貨というのは中央銀行と国家にとっては厄介な存在なわけですね。だって無国籍の 通貨の発行と対応しなきゃいけない。そうすると秩序が保たれない。しかし、考えて欲しいのは、 Bitcoin の価値はどのように決定されるかということなのです。国家の信用が下がれば無国籍通 貨の価値は上がるというそれだけの話ですよね。国家は存続するかどうか、ということを考えて みれば、自ずと答えが出るのではないかと思っています。
  • 18. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 18 ブロックチェーンについては、その本質をしっかり知っておくと良いかもしれません。 まずインターネットとブロックチェーンは別ものだということです。 その違いを説明するのは難しいです。例えば、A さんと B さんがいます。A さんの 100 万円が B さんに移る時、どうするでしょうか? インターネットでは、A さんの口座から B さんの口座にデジタル上のネットワーク(TCPIP 規格) を通ってデータが流れます。デジタルデータですから当然コピーが発生する。B さんの口座に 100 万円のデータが表示されたと同時に A さんの口座からその金額を消さなければならない。 これはわかりますよね。 ではブロックチェーンとは何か?今度はパラパラ漫画を思い浮かべてください。 ブロックチェーンではデータは「移動」しません。まず一枚目の紙には A さんの口座に 100 万 円が書いてあります。B さんにはなにもなしです。しかし 2 枚目をめくるとあら不思議、A さんの 口座にはなにもなく、B さんの口座に 100 万円と書いてある。パラパラ漫画やアニメのしくみと はパラパラとセルをめくるとあたかも動いているように見えます。しかし実際には動いていない。 視覚のトリックです。ブロックチェーンも同じです。これは A さん、B さんの取引を記帳したわけ です。そしてその世界中の膨大な取引の記帳を毎時間、記帳し続ける。その記帳の束(ブロッ ク)が連なっている(チェーン)から、ブロックチェーンなのです。 インターネットが世界をデジタル化して、コミュニケーションを加速させる技術ならブロックチェ ーンは、世界を『上書き』し続ける技術。インターネットと同じインパクトをブロックチェーンが持 つといわれるのは、前者は空間を広げ、後者は時間を刻むからです。いかがでしょう?少しだ けでもしくみがわかるといいのですが。 ここまでは過去のお金の話です。 ではこれからのお金について話しましょう。
  • 19. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 19 第 2 章 貨幣の未来 — お金のなくなる日 お金の本質は数字である 図 8 コミュニケーションの関係図 お金とは、信用だという話を今までにしてきました。 今度は、コミュニケーションのためのメディアの一つとしてお金をとらえてみましょう。汎用性つ まり使える人が多いこと、そしてコンテキストつまりどれくらい深い文脈を伝えられるかという深さ の 2 つの軸のマトリクス上に存在します。人間のコミュニケーションにはいろんなメディアがある のですが、その中に言語やお金などがあるし、ボディランゲージなどもあります。 僕は、お金とは譲渡可能な信用だと持っていますが、お金の本質はなんですか?と言われた 時には、数字であると答えています。数字で表されるというところにお金の本質が表されると思 っているのです。数字とは、ありとあらゆる人が使える共通言語です。ここにお金のトリックがあ
  • 20. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 20 ります。人は、数字で表現したとたんに、そこに意識が吸着していくというものなのです。数字と いうのは汎用性がありあらゆる人が使えるメディアであるから注目を集めやすいというわけです。 その最たるものがお金ではないかと思うのです。 お金が数値であるというこの一点が、実はお金をお金足らしめている所以ではないかと疑って います。お金だけではありません。私達は若い時から偏差値やランキングなど数字に対して強 く執着し、固執してしまう傾向があります。数字は意識を吸着する強力なメディアです。まさに それこそが、世界 80 億人が数字を使う所以でもあるのです。 そして、お金は現在、信用を担保するという基本から、離れつつあるのではないかと思ってい ます。お金が過度に数字化されるということによって信用という裏付けはないのだけれど、それ に価値があるような形で流通し価値交換ツールとして成り立っているのです。 実際、お金(数字)の量的・質的拡大は今世紀に入って急激に起こってきました。
  • 21. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 21 お金の量的拡大 — “ザ・マネー”の拡大 図 9 実質経済と金融経済の関係図 これはリーマンショックの前の数字ですが、実体経済が 1.4 倍の成長しかないときに、お金は 90 兆から 270 兆億、つまり 3 倍くらいになっているのです。もちろん、実態の裏付けがなく、お 金だけがどんどんと膨らんでいます。これはレバレッジと呼び、実体経済と金融経済の差が広 がりすぎると、ぷつりと糸が切れ、バブルが崩壊し、実態経済が機能しなくなります。 金融業とは、信用の卸業者のことです。決して信用を創るわけではない。信用は、価値創造・ 一貫性・コミットメントをブレンドして発酵させた結果作られるものです。しかしながら金融業者 が信用を土台とせず、お金をつくり続けた結果、このような事態になりました。 今ものすごい数のお金を擦って大規模に金融緩和が起こっていますが、金融破綻のサイクル はどんどん短くなっていきます。
  • 22. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 22 お金の質的拡大 — 汎用性の向上 量の拡大と同時に、お金の質的な拡大も進行しています。 お金の汎用性がどんどんと拡大していることにみなさんもお気づきかと思います。車ですとか、 角膜とかもネットで検索すれば普通に売っていますよね。廃棄物の Co2 とか、別れさせ屋とか …遺伝子とか、結婚も金で買えますよね。お金で買っていいという線引きをするところに倫理 観の議論され始めているのですが、気がつかないうちにどんどん侵食されていきます。 僕らは有機的な人間です。お金は無機的な存在です。水と油のような存在です。しかしそれと は裏腹にどんどんとお金に触れる時間が増えていっているのです。 さて、生物種として人間をあらためて見たときに、決してお金は適切なコミュニケーションの道 具ではありません。繰り返しになりますが、人間の種としての生存戦略の本質は異なる個体の 分業と交配による自立分散であり、一方、お金とはエネルギーの偏在を促進してしまう統一基 準だからです。資本主義はパンデミックの危機をはらみます。むしろ人間に合っているのは 個々人の信用をもとにしたゆるやかで有機的なネットワーク社会なのだと思われます。
  • 23. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 23 世界の 3 層構造 図 10 世界の 3 層構造 お金の変化とともに、世界の構造も変化してきました。 これは、世界は今どんな風に分かれてきているのかということを表した図です。 国家の上に、企業つまりグローバルカンパニーがありそしてその上に紐帯すなわちネットワー クがあります。国家の中にこのようなネットワークがあるのではなく、国と同レベルにグローバル カンパニーがあり、同レベルで個人間のネットワークがあるのです。
  • 24. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 24 国家と企業の力は同程度になっている 図 11 世界の GDP 順位 これは世界の GDP 順位トップ 100 を示したものです。 これは若干古く 2010 年くらいの資料ですが、アメリカなどが上位に並んでいる一方で 25 位に ウォールマートだとか、41 位にトヨタなど国家よりも経済的におおきなものができ始めています。 ということは国家だけでなく個人というものも、大きくなっていっていると言えるのではないでしょ うか。テイラースイフトは何十億人というフォロワーを持っていますよね。そういう人たちが貨幣 を発行できないのかというとそうではありません。VALU というサービスが少し流行りましたが、 個人が通貨を発行するのはもはや当然の動きとなりました。
  • 25. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 25 そして、その裏で起こっていることとは何かというと、お金の信用母体の変化なのです。果たし てこの状態がずっと続くのでしょうか? 信用母体の変遷 — 資源から国家、そして企業と個人へ 図 12 主要貨幣の信用度と汎用性 これは主要通貨の信用度と汎用度について示した図です。 国家の信用は、GDP と生産量、利用者(=汎用性)によって測定できます。そうすると、USD な どは現地通貨になっていますが、円は非常に弱いですよね。
  • 26. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 26 信用母体が企業になるとすると何がいいのかというと、利用者が加速度的に増えるという点に あります。国家が発行する貨幣の利用者は主に国民であり、国民の増加は出生率に依存しま す。一定倍率以上は、増えないようになっていますよね。ですが企業は、増加率に上限があり ません。楽天は、国家と比べると恐るべきスピードで利用者が増加しています。楽天ポイントな どは、利用人数が増えると“貨幣性が上がって”いくともいえるでしょう。 “貨幣性が上がっていく”という表現に違和感がある人も多いのではないでしょうか。貨幣は、 「貨幣であるかないか」という風に分けられるものではなく、程度の問題なのです。貨幣は「お 金だ」と考えるのではなく、「ちょっとお金だ」とかいう「程度」なのです。 図 13 お金の変遷 お金の変遷を、信用母体の変遷を中心にまとめてみます。
  • 27. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 27 図を見てください。昔は希少性のある金鉱物がお金の価値を担保していました。そこからお金 というものを発行していったのですが、今のお金は国家によって担保された信用によって流通 していますが、信用の裏付けがあるかどうかは怪しい状態です。 そしてそろそろ企業や個人がお金を発行する時代に差し掛かってきました。 続いて、「貨幣・市場経済」と「贈与・共有経済」を比べてみましょう。 「貨幣・市場経済」と「贈与・共有経済」の対比 図 14 貨幣・市場経済と贈与・共有経済の比較 貨幣・市場経済と贈与・共有経済はどのような違いがあるのかということを説明していきたいと 思います。
  • 28. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 28 貨幣・市場経済昔は信用国家で取引していましたが、これから始まる贈与・共有経済はもっと 濃いネットワークの中で、それぞれの個人の信用が担保され、やり取りをする形です。この横 社会では、広大なネットワークの海を自らのつながりと信用を使って自由に泳げる者が勝者と なります。それまでの国家が発行した貨幣を使う時代は完全な縦社会でした。匿名のエネルギ ー(金)を使って現実社会をコントロールできる者が勝者でした。しかし覇権はシフトし、両者の 力関係が逆転するのは 2020 年頃だと思われます。 貨幣の分類と進化 図 15 貨幣の進化まとめ 様々な価値流通の手段の分類を通して、貨幣の進化についてまとめてみます。縦軸は「信用 の外部化の度合い」であり、質的な変化を表します。そして横軸は「信用がある範囲の拡大、 つまり社会的・地域的な拡大」です。 まず縦軸から説明します。信用がどうやって外部化してゆくのかそのステップです。
  • 29. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 29 最初は、信用は外部化しない形、つまり「贈与」持ち寄りの時代でした。原始的な共同体にお いては、生産物は個人ではなく集団の持ち物だったのです。ここでは「贈与」という価値観もな いままに消費される段階です。共同体の最小単位である家族内においても価値の交換は行 われません。財は家族全体でシェアされ、それがゆえに構成員は安心と信頼を得るのです。 その前提として婚姻制度を中心とした共同体を規定するしくみがありました。人類 20 万年の歴 史の中で、多くが贈与経済を用いた部族間の交換であり、一方が何かを贈与すると、それに 対して返礼する。それが永遠と繰り返されるという形で財の交換がなされていました。 次に信用が一歩外部化され、個人間の取引になります。ここでは、会計の仕組みによって 個々人が互いの取引を記帳することによって、財の交換を行いました。この段階においては、 個人間の信用関係を基礎としています。 次の段階として、交換通貨の発行、金に変えられる通貨の発行です。貴金属などとの交換を 前提として、信用を持ち運ぶことができる形態に変化した段階です。 そしてその次の段階は、不換通貨の発行です。信用の前提を貴金属などに置くのではなく、 その信用を権威つまり、王権や政府に置くものであり、現代の貨幣はここにあたります。 単なる交換から、貸借になり、そのうちみんなが欲しがる財が通貨となり、それに信用が集中し ていきます。そこから貴金属等に信用母体が変化し、その後王様が金を定義するという流れで す。 次は横軸、「信用がある範囲の拡大、つまり社会的・地域的な拡大」です。 こちらは共同体内、国家内、国家間そして無国籍(グローバル)に整理することができます。本 来は、共同体を超えた取引は、価値基準に関して合意することは難しいのですが、価値流通
  • 30. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 30 においてお金が用いられる場合は、その強制的な拡大が可能です。それは、お金が数字によ って表現されているからなのだと思います。 お金とはこの 2 軸で発展してきました。 最初、原始共産制があり、そして記帳が増える、その記帳がグローバルに展開していき商人の 取引が大きくなり、そして現代のロスチャイルドのように子供 4 人をそれぞれ別の国に送り、国 際商人になっていく家族グループが現れ、ネットワーク取引という時代がありました。すでに 14 世紀半ばには、トスカーナ、ジェノバ、バルセロナなどの都市国家では、小切手などの借用書 による支払いが一般的になりつつありました。現存する最古の小切手は、フィレンチェの貴族 階級であるトルナクィンチ家が銀行家のカステリャーニ家に振り出した 1368 年の小切手です。 16 世紀半ばには、ヨーロッパを中心に国際商人の私的なネットワークによって商業取引の国 際化が行われてきました。各国において使用範囲が限定され、王権によって管理されるソブリ ンマネーを超えて新しい商業経済を成長させるために、ヨーロッパの国際商人は階層型の信 用体系を創りだしたのです。 国際商人は、四半期ごとに大商会の一団がリヨンの大市に集まって、帳簿を清算するようにな りました。大市の最初の二日間は大量の売買が行われ、新しい勘定の記入の古い勘定の整 理が行われました。二日目の終わりに四半期分の帳簿を締め、商会間の残高を照合し、三日 目に、為替銀行業者だけが集まって「コント 」を作成する。コントは貿易金融システム全体の 軸になっていて国際商人ネットワークと彼らの用いた帳簿精算システムによって大規模な商取 引が可能となったのです。 やがて、商業と政治の融和の結果として 17 世紀に登場したのが中央銀行制度です。最初の 中央銀行は、イングランド銀行であり、ウィリアム・パターソンの発案で 1694 年に設立され、 1709 年には、イギリス国内での銀行券の発行を事実上独占する権利を与えられました。これ によって国際商人のプライベートネットワークとソブリン通貨の融合が実現しました。
  • 31. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 31 現代の経済取引システムは中央銀行を中心とした信用管理のもと行われている基本的には不 換通貨です。現代の貨幣は、貨幣価値は流動的なものであり、政府と中央銀行の権威と信頼 の薄氷の上に漂う不安定な存在となっています。「国全体に流通しているマネーの大部分は、 物理的な実体を持っていない。たとえば、アメリカの場合は約 90%、イギリスの場合は 97%、物 理的な実体がまったくない」 それにもかかわらず、世界の多くの国がこの貨幣による取引を前 提とした資本主義を採用しすべてがたがいに影響しあう世界が形成されているという不思議な 世界になりました。 そして今、問題になっているのが仮想通貨です。 これは質と量の観点で見ると、非交換通貨でありながら、無国籍通貨ということです。図の一番 右上の最終段階です。 まだ萌芽段階であるものの Bitcoin 等をはじめとするブロックチェーンを用いたアルゴリズム通 貨・代替通貨などの存在感は、政府の信用管理の限界とその結果生まれる高不況のサイクル が徐々に短くなる事態によって年々大きくなっています。 これら無国籍通貨を、一定の期間で膨張と暴落を繰り返す法定通貨のリスクをヘッジする代替 通貨としてのみなす人々も現れています。 これらコンピュータのアルゴリズムの強度を信用保全の前提とする無国籍通貨は、国家の通貨 と異なり、その発行に限度なく、その本質においてなんら財としての価値や信用の前提を持た ないという点においてこれまでの貨幣とは性質が異なります。これらの通貨の存立の前提はそ の流動性にあります。再現なく発行されるアルゴリズム通貨はいずれもっとも流動性・流通性の 強いもの集約されます。だが最終的に残りうるいずれの通貨もその信用の前提の欠如および 高度な流動性が生み出す投機的動機によって破綻する不安定さを常に抱えています。 それでも人々はこの曖昧な信用を前提とした通貨群をその流通性ゆえにおびえながらも一般 生活の経済活動において採用せざるを得ない状況にあります。 これが貨幣の進化のまとめです。ちょっと難しかったですね。
  • 32. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 32 貨幣を構成する 4 つの要素と発生するコスト 図 16 発生する 4 つのコスト 「信用の外部化の度合い」と「地理的・社会的広がり」を軸として価値流通手段を整理すると、 それぞれの手法について 4 つの要素とコスト(課題)が浮かび上がってきます。 4 つの社会的課題とは、1. 貨幣化(信用の外部化)に伴う信用のコントロールの課題(つまり近 年の大規模な金融緩和における課題)、2. 社会的基盤・文化的文脈を異にする共同体間に おける経済的価値の概念の合意形成上の課題、3. 貨幣という数字によって取引されることに よるそれぞれの財の文脈(歴史や物語)の喪失という課題、4. 貨幣化を洗濯しない場合の合 意コストの肥大化という課題です。 左下の適合のコストとは、物々交換で欲望が一致せず、物々交換だと取引コストが高いという
  • 33. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 33 ことです。もう少しくだけた言い方をすると「A さんが手放そうと思っている物は B さんが欲しが っている物である」という第一の一致と、「B さんが手放そうと思っている物は A さんが欲しがっ ている物である」という第二の一致が同時に成り立つという状況は極めて難しいという課題です。 ですがこのコストは、ネットワーク上で個人や組織の信用を基盤としたつながりができ始めてい ることから、ネットワーク上で自分が持っているものと欲しいものを即座に直接交換できるように なってくることが予想されます。 左上の信用管理コストとは、信用が担保されるのが難しくなるという課題です。リーマンショック 以来、バブルが発生し、極端に貨幣価値が大きくなり、やがて崩壊するというサイクルが短くな っているということが通貨の安定性に負の影響を与えていることは皆さんも感じていることなの ではないでしょうか。 右下のコミュニケーションコストとは、お金で数字をやり取りするに当たって、物の価値というも のは全然人によって違うため、価値の合意が困難であるということです。例えば、フェリックス マーティンが書いているように「記念建造物を保存するのは、それに歴史的な価値があるから である。絵画に感嘆するのは、絵に芸術的な価値があるからだ。うそをついたり、ものを盗んだ りしないのは、そうすることに道徳的価値があるからだ。禁酒して、1 日 5 回礼拝するのは、宗 教的な価値があるからだ。祖母の安物の宝飾品を大切にとっておくのは、情緒的な価値があ るからである。これはどれも用途が限定された価値の概念です。 つまり、それぞれの領土の中では支配者でいられるが、そこから一歩出ると、治世はおよばな いのです。馬の背の高さ、海の深さ、網の幅についての古い物理量の概念と同じで、情緒的 な価値、芸術的な価値、宗教的な価値は、特定の活動の文脈で考え出された特定の意味を 持つ概念です。それらの『標準化』という点では、物理量の古い測定単位以上に進んでいない ように見えるでしょう。情緒的な価値の国際標準など聞いたことありませんね。社会的現実は村 ごとにちがうだけでなく、人それぞれにも大なり小なりちがう。だから『蓼食う虫も好き好き』とい う言葉があるのだ。」という風に、文化によって“価値”は異なり、合意が取れづらいのです。も っと身近な例で言うと、ペットボトルの緑茶は僕にとっては十円ですが、誰かにとっては十円で
  • 34. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 34 はないですよね。本当は価値が違うにかかわらず均一化されていくということです。 そして右上の文脈毀損コストとは、交換において生じる人間間のつながりと、交換財の引き継 ぐ物語(歴史)等の文脈を貨幣取引により毀損するコストです。ここでも文脈とは、平たく言うと 交換を通してできる人間間でのつながりと、交換財が引き継ぐ物語または歴史のことです。そ して、貨幣の本質的な問題は、実はここにあります。貨幣というのは数字で表しますよね。価値 というのは文脈を保全しているのであって、「誰が幾ら」としてしまうと、分断が起こってしまいま す。 トマ・ピケティの書籍が流行し「資本主義の問題点は格差である」という考え方が通説となって いますが、私は格差が問題ではないと考えます。貨幣の本質的な問題は、格差ではなく文脈 の毀損ではないかと思うのです。現代において、あらゆるものが最終形態として金融商品化さ れています。そこでは多くが株価という数字や記号で表現され、単純化されて、比べることがで きる形にすることで取引が可能になっています。しかしその金融商品の背景には、企業や 人々の営みがあり固有の物語があります。それらは、数値で表現し比較できるものではないは ずなのです。
  • 35. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 35 お金の進化の行き着く先、3 つの方向性 図 17 お金の進化の方向性 それでは今後どうなるのかというと、以下の 3 つの方向性があると思っています。 1 段階目に、無国籍通貨が短期的に勃興し、続いてに通貨が時間になり、そして最後にグロ ーバルレベルでの贈与経済が起こる、という三つです。 今後主流になるのは無戸籍通貨であるというように思われていますが、僕は懐疑的です。なぜ なら信用の担保が難しいからです。国家は 170 しかないために、発行できる通貨もせいぜいそ のくらいですが、一方で無国籍通貨はビットコイン以外でも 350 くらいあります。そのうちどれが、 信用があるのでしょうか?というと、どれもないわけです。 お金の本質は数字であり、数字自体は意識を吸着する力が強いですから、一時的には無国 籍通貨に関心が集まりバブルは起こるのですが、過去のバブルと同じようにいつかは破綻す ると思っています。中央銀行の金融政策の失敗で、代替通貨に注目が集まるが、内部に本質
  • 36. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 36 的に信用を保全しておらず、流動性を頼りにした投機的存在に終わるだろうということです。 そしてその次に、信用管理コストの肥大化によって経済取引が停滞すると、信用回帰が起こり、 個人の数字である「時間」に落ち着き、そしてそのあとにグローバルレベルでの贈与経済が起 こります。 お金は、水などのコモディティには便利なのですが、日用品にしか使わないわけです。他のも のは意味がないです。例えば、芸能人の友達に相談するとか、自分が講義を持って講義する とか、それを可能にするのはお金ではなくて、信頼関係でしかないですよね。じゃあ何がお金 の代わりをするかというと時間です。すると時間が通貨として存在し始める。 みんなが餓えで死ぬというのがない世界ですから、したがってその次の欲求である社会的な 欲求に入ってきます。 人々の欲望が生存から社会的欲求へと変化した際に、それを貨幣によって購入することは難 しくなります。それを得るためには貨幣でなく、時間が必要です。大富豪が大統領になるには 社会的承認が必要だし、裕福な家庭においても、子供にはお金よりも時間をかけなければな らない。効用に比例するものは貨幣ではなく、自らの時間だということです。 社会的欲求の充足には人間関係・価値意識の醸成が求められ、それは時間によって生産・蓄 積されるのです。お金が時間に変化し始めるのは自然な動きです。 通貨としての時間が便利なのはその性質にもあります。 高度に抽象化され信用の希薄化された現代の中央銀行発行通貨はそのコントロールが限界 に来ています。一方で、時間とは国家や社会集団の信用ではなく、個人(individual)の信用に 帰属する数字です。Individual とは本来“分け(dividual)”“がたい(in)”という意味であり、信用 の母体の最小単位となりえます。そして、この個人が“発行”できる外部化された信用こそが 「時間」なのです。 時間は、信用の最小単位である個人(individual)が発行できる最大の汎用言語である数字で
  • 37. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 37 あることによって、最高に有効な通貨としての地位を担保できるのです。 また不平等の解消という意味でも時間通貨は有効です。現代の貨幣はすでに偏在が激しく、 世界の民主化が進む中でこのような富の偏在は不公平を助長し、結果として社会の不安を拡 大し、経済の安定性を脅かしています。米国において CEO の給料が一般社員の 1000 倍であ り、金融機関の上級社員のボーナスを含む給料が一般企業の管理職の 10 倍である現状に対 して、いまさら言及する必要がないほどその価値対価と報酬に対して不整合が存在していま す。じかし人の時間は個別差こそ多少あれ、大きな差異がないので機会について公平といえ ます。 時間は、貨幣がもっている文脈の毀損に対する保全効果もあります。文脈価値は、貨幣化(数 字化)によって損なわれていきます。一方で、文脈価値は、時間(歴史・つながり)によって生 産されます。信頼のおける個人間(知識・社会的承認など時間をかけて紡いできた人々)の直 接的なやりとりによって文脈価値は保全できるのです。そのため時間通貨は有効といえます。 2 つ目の動きは、地域通貨が勃興するのではないかということ、最後の一つは、記帳は面倒だ なということで、贈与経済の形に変容していくのはないかと思っています。時間通貨は、市場・ 貨幣経済から贈与・共有経済への橋渡しとなる概念なのです。
  • 38. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 38 社会システムの変遷 — 貨幣から贈与、時間へ 図 18 経済システムの整理 これは今までの市場貨幣経済、贈与共有経済、時間通貨の 3 つを書いてあります。 これらが整理された上で、なぜこのようは変遷をたどるのか?ということを明らかにしなければ なりません。贈与を含めたモデルが貨幣であり、価値流通メディアを通して流通される「価値」 が変化したことが貨幣の変化につながるはずだからです。 私たちが欲しがるものが変化したから貨幣も変化するという流れが必ずあるはずです。その辺 の話をここからしていきます。
  • 39. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 39 貨幣についてまとめ 貨幣について改めてまとめます。 まず、21 世紀のビジネスは、上や物不足に対応するものではなく、承認と尊敬をもとにして供 給しあう寄り合いプラットフォームのような形になってゆくでしょう。しかもそれがグローバルなレ ベルで行われる。そして生存欲求を満たすモノに関してはほとんど経済的価値がなくなる。 そして二つ目、経済の中心が生存を担保するものではなく承認を担保するものに変化していく と生産と消費が一体化するということです。これはどういうことかというと、社会的欲求の生成に は、生産者と消費者という概念がなく、みんなが参加しなければならない。たとえばパーティー をする。楽しかったね、と言ってみんなの心が満たされる。だれがだれかに価値を提供するわ けではない。みんなで価値をつくりだして分け合うことになる。これはいままでの経済原理とは 全く違います。つまり質量保存の法則が成り立っていないわけです。20 世紀までの経済、つま り物がこちらからあちら側へと移動するのでは質量は変化しませんが、社会的欲求はそうでは ない。意識をともにする人々が集まって時間を共有することで価値が生まれる。だから、誰が 消費者とか生産者ではなく、全員が Giver になる。誰が与えて誰が受け取るかということではな くなります。 そして、繰り返しますが、時間が価値流通メディアに一時的になってゆくでしょう。それは、財の 取り扱いの原材料が意識になり、意識の主体は個人だからです。意識が共有されるのは時間 であり、数字として可視化できるものだからです。 そしておそらく代替通貨・仮想通貨が短期的に隆盛をほこります。なぜ優位になるかというと、 一つは中央銀行が金融政策に失敗するからです。そしてなぜ短期的かというと、勃興しその 結果信用が担保できなくなるからです。
  • 40. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 40 そして、おそらく貨幣の本質は(譲渡可能な)信用でなく、数字というメディア属性にあるという ことです。これは数字という情報が、人のアテンション(意識の焦点)を吸着しやすいからです。 また貨幣の本質的問題は分断(文脈毀損)にある。それは社会関係資本を損なうこと。そして ブロックチェーン(分散台帳システム)がそれを補完することです。 社会関係資本と人々の健康には大きな関係があるということです。これはデータがありまして、 健康に影響があるのは酒とかタバコではなくてネットワークがあるものに原因がある。国家はで すね、通貨の信用のコントロールに失敗します。価値基準の統一化の世界的広がりは止まら ないはずです。 そして贈与・共有経済は社会的安定をもたらすこと。 最後に共有社会(シェアエコノミー)では余剰物も財になりうるということ。 以上です。
  • 41. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 41 第 3 章 ネットワーク社会 — 「円」から「縁」へ 今までお話しした内容は、貨幣というものがどういう風に貨幣が変わってきて、信用の裏付けを 亡くしながら徐々にテクノロジーによって無国籍通貨の発行に向かっていくということでした。 そしてそれを直接的につなぐネットワーク社会とはどういう社会かということを今から話していき ます。 マジョリティ/マイノリティの接近 図 19 マイノリティマジョリティ比率 これまで作り上げてきた世界・システムを維持・運営する組織・人をマジョリティと言い、そこから あぶれているが、新しいしくみを創りだそうとする層をマイノリティと言います。両者の価値に差 はありませんが、現在、戦後のシステムが出来て 60 年たち、マジョリティシステムが崩れようとし ていることは事実です。なぜなら、その比率が逆転しようとしているからなのです。
  • 42. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 42 日本のマジョリティ層は正規雇用労働者、従業員 1,000 人以上の会社での勤務、専門職、公 務員およびその家族であり、マイノリティ層はニート(60 万人、疾病ニート、コミュ障ニート、高 学歴ニート等)、若年派遣労働者、LGBT(15人に1人)、シングルマザー(70万人)、独居老人 (100 万人)、年収 200 万円以下(1000 万人)などです。その比率は今や、6:4 ぐらいにまでな っているのです。 昔は、80〜90%がマジョリティでした。でも今は、車椅子は 7%ですし、ニートの比率も高いで すよね。LGBT だって、50 種類くらいいらっしゃいますよね。性的な嗜好も多様化しています。 一般化したとはいえまだ社会の中で偏見や差別に苦しんでいる人も多くいます。 大きな変化は感じられないかもしれませんが、マイノリティマジョリティが逆転するというのは、 社会構造が変化するという点で重大な変化です。
  • 43. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 43 「タテ」のマジョリティ、「ヨコ」のマイノリティ 図 20「タテ」と「ヨコ」の組織図 マジョリティとマイノリティの違いは、構造に現れています。 すでに出来上がったマジョリティのシステムは基本的に「タテ」。それに対し、円心をくりぬかれ た周辺部に位置するマイノリティは「ヨコ」でつながるようになります。 マジョリティとは、中心にいて縦のラインが強固であり、マイノリティはどこにいるかというと周辺 にいるのです。真ん中が空洞で、縦のラインを作りようがないのでしょうがなくネットワークを作り 出します。これが一番大きな違いです。
  • 44. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 44 図 21「タテ」社会の特徴 マジョリティの基本的な発想は、資源を吸い上げて、上からシャワーのように降らすことです。 これは出来上がったシステムなのであたりまえですよね。マジョリティが提供するものは、生活 (衣(医)食住)に必要な「コモディティ(匿名の製品・サービス。たとえばカネ/票/エネルギ ー)」です。生活に必要なのはコモディティだから、人々が生存欲求を求めている時はこちらが 便利ですね。そしてタテというのはお金が便利です、マジョリティが集めて上から降らせますよ ね。お金とかコモディティとかであればこれが便利です。金融庁→都銀→地銀→信金とお金 が流れ、エネルギーは東電などで流していきます。
  • 45. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 45 図 22「ヨコ」社会の特徴 マイノリティは同心円を繰り抜かれており、分散しています。 だから、ヨコでつながることが基本となるのです。ネットの普及はマイノリティのつながりを一層 強化しつつあります。マイノリティは、必要に応じて、資源をヨコで融通しあいます。それは、相 互扶助のしくみであり、それぞれの社会的欲求(承認欲求・つながり欲求)を満たすことに適し ています。逆に、大量生産が有利に働くコモディティの流通には適しません。 お金は、必要に応じてプロジェクト単位でクラウドファンディングで集めますし、知識や情報もヨ コのネットワークで調達します。エネルギーは、電気を大量に「作る」のでなく、個別にためてお いて、必要に応じて「配分」(スマートグリッド)し、政治も、みんなの意見を吸い上げて共有しま す。
  • 46. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 46 欲求構造と人権の範囲、社会システムの変化 図 23 欲求構造と社会システム 欲求構造と人権の範囲、社会システムの変化を整理します。 では、人は今、何を求めているのでしょうか? 人々の基本的な欲求構造が上位にシフトすれば、それに応じて当然社会システムも進化しま すよね。いまや生存欲求は脳に刷り込まれた習慣であり、本能ではありません。人は本能的に 社会的欲求を求めている段階です。それはヨコ社会が主役になるということなのです。 「カネ(数字)という言語が有効なのは、衣(医)食住を満たす領域においてです。なぜならそ れらはコモディティであり、一つ一つの製品・サービスに独自性を求められないからです。しか し、承認欲求の段階では、それを満たすためには、常に文脈が求められ、それはカネでは買 えないのです。
  • 47. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 47 図 24 欲求構造・財の携帯・価値流通の手法の関係 社会で求められる欲求が変化することで、それを提供する財やサービスが変化し、価値流通 の手法が変化していきます。今後の流れをこの図に沿ってみていきましょう。 皆さんが知っているマズローの欲求段階説で生存から承認、創造があります。安全は国家や 土地が担保し、衣食住などは貨幣が使えますが、承認欲求は、お金だと流通しづらくなってき ます。貨幣とは間接的に人を繋げますから勝手が悪いのです。ですから時間になったり、知識 になったりしてゆくのです。
  • 48. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 48 お金で尊敬は買えない 図 25 中国のことわざ これは、中国のことわざなのですが、ここからもわかるように幸福はお金で買えませんよね。 幸福はレセプターの問題であって、お金の問題ではないからです。お金を通してモノを買い、 それを五感で認識して幸福を感じるか、それとも直接的に「私は幸福である」と認識するか、あ なたはどちらを選ぶのでしょうか? 幸福の本質は「一体性」にあります。周りの人や期待との一体性です。例えば僕は、映画を見 に行くと「つまらない、つまらない、つまらない…」と見る前に言い続ける。そうすると、期待値を 下げることができるから、以外と面白く感じて幸福感が味わえます(笑)。幸福とは解釈から生ま れます。つまり何があるかではなく、自分がどう想うかだということです。
  • 49. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 49 友達の数で寿命が決まる 図 26 友達の数と寿命 先ほども申し上げたように、友達の数で寿命は決まると言われています。 タバコや酒ではないのです。要するに社会参加した方が健康にいいし、職を持っていたりネッ トワークを持っていたりした方が健康にいいよ、ということですね。
  • 50. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 50 価値概念の変化 〜需要と供給から文脈価値へ〜 図 27 一般的な価値の概念と文脈概念 価値流通の手法が変化すると、価値概念も変化してゆきます。 需要と供給で決まる一般的な価値概念は経済のお金の定義ですね。 消費者の需要量と、生産者の供給量で価格が決定するというものなのですが、承認欲求を満 たす財やサービスへと変化する過程で、この前提は当てはまらなくなっていると思います。な ぜなら、承認欲求を満たす際に、消費と生産という境界線は曖昧になっていくからです。 現代において価値というのは文脈価値があり、つながりと物語の 2 つによって成り立っていま す。空間軸的には送り手から受け手に、時間軸的にいうと過去から未来へと対象物が移動す る際に価値が生まれます。つながりとは財に関係する人間間の関係であり、物語とは一定の期 間を経ることによって蓄積される価値のことです。すなわち文脈価値とは、時間の連続性と他 者との一体性の複合体なのです。
  • 51. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 51 文脈があればあるほど、価値のあるものが伝わります。今必要なのはつながりと物語であり、文 脈があればあるほど価値があるのです。必要なのは、AIや IoT だと言われていますが、そういう ことではないということがわかると思います。人の気持ちがわかる人が求められてくるのです。 ですから皆さんも、徐々に徐々に周りの人や財と物語を作っていくことがお勧めです。 それでは次から、新しい価値創造の具体例をみていきましょう。 新しいつながりと物語の作り方 クラウドファンディングは、不特定多数の人がインターネット経由で他の人々や組織に資金提 供を行うサービスです。これは単に、資金調達の 1 手段ではありません。お金を集めるというの は、信用を外部化するだけでなく、コミュニティを形成するということでもあります。 これは私が関わり、初期にクラウドファンディングで成功を収めた物語を作った向田麻衣さん
  • 52. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 52 です。彼女はネパールに行って、ネパールで化粧をすることで人の精神的な支援に行ってい ます。 これは僕の家ですが、 Airbnb を使って 1 室を貸していました。お金が欲しいとかそういうので はなくて、新しいグローバルコミュニティを作る目的で行っていました。今はやっていません。
  • 53. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 53 私は今、軽井沢と六本木の 2 拠点生活をしています。 面白いのは、六本木は完全なる貨幣経済、軽井沢は非貨幣経済だということです。軽井沢で はお金は役に立ちません。もちろん住むまでにお金はかかりますが、住んでからはお金がか からないですね。家を含め、車もベッドもソファもほとんどのものは頂いたか安価でお借りして いるものです。Facebook にはみんなと居る写真を載せていますが、基本は一人で過ごしお金 は使いません。軽井沢ではコミュニティに貢献できなければ孤独な時間を過ごすことになりま す。2 拠点生活は新しいリテラシーを身につける絶好の機会になっています。
  • 54. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 54 資本主義社会とネットワーク社会のまとめ 資本主義社会とネットワーク社会についてまとめます。 ご覧の通り、「タテ」と「ヨコ」では何もかもが違うのです。 「タテ」だった頃は円錐型だったものが、だんだんと円状に変化していきます。そして、ネットワ ーク社会はハブが圧倒的な影響力を持つようになるのです。
  • 55. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 55 図 28 ネットワークの基本構造 ネットワークの基本的な構造は上のようになっています。 このようにあらゆるネットワークはこういう風に必ず大きな円があり、そこにそれぞれ必ずハブが あって人がいる。そしてその人を介して繋がっていきます。
  • 56. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 56 資源を集約する方法はたった二つ 図 29 資源集約の 2 つの方法 なにかを起こすにはエネルギーが必要であり、エネルギーとは集約された資源のことです。 資源を「閉じ込める」ことのできる明確な言語は 2 つしかない。それは、「数字」か「個人」です。 お金の本質は、それが数字であるということです。数字というもっとも明確な膜の内側に信用と 価値を閉じ込めることができます。 個人の英語(individual)とは、もともとは、これ以上、分けることができない、という意味です。分 かちがたい最小単位という膜の内側にも、信用と価値を閉じ込めることができるのです。 タテ社会の言語は数字であり、ヨコ社会の言語は個人ですので、社会の言語が「円」から「縁」 へと変容しているという言い方もできるでしょう。
  • 57. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 57 コミュニティの変遷 図 30 コミュニティの変遷 ネットワーク社会内でのコミュニティは今までどのように変容してきたのでしょうか。 断絶の時代、遍在・オープンな時代を経て、これからは 1 人の人間が多層的なコミュニティに それぞれが所屬する時代になります。つまり、コミュニティ・ポートフォリオを持つということが必 要になってきます。 コミュニティは上の図のように変遷していて、昔は断絶した国家があったのですが、windows 時 代の過渡期を経て、google の時代は企業によって繋がっていきあらゆるものが偏在していまし た。その後に、Facebook がやってきて仲間分けが起こっていき、そこからコミュニティができて きた。そして今ではある程度コミュニティ分けが終了し、今から福祉や教育、通貨などインフラ
  • 58. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 58 の整備の時代に入ってきています。 この多層的なコミュニティのある時代で何が必要かというと、当然個人のクレジットが必要です。 あとは、業界の中にいるのではなくて、業界と業界の間に価値があります。 ビジネス業界とそれ以外の業界の間に価値があるのです。ベストセラーになった小説「もしドラ」 も、そうですよね。ドラッカーとアニメ業界をまたがっている。今後、いろんな業界の間に立って いる、すなわち、インターメディエイトな人が尊ばれる。業界や人との間である層を作っていけ る人ということです。21 世紀の貨幣は何かというと、ネットワーク*クレジットの掛け算でしかあり ません。これがその人の財産になります。つまりクレジットは今、どんどん溜まっていますよ、と いうことです。クレジットというのは根拠が必要ですが、ネットワークというのは業界を超えないと いけないので、根拠の作り方が煩雑です。 ネットワーク社会というのは貨幣の原理が通用しなくなるというのが本質です。時間を共有する 方向に流れていくため、グローバルの中にネットワークを作っていかないといけないと思ってい ます。
  • 59. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 59 21 世紀で生き残るためのネットワーキング 図 31 21 世紀のネットワーキング さて、21 世紀には、ビジネスの変化に呼応してネットワーキングの方法も変化させていく必要 が出てくるでしょう。 これからの働き方として、多くの人が IC(インディペンデント・コントラクター)になり、プロジェクト ごとにチームが入れ替わる時代に入ってゆきます。仕事では、スキルや実績への信頼だけで はなく、その人の信用が大切になってきます。 この働き方において重要になってくるのが、距離感のマネジメントです。今まではゼロかイチか という判断でしかなかったですが、契約等によって期待値を言語化し、コミットメントの明確化 通して距離感を微調整することが求められます。
  • 60. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 60 それだけでなく、信頼残高を積みながら、相手の言語(愛と条件)の範囲を把握し、価値観の 一致を図ってゆくことも重要です。 コミュニケーションとは距離感のマネジメント 図 32 コミュニケーション概念図 コミュニケーションとは一言で言うと距離のマネジメントです。それぞれの人との関係を精神的 距離・公私の関係で整理することが良好な人間関係を構築するために最も必要なことです。
  • 61. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 61 21 世紀における心構え 図 33 21 世紀における心構え 21 世紀において社会構造が「タテ」社会から「ヨコ」社会に変化すると、当然その中で共有され るルールや規範も変化してきます。 ヨコ社会において「個人」にエネルギーが寄っていきます。 エネルギー集約体である「個人」の欠点は、数字であるお金には摩擦がないのに対し、摩擦コ ストがあるということです。「物々交換よりは、ヤフオクの方がやっぱり楽だよね」という感覚は皆 さんもお持ちなのではないでしょうか。ヨコ社会をうまくまわすためには、この摩擦コストをうまく
  • 62. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 62 受容するしくみ・考え方が必要になってきます。 黒歴史もコンプレックスも、自分の Google カレンダーも何もかも晒し、交渉するというよりは創 造することに力を注ぎ、価値連鎖を信じることです。そして他者をブロックせず、距離感の調整 のみを行うことです。その上で、できる限りコミットメント(契約/宣言)をすることです。人をタテ に見ず、すべての人をリスペクトすることも必要でしょう。そして、自分が上場するということに気 づき、戦略的にコミュニケーションをとるということです。 21 世紀におけるアイデンティティ 図 34 21 世紀のアイデンティティ 家族やシェアハウスの仲間、職場・仕事仲間、価値観の合う仲間など、一人が様々なコミュニ
  • 63. Copyright 2017 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。こ ご活用・編集をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性 があります。 63 ティを同時に所属するようになると、自分を新しい捉え方をする必要があります。それが、「分 人的」に捉えるということです。 分人的に捉えるとは、「自分とは、様々な人格のポートフォリオ」だと考えるということです。これ が気楽に生きるコツになってきます。 これまでの捉え方は、中心に「本当の自分」が存在し、場面ごとに仮面(ペルソナ)を使い分け るという考え方が一般的であり、終わらない自分探しの旅に陥ってしまいます。これからは、本 当の自分などなく、幾つかの人格の組み合わせが自分であるという考え方を持つと「ヨコ」社会 にも適応して生きていけるようになります。 ここからは財が変わると流通する手段が変わっていくという話の続き、これからのビジネスは一 体どういう風になっていくのか?ということを話していきましょう。