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「ステロイド処方の原則」


帝京大学ちば総合医療センター
     血液内科
     萩野 昇
推薦図書
これ読んでおいて下さい




    お疲れ様でした!
• 1926年、Philip S HenchがMayoのリウマチ科
  長になった当時、関節リウマチは進行を止
  められない病気と考えられていた。


• 科長就任の3年後、Henchは黄疸を発症した
  関節リウマチ患者の症状が、数日後に全く
  消えていることに気がついた。


• 翌5年間で彼は同様の現象を15回観察し、関
  節リウマチは進行を止められる、しかも非
  常に速やかに止められるのではないかと考
  えるようになった。
• その後、関節リウマチ患者に対して
    – 胆汁を投与する(経口・経静脈)試み、
    – 「肝臓エキス」を非経口投与する試み、
    – さらには大量の胆汁を胃管から投与したり高度の
      黄疸患者から輸血したりなどの試みがなされたが、
    いずれも奏功しなかった。


•    ちょうど同時期に、Henchは女性の関節リ
    ウマチ患者が妊娠すると症状が著明に改善す
    ることに気付いていた。
 1931年から38年にかけて、同様の現象を20名
  の女性で延べ38回観察した末に、Henchたち
  はリウマチ改善物質「物質X」は、肝臓から
  の生成物でも女性ホルモンでもなく、男性と
  女性に共通するステロイドホルモンなのでは
  ないかと考えはじめた …



         Paget S. et al. "Principles of Corticosteroid Therapy"
Mayo Clin Proc. 1949 Apr 13;24(8):181-97.
【 病歴 】
•   29歳女性、罹病期間4.5年の関節リウマチ
•   右股関節の破壊性病変が著しい
•   ESR 最大で108 mm/時
•   100 mgの”Compound E” 連日投与開始
    – 投与当日・翌日には著変なし
    – 投与開始3日目: ベッドでの寝返りが可能に
    – 投与開始4日目:朝のこわばりが消失
    – 投与開始後 1週間:全ての関節痛が消失
Question 1
• Henchらが関節リウマチ患者に使用した
  Compound-Eは、Prednisoloneに換算して何
  mg相当であったと推測されるか?

 1.   10 mg
 2.   15 mg
 3.   20 mg
 4.   25 mg
Answer 1
• Compound E:
     17-Hydroxy-11-Dehydrocorticosterone
• 100mgのハイドロコルチゾン
→ プレドニゾロン 25mg相当の糖質コルチコ
  イド作用

その後間もなく、Compound Eの
「鉱質コルチコイド作用」によるAdverse
 reactionが出現…
ステロイドの臨床免疫学:OS
• 「抗炎症作用」 + 「免疫抑制作用」

• 抗炎症作用: anti-inflammatory effect
• 免疫抑制作用:immunosuppressive effect
ステロイドの臨床免疫学:OS
• 「抗炎症作用」 + 「免疫抑制作用」

• 抗炎症作用: anti-inflammatory effect
「いま起きている異常な免疫反応を抑え
る」

例: 気管支喘息発作(好酸球性気道炎症に
よる可逆性気管支収縮)

短期・比較的大量のステロイド
ステロイドの臨床免疫学:OS
• 「抗炎症作用」 + 「免疫抑制作用」

• 免疫抑制作用:immunosuppressive effect
「免疫反応そのものを起こりにくくする」

例:多くの自己免疫疾患
気管支喘息の「コントロール」

長期の「維持」
ステロイドの「効きやすい細胞」・「効きにく
        い細胞」
                                         マクロファー
            CD8 T-cell                   ジ
                                         Granulomatosis with Polyangiitis
          多発性筋炎(PM)                      (Wegener’s)
 好酸球                         B-cell
                              SLE




気管支喘息                                                         線維芽細胞
                                                               強皮症

                CD4 T-cell
               皮膚筋炎(DM)
                                         好中球
                                      顕微鏡的多発血管炎 (MPA)

  MORE Glucocorticoid
  Response
「ステロイド治療」に関する
       臨床上の疑問
• ステロイドで治療するべき病態か?
• どのくらいの初期量で?
    – 「パルス」は必要か?

•   初期量をどのくらいの期間継続するか?
•   投与経路は? (PO vs IV)
•   どのようなペースで減量するか?
•   少量で「維持」するのか? 中止可能か?

• 免疫抑制剤の併用を行うべきか?
• 唯一の「正解」はない

• 臨床試験のプロトコルは参考になる

• 明らかに「不適切」ということはある
 – 治療対象
 – 副作用モニタリング・治療
 – 投与量
Recommendations



        Ann Rheum Dis   2007;66;1560-1567



                            with
Ann Rheum Dis   2007;66;1560-1567
GCの薬理作用
                         Arthritis Rheumatism   2011;63;1-9

• Genomic Effect
  – 転写抑制 (Transrepression)
  – 転写促進 (Transactivation)


• Non-Genomic Effect
  – 細胞膜上のGCRに結合
  – GC-細胞質内GCR(cGCR)によるNon-Genomic Effect
  – 細胞膜への直接作用(膜安定化?)
GCの薬理作用:Genomic Effect

                        治療効果に重要

• 転写抑制
 – NF-κBやactivator protein 1の活性を抑制
 – IL-1, IL-2, TNF, IFN-γ, and prostaglandinsの転写↓
                         副作用に関連

• 転写促進
 – Anti-inflammatory cytokines(EG IL-10)や
   regulator proteinsの転写↑
Question 2
• GC投与からGenomic effectを介した制御タ
  ンパクの濃度変化が起きるまで、どのぐ
  らいの時間が必要でしょうか?

 1.   5秒
 2.   30秒
 3.   3分
 4.   30分
Answer 2

• 少なくとも30分は必要

• 組織や臓器レベルでGenomic Effectを介し
  たGC投与の効果が観察されるまでには、
  それよりも長時間を要する。
GCの薬理作用:
       Non-Genomic Effect

GC投与後、秒のorderで作用発現

• 細胞膜上のGCRに結合
• GC-細胞質内GCR(cGCR)によるNon-Genomic
  Effect
• 細胞膜への直接作用(nonspecific)
白血球への影響
      血球               作用


好中球        末梢血中に動員
           遊走能を低下させる

単球、マクロファー 数減少、遊走能低下、貪食能低下、殺細菌能低下
ジ         抗原提示能低下、サイトカイン・エイコサノイド放出低
          下
リンパ球       数減少、遊走能低下、サイトカイン産生低下、増殖能低
           下、活性化阻害
           短期的には免疫グロブリン産生能に対する影響少ない
好酸球        数減少、アポトーシス誘導


好塩基球       数減少、炎症メディエーター放出阻害
用量について
            Ann Rheum Dis 2002;61:718–722


• ヨーロッパリウマチ学会の提案
•   少量(維持量)  7.5 mg/日 以下
•   中等量      7.5~30 mg/日
•   高用量      30~100 mg/日
•   いわゆる「パルス療法」        に分類する。

                 Arthritis Rheum 2007;66;1560-1567




           • 恣意的分類
Genomic Action GC受容体を介した   Nonspecific
       (GC受容体飽和度) Non-Genomic
                      Action
 少量         +            -             -
        (50%以下)

中等量         ++          (+)          (+)
        (50-100%)
高用量      ++(+)           +            +
       (ほぼ100%)
超高用量      +++           ++          +(+?)
        (100%)
パルス       +++           +++        +(++?)
        (100%)
極めて単純化した用量-反応曲線
臨床効果


                         Non-Genomic



       Genomic




                                       用量
          Prednisolone 1 mg/kg/day
Autoimmun Rev.
• mPSL 500 mg vs 1000 mg           2006 ;5(2):111-3

  – 臨床効果同じ
  – 感染:500 mgの方が少なかった。
 (Lupus 2002; 11: 508-13)

• mPSL 100 mg vs 1000 mgの投与
  – 効果・副作用とも同じ。
 (Ann Rheum Dis 1987; 46: 773-6)


 いずれも対象疾患はSLE
 (臓器病変は統一されていない)
「あなたにとってのステロイドパルス」

• 施設A:
 – ソル・メドロールⓇ 1000mgの点滴を3日間、
   その後、500mgを3日間、250mgを3日間…

• 施設B:
 – ソル・メドロールⓇ 1000mgの点滴を3日間の後、
   約1 mg/kg/dayのソル・メドロール点滴に移行

• 施設C:
 – ソル・メドロールⓇ 250mg×1日4回の点滴を
   3-5日間施行
どのステロイドが
      「パルス療法」に適するか?




Methylprednisolone:相対的にnon-Genomic
Effectが強い

                 Ann Rheum Dis 2002;61:718–722
萩野はこうしている
• ステロイドパルス
 – 多くの臨床試験が3-7日間の投与
 – しかし、リウマチ科の領域で4日以上のパルスが
   必要な時には「ステロイド以外の治療」を
 – Non-Genomic effectにも上限があるでしょう
 – より速やかに細胞内GC受容体を飽和させるため
   には分割投与してtrough値が高い方が良い?


メチルプレドニゾロン 500mg点滴を12時間ごと
or メチルプレドニゾロン 250mg点滴を6時間ご
と
萩野はこうしている
• リウマチ性疾患のステロイド初期治療
 – より速やかに細胞内GC受容体を飽和させるためには
   分割投与してtrough値が高い方が良い?
 – 炎症はより速やかに抑える: 炎症の持続が組織破壊
   に結びつくから
 – ステロイド副作用は 1. 投与最大用量 2. 投与総量 3. 投
   与期間 で決まる
 – 多めの投与量から開始して、速やかに減量する
 – 朝の投与が多い方が「生理的」と言われるが、そも
   そも生理的投与量をはるかに超えている

メチルプレドニゾロン 20mg点滴を8時間ごとで開始
炎症マーカー改善すればプレドニゾロン経口
(基本的に分1投与)
萩野はこうしている
• ステロイドの選択
 – 基本はmPSLかPSL
 – 欧米ではPrednisone→肝代謝でPrednisolone
 – 点滴:メチルプレドニゾロン (水溶性プレ
   ドニンは使いません)
 – アスピリン喘息(aspirin-exacerbated respiratory disease:
   AERD):可能ならプレドニゾロン内服、不可
   能ならリンデロン点滴静注
 – 短期作用型は慢性副腎不全の補充・「重症
   の」septic shock
 – 長期作用型は髄液移行性・胎盤移行性(+)
副作用対策
GC副作用:時系列の観点から
• 開始当日~
   – 不眠・精神症状(抑うつ・高揚感)・食欲亢進
• 数日後~
   – 血圧上昇 ・ 浮腫・ ↑Na / ↓K
• 数週間後~
   – 副腎抑制 ・ 耐糖能異常 ・ 創傷治癒遷延 ・ コレステロール上昇
• 1ヶ月後から
   – 易感染性 ・ 中心性肥満 ・ 多毛 ・ 座瘡 ・ 無月経
• 数ヶ月後から
   – 紫斑 ・ 皮膚線条 ・ 皮膚萎縮 ・ ステロイドミオパチー
• 長期的に
   – 無菌性骨壊死 ・ 骨粗鬆症 ・ 白内障 ・ 緑内障
GC副作用:別の観点から
• ある程度予防可能
 – 骨粗鬆症、ある種の感染症、(?)無菌性骨壊死


• 高リスク群で早期発見・治療が必要
 – 耐糖能異常、眼合併症、(?)消化性潰瘍


• 減量に伴って改善を期待する
 – 浮腫、精神症状 etc…
ステロイド性骨粗鬆症(GIOP)
Weinstein RS. N Engl J Med 2011;365:62-70.
GIOP pathophysiology
                              Glucocorticoid


                 BONE

                                           Neuro-endocrine         Calcium Metabolism

 Osteocytes    Osteoblasts   Osteoclasts

                                                              Negative Ca Balance
              ↓ BONE FORMATION       ↑ BONE RESORBTION

↓ BONE QUALITY               ↓ BONE MASS


               ↑FRACTURE                       Canalis E. Osteoporosis Int 2007;18:1319
Bisphosphonate




      Mayo Clin Proc. 2008; 83(9): 1032-45
StatinとBisphosphonate

           • いずれもメバロン酸
             経路に作用

             – Statins: HMG-CoA
               reductase
             – BPs: Farnesyl
               pyrophosphate synthase
Mechanism of Action
Models for bisphosphonate targeting of (A) osteoclasts and
                    (B) macrophages


            骨芽細胞           Osteoblast




                                   Nat Clin Pract Oncol 2007: 4; 42–55
                           破骨細胞 Osteoclast
                           破骨細胞 Osteoclast
ACR Recommendations 2010
                      Arthritis Care & Research 2010: 62; 1515-26


• FRAXによるリスク分類
 – 今後10年間の骨折リスクが
   Low: 10%>, Medium: 10-20%, High: 20%<


• 患者を3群に分類
 – 閉経後女性+50歳以上の男性
 – 閉経前・挙児希望のない女性+50歳以下の男
   性
 – Childbearing potentialのある女性
FRAX: WHOによる骨折リスク評価ツール




      http://www.sheffield.ac.uk/FRAX/tool.jsp?lang=jp
Question 3
  「40歳閉経前女性、BMI 20、飲酒・喫煙と
  も嗜まない、T-score -1.0、PSL 45 mg/dayに
  よる治療予定」
• FRAXによる試算で、今後10年間のMajor
  Osteoporotic Facture Probabilityは?

 1.   0.7%
 2.   3%
 3.   7%
 4.   30%
Answer 3
• 40歳女性(Premenopausal)
  –   身長 150cm, 体重 45kg
  –   SLE, LN Ⅳ
  –   飲酒、喫煙とも嗜まず
  –   Prednisolone 45 mg/dayによる治療予定
  –   現在のT-score -1.0


• 今後 10年間の
  – Major Osteoporotic Facture Probability   0.7%
  – Hip Fracture                             0.1%
FRAXの限界

• アルコール、Glucocorticoidとも、
  骨折リスクはdose-dependentである点が
  反映されていない。
FRAXの限界

• そもそも低エストロゲン性骨粗鬆症の評
  価をステロイド性骨粗鬆症に流用してよ
  いのか?
N Engl J Med 2011;365:62-70.


– FRAXによる骨折リスク層別化は以下の理由で
  推奨できない
 • ステロイドの現在量・総投与量・治療期間のいず
   れもFRAXには反映されておらず、ステロイド誘発
   の骨折リスクをunderestimateする可能性がある。
 • FRAXでは大腿骨頚部の骨密度を入力するが、ステ
   ロイドによる骨折は椎体の圧迫骨折の方が多い。
 • 閉経後骨粗鬆症のリスクは必ずしもステロイド性
   骨粗鬆症には当てはまらない。
BMDだけ見ると誤ります

                                          • T-scoreが同じでも
                                            年齢によって
                                            Fracture Risk異な
                                            る

                                          • 骨折リスクは
                                            骨密度だけでは
UpToDate 17.2                               評価できない
“Osteoporotic fracture risk assessment”
                                            (骨の質が大
                                            事!)
Common pitfall of DEXA interpretation
Bridging Osteophyte
閉経後女性+50歳以上の男性
• Low risk
   – 7.5mg/day未満:no Tx
   – 7.5mg/day以上:AL, RS, ZL
• Medium risk
   – 7.5mg/day未満:AL, RS
   – 7.5mg/day以上:AL, RS, ZL
• High risk
   – 5mg/day未満で1ヶ月以内:AL, RS, ZL
   – 5mg/day以上で1ヶ月以内、あるいは量に関わら
     ず1ヶ月以上:AL, RS, ZL, TP
閉経前・挙児希望のない女性
    +50歳以下の男性
• 脆弱性骨折なし:
 – No adequate data for recommendation


• 脆弱性骨折あり:
 – 5mg/day以上を1-3ヶ月まで:AL or RS
 OR 7.5mg/day以上:ZL
 – 量に関わらず3ヶ月以上: AL, RS, ZL, TP
Childbearing potentialの
             ある女性
• 脆弱性骨折なし:
 – No adequate data for recommendation


• 脆弱性骨折あり:
 – 量に関わらず1-3ヶ月まで:No consensus
 – 3ヶ月以上:
   • 7.5mg/day以上:AL, RS, TP
   • 7.5mg/day未満:No consensus
将来の挙児希望女性に対するBP
                    Curr Drug Saf. 2010 Apr 1.

• 理論上の懸念
 – 半減期が長い
 – 胎盤を通過する
 – 動物での催奇性: FDA category C


• これまでの経験
 – 胎児の骨成長異常の報告なし
Premenopausal woman on High-dose GCに
        対するBisphosphonate
                Okada Y et al. J Rheumatol 2008: 35; 2249-54
BRONJ、その他atypical fracture
               N Engl J Med 2011; 364:1728-1737
FLEX study
• 先行研究 FIT studyのExtension

• FIT studyでAlendronateに割りつけられた
  3,236名の女性のうち、試験参加同意が得
  られ、かつinclusion criteriaを満たす1,099
  名についてのランダム化薬剤中止試験
AL中止   AL 5mg/日 継続   AL 10mg/日 継続
FLEX study
FLEX study
• Alendronateの脱落率がPlaceboと大差ない
• もともとAlendronateに忍容性の高い患者
  層が選択された可能性?
CalciumとVitamin D
【Pearl】
• CalciumとVitamin DはGC-induced bone
  lossとFractureを防ぐ (Category ⅠA
  evidence)
CalciumとVitamin D
【Pitfall – 1】
• 新規骨粗鬆症薬の臨床試験は
  「十分なCalciumとVitamin Dの補充下」
  で行われている

 25(OH) Vit-Dの測定・補充: 一般的でな
 い
 1,25(OH) Vit-D: 食事の影響(++)
 活性型ではないVitamin Dの処方が困難
Alendronate or Alfacalcidol in GIOP

• Alendronate 10     New Engl J Med 2006: 355; 675-84

  mg/day
• Alfacalcidol 1
  mcg/day

• Primary Outcome
△ Lumber Spine BMD
• 成分および分量(2粒中)
  ●ビタミンA・・・4.000国際
  単位
  ●ビタミンD2 ・・・400国際
  単位
  ビタミンD2 800国際単位が
米国リウマチ学会の1日推奨量
CalciumとVitamin D

【Pitfall – 2】
• 経口カルシウム製剤に含有されている
  無機カルシウム(Ca++)量はごくわずか

 – 乳酸カルシウム 1g : カルシウム 0.13g
   (130mg)
 – アスパラギン酸カルシウム製剤(アスパラ
   Ca) 1200mg: 156mg
おまけ: DEXAのT-scoreと
      Young Adult Mean (YAM)
• Young Adult Mean:20~44歳の若年成人平均

• T-score = (骨密度 – YAM)/標準偏差
• %YAM = 100×骨密度 / YAM
∴ T-score = [(%YAM/100) – 1] / (YAM×標準
  偏差)

日本人若年女性の腰椎骨密度 1.011± 0.119 g/cm2
∴ YAM×標準偏差≒0.12
• 例えば%YAM 80%
⇒ T-score = (0.8-1) / 0.12 = -1.6

• Z-score:同年代比較
萩野はこうしている
• 骨折のリスクはDEXAのみではわからないが、既に一度骨折して
  いる患者はリスクが高いだろう。
• 無機カルシウム投与量が少ないのは「仕方ない」。有機カルシ
  ウムの方が消化管からの吸収は良いはず。
• 無機カルシウム投与は最近(低エストロゲン性骨粗鬆症の領域
  では)動脈硬化との関連も指摘されているので、あまりムキに
  ならない。
• 非活性型ビタミンD投与が難しいのも「仕方ない」。活性型ビ
  タミンDであれば日光浴の必要もないのでSLE患者には良い?

対象: ステロイドを3ヶ月以上内服する患者すべて
外来では: まずアルファロールもしくはワンアルファで0.5~1mcg
を処方
  その後アスパラCaを尿中Ca/Cre比が0.2以下になるように
1200mg/dayまでtitrate
入院を要する程度に重症・高用量: Vit DとCaを同時に投与開始
  過去の脆弱性骨折はBPの強い適応 (口腔内衛生に注意)
  BPは5年以上継続しない: 再評価で一旦中止か、どうしても必
おそらく一番大事なのは
“As much as necessary,
 as little as possible”の
    ステロイド投与
感染症
GCと感染症
• 「Prednisolone 15mg/日相当以上」を
  「3週間以上」で
                 ハンドアウトまちがい



結核:Latent Tb activation risk↑とされる
• 上記の投与によって、PPDの陰性化が起き
  ることが根拠
             「結核・非結核性抗酸菌症診療ガイドライン」
Pneumocystis Pneumonia
厚生労働省研究班 Risk Factor
① GC単独:PSL換算1mg/kg以上
② PSL 0.5 mg/kg以上
 かつ免疫抑制薬併用
③ リンパ球 400 /mm3
④ IgG 700 mg/dl以下


    http://www.allergy.go.jp/Research/Shouroku_03/18_tanaka_01.html
• リスク因子(+)例に
    ST合剤で一次予防:   PcP 0/66
    非施行症例:       PcP 19/102

• 非施行例での発症率高い:
• Need to Go More Strict?
cf. 予防量ST合剤による重篤な副反応の発現率 3.1%
→ PcP発症リスクが3.1%以上の時に予防考慮?
                  Mayo Clin Proc 2007: 82; 1052-59

• 「従うべき厳密なガイドラインなし」との専門家
  の意見
治療対象の疾患による差異?
– Wegener肉芽腫症を高用量PSL+免疫抑制剤で
  治療中:High Risk
– SLEはModerate Risk?
– SScは?
         Arthritis and rheumatism, 2000: 43; 1841-1848.
         Arthritis Care & Research 2008:59; 1034 –103
リウマチ科医は
   実際どのようにしているか?
• PcP予防を行うリウマチ科医の傾向
1) 女性であること (OR 1.47, p = 0.03)
2) 米国の医師 (OR 1.77, p = 0.004)
3) アカデミックな施設で勤務 (OR 2.75, p <
  0.001)
4) キャリアが10年以下 (OR 4.08, p < 0.001)
5) 以前にPcP症例を経験したことがある (OR
  2.62, p < 0.001)

(PcP予防を全く行わないリウマチ科医が回答者全体の約30%)
PcP予防を行っている医師は
1) 治療法(68.6%)
2) リウマチ性疾患としての診断 (9.3%)
3) 治療薬の量 (8.3%)
  を基に判断を行っていると回答。

• Cyclophosphamide:75%が「予防を考慮す
  る」
• GCとCY以外の免疫抑制療法の併用:49%、
• ステロイド単剤:12.5%
               J Rheumatol. 2010 Apr;37(4):792-9.
β-D glucanとPcP

              • N=57, HIV症例含む
              • カットオフ値:31.1pg/mL
                – 陽性適中率 0.61
                – 陰性適中率 0.98
              • 診断の除外に良い?




 CHEST 2007
しかし・・・

• β-D glucan高値でPcPで
  はない症例
• 低値のPcP症例

いずれも存在する
感染症は怖い!
免疫抑制療法中の発熱、頭痛
...Listeria monocytogenes meningitis
Glucocorticoid-induced Myopathy
• フッ化ステロイド(Dexamethasone,
  Triamcinolone)の方が、非フッ化ステロイ
  ド(Prednisolone)より起こしやすい?

• 2つのシチュエーションで特に問題になる
1. 人工呼吸器管理下の患者
2. 筋炎治療中の患者
“the diagnosis is one of exclusion”

【%クレアチン尿についての検討】
%クレアチン尿=尿中クレアチン(g/day)/〔尿中クレアチン
  (g/day)+尿中クレアチニン(g/day)〕
• 26例の検討(筋疾患を除く)
• ステロイド内服前後(とくに使用前)における%クレアチン
  尿
   – 男性2.5%
   – 女性17.1%
       • 女性において有意に高値であった(p=0.041).
• 男性3/14例(21.4%),女性8/12例(66.7%)で10%(しばしば
  使用されるカットオフ値)以上であった
• 腎機能障害(軽度であっても)が認められる患者では筋症状
  が見られなくても%クレアチン尿値が大きく変動した

• Limitation: 筋炎例についての検討なし
                                      脳と神経2006. Vol.58 No.1
萩野はこうしている
• リウマチ性多発筋痛症の診断が確かで、PSL 15mgから治療開
  始:PcP予防は行わない
• 高用量のプレドニゾロンに何らかの免疫抑制剤を併用すると
  き:原疾患に関わらずPcP予防を強く考慮する
• 関節リウマチに対してプレドニゾロン 6mg以上 + MTX併用中
  の患者に生物学的製剤を使用するとき: PcP予防を考慮する
• 間質性肺炎のある患者に中等量以上のプレドニゾロンを投与
  するとき: PcP予防を考慮する
• その他の場合: ケースバイケース

• 予防の第一選択:バクタ 2錠分1を月・水・金 (多分予防には
  1錠でもいいのではないかと思っている)
• 第二選択: 若年者で肺疾患がないとき ペンタミジン吸入
  (300mgを超音波ネブライザーで)
• 高齢者 もしくは 肺疾患があるとき レクチゾール 100mg 分2
• ステロイド「減量」
(Withdrawal Regimen)
  なぜ必要?


   • ある時点で必要な最小ステロイド量が
     わからないから
Quotes
• GC withdrawal                          •   20mgまでは5mgずつ
  UpToDate 17.3 Furst DE and Saag KG
 This topic last updated: Dec 20, 2006   •   10~15mgは2.5mgずつ
                                         •   5~10mgは1mgずつ
  “There is a paucity of
  clinical evidence to                   •   5mg以下は0.5mgずつ
  support any particular                           減量していく
  regimen of
  glucocorticoid tapering.”
CYCLOPSにおけるGC減量法
(Randomised trial of daily oral versus pulse Cyclophosphamide as
      therapy for ANCA-associated Systemic Vasculitis)

                                     Ann Intern Med   2009;66;1560-1567
Combinatietherapie Bij Reumatoide Artritis (COBRA)
                            treatment schedule.




          van Tuyl L H D et al. Ann Rheum Dis 2007;66:974-976



©2007 by BMJ Publishing Group Ltd and European League Against Rheumatism
Comparison of GC withdrawal regimens
70

60       60       60       60       60

50                                           50
                  45                                  45
40                40                                           40                                   EUVAS
30                         30                                            30                         Japan
                           25       25       25       25                            25              COBRA
20                                  20                         20                             20
                                             15                          15
                                                                                    12.5
10                                                    10                                      10
                                                               7.5       7.5        7.5       7.5
 0
     1        2        3        4        5        6        7         9         12        20
少量ステロイドによる
  「維持療法」
Quotes
• GC withdrawal                          “The
  UpToDate 17.3 Furst DE and Saag KG
                                         observation, based
 This topic last updated: Dec 20, 2006
                                         upon physiologic
  “There is a paucity of                 data, that HPA
  clinical evidence to                   suppression is
                                         uncommon
  support any particular
                                         at prednisone doses
  regimen of                             below 5 mg/day means
  glucocorticoid tapering.”              that most patients on a
                                         daily dose of 5 mg/day
                                         do not have to be
                                         tapered.”
Question 4
• 非-ストレス下でヒトが一日に産生する副
  腎皮質ホルモンの量はPrednisoloneに換算
  して大体どのくらいか?

 1.   1 mg
 2.   2 mg
 3.   5 mg
 4.   10 mg
Answer 4
• Cortisol 5.7 mg/m2/day
        The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 1991: 72; 39-45



• 身長 170cm, 体重 60kg (体表面積 1.695)
→ コルチゾール 9.66 mg/day
→ プレドニゾロン 1.93 mg/day

「維持療法」のステロイドも
生理的な量よりかなり多い!
• Data on monitoring proved to be scarce!
• 臨床試験は主に「効果」を測定

• 副反応は
 – 報告されていない
 – 測定・評価困難
• 心血管      • 臨床試験(Clinical
• 感染症        Trials)
• 消化管      • 日常臨床(Daily
• 精神         Practice)
• 内分泌・代謝
• 皮膚       • 基本的に「問診
             (Questioning)」で評価
• 筋骨格
• 眼科
の8項目
• 心血管:
  – 空腹時脂質、Na/K、下腿浮腫。血圧。CVDについての問診、《頸動脈内
    膜厚》
• 感染症:
  – 問診(既往、治療歴) (特定感染症に対する検査(PPDなど)は記載な
    し)
• 消化管:
  – 問診、Hb    (便潜血検査は記載なし)
• 精神:
  – 気分の変調について問診
• 内分泌・代謝:
  – 空腹時血糖、HOMA、身長、体重、月経不順・性欲についての問診、
    《ACTH試験》 (HbAicは記載なし)
• 皮膚:
  – 問診 (皮膚萎縮、座瘡、脱毛 etc.)
• 筋骨格:
  – DEXA、Dorsal spine X-ray、問診 (骨折)
• 眼科:
少量ステロイドによる
「維持療法」の効果(と、副作用)
Vasculitis studies

• Pearl: A little bit of prednisone goes a long way
  toward sustaining disease remissions in AAV.


• 少量ステロイドによる「維持療法」で、
  ANCA関連血管炎の再燃率が大幅に低下する。


               Stone J   “A Clinician’s Pearls and Myths in Rheumatology” p262
                         Springer 2009
EUVAS trials
                    CYCAZAREM            NORAM                WGET
                    (n=144)              (n=100)              (n=180)
Prednisolone dose   10mg以上               7.5mg                Off
6months
Prednisolone dose   7.5mg                Off                  Off
12months
Flare rate          15%                  70% (MTX arm)        51%
(%)                                      47% (CY arm)


• CYCAZAREM: CYCとAzathioprineで寛解維持(18ヶ月後の再発)同等
• NORAM: Early Systemicの症例:CyclophosphamideとMTXは寛解率同等
    CYC 94% vs MTX 90%
• WGET: Etanerceptによる寛解維持効果(-)

                            Goek CN, Stone J   Curr Opin Rheumatol 2005; 17: 257-
                            264
• 一番控えめな評価でも、標準治療にステロイドを追
  加すると関節リウマチの骨びらん進行をかなり抑え
  ることが可能である。

Even in the most conservative estimate, the evidence that
glucocorticoids given in addition to standard therapy can
substantially reduce the rate of erosion progression in
rheumatoid arthritis is convincing.
関節リウマチ(RA)における
    長期GC投与
                              危険!派

            • 5 mg/日以下の
              PrednisoloneでもAE
              が生じている。




      Saag KG   Am J Med. 1994 ;96(2):115-23.
Lancet 2005; 365: 801-3

• 既存のGC使用法をより         • 新しいGC製剤を開発す
  Sophisticateされたもの     る
  にする                             ↓
             ↓        • SEGRA
• 限界に来ている?              (Selective
                        Glucocorticoid-receptor
                        agonists)
                      • Timed-release tablets
                      • 11-beta-hydroxysteroid
                        dehydrogenase阻害剤
リウマチ性疾患・膠原病
• 寛解・治癒するのではないか?
 – 関節リウマチ、結節性多発動脈炎

• 寛解に持ち込んでも長い期間の後に再発?
 – Wegener肉芽腫症

• 寛解という考え方の適用が困難
 – 血清陰性脊椎関節炎、(成人)Still病

• 進行を阻止できない?
 – 強皮症、皮膚筋炎の間質性肺炎
関節リウマチの「寛解」
• 臨床的寛解
  – 「腫脹関節・圧痛関節がゼロで、血液検査上炎症反応を認めな
    い」


• 機能的寛解
  – 「関節リウマチを全く忘れて生活している」


• 画像的寛解
  – 「関節リウマチによる骨・軟骨病変が進行しない」


• 免疫学的寛解(drug-free)
  – 抗リウマチ薬の内服を中止しても上記寛解を達成
細菌感染症と免疫・炎症




 抗菌療法
造血器腫瘍と免疫・炎症

 寛解導入



                 造血幹細胞移植
                (恒常性ラインの引き直
                    し)
        地固め療法
「炎症」と免疫状態:リウマチ性
        疾患
         寛解導入(Remission-
         induction)




                  寛解維持(Remission-
                  maintainance)



免疫の
自動調節能力
病態の主体となる細胞とステロイド反
         応性
                                         マクロファー
            CD8 T-cell                   ジ
                                         Granulomatosis with Polyangiitis
          多発性筋炎(PM)                      (Wegener’s)
 好酸球                         B-cell
                              SLE




気管支喘息                                                         線維芽細胞
                                                               強皮症

                CD4 T-cell
               皮膚筋炎(DM)
                                         好中球
                                      顕微鏡的多発血管炎 (MPA)

  MORE Glucocorticoid
  Response
自然免疫からのシグナル
                    好中球
                     MΦ




               Ig            T-cell
              補体




                    B-cell
自然免疫寄りの疾患
       (例:痛風)
                  好中球
                   MΦ




高尿酸血症の治療          NSAID
            Ig
                 ステロイ      T-cell
           補体
                   ド




                  B-cell
獲得免疫寄りの疾患
    (例:関節リウマチ)              TNF阻害薬


                   好中球
                    MΦ


   禁煙
慢性感染の治療
                 NSAID
           Ig                T-cell
                ステロイ
          補体
                  ド




                   B-cell
総力戦
   自然免疫からのシグナル
                           好中球
                            MΦ

慢性感染の
治療

免疫グロブリン大量療法       Ig   ステロイド        T-cell
(IVIg)           補体    免疫抑制剤
血漿交換
エンドトキシン吸着療法


                           B-cell
• ステロイドの使用にはVarianceがあり、
  「最適化」は困難
  (今から前向き試験での検証も困難)
  → must be accepted.

• As much as needed, as little as possible.

• 副作用の適切なモニタリングと予防・治
  療を。
理想的には…
• ×免疫「抑制剤」
             ⇒ ○免疫「調整剤」

• 自己免疫疾患発症ハイリスク群の同定
 – 「予防接種」?
ご静聴ありがとうございました!

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ステロイドの使い方

  • 3. これ読んでおいて下さい お疲れ様でした!
  • 4. • 1926年、Philip S HenchがMayoのリウマチ科 長になった当時、関節リウマチは進行を止 められない病気と考えられていた。 • 科長就任の3年後、Henchは黄疸を発症した 関節リウマチ患者の症状が、数日後に全く 消えていることに気がついた。 • 翌5年間で彼は同様の現象を15回観察し、関 節リウマチは進行を止められる、しかも非 常に速やかに止められるのではないかと考 えるようになった。
  • 5.
  • 6. • その後、関節リウマチ患者に対して – 胆汁を投与する(経口・経静脈)試み、 – 「肝臓エキス」を非経口投与する試み、 – さらには大量の胆汁を胃管から投与したり高度の 黄疸患者から輸血したりなどの試みがなされたが、 いずれも奏功しなかった。 • ちょうど同時期に、Henchは女性の関節リ ウマチ患者が妊娠すると症状が著明に改善す ることに気付いていた。
  • 7.  1931年から38年にかけて、同様の現象を20名 の女性で延べ38回観察した末に、Henchたち はリウマチ改善物質「物質X」は、肝臓から の生成物でも女性ホルモンでもなく、男性と 女性に共通するステロイドホルモンなのでは ないかと考えはじめた … Paget S. et al. "Principles of Corticosteroid Therapy"
  • 8. Mayo Clin Proc. 1949 Apr 13;24(8):181-97.
  • 9. 【 病歴 】 • 29歳女性、罹病期間4.5年の関節リウマチ • 右股関節の破壊性病変が著しい • ESR 最大で108 mm/時 • 100 mgの”Compound E” 連日投与開始 – 投与当日・翌日には著変なし – 投与開始3日目: ベッドでの寝返りが可能に – 投与開始4日目:朝のこわばりが消失 – 投与開始後 1週間:全ての関節痛が消失
  • 10. Question 1 • Henchらが関節リウマチ患者に使用した Compound-Eは、Prednisoloneに換算して何 mg相当であったと推測されるか? 1. 10 mg 2. 15 mg 3. 20 mg 4. 25 mg
  • 11. Answer 1 • Compound E: 17-Hydroxy-11-Dehydrocorticosterone • 100mgのハイドロコルチゾン → プレドニゾロン 25mg相当の糖質コルチコ イド作用 その後間もなく、Compound Eの 「鉱質コルチコイド作用」によるAdverse reactionが出現…
  • 12. ステロイドの臨床免疫学:OS • 「抗炎症作用」 + 「免疫抑制作用」 • 抗炎症作用: anti-inflammatory effect • 免疫抑制作用:immunosuppressive effect
  • 13. ステロイドの臨床免疫学:OS • 「抗炎症作用」 + 「免疫抑制作用」 • 抗炎症作用: anti-inflammatory effect 「いま起きている異常な免疫反応を抑え る」 例: 気管支喘息発作(好酸球性気道炎症に よる可逆性気管支収縮) 短期・比較的大量のステロイド
  • 14. ステロイドの臨床免疫学:OS • 「抗炎症作用」 + 「免疫抑制作用」 • 免疫抑制作用:immunosuppressive effect 「免疫反応そのものを起こりにくくする」 例:多くの自己免疫疾患 気管支喘息の「コントロール」 長期の「維持」
  • 15. ステロイドの「効きやすい細胞」・「効きにく い細胞」 マクロファー CD8 T-cell ジ Granulomatosis with Polyangiitis 多発性筋炎(PM) (Wegener’s) 好酸球 B-cell SLE 気管支喘息 線維芽細胞 強皮症 CD4 T-cell 皮膚筋炎(DM) 好中球 顕微鏡的多発血管炎 (MPA) MORE Glucocorticoid Response
  • 16. 「ステロイド治療」に関する 臨床上の疑問 • ステロイドで治療するべき病態か? • どのくらいの初期量で? – 「パルス」は必要か? • 初期量をどのくらいの期間継続するか? • 投与経路は? (PO vs IV) • どのようなペースで減量するか? • 少量で「維持」するのか? 中止可能か? • 免疫抑制剤の併用を行うべきか?
  • 17. • 唯一の「正解」はない • 臨床試験のプロトコルは参考になる • 明らかに「不適切」ということはある – 治療対象 – 副作用モニタリング・治療 – 投与量
  • 18. Recommendations Ann Rheum Dis 2007;66;1560-1567 with
  • 19. Ann Rheum Dis 2007;66;1560-1567
  • 20. GCの薬理作用 Arthritis Rheumatism 2011;63;1-9 • Genomic Effect – 転写抑制 (Transrepression) – 転写促進 (Transactivation) • Non-Genomic Effect – 細胞膜上のGCRに結合 – GC-細胞質内GCR(cGCR)によるNon-Genomic Effect – 細胞膜への直接作用(膜安定化?)
  • 21. GCの薬理作用:Genomic Effect 治療効果に重要 • 転写抑制 – NF-κBやactivator protein 1の活性を抑制 – IL-1, IL-2, TNF, IFN-γ, and prostaglandinsの転写↓ 副作用に関連 • 転写促進 – Anti-inflammatory cytokines(EG IL-10)や regulator proteinsの転写↑
  • 22. Question 2 • GC投与からGenomic effectを介した制御タ ンパクの濃度変化が起きるまで、どのぐ らいの時間が必要でしょうか? 1. 5秒 2. 30秒 3. 3分 4. 30分
  • 23. Answer 2 • 少なくとも30分は必要 • 組織や臓器レベルでGenomic Effectを介し たGC投与の効果が観察されるまでには、 それよりも長時間を要する。
  • 24. GCの薬理作用: Non-Genomic Effect GC投与後、秒のorderで作用発現 • 細胞膜上のGCRに結合 • GC-細胞質内GCR(cGCR)によるNon-Genomic Effect • 細胞膜への直接作用(nonspecific)
  • 25.
  • 26. 白血球への影響 血球 作用 好中球 末梢血中に動員 遊走能を低下させる 単球、マクロファー 数減少、遊走能低下、貪食能低下、殺細菌能低下 ジ 抗原提示能低下、サイトカイン・エイコサノイド放出低 下 リンパ球 数減少、遊走能低下、サイトカイン産生低下、増殖能低 下、活性化阻害 短期的には免疫グロブリン産生能に対する影響少ない 好酸球 数減少、アポトーシス誘導 好塩基球 数減少、炎症メディエーター放出阻害
  • 27. 用量について Ann Rheum Dis 2002;61:718–722 • ヨーロッパリウマチ学会の提案
  • 28. 少量(維持量) 7.5 mg/日 以下 • 中等量 7.5~30 mg/日 • 高用量 30~100 mg/日 • いわゆる「パルス療法」 に分類する。 Arthritis Rheum 2007;66;1560-1567 • 恣意的分類
  • 29. Genomic Action GC受容体を介した Nonspecific (GC受容体飽和度) Non-Genomic Action 少量 + - - (50%以下) 中等量 ++ (+) (+) (50-100%) 高用量 ++(+) + + (ほぼ100%) 超高用量 +++ ++ +(+?) (100%) パルス +++ +++ +(++?) (100%)
  • 30. 極めて単純化した用量-反応曲線 臨床効果 Non-Genomic Genomic 用量 Prednisolone 1 mg/kg/day
  • 31. Autoimmun Rev. • mPSL 500 mg vs 1000 mg 2006 ;5(2):111-3 – 臨床効果同じ – 感染:500 mgの方が少なかった。 (Lupus 2002; 11: 508-13) • mPSL 100 mg vs 1000 mgの投与 – 効果・副作用とも同じ。 (Ann Rheum Dis 1987; 46: 773-6) いずれも対象疾患はSLE (臓器病変は統一されていない)
  • 32. 「あなたにとってのステロイドパルス」 • 施設A: – ソル・メドロールⓇ 1000mgの点滴を3日間、 その後、500mgを3日間、250mgを3日間… • 施設B: – ソル・メドロールⓇ 1000mgの点滴を3日間の後、 約1 mg/kg/dayのソル・メドロール点滴に移行 • 施設C: – ソル・メドロールⓇ 250mg×1日4回の点滴を 3-5日間施行
  • 33. どのステロイドが 「パルス療法」に適するか? Methylprednisolone:相対的にnon-Genomic Effectが強い Ann Rheum Dis 2002;61:718–722
  • 34. 萩野はこうしている • ステロイドパルス – 多くの臨床試験が3-7日間の投与 – しかし、リウマチ科の領域で4日以上のパルスが 必要な時には「ステロイド以外の治療」を – Non-Genomic effectにも上限があるでしょう – より速やかに細胞内GC受容体を飽和させるため には分割投与してtrough値が高い方が良い? メチルプレドニゾロン 500mg点滴を12時間ごと or メチルプレドニゾロン 250mg点滴を6時間ご と
  • 35. 萩野はこうしている • リウマチ性疾患のステロイド初期治療 – より速やかに細胞内GC受容体を飽和させるためには 分割投与してtrough値が高い方が良い? – 炎症はより速やかに抑える: 炎症の持続が組織破壊 に結びつくから – ステロイド副作用は 1. 投与最大用量 2. 投与総量 3. 投 与期間 で決まる – 多めの投与量から開始して、速やかに減量する – 朝の投与が多い方が「生理的」と言われるが、そも そも生理的投与量をはるかに超えている メチルプレドニゾロン 20mg点滴を8時間ごとで開始 炎症マーカー改善すればプレドニゾロン経口 (基本的に分1投与)
  • 36. 萩野はこうしている • ステロイドの選択 – 基本はmPSLかPSL – 欧米ではPrednisone→肝代謝でPrednisolone – 点滴:メチルプレドニゾロン (水溶性プレ ドニンは使いません) – アスピリン喘息(aspirin-exacerbated respiratory disease: AERD):可能ならプレドニゾロン内服、不可 能ならリンデロン点滴静注 – 短期作用型は慢性副腎不全の補充・「重症 の」septic shock – 長期作用型は髄液移行性・胎盤移行性(+)
  • 38. GC副作用:時系列の観点から • 開始当日~ – 不眠・精神症状(抑うつ・高揚感)・食欲亢進 • 数日後~ – 血圧上昇 ・ 浮腫・ ↑Na / ↓K • 数週間後~ – 副腎抑制 ・ 耐糖能異常 ・ 創傷治癒遷延 ・ コレステロール上昇 • 1ヶ月後から – 易感染性 ・ 中心性肥満 ・ 多毛 ・ 座瘡 ・ 無月経 • 数ヶ月後から – 紫斑 ・ 皮膚線条 ・ 皮膚萎縮 ・ ステロイドミオパチー • 長期的に – 無菌性骨壊死 ・ 骨粗鬆症 ・ 白内障 ・ 緑内障
  • 39. GC副作用:別の観点から • ある程度予防可能 – 骨粗鬆症、ある種の感染症、(?)無菌性骨壊死 • 高リスク群で早期発見・治療が必要 – 耐糖能異常、眼合併症、(?)消化性潰瘍 • 減量に伴って改善を期待する – 浮腫、精神症状 etc…
  • 41. Weinstein RS. N Engl J Med 2011;365:62-70.
  • 42. GIOP pathophysiology Glucocorticoid BONE Neuro-endocrine Calcium Metabolism Osteocytes Osteoblasts Osteoclasts Negative Ca Balance ↓ BONE FORMATION ↑ BONE RESORBTION ↓ BONE QUALITY ↓ BONE MASS ↑FRACTURE Canalis E. Osteoporosis Int 2007;18:1319
  • 43. Bisphosphonate Mayo Clin Proc. 2008; 83(9): 1032-45
  • 44. StatinとBisphosphonate • いずれもメバロン酸 経路に作用 – Statins: HMG-CoA reductase – BPs: Farnesyl pyrophosphate synthase
  • 45. Mechanism of Action Models for bisphosphonate targeting of (A) osteoclasts and (B) macrophages 骨芽細胞 Osteoblast Nat Clin Pract Oncol 2007: 4; 42–55 破骨細胞 Osteoclast 破骨細胞 Osteoclast
  • 46. ACR Recommendations 2010 Arthritis Care & Research 2010: 62; 1515-26 • FRAXによるリスク分類 – 今後10年間の骨折リスクが Low: 10%>, Medium: 10-20%, High: 20%< • 患者を3群に分類 – 閉経後女性+50歳以上の男性 – 閉経前・挙児希望のない女性+50歳以下の男 性 – Childbearing potentialのある女性
  • 47. FRAX: WHOによる骨折リスク評価ツール http://www.sheffield.ac.uk/FRAX/tool.jsp?lang=jp
  • 48. Question 3 「40歳閉経前女性、BMI 20、飲酒・喫煙と も嗜まない、T-score -1.0、PSL 45 mg/dayに よる治療予定」 • FRAXによる試算で、今後10年間のMajor Osteoporotic Facture Probabilityは? 1. 0.7% 2. 3% 3. 7% 4. 30%
  • 49. Answer 3 • 40歳女性(Premenopausal) – 身長 150cm, 体重 45kg – SLE, LN Ⅳ – 飲酒、喫煙とも嗜まず – Prednisolone 45 mg/dayによる治療予定 – 現在のT-score -1.0 • 今後 10年間の – Major Osteoporotic Facture Probability 0.7% – Hip Fracture 0.1%
  • 50. FRAXの限界 • アルコール、Glucocorticoidとも、 骨折リスクはdose-dependentである点が 反映されていない。
  • 51. FRAXの限界 • そもそも低エストロゲン性骨粗鬆症の評 価をステロイド性骨粗鬆症に流用してよ いのか?
  • 52. N Engl J Med 2011;365:62-70. – FRAXによる骨折リスク層別化は以下の理由で 推奨できない • ステロイドの現在量・総投与量・治療期間のいず れもFRAXには反映されておらず、ステロイド誘発 の骨折リスクをunderestimateする可能性がある。 • FRAXでは大腿骨頚部の骨密度を入力するが、ステ ロイドによる骨折は椎体の圧迫骨折の方が多い。 • 閉経後骨粗鬆症のリスクは必ずしもステロイド性 骨粗鬆症には当てはまらない。
  • 53. BMDだけ見ると誤ります • T-scoreが同じでも 年齢によって Fracture Risk異な る • 骨折リスクは 骨密度だけでは UpToDate 17.2 評価できない “Osteoporotic fracture risk assessment” (骨の質が大 事!)
  • 54. Common pitfall of DEXA interpretation
  • 56. 閉経後女性+50歳以上の男性 • Low risk – 7.5mg/day未満:no Tx – 7.5mg/day以上:AL, RS, ZL • Medium risk – 7.5mg/day未満:AL, RS – 7.5mg/day以上:AL, RS, ZL • High risk – 5mg/day未満で1ヶ月以内:AL, RS, ZL – 5mg/day以上で1ヶ月以内、あるいは量に関わら ず1ヶ月以上:AL, RS, ZL, TP
  • 57. 閉経前・挙児希望のない女性 +50歳以下の男性 • 脆弱性骨折なし: – No adequate data for recommendation • 脆弱性骨折あり: – 5mg/day以上を1-3ヶ月まで:AL or RS OR 7.5mg/day以上:ZL – 量に関わらず3ヶ月以上: AL, RS, ZL, TP
  • 58. Childbearing potentialの ある女性 • 脆弱性骨折なし: – No adequate data for recommendation • 脆弱性骨折あり: – 量に関わらず1-3ヶ月まで:No consensus – 3ヶ月以上: • 7.5mg/day以上:AL, RS, TP • 7.5mg/day未満:No consensus
  • 59. 将来の挙児希望女性に対するBP Curr Drug Saf. 2010 Apr 1. • 理論上の懸念 – 半減期が長い – 胎盤を通過する – 動物での催奇性: FDA category C • これまでの経験 – 胎児の骨成長異常の報告なし
  • 60. Premenopausal woman on High-dose GCに 対するBisphosphonate Okada Y et al. J Rheumatol 2008: 35; 2249-54
  • 61. BRONJ、その他atypical fracture N Engl J Med 2011; 364:1728-1737
  • 62. FLEX study • 先行研究 FIT studyのExtension • FIT studyでAlendronateに割りつけられた 3,236名の女性のうち、試験参加同意が得 られ、かつinclusion criteriaを満たす1,099 名についてのランダム化薬剤中止試験
  • 63. AL中止 AL 5mg/日 継続 AL 10mg/日 継続
  • 67. CalciumとVitamin D 【Pearl】 • CalciumとVitamin DはGC-induced bone lossとFractureを防ぐ (Category ⅠA evidence)
  • 68. CalciumとVitamin D 【Pitfall – 1】 • 新規骨粗鬆症薬の臨床試験は 「十分なCalciumとVitamin Dの補充下」 で行われている 25(OH) Vit-Dの測定・補充: 一般的でな い 1,25(OH) Vit-D: 食事の影響(++) 活性型ではないVitamin Dの処方が困難
  • 69. Alendronate or Alfacalcidol in GIOP • Alendronate 10 New Engl J Med 2006: 355; 675-84 mg/day • Alfacalcidol 1 mcg/day • Primary Outcome △ Lumber Spine BMD
  • 70. • 成分および分量(2粒中) ●ビタミンA・・・4.000国際 単位 ●ビタミンD2 ・・・400国際 単位 ビタミンD2 800国際単位が 米国リウマチ学会の1日推奨量
  • 71. CalciumとVitamin D 【Pitfall – 2】 • 経口カルシウム製剤に含有されている 無機カルシウム(Ca++)量はごくわずか – 乳酸カルシウム 1g : カルシウム 0.13g (130mg) – アスパラギン酸カルシウム製剤(アスパラ Ca) 1200mg: 156mg
  • 72. おまけ: DEXAのT-scoreと Young Adult Mean (YAM) • Young Adult Mean:20~44歳の若年成人平均 • T-score = (骨密度 – YAM)/標準偏差 • %YAM = 100×骨密度 / YAM ∴ T-score = [(%YAM/100) – 1] / (YAM×標準 偏差) 日本人若年女性の腰椎骨密度 1.011± 0.119 g/cm2 ∴ YAM×標準偏差≒0.12 • 例えば%YAM 80% ⇒ T-score = (0.8-1) / 0.12 = -1.6 • Z-score:同年代比較
  • 73. 萩野はこうしている • 骨折のリスクはDEXAのみではわからないが、既に一度骨折して いる患者はリスクが高いだろう。 • 無機カルシウム投与量が少ないのは「仕方ない」。有機カルシ ウムの方が消化管からの吸収は良いはず。 • 無機カルシウム投与は最近(低エストロゲン性骨粗鬆症の領域 では)動脈硬化との関連も指摘されているので、あまりムキに ならない。 • 非活性型ビタミンD投与が難しいのも「仕方ない」。活性型ビ タミンDであれば日光浴の必要もないのでSLE患者には良い? 対象: ステロイドを3ヶ月以上内服する患者すべて 外来では: まずアルファロールもしくはワンアルファで0.5~1mcg を処方 その後アスパラCaを尿中Ca/Cre比が0.2以下になるように 1200mg/dayまでtitrate 入院を要する程度に重症・高用量: Vit DとCaを同時に投与開始 過去の脆弱性骨折はBPの強い適応 (口腔内衛生に注意) BPは5年以上継続しない: 再評価で一旦中止か、どうしても必
  • 74. おそらく一番大事なのは “As much as necessary, as little as possible”の ステロイド投与
  • 76. GCと感染症 • 「Prednisolone 15mg/日相当以上」を 「3週間以上」で ハンドアウトまちがい 結核:Latent Tb activation risk↑とされる • 上記の投与によって、PPDの陰性化が起き ることが根拠 「結核・非結核性抗酸菌症診療ガイドライン」
  • 77. Pneumocystis Pneumonia 厚生労働省研究班 Risk Factor ① GC単独:PSL換算1mg/kg以上 ② PSL 0.5 mg/kg以上 かつ免疫抑制薬併用 ③ リンパ球 400 /mm3 ④ IgG 700 mg/dl以下 http://www.allergy.go.jp/Research/Shouroku_03/18_tanaka_01.html
  • 78. • リスク因子(+)例に ST合剤で一次予防: PcP 0/66 非施行症例: PcP 19/102 • 非施行例での発症率高い: • Need to Go More Strict? cf. 予防量ST合剤による重篤な副反応の発現率 3.1% → PcP発症リスクが3.1%以上の時に予防考慮? Mayo Clin Proc 2007: 82; 1052-59 • 「従うべき厳密なガイドラインなし」との専門家 の意見
  • 79. 治療対象の疾患による差異? – Wegener肉芽腫症を高用量PSL+免疫抑制剤で 治療中:High Risk – SLEはModerate Risk? – SScは? Arthritis and rheumatism, 2000: 43; 1841-1848. Arthritis Care & Research 2008:59; 1034 –103
  • 80. リウマチ科医は 実際どのようにしているか? • PcP予防を行うリウマチ科医の傾向 1) 女性であること (OR 1.47, p = 0.03) 2) 米国の医師 (OR 1.77, p = 0.004) 3) アカデミックな施設で勤務 (OR 2.75, p < 0.001) 4) キャリアが10年以下 (OR 4.08, p < 0.001) 5) 以前にPcP症例を経験したことがある (OR 2.62, p < 0.001) (PcP予防を全く行わないリウマチ科医が回答者全体の約30%)
  • 81. PcP予防を行っている医師は 1) 治療法(68.6%) 2) リウマチ性疾患としての診断 (9.3%) 3) 治療薬の量 (8.3%) を基に判断を行っていると回答。 • Cyclophosphamide:75%が「予防を考慮す る」 • GCとCY以外の免疫抑制療法の併用:49%、 • ステロイド単剤:12.5% J Rheumatol. 2010 Apr;37(4):792-9.
  • 82. β-D glucanとPcP • N=57, HIV症例含む • カットオフ値:31.1pg/mL – 陽性適中率 0.61 – 陰性適中率 0.98 • 診断の除外に良い? CHEST 2007
  • 83. しかし・・・ • β-D glucan高値でPcPで はない症例 • 低値のPcP症例 いずれも存在する
  • 86.
  • 88. Glucocorticoid-induced Myopathy • フッ化ステロイド(Dexamethasone, Triamcinolone)の方が、非フッ化ステロイ ド(Prednisolone)より起こしやすい? • 2つのシチュエーションで特に問題になる 1. 人工呼吸器管理下の患者 2. 筋炎治療中の患者
  • 89. “the diagnosis is one of exclusion” 【%クレアチン尿についての検討】 %クレアチン尿=尿中クレアチン(g/day)/〔尿中クレアチン (g/day)+尿中クレアチニン(g/day)〕 • 26例の検討(筋疾患を除く) • ステロイド内服前後(とくに使用前)における%クレアチン 尿 – 男性2.5% – 女性17.1% • 女性において有意に高値であった(p=0.041). • 男性3/14例(21.4%),女性8/12例(66.7%)で10%(しばしば 使用されるカットオフ値)以上であった • 腎機能障害(軽度であっても)が認められる患者では筋症状 が見られなくても%クレアチン尿値が大きく変動した • Limitation: 筋炎例についての検討なし 脳と神経2006. Vol.58 No.1
  • 90. 萩野はこうしている • リウマチ性多発筋痛症の診断が確かで、PSL 15mgから治療開 始:PcP予防は行わない • 高用量のプレドニゾロンに何らかの免疫抑制剤を併用すると き:原疾患に関わらずPcP予防を強く考慮する • 関節リウマチに対してプレドニゾロン 6mg以上 + MTX併用中 の患者に生物学的製剤を使用するとき: PcP予防を考慮する • 間質性肺炎のある患者に中等量以上のプレドニゾロンを投与 するとき: PcP予防を考慮する • その他の場合: ケースバイケース • 予防の第一選択:バクタ 2錠分1を月・水・金 (多分予防には 1錠でもいいのではないかと思っている) • 第二選択: 若年者で肺疾患がないとき ペンタミジン吸入 (300mgを超音波ネブライザーで) • 高齢者 もしくは 肺疾患があるとき レクチゾール 100mg 分2
  • 91. • ステロイド「減量」 (Withdrawal Regimen) なぜ必要? • ある時点で必要な最小ステロイド量が わからないから
  • 92. Quotes • GC withdrawal • 20mgまでは5mgずつ UpToDate 17.3 Furst DE and Saag KG This topic last updated: Dec 20, 2006 • 10~15mgは2.5mgずつ • 5~10mgは1mgずつ “There is a paucity of clinical evidence to • 5mg以下は0.5mgずつ support any particular 減量していく regimen of glucocorticoid tapering.”
  • 93.
  • 94. CYCLOPSにおけるGC減量法 (Randomised trial of daily oral versus pulse Cyclophosphamide as therapy for ANCA-associated Systemic Vasculitis) Ann Intern Med 2009;66;1560-1567
  • 95. Combinatietherapie Bij Reumatoide Artritis (COBRA) treatment schedule. van Tuyl L H D et al. Ann Rheum Dis 2007;66:974-976 ©2007 by BMJ Publishing Group Ltd and European League Against Rheumatism
  • 96.
  • 97. Comparison of GC withdrawal regimens 70 60 60 60 60 60 50 50 45 45 40 40 40 EUVAS 30 30 30 Japan 25 25 25 25 25 COBRA 20 20 20 20 15 15 12.5 10 10 10 7.5 7.5 7.5 7.5 0 1 2 3 4 5 6 7 9 12 20
  • 99. Quotes • GC withdrawal “The UpToDate 17.3 Furst DE and Saag KG observation, based This topic last updated: Dec 20, 2006 upon physiologic “There is a paucity of data, that HPA clinical evidence to suppression is uncommon support any particular at prednisone doses regimen of below 5 mg/day means glucocorticoid tapering.” that most patients on a daily dose of 5 mg/day do not have to be tapered.”
  • 100. Question 4 • 非-ストレス下でヒトが一日に産生する副 腎皮質ホルモンの量はPrednisoloneに換算 して大体どのくらいか? 1. 1 mg 2. 2 mg 3. 5 mg 4. 10 mg
  • 101. Answer 4 • Cortisol 5.7 mg/m2/day The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 1991: 72; 39-45 • 身長 170cm, 体重 60kg (体表面積 1.695) → コルチゾール 9.66 mg/day → プレドニゾロン 1.93 mg/day 「維持療法」のステロイドも 生理的な量よりかなり多い!
  • 102. • Data on monitoring proved to be scarce!
  • 103. • 臨床試験は主に「効果」を測定 • 副反応は – 報告されていない – 測定・評価困難
  • 104. • 心血管 • 臨床試験(Clinical • 感染症 Trials) • 消化管 • 日常臨床(Daily • 精神 Practice) • 内分泌・代謝 • 皮膚 • 基本的に「問診 (Questioning)」で評価 • 筋骨格 • 眼科 の8項目
  • 105. • 心血管: – 空腹時脂質、Na/K、下腿浮腫。血圧。CVDについての問診、《頸動脈内 膜厚》 • 感染症: – 問診(既往、治療歴) (特定感染症に対する検査(PPDなど)は記載な し) • 消化管: – 問診、Hb (便潜血検査は記載なし) • 精神: – 気分の変調について問診 • 内分泌・代謝: – 空腹時血糖、HOMA、身長、体重、月経不順・性欲についての問診、 《ACTH試験》 (HbAicは記載なし) • 皮膚: – 問診 (皮膚萎縮、座瘡、脱毛 etc.) • 筋骨格: – DEXA、Dorsal spine X-ray、問診 (骨折) • 眼科:
  • 107. Vasculitis studies • Pearl: A little bit of prednisone goes a long way toward sustaining disease remissions in AAV. • 少量ステロイドによる「維持療法」で、 ANCA関連血管炎の再燃率が大幅に低下する。 Stone J “A Clinician’s Pearls and Myths in Rheumatology” p262 Springer 2009
  • 108. EUVAS trials CYCAZAREM NORAM WGET (n=144) (n=100) (n=180) Prednisolone dose 10mg以上 7.5mg Off 6months Prednisolone dose 7.5mg Off Off 12months Flare rate 15% 70% (MTX arm) 51% (%) 47% (CY arm) • CYCAZAREM: CYCとAzathioprineで寛解維持(18ヶ月後の再発)同等 • NORAM: Early Systemicの症例:CyclophosphamideとMTXは寛解率同等 CYC 94% vs MTX 90% • WGET: Etanerceptによる寛解維持効果(-) Goek CN, Stone J Curr Opin Rheumatol 2005; 17: 257- 264
  • 109. • 一番控えめな評価でも、標準治療にステロイドを追 加すると関節リウマチの骨びらん進行をかなり抑え ることが可能である。 Even in the most conservative estimate, the evidence that glucocorticoids given in addition to standard therapy can substantially reduce the rate of erosion progression in rheumatoid arthritis is convincing.
  • 110. 関節リウマチ(RA)における 長期GC投与 危険!派 • 5 mg/日以下の PrednisoloneでもAE が生じている。 Saag KG Am J Med. 1994 ;96(2):115-23.
  • 111. Lancet 2005; 365: 801-3 • 既存のGC使用法をより • 新しいGC製剤を開発す Sophisticateされたもの る にする ↓ ↓ • SEGRA • 限界に来ている? (Selective Glucocorticoid-receptor agonists) • Timed-release tablets • 11-beta-hydroxysteroid dehydrogenase阻害剤
  • 112.
  • 113.
  • 114. リウマチ性疾患・膠原病 • 寛解・治癒するのではないか? – 関節リウマチ、結節性多発動脈炎 • 寛解に持ち込んでも長い期間の後に再発? – Wegener肉芽腫症 • 寛解という考え方の適用が困難 – 血清陰性脊椎関節炎、(成人)Still病 • 進行を阻止できない? – 強皮症、皮膚筋炎の間質性肺炎
  • 115. 関節リウマチの「寛解」 • 臨床的寛解 – 「腫脹関節・圧痛関節がゼロで、血液検査上炎症反応を認めな い」 • 機能的寛解 – 「関節リウマチを全く忘れて生活している」 • 画像的寛解 – 「関節リウマチによる骨・軟骨病変が進行しない」 • 免疫学的寛解(drug-free) – 抗リウマチ薬の内服を中止しても上記寛解を達成
  • 117. 造血器腫瘍と免疫・炎症 寛解導入 造血幹細胞移植 (恒常性ラインの引き直 し) 地固め療法
  • 118. 「炎症」と免疫状態:リウマチ性 疾患 寛解導入(Remission- induction) 寛解維持(Remission- maintainance) 免疫の 自動調節能力
  • 119.
  • 120. 病態の主体となる細胞とステロイド反 応性 マクロファー CD8 T-cell ジ Granulomatosis with Polyangiitis 多発性筋炎(PM) (Wegener’s) 好酸球 B-cell SLE 気管支喘息 線維芽細胞 強皮症 CD4 T-cell 皮膚筋炎(DM) 好中球 顕微鏡的多発血管炎 (MPA) MORE Glucocorticoid Response
  • 121. 自然免疫からのシグナル 好中球 MΦ Ig T-cell 補体 B-cell
  • 122. 自然免疫寄りの疾患 (例:痛風) 好中球 MΦ 高尿酸血症の治療 NSAID Ig ステロイ T-cell 補体 ド B-cell
  • 123. 獲得免疫寄りの疾患 (例:関節リウマチ) TNF阻害薬 好中球 MΦ 禁煙 慢性感染の治療 NSAID Ig T-cell ステロイ 補体 ド B-cell
  • 124. 総力戦 自然免疫からのシグナル 好中球 MΦ 慢性感染の 治療 免疫グロブリン大量療法 Ig ステロイド T-cell (IVIg) 補体 免疫抑制剤 血漿交換 エンドトキシン吸着療法 B-cell
  • 125. • ステロイドの使用にはVarianceがあり、 「最適化」は困難 (今から前向き試験での検証も困難) → must be accepted. • As much as needed, as little as possible. • 副作用の適切なモニタリングと予防・治 療を。
  • 126. 理想的には… • ×免疫「抑制剤」 ⇒ ○免疫「調整剤」 • 自己免疫疾患発症ハイリスク群の同定 – 「予防接種」?