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学術委員会学術第6小委員会
卒後臨床研修としての
病院薬剤師レジデント制度に関する調査・研究

委員長
神戸市立医療センター中央市民病院
橋田 亨 Tohru Hashida

委員
北里大学北里研究所病院              福岡大学病院
厚田 幸一郎 Koichiro ATSUDA   鷲山 厚司 Atsushi WASHIYAMA

兵庫医科大学病院                 神戸薬科大学
木村 健 Takeshi KIMURA      岩川 精吾 Seigo IWAKAWA

愛媛大学医学部附属病院
末丸 克矢 Katsuya SUEMARU
本日のお話し

第6小委員会活動の背景と目的
薬剤師のキャリアパスについて
米国の薬剤師レジデント制度
薬剤師レジデントプログラムの一例
今後の活動計画
本日のお話し

第6小委員会活動の背景と目的
薬剤師のキャリアパスについて
米国の薬剤師レジデント制度
薬剤師レジデントプログラムの一例
今後の活動計画
背景

医師や看護師においては,それぞれの教育課程およ
び職員教育の中で実際の医療現場で行う実地実習は
不可欠とされ,大きな意味を持ち続けてきた。

後進を育成するシステムは,その分野,職種の発展
を支える大きな柱であり,継続的に人を育てること
に成功した組織のみが,将来に向けた可能性を広げ
ていける,と言っても過言ではないだろう。
目的
卒後研修の一環として実施されている病院における薬
剤師レジデント制度の実態を調査し,制度のもたらす
成果を明らかにする。
先行実施されている薬剤師レジデント制度の実態を明
らかにすることで,新たに制度を設ける施設に参考と
なる情報を提供する。
将来のキャリアパスとして薬剤師レジデントを志望す
る薬学生や大学の進路指導担当者にとって必要なディ
レクトリーを提供する。
わが国の医師臨床研修制度や米国の薬剤師レジデント
制度をリファレンスとした,6 年制薬学教育下におけ
る卒後薬剤師研修制度確立に向けた議論が促されるこ
とを期待している。
本日のお話し

第6小委員会活動の背景と目的
薬剤師のキャリアパスについて
米国の薬剤師レジデント制度
薬剤師レジデントプログラムの一例
今後の活動計画
キャリアパス
仕事の経験やスキルを積みながら
自らの能力を高くしていくための順序を
系統立て、将来の目的や昇進プラン、
キャリアプランを
具体化、明確化するもの
21世紀医療フォーラム「若手医師のキャリアパス」ワーキンググループ第1回会議基調講演 森山寛
病院の

 薬局の   薬剤師      製薬企業の

薬剤師             薬剤師
               研究・開発・営業

       薬剤師
行政の    キャリアの     大学の
薬剤師             薬剤師
       多様性
               薬剤師
 家庭の          ジャーナリスト
薬剤師
なんのためにやるの?


できたらどうなるの?


誰の役に立つの?




           明確な方向付け
昭和54年5月24日付 薬事日報
専門薬剤師に至るためのラダー
                                                   領域別高度専門薬剤師
                                                   ・専門領域での先端的薬物治療研究
    第三者機関によるプログラム認証と試験実施                           ・医療機関連携医薬品情報センター、
                                         学会発表       中央 薬事情報センター運営
                                         論文作成      ・専門薬剤師の育成


                                          領域別専門薬剤師
                                          • 専門領域での副作用モニタリングのための臨床検査
                                            オーダーと対応
                               専門実務経      • 専門領域での処方設計提案・分担
                               験講習・研修     • 専門領域での薬物療法に関連する遺伝子解析と対応
                                認定試験      • 臨床研修病院における医薬品情報管理と医薬品コント
                                            ロール(薬事 委員会等)
                               認定薬剤師
                    実務経験       • 一般的な副作用モニタリングのための臨床検査オーダーと対応
                    講習の履修      • 一般的なTDMのための薬物血中濃度測定オーダーと対応
                               • 一般病院における医薬品情報管理と医薬品コントロール(薬事委員会等)
                    認定試験
                     研修認定薬剤師
                     • 一般薬剤業務の管理
          実務経験       • 一般薬剤業務に関する学生・新人の指導
          講習の履修      • 慢性疾患安定期の患者におけるリフィル処方せんに基づく調剤

           薬剤師
薬剤師国家試験 • 一般的な薬剤業務

   薬学部6年制

専門薬剤師の必要性と今後の発展 !医療の質の向上を支えるために! 平成20年(2008年)8月28日日本学術会議薬学委員会 専門薬剤師分科会より
医療スタッフの協働・連携による
  チーム医療の推進について(抜粋)
医療の質の向上及び医療安全の確保の観点から、チーム医療において薬
剤の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加することが非常に
有益である
薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更や検査のオーダーに
ついて、医師・薬剤師等により事前に作成・合意されたプロトコールに
基づき、専門的知見の活用を通じて、医師等と協働して実施すること
薬剤選択、投与量、投与方法、投与期間等について、医師に対し、積極
的に処方を提案すること
薬物の血中濃度や副作用のモニタリング等に基づき、副作用の発現状況
や有効性の確認を行うとともに、医師に対し、必要に応じて薬剤の変
更等を提案すること
              平成22年4月30日 厚生労働省医政局
本日のお話し

第6小委員会活動の背景と目的
薬剤師のキャリアパスについて
米国の薬剤師レジデント制度
薬剤師レジデントプログラムの一例
今後の活動計画
米国における薬剤師レジデンシー
ASHP(米国病院薬剤師会)認定プログラムに基づく
研修で履修者には奨学金が支給
応募資格はPharmD
Residency Directoryに基づいて希望するコースを選択
し、面接、マッチングの後に研修機関が決定
Postgraduate Year One (PGY1):卒後1年目研修
✴ Community Pharmacy, Managed Care Pharmacy, Pharmacy
✴ Pharmacy では、病院薬剤師の一般的業務と臨床各分
  野をローテトで実地研修
Postgraduate Year Two (PGY2):卒後2年目研修
✴ 専門分野に特化した研修
✴ 修了者は専門薬剤師試験を受験
Postgraduate Year One
     (PGY1):卒後1年目研修
3種のプログラム

 ✴ Pharmacy(病院やクリニックにおける薬剤師業務):702
 ✴ Community Pharmacy(地域の薬局薬剤師業務):70
 ✴ Managed Care Pharmacy(民間保険機関における薬剤業務):36
PGY1の薬剤師レジデントには,患者中心のケアと臨床薬剤
業務を経験する中で,専門的能力の成長を促し,将来どのよ
うな分野においてもリーダシップを発揮できるスキル形成の
機会が提供される。
PGY1の薬剤師レジデントはそのプログラムを通して問題解決
のために必要な知識を習得し,戦略を絞り込み,専門的価値
観や態度を確立し,臨床的判断力を高めて行く
Postgraduate Year Two
   (PGY2):卒後2年目研修
Board of Pharmaceutical Specialities (BPS)によって専門
薬剤師認定が行われている分野

   ✴   Pharmacotherapy(薬物治療)
   ✴   Nuclear Pharmacy(放射線)
   ✴   Oncology Pharmacy(がん)
   ✴   Nutrition Support Pharmacy(栄養サポート)
   ✴   Psychiatric Pharmacy(精神科)
   ✴   Ambulatory Care(外来診療)
その他の分野
   ✴ Infection Disease Pharmacy(感染制御)
   ✴ Drug Information(医薬品情報)
   ✴ HIV Pharmacy(HIV薬物療法)
Online Residency Directory
本日のお話し

第6小委員会活動の背景と目的
薬剤師のキャリアパスについて
米国の薬剤師レジデント制度
薬剤師レジデントプログラムの一例
今後の活動計画
神戸市立医療センター中央市民病院
       薬剤師レジデント募集要項
目的
 実務経験に根ざした講義と臨床実務実習をとおして、高度医療に
対応した臨床薬剤業務並びにチーム医療を実践できる薬剤師を養成
する。


研修概要
 1年目:医療薬学一般コース
 臨床薬剤業務に必要な知識、技能を修得する。


 2年目:医療薬学専門コース
 一般コース修了後、さらに高度な臨床薬剤業務を経験する      中で
 チーム医療を実践できる実力を修得する。


処  遇:月額 約20万円(非常勤)、交通費支給、健康保険有
薬剤師レジデント年間スケジュール
         ・・・・ある1年目レジデントの場合

09年度(月)   4   5   6   7   8   9   10   11 12   1   2   3

初期研修講義

  研究

 先端医療
センター研修

学会報告会

 がん専門
薬剤師講義

 緩和ケア

 注射調製


  調剤
薬剤師レジデントカリキュラム
         における個人テーマへの取り組み
臨床上の解決すべき問題点を見いだし、科学的方法を用いて解決方法を導きだ
    して臨床にフィードバックするまでの課程を実践する。


到達目標
1)薬物治療に関わる臨床上の問題(テーマ)が指摘できる。
2)Medlineなどデータベースを用いて、テーマに関する情報を検索できる。
3)得られた情報をもとにエビデンスの有無を評価できる。
!   エビデンスの有→臨床へフィードバックするための方法を立案できる。
!   エビデンスの無→どのような問題意識で、何をどこまで明らかにするかを具
    体的に記述する事ができる。
6)その目的を達成するための研究方法・計画を立案できる。
7)得られた結果を科学的に解釈できる。
8)成果を発表できる。(講演および論文)
薬剤師レジデント制度の評価はこれからですが…

2009年度: 3名、2010年度: 8名→ 2011年度: 9名

 レジデント採用者の経歴
    修士課程修了者
    博士課程修了者
    他病院の正規職員
    製薬企業勤務


 レジデント就職状況
 →2009年度、2010年度採用者はすべて就職
    当院
    自治体病院
    民間病院
本日のお話し

第6小委員会活動の背景と目的
薬剤師のキャリアパスについて
米国の薬剤師レジデント制度
薬剤師レジデントプログラムの一例
今後の活動計画
2011年度以前に受け入れ実績のある
      施設を対象とした調査
1. 薬剤師レジデントプログラムの開始年度
2. 薬剤師レジデント採用者のこれまでのキャリアについて
3. 薬剤師レジデントの進路について
4. 薬剤師以外の協力体制について講義、実地実習などで他
 職種の協力がある場合はその概要を記載
5. 他医療機関の協力体制講義、実地実習などで自施設以外
 の医療機関の協力がある場合はその概要を記載
6. 薬剤部門の学会発表について
7. 薬剤部門の論文発表について
8. 薬剤師レジデントの今後のあり方について

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