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スタートアップが知っておくべき資本政策の考え方
~ストック・オプションから種類株・転換社債等の基本まで~

                                                     2011年9月24日
                                          第4回Samurai Venture Summit
                                             (スピーカー&パネラー)
                                                  公認会計士 伊藤
                                          サムライインキュベート 榊原
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伊藤事務所
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本日のテーマ

<資本政策の基本的な考え方>
 創業初期の経営メンバーへ株式を分けるか?出資割合をどうするか?
 どのタイミングでいくらの資金調達をするべきか?
 創業者が維持したい持ち株比率は?
 株主はVCにすべきか、事業会社にすべきか?


<創業経営者が知っておきたい各種ファイナンス手法>
 ストック・オプションの制度の概略と考え方
 普通株?新株予約権?種類株? それぞれどのように活用されるのか




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負債(借金) vs 株式 ~基本的なポイントの確認~
          貸借対照表(B/S)                  負債(Debt)
                                           元本に利息を付けて、元利を返済する義務を負う
        【資産】      【負債】                     利息及び元本の返済については「金銭消費貸借契約」に基づく
                                           会社を清算する場合、株式よりも優先して元本の返済を受けら

                借入(借金)                •
                                            れる
                                            銀行融資での調達:間接金融(最終的な資金の出し手と借り手
                                            の間に銀行が入る)
                                      •     社債での調達:直接金融(最終的な資金の出し手である一般
                                            投資家から直接資金を借りる)
                【純資産(資本)】              資本(Equity)
                                            元本の返済義務はないが、会社が成長し株式価値を高めるこ
                                             とにより出資者にリターンとして報いることを期待されている
                株式(資本)                      利息はないが、利益に対して配当による分配が期待されている
                                             (ベンチャーは配当(インカムゲイン)よりも成長による株式価値
                                             の向上(キャピタルゲイン)が期待されるケースが多い)
                                            増資による資金の受け入れとともに出資者へ株式を発行し、投
                                             資家は株主となり出資割合に応じた会社の所有権を持つ
                                            会社を清算する場合、負債を全て返済した場合に残った財産
                                             に対して出資割合に応じて分配を受ける最終受益者となる
                                            一般に、成功するかどうかリスクの高いベンチャー事業におい
                                             ては、会社・投資家の双方において資本による資金調達の方
                                             がリスクとリターンが見合いやすい
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Section1. 資本政策の基本的な考え方




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本日のポイント

<資本政策の基本的な考え方>
 創業初期の経営メンバーへ株式を分けるか?出資割合をどうするか?
 どのタイミングでいくらの資金調達をするべきか?
 創業者が維持したい持ち株比率は?
 株主はVCにすべきか、事業会社にすべきか?


<創業経営者が知っておきたい各種ファイナンス手法>
 ストック・オプションの制度の概略と考え方
 普通株?新株予約権?種類株? それぞれどのように活用すべきか




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創業初期の経営メンバーへ株式を分けるか?出資割合をどうするか?



   <考えるポイント>

   ・一緒に始めた初期メンバーは永遠のパートナーか

   ・力関係(実力のバランス)

   ・どのように報いたいか



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どのタイミングでいくらの資金調達をするべきか?


   <考えるポイント>

   ・自社におけるステージ別の資金調達ニーズを事前に
   イメージしておく

   ・調達資金が増えれば株式の創業者の持ち株比率は低く
   なり、調達資金を抑えれば創業者の持ち株比率は高く保
   持が出来る(その時点での会社の価値と必要資金額の割
   合が投資家の持分となる)

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ステージ別の資金調達需要と成長イメージ

仮の想定ケース                                                                売上

                                                                       利益



                          スタートアップ                 アーリー      ミドル/レイター  ⇒ IPO?
        期間                 数ヶ月~数年               1~2年程度       2~3年程度     ⇒ バイアウト?

        売上                   ゼロ                    小           急上昇
        利益                 マイナス大                マイナス縮小       プラス⇒急上昇

        必要資金              数百~数千万?             数千万~数億?       ゼロ~数億円?
        想定企業価値           数千万~1億円前後?            数億円~?         10億円~?

        資金需要             開発・ローンチ
                                           改善・ 機能強化
                                           プロモーション
                                               マネタイズ
                                                            組織拡大
        組織体制
        企画・推進(CEO・COO)
        開発
        営業
        プロモーション
        管理(CFO)

各ステージにおいてはそれぞれの事情に応じた資金需要があり、自社の資金調達需要をイメージする。
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ステージ別の資金調達需要と成長イメージ(続き)

仮の想定(もうちょっと具体的に)
                  創業                スタートアップ                              アーリー             ミドル/レイター
        株主      株数       %      発行         株数            %        発行      株数      %      発行     株数       %
創業者              450      90%               450           76%              450     65%           450      58%
創業役員              50      10%                50            8%               50      7%            50       6%
ストック・オプション
 社内              500     100%                  500          85%            500     72%            500     65%
VC A or エンジェル                      90            90         15%    10      100     14%            100     13%
VC B or 事業会社                                                       90       90     13%             90     12%
VC C or 事業会社                                                                              80       80     10%
 社外                0       0%      90           90         15%     100     190     28%    80      270     35%
 合計              500     100%      90          590        100%     100     690    100%    80      770    100%

(単位:万円)
売上                  0                         0                           5,000                 30,000
営業利益                0                   △ 1,000                          △ 500                   5,000

調達資金額              500                         450                        6,000                 12,000

株主価値               500                       2,950                       41,400                115,500
株価                  1                            5                           60                    150
資本金                500                         950                        6,950                 18,950


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創業者が維持したい持ち株比率は?


   <考えるポイント>

   ・経営権を安定的に保持出来る議決権の確保が望ましい

   ・その時点での会社の価値と、必要資金額とのバランス

   ・バイアウトを目指すのなら、創業者の持ち分よりも企業
   価値全体を上げられるかという観点もある


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議決権割合と株主権

          議決権比率             株主権の内容
                  株主総会特別決議事項の拒否権
        3分の1超
                  (特別決議事項の議案の成立を阻止出来る)
                  株主総会普通決議事項の決定権
        2分の1超
                  (通常の経営権の確保)
                  株主総会特別決議事項の決定権
        3分の2以上
                  (株主総会決議事項の大半を決定可能)

          決議事項               決議する内容
                  役員の選任、累積投票によらない取締役の解任、金銭によ
        普通決議
                  る配当の決定、計算書類の承認 etc
                  定款の変更、(非公開会社)新株予約権の募集事項の決定・
        特別決議
                  株式募集事項の決定 etc
        特殊決議      全株式の譲渡制限を定める定款変更 etc
                                                     (注)特殊決議とは、株主総会において議決権を行使す
                                                     ることが出来る株主の半数以上(これを上回る割合を定
                                                     款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、
                                                     株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要なもの。


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株主はVCにすべきか、事業会社にすべきか?
   <考えるポイント>
   ・お金に「色」はないが、出資者の補完する「信用」の役割
   は大きい

   ・一般的に、VCはお金の関係、事業会社は事業上の提携
   や必ずしもイグジット(株式の売却)ありきでない長期的な
   関係も構築可能

   ・事業会社は「支配権」や「影響力」を要求してくることも多
   い。また、出資先事業会社の競合との取引を行うことが難
   しくなるかもしれない
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このセッションでお伝えしたいこと
資本政策は、創業者の価値観の問題と関わってきます。誰にとっても正解だとい
うものはありません。
必ずしもロジカルに全ての解が出るものではなく、経営者の意思によって決定す
るものです。
何が良く何が悪いかは、全てケースバイケース、または結果論の話でもあります。

本質的な部分は自分で学び、考え、判断する。
後から「あの時ああすれば良かった」とならないよう、良いか悪いか、どのようなリ
スクがあるのかを自分で正確に判断出来るようになる事が大切です。
経験のある先輩経営者等の意見なども参考になる事はあります。

そして、自分で分からないことや、特に設計や手続きといったテクニカルな部分は
必要に応じてアドバイザーや専門家等に委ねることが必要です。
テクニカルな部分で失敗すると、特にIPOの際において面倒になったり、税務上
の問題や法令違反が生じ、後々高く付くことがあるので注意して頂きたいと思い
ます。
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Section2.
        創業経営者が知っておきたい各種ファイナンス手法




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本日のポイント

<資本政策の基本的な考え方>
 創業初期の経営メンバーへ株式を分けるか?出資割合をどうするか?
 どのタイミングでいくらの資金調達をするべきか?
 創業者が維持したい持ち株比率は?
 株主はVCにすべきか、事業会社にすべきか?


<創業経営者が知っておきたい各種ファイナンス手法>
 ストック・オプションの制度の概略と考え方
 普通株?新株予約権?種類株? それぞれどのように活用すべきか




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ストック・オプションの仕組み
 ストック・オプションは、キャッシュアウトを伴わずに会社の価値の向上と合致して金銭的なインセンティブを
 与えることが出来る仕組みであり、上手に活用することで組織のモチベーションアップの大きな武器になる。
        イメージ図
                   株価価




          ストック・オプション
          による利益
                                         IPO




                               権利付与              権利行使     売却   時間
<ポイント>
   ストック・オプションは、一定の価格で株式を購入することが出来る権利を予め与えるもの。
   将来の株価が予め定められた権利行使の株価より低い場合は、権利行使をしないことで、付与された者に損失は発生しない。
   将来の株式の希薄化となるため、IPOに際しては発行済み株式数の概ね10%前後が目安とされている。
   バイアウトによって将来の株式の流動性がなくなる場合には、ストック・オプションも合わせてバイアウト時に取扱いを決める必要がある。
   「お金の問題」なので、誰にいくつ与えたかが従業員等の間で大きな関心となったり、ストック・オプションによって引き付けた人材は利益
    を得たところで会社を去ってしまうケース等もあるため、経営者は事前にしっかりと付与数や設計を検討をすることが望ましい。

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ストック・オプションの具体例でのイメージ(1)
具体例でのストック・オプションのイメージです。
例えば、V社が従業員のASKさんにストック・オプションを与えた場合について
 V社は、ASKさんに、上場前に500個(1個=1株の権利)のストック・オプションを付与しました。
 このストック・オプションは、上場後に権利を行使すると、 ASKさんは、10,000円でV社の株式を取得
  出来るものです(将来、予め定められた権利行使価格10,000円で株を取得出来る)。
 V社はIPOし、上場後、V社の株が100,000円に値上がりした時点で、 ASKさんはストック・オプション
  の権利を全て行使し1株10,000円で500株を取得し、その後、110,000円で市場で売却しました。
 結果、 ASKさんは、(110,000円- 10,000円)×500個=5千万円の収益を得ました。
 このように、ストック・オプションにより、役員・従業員等に対して、会社を上場させよう、企業価値を上
  げようと頑張るインセンティブを与えることが出来ます。
  (まとめ)
  ASKさんは勤務先のV社からストックオプションの権利(将来10,000円で株式を500株分を取得出
  来る権利)を与えられた。(①) ←ストックオプションは無償で与えられ、ASKさんもV社もキャッシュア
  ウトは生じない。
  V社のIPO達成、株価も上昇したので、ASKさんは100,000円の時に権利行使して10,000円で50
  0株の株式を取得。(②) ←この時にASKさんは10,000円×500株の取得代金が必要。
  株式市場で500株全てを110,000円で売却。(③) ←通常、②と③はタイムラグはあまりない。
  売却時の株価110,000円(③)引く株の取得代金10,000円(①)の500株分5000万の利益

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ストック・オプションの具体例でのイメージ(2)
具体例でのストック・オプションのイメージです。(続き)

前のスライドのとき、ASKさんは得た利益5千万円について税金を払わなければなりませんが、ストック・オプションの設計によっ
て、大まかには、2通りの税金の発生の仕方があります。簡単な計算をすると、下記位の税金が掛かります。


①権利行使時の時価との差額が総合課税、売却価額と権利行使価額の差額が譲渡益課税
権利行使時: (100,000円-10,000円)×500個=4,500万円に対し、1,940万円(*)の税金(簡易的に給与所得控除のみ考慮)
     (*) 総合課税⇒所得税 (45,000,000-3,950,000円-2,796,000)×40%=15,301,600円、住民税(45,000,000-3,950,000円)×10%=4,105,000円で計19,406,600円
売却時: (110,000円-100,000円)×500個= 500万円に対し、50万円(*)の税金
     (*) 分離課税⇒上場株式の売却益に掛かる税率は10%のため、 5,000,000×10%=500,000円


ストック・オプションによる利益は5,000万円
合計手取りは3,009万円

②権利行使時の課税は繰り延べられ、売却時に売却価額と権利行使価額の差額が譲渡益課税
売却時:( 110,000円- 10,000円)×500個=5,000万円に対し、10%の500万円の税金


ストック・オプションによる利益は5,000万円
合計手取りは4,500万円


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ストック・オプション税制(1)
 ストック・オプション(新株予約権)に係る個人の課税関係は複雑であるため混乱される経営者が多い。
 やや厳密な整理ではないが、課税関係の基本的なイメージは下記の通り理解するのが分かりやすい。
  *課税関係は、設計条件等により相違が生じることがありますので、必ず専門家等へご相談下さい。

 イメージ(税制適格ストック・オプション 又は                            イメージ(税制適格ストック・オプション 又は
 新株予約権の有償時価発行の場合以外)                                新株予約権の有償時価発行の場合)
株価価                                            株価価

                           課税対象額に対し、                                               課税対象額に対し、

                           譲渡益課税
                           (譲渡所得)                                                 譲渡益課税
         IPO               総合課税                                 IPO               (譲渡所得)
                           (給与所得等)




      権利付与     権利行使   売却   時間                                 権利付与    権利行使   売却   時間


総合課税(給与所得等) ・・・累進課税により所得に応じ増加。最高で1,800万超の所得に対し住民税と合わせ 50%の課税

譲渡益課税(譲渡所得) ・・・株式の売却額と権利行使価額(有償発行の場合はオプション料の払い込み額を加える)の差額が
株式の譲渡益課税で、上場会社の場合は現行はキャピタルゲインに対して10%の分離課税(未上場会社では20%の課税)

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ストック・オプション税制(2)
 ストック・オプション(新株予約権)に係る個人の課税関係(続き)
 ● 税制適格ストック・オプションとは、下記の要件を満たしたもの。
 1:適格対象者
 会社又は子会社等の取締役・使用人。但し、大口株主は及びその配偶者その他の特別な関係がある個人は対象外
 (大口株主とは、未公開法人において発行済み株式数の3分の1に超を有するもの)
 *発行済み株式数の3分の1超を保有する創業者・オーナー経営者、監査役、外部コンサルタントは対象にならない
 2:年間権利行使限度額 (付与時に定める行使価額。権利行使する時の時価ではありません。)
 年間1,200万円
 3:行使期間
 付与決議の日以後、2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過するまでの間
 *2、3より、年間権利行使価額1,200万円と2年を経過した日から10年を経過するまでの8年間で9,600万円が権利の限度
 4:行使価額
 権利行使価額が発行時の株式の時価以上であること
 5:発行価額
 無償であること
 6:譲渡制限
 権利の譲渡制限を明文化しておくこと
 ● 新株予約権の有償時価発行とは、新株予約権の価値(オプション料)を評価して、新株予約権の権利を付与された者
 が権利を受けた時点でオプション料を会社へ払い込むこと。⇒ストック・オプション税制(3)参照
 ストック・オプションとは、一般にインセンティブ目的のために無償で与えられた新株予約権のことを言う。新株予約権は一
 定価額で将来株式を購入する権利(コールオプション:買う権利)であり、本来、オプションの権利相当額の価値がある。
 オプション料の価値評価モデルはいくつかの種類があり、市場で確立している方法としては二項モデルとブラック・ショー
 ルズモデルが有名。また、様々な付加条件が付いている評価においてはモンテカルロ・シミュレーションが採用されること
 が多いと言われる。
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ストック・オプション税制(3)
例えば、ブラック・ショールズモデルによって新株予約権の有償時価発行のオプション料を算定した場合の
評価額は下記の通り。
 ブラック・ショールズ式の導出過程には高度な数学が必要ですが、この式を利用しての計算は下記の要素の計算式への代入により行えます。
 オプション料は、現在の株価、権利行使価格、満期までの期間、配当率、リスク・フリー・レート、ボラティリティ(株価変動)の指標を数式に入力
 することにより計算出来ます。権利行使価格が低い、満期までの期間が長い、ボラティリティが大きいほど、オプション価値は高くなります。

 例えば、下記の前提条件で計算してみた場合だと、権利行使価額の約20%がオプション
 料の価値となり、オプション料相当額を権利付与時に会社へ払い込むこととなる。
 原資産価格(株価)                    100 円                                         <ブラック・ショールズモデル数式>
                                                                            C=e-qtSN(d1) - e-rtKN(d2)
 権利行使価格                       100 円                                                 s
                                                                                Ln ( ) ( r  q + 2  2) t
                                                                                                1


                                                                            d1=     k
 満期までの期間                        5年                                                        t
                                                                            d2= d1-    t
 配当率                            0%                                          C:オプション評価額
                                                                            e:自然対数の底(2.178・・・・・・・・)
 リスク・フリー・レート                   1.2 %                                        q:配当率
  *日本国債の長期金利の大よその水準を参考に数値を使用。                                               t:満期までの期間(行使期間)
 ボラティリティ                       20 %                                         S:原資産(対象株式)の現在の価格
  *未上場会社のボラティリティの測定に確立された方法はないが、類似上場企業のボラティリティを参考とする方法がある。                  N(d1),N(d2):dの時の標準正規分布の
   あくまで参考値だが、新興企業の多いJASDAQ指数 2006/9/1-2011/8/31の週次ボラティリティより19.8%と算出されたため、              累積密度関数(累積確率)
  例示では20%を使用した。
   なお、上記と同期間同様の方法によったサイバーエージェントのボラティリティは、58.45%。選定方法により大きく変わり得る。
                                                                            r:リスク・フリー・レート
                                                                            K:権利行使価格
 オプション価値の算定結果                                                               σ:原資産(対象株式)の価格変動性
                                                                               (シグマ:ボラティリティ)
                          20.24   円
                                                                            Ln:自然対数

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本日のポイント

<資本政策の基本的な考え方>
 創業初期の経営メンバーへ株式を分けるか?出資割合をどうするか?
 どのタイミングでいくらの資金調達をするべきか?
 創業者が維持したい持ち株比率は?
 株主はVCにすべきか、事業会社にすべきか?


<創業経営者が知っておきたい各種ファイナンス手法>
 ストック・オプションの制度の概略と考え方
 普通株?新株予約権?種類株? それぞれどのように活用すべきか




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資金調達の各種方法とそのポイント
資金調達の方法には多様な手段が用意されているので、それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、最適
な手段で資金調達を行うことが出来る。ただ、日本のベンチャーで実際に使用される方法としては、銀行か
らの借入(デットファイナンス)か、普通株式による増資(エクイティファイナンス)が大半となっている。
  資金調達の方法                                      ポイント      性質
            ・利子の支払いとともに元本の返済義務がある借金である
借入・社債       ・資金提供者は株式よりも高い優先順位で元本の返済を受けられる               負債
            ・株式の持ち分(会社の所有権)の希薄化(創業者持分の減少)は生じない
            ・社債に新株予約権が組み合わされ、資金提供者の新株予約権の行使により社債の元本が株
新株予約権付社債    式へ転換するもので、社債と株式の両方の性質を持つ
            ・元本の返済義務があるが、株式への転換により、希薄化が生じるが返済義務がなくなる
            ・株式の発行について予め定めた権利を付与するもので、投資家は権利の行使にあたり会社へ
            資金を投じるとともに株式の交付を受ける
            ・一括での資金調達を行わず、資金需要に応じて段階的に資金調達が可能な反面、一時に資金
新株予約権
            が入らないたスタートアップでは不安定な状況が残ることになる
            ・新株予約権の行使の条件や行使価額の調整について、投資家が主導権を持つか、会社の要
            請に応じて行使をするか等、柔軟な設計が可能
            ・普通株式では出来ない議決権割合や残余財産の分配割合、譲渡や取得の条件設定等の株主
            権の調整が可能な様々な特徴を持った株式を発行し、利害の調整を行いやすい
種類株式
            ・投資家側にとっても、創業者側・会社側にとっても有利になるような柔軟な設計が可能
            ・手続や発行コストの面、発行後の事務負担の面では普通株式よりもハードルが高い
            ・元本の返済義務がない(企業価値の向上によりリターンを返すことが期待されている)
            ・株式の希薄化が生じる。投資家は議決権等の株主権を保有し、会社の所有者となる
普通株式                                                     資本
            ・投資家は会社法上の株主権を有するが、投資契約の締結により、追加の条件の付加を要求す
            ることが出来る

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新株予約権付社債(転換社債)の仕組み
          貸借対照表(B/S)                                             貸借対照表(B/S)
        【資産】       【負債】                                        【資産】       【 負債】


                新株予約権付                  返済                             【純資産( 資本) 】
                社債
                                                                       社債⇒資本
                【 純資産(資本) 】
                                        株式へ
                                        転換


 <ポイント>
  社債なので「借金」(「負債」)であるというのが基本だが、株式へ転換されると返済する義務のない「資本」になる。
  元本の返済義務を負うものであるが、社債の元本分の「新株予約権」がセットであるため、投資家は株式へ転換する
   権利を持つ。(株式への転換は、投資家の義務ではなく権利だというのが原則)
  投資家が株式への転換権(新株予約権)を行使すると、社債の元本が資本に充当される(新規の資金流入はない)。
   なお、転換価額は社債の発行時に条件を決める。
  投資家は、株式よりも元本の回収可能性が高く、会社の価値が上昇すると株式への転換によりアップサイドを狙える
   メリットがある。
  ベンチャーにおいては、社債の償還期日までに、事業が思うように成長しない、または事業の見通しが良くない場合、
   元本の返済を迫られる可能性があるリスクを負う。
  早期償還条項を付ければ、元本の返済により株式の希薄化を防止することが出来る。

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種類株とは
円滑な資金調達をなし得る可能性を広げるため、会社法では、多種多様なニーズをもつ株主に配慮し、普
通株式とは異なる定めをした内容の異なる株式(=種類株式)について定めている。

   種類株式の種類                              内容(会社法108条に規定)
剰余金の配当に関する種 剰余金の配当(優先、劣後、無配当)
類株式
残余財産の分配に関する 残余財産の分配(優先、劣後、無配当)
種類株式
            株主総会において議決権を行使することができる事項の、全部又は一部を制限する事を内容とす
議決権制限株式
            るもの
譲渡制限株式      ある種類に株式の譲渡について株式会社の承認を要することを定めたもの
            ある種類の株式について、株主が株式会社に対して株式を取得することを請求することが出来る
取得請求権付株式
            ことを定めたもの
            ある種類の株式について、株式会社が一定の事由が生じたことを条件として株式を取得すること
取得条項付株式
            が出来ることを定めたもの
            ある種類の株式について、株式会社が株主総会の特別決議によって株式の全部を取得すること
全部取得条項付株式
            が出来ることを定めたもの
            黄金株とも呼ばれる。ある株主総会決議事項について、通常の株主総会の他に、拒否権付株式
拒否権付株式
            の株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とうすることを定めたもの
取締役・監査役選解任権 取締役・監査役選解任権付株式を持つ株主を構成員とする種類株主総会で取締役または監査
付株式         役を選任することを定めたもの




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種類株の用途
種類株の活用例としては様々な用途があり得る。例えば、下記の方法等が考えられる。
(会社側・投資家側のどちらが有利になるかは種類株の設計次第で、条件は交渉の力関係によってきます。)
●   議決権制限株式
    VC(ベンチャーキャピタル)等から多額の資金調達をしようとする場合に、経営者の議決権が支配力がなくなる程に低下してし
    まうことが見込まれる場合に、議決権比率の安定と資金調達の確保の両立として利用することが出来る。ただし、特異な能力
    を有する経営者であると投資家に認められ、有望なベンチャーでない限り、現実に活用するのは難しいものと考えられる。
●   残余財産分配優先株式
    創業者が最初に資本金を出し、高い株価でVCが出資する場合、会社財産のほとんどはVCの出資だが、持分割合は大きく異
    なることとなる(例えば、1000万円で創業者が会社を出資し、VCから10%の出資割合で9000万円の調達を行った場合、出資
    割合は創業者90%、VC10%となるが、会社財産の90%はVCが出している)。このような状況で会社がつぶれた場合、会社
    財産の90%を創業者が持っていくのではいかがなものかということで、残っている財産はVCが優先して先に分配を受けるよ
    うにすることにより、出したお金の金額割合による平等がある程度守られることになる。

●   取得請求権付株式
    VCが株式を会社に売却が出来る権利を付与することにより、VCが売却先をあらかじめ確保し、資金回収リスクを減らした形で
    の資金調達が可能となり、資金調達の実現可能性を高くすることが出来る。調達可能性をそもそも会社に分配可能額がない
    場合には、あまり意味をなさない事も考えられる。

●   拒否権付株式
    VCが投資の条件として優先したい決議事項について種類株主総会の決議を要する条件を加えることにより、優先したい決議
    事項以外については通常の議決権比率を維持しながらの資金調達が可能となり、資金調達の実現可能性を高くすることが出
    来る。
    また、創業経営者が少数の持株比率であっても会社の重要事項に係る意思決定に関与することを通じて会社支配を維持す
    るために利用することや、経営統合や取締役の選解任などについて拒否権を持つように設計し友好的企業に対して発行する
    ことによって敵対的買収防衛策に利用することも可能となる。

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優先株の仕組み
           貸借対照表(B/S)                                              貸借対照表(B/S)
         【 資産】      【 負債】                                        【 資産】      【 負債】


                 【 純資産( 資本) 】                                            【 純資産( 資本) 】

                 優先株                                                     優先株⇒
                                          普通株式                           普通株
                 普通株                      へ転換                            普通株


<ポイント>
 優先株と普通株は、両方とも同じ「株主資本」の属性。
 例えば、配当の優先権、残余財産分配の優先権、議決権はなし あるいは制限 または個別議案の承認権の付与という形が
  考えられる。
 優先配当とは、普通株式へは配当が支払われないが、優先株式へは優先株式1株につき年○円の配当で未払の配当額が
  累積し、普通株式の転換時において優先株の払い込み額に上乗せされるイメージとなる。
 残余財産分配の優先権のイメージ。創業者が最初に資本金を出し、株価を上げVCが出資する場合、会社財産のほとんどは
  VCの出資だが、持分割合は大きく異なることとなる。例えば、1000万円で創業者が会社を出資し、VCから10%の出資割合で
  9000万円の調達を行った場合、出資割合は創業者90%、VC10%となるが、会社財産の90%はVCが出している。このよう
  な状況で会社が倒産した場合、会社財産の90%を創業者が持っていくのではいかがなものかということで、残っている財産
  はVCが優先して先に分配を受けるようにすることで、出したお金の金額の割合による平等がある程度守られることになる。
 ベンチャーにとっては、資本の性質をもった資金調達をしつつ、会社の所有権にはあまり関心がないが(議決権の制限)、経
  済的利益には関心の高い(優先配当、残余財産の優先分配)投資家から投資を受け入れやすく出来る。
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  • 1. スタートアップが知っておくべき資本政策の考え方 ~ストック・オプションから種類株・転換社債等の基本まで~ 2011年9月24日 第4回Samurai Venture Summit (スピーカー&パネラー) 公認会計士 伊藤 サムライインキュベート 榊原 Openly and Not confidential 伊藤事務所 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 2. 本日のテーマ <資本政策の基本的な考え方>  創業初期の経営メンバーへ株式を分けるか?出資割合をどうするか?  どのタイミングでいくらの資金調達をするべきか?  創業者が維持したい持ち株比率は?  株主はVCにすべきか、事業会社にすべきか? <創業経営者が知っておきたい各種ファイナンス手法>  ストック・オプションの制度の概略と考え方  普通株?新株予約権?種類株? それぞれどのように活用されるのか Openly and Not confidential 伊藤事務所 2 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 3. 負債(借金) vs 株式 ~基本的なポイントの確認~ 貸借対照表(B/S) 負債(Debt)  元本に利息を付けて、元利を返済する義務を負う 【資産】 【負債】  利息及び元本の返済については「金銭消費貸借契約」に基づく  会社を清算する場合、株式よりも優先して元本の返済を受けら 借入(借金) • れる 銀行融資での調達:間接金融(最終的な資金の出し手と借り手 の間に銀行が入る) • 社債での調達:直接金融(最終的な資金の出し手である一般 投資家から直接資金を借りる) 【純資産(資本)】 資本(Equity)  元本の返済義務はないが、会社が成長し株式価値を高めるこ とにより出資者にリターンとして報いることを期待されている 株式(資本)  利息はないが、利益に対して配当による分配が期待されている (ベンチャーは配当(インカムゲイン)よりも成長による株式価値 の向上(キャピタルゲイン)が期待されるケースが多い)  増資による資金の受け入れとともに出資者へ株式を発行し、投 資家は株主となり出資割合に応じた会社の所有権を持つ  会社を清算する場合、負債を全て返済した場合に残った財産 に対して出資割合に応じて分配を受ける最終受益者となる  一般に、成功するかどうかリスクの高いベンチャー事業におい ては、会社・投資家の双方において資本による資金調達の方 がリスクとリターンが見合いやすい Openly and Not confidential 伊藤事務所 3 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 4. Section1. 資本政策の基本的な考え方 Openly and Not confidential 伊藤事務所 4 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 5. 本日のポイント <資本政策の基本的な考え方>  創業初期の経営メンバーへ株式を分けるか?出資割合をどうするか?  どのタイミングでいくらの資金調達をするべきか?  創業者が維持したい持ち株比率は?  株主はVCにすべきか、事業会社にすべきか? <創業経営者が知っておきたい各種ファイナンス手法>  ストック・オプションの制度の概略と考え方  普通株?新株予約権?種類株? それぞれどのように活用すべきか Openly and Not confidential 伊藤事務所 5 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 6. 創業初期の経営メンバーへ株式を分けるか?出資割合をどうするか? <考えるポイント> ・一緒に始めた初期メンバーは永遠のパートナーか ・力関係(実力のバランス) ・どのように報いたいか Openly and Not confidential 伊藤事務所 6 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 7. どのタイミングでいくらの資金調達をするべきか? <考えるポイント> ・自社におけるステージ別の資金調達ニーズを事前に イメージしておく ・調達資金が増えれば株式の創業者の持ち株比率は低く なり、調達資金を抑えれば創業者の持ち株比率は高く保 持が出来る(その時点での会社の価値と必要資金額の割 合が投資家の持分となる) Openly and Not confidential 伊藤事務所 7 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 8. ステージ別の資金調達需要と成長イメージ 仮の想定ケース 売上 利益 スタートアップ アーリー ミドル/レイター  ⇒ IPO? 期間 数ヶ月~数年 1~2年程度 2~3年程度  ⇒ バイアウト? 売上 ゼロ 小 急上昇 利益 マイナス大 マイナス縮小 プラス⇒急上昇 必要資金 数百~数千万? 数千万~数億? ゼロ~数億円? 想定企業価値 数千万~1億円前後? 数億円~? 10億円~? 資金需要 開発・ローンチ 改善・ 機能強化 プロモーション     マネタイズ 組織拡大 組織体制 企画・推進(CEO・COO) 開発 営業 プロモーション 管理(CFO) 各ステージにおいてはそれぞれの事情に応じた資金需要があり、自社の資金調達需要をイメージする。 Openly and Not confidential 伊藤事務所 8 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 9. ステージ別の資金調達需要と成長イメージ(続き) 仮の想定(もうちょっと具体的に) 創業 スタートアップ アーリー ミドル/レイター 株主 株数 % 発行 株数 % 発行 株数 % 発行 株数 % 創業者 450 90% 450 76% 450 65% 450 58% 創業役員 50 10% 50 8% 50 7% 50 6% ストック・オプション  社内 500 100% 500 85% 500 72% 500 65% VC A or エンジェル 90 90 15% 10 100 14% 100 13% VC B or 事業会社 90 90 13% 90 12% VC C or 事業会社 80 80 10%  社外 0 0% 90 90 15% 100 190 28% 80 270 35%  合計 500 100% 90 590 100% 100 690 100% 80 770 100% (単位:万円) 売上 0 0 5,000 30,000 営業利益 0 △ 1,000 △ 500 5,000 調達資金額 500 450 6,000 12,000 株主価値 500 2,950 41,400 115,500 株価 1 5 60 150 資本金 500 950 6,950 18,950 Openly and Not confidential 伊藤事務所 9 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 10. 創業者が維持したい持ち株比率は? <考えるポイント> ・経営権を安定的に保持出来る議決権の確保が望ましい ・その時点での会社の価値と、必要資金額とのバランス ・バイアウトを目指すのなら、創業者の持ち分よりも企業 価値全体を上げられるかという観点もある Openly and Not confidential 伊藤事務所 10 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 11. 議決権割合と株主権 議決権比率 株主権の内容 株主総会特別決議事項の拒否権 3分の1超 (特別決議事項の議案の成立を阻止出来る) 株主総会普通決議事項の決定権 2分の1超 (通常の経営権の確保) 株主総会特別決議事項の決定権 3分の2以上 (株主総会決議事項の大半を決定可能) 決議事項 決議する内容 役員の選任、累積投票によらない取締役の解任、金銭によ 普通決議 る配当の決定、計算書類の承認 etc 定款の変更、(非公開会社)新株予約権の募集事項の決定・ 特別決議 株式募集事項の決定 etc 特殊決議 全株式の譲渡制限を定める定款変更 etc (注)特殊決議とは、株主総会において議決権を行使す ることが出来る株主の半数以上(これを上回る割合を定 款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、 株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要なもの。 Openly and Not confidential 伊藤事務所 11 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 12. 株主はVCにすべきか、事業会社にすべきか? <考えるポイント> ・お金に「色」はないが、出資者の補完する「信用」の役割 は大きい ・一般的に、VCはお金の関係、事業会社は事業上の提携 や必ずしもイグジット(株式の売却)ありきでない長期的な 関係も構築可能 ・事業会社は「支配権」や「影響力」を要求してくることも多 い。また、出資先事業会社の競合との取引を行うことが難 しくなるかもしれない Openly and Not confidential 伊藤事務所 12 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 13. このセッションでお伝えしたいこと 資本政策は、創業者の価値観の問題と関わってきます。誰にとっても正解だとい うものはありません。 必ずしもロジカルに全ての解が出るものではなく、経営者の意思によって決定す るものです。 何が良く何が悪いかは、全てケースバイケース、または結果論の話でもあります。 本質的な部分は自分で学び、考え、判断する。 後から「あの時ああすれば良かった」とならないよう、良いか悪いか、どのようなリ スクがあるのかを自分で正確に判断出来るようになる事が大切です。 経験のある先輩経営者等の意見なども参考になる事はあります。 そして、自分で分からないことや、特に設計や手続きといったテクニカルな部分は 必要に応じてアドバイザーや専門家等に委ねることが必要です。 テクニカルな部分で失敗すると、特にIPOの際において面倒になったり、税務上 の問題や法令違反が生じ、後々高く付くことがあるので注意して頂きたいと思い ます。 Openly and Not confidential 伊藤事務所 13 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 14. Section2. 創業経営者が知っておきたい各種ファイナンス手法 Openly and Not confidential 伊藤事務所 14 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 15. 本日のポイント <資本政策の基本的な考え方>  創業初期の経営メンバーへ株式を分けるか?出資割合をどうするか?  どのタイミングでいくらの資金調達をするべきか?  創業者が維持したい持ち株比率は?  株主はVCにすべきか、事業会社にすべきか? <創業経営者が知っておきたい各種ファイナンス手法>  ストック・オプションの制度の概略と考え方  普通株?新株予約権?種類株? それぞれどのように活用すべきか Openly and Not confidential 伊藤事務所 15 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 16. ストック・オプションの仕組み ストック・オプションは、キャッシュアウトを伴わずに会社の価値の向上と合致して金銭的なインセンティブを 与えることが出来る仕組みであり、上手に活用することで組織のモチベーションアップの大きな武器になる。 イメージ図 株価価 ストック・オプション による利益 IPO 権利付与 権利行使 売却 時間 <ポイント>  ストック・オプションは、一定の価格で株式を購入することが出来る権利を予め与えるもの。  将来の株価が予め定められた権利行使の株価より低い場合は、権利行使をしないことで、付与された者に損失は発生しない。  将来の株式の希薄化となるため、IPOに際しては発行済み株式数の概ね10%前後が目安とされている。  バイアウトによって将来の株式の流動性がなくなる場合には、ストック・オプションも合わせてバイアウト時に取扱いを決める必要がある。  「お金の問題」なので、誰にいくつ与えたかが従業員等の間で大きな関心となったり、ストック・オプションによって引き付けた人材は利益 を得たところで会社を去ってしまうケース等もあるため、経営者は事前にしっかりと付与数や設計を検討をすることが望ましい。 Openly and Not confidential 伊藤事務所 16 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 17. ストック・オプションの具体例でのイメージ(1) 具体例でのストック・オプションのイメージです。 例えば、V社が従業員のASKさんにストック・オプションを与えた場合について  V社は、ASKさんに、上場前に500個(1個=1株の権利)のストック・オプションを付与しました。  このストック・オプションは、上場後に権利を行使すると、 ASKさんは、10,000円でV社の株式を取得 出来るものです(将来、予め定められた権利行使価格10,000円で株を取得出来る)。  V社はIPOし、上場後、V社の株が100,000円に値上がりした時点で、 ASKさんはストック・オプション の権利を全て行使し1株10,000円で500株を取得し、その後、110,000円で市場で売却しました。  結果、 ASKさんは、(110,000円- 10,000円)×500個=5千万円の収益を得ました。  このように、ストック・オプションにより、役員・従業員等に対して、会社を上場させよう、企業価値を上 げようと頑張るインセンティブを与えることが出来ます。 (まとめ) ASKさんは勤務先のV社からストックオプションの権利(将来10,000円で株式を500株分を取得出 来る権利)を与えられた。(①) ←ストックオプションは無償で与えられ、ASKさんもV社もキャッシュア ウトは生じない。 V社のIPO達成、株価も上昇したので、ASKさんは100,000円の時に権利行使して10,000円で50 0株の株式を取得。(②) ←この時にASKさんは10,000円×500株の取得代金が必要。 株式市場で500株全てを110,000円で売却。(③) ←通常、②と③はタイムラグはあまりない。 売却時の株価110,000円(③)引く株の取得代金10,000円(①)の500株分5000万の利益 Openly and Not confidential 伊藤事務所 17 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 18. ストック・オプションの具体例でのイメージ(2) 具体例でのストック・オプションのイメージです。(続き) 前のスライドのとき、ASKさんは得た利益5千万円について税金を払わなければなりませんが、ストック・オプションの設計によっ て、大まかには、2通りの税金の発生の仕方があります。簡単な計算をすると、下記位の税金が掛かります。 ①権利行使時の時価との差額が総合課税、売却価額と権利行使価額の差額が譲渡益課税 権利行使時: (100,000円-10,000円)×500個=4,500万円に対し、1,940万円(*)の税金(簡易的に給与所得控除のみ考慮) (*) 総合課税⇒所得税 (45,000,000-3,950,000円-2,796,000)×40%=15,301,600円、住民税(45,000,000-3,950,000円)×10%=4,105,000円で計19,406,600円 売却時: (110,000円-100,000円)×500個= 500万円に対し、50万円(*)の税金 (*) 分離課税⇒上場株式の売却益に掛かる税率は10%のため、 5,000,000×10%=500,000円 ストック・オプションによる利益は5,000万円 合計手取りは3,009万円 ②権利行使時の課税は繰り延べられ、売却時に売却価額と権利行使価額の差額が譲渡益課税 売却時:( 110,000円- 10,000円)×500個=5,000万円に対し、10%の500万円の税金 ストック・オプションによる利益は5,000万円 合計手取りは4,500万円 Openly and Not confidential 伊藤事務所 18 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 19. ストック・オプション税制(1) ストック・オプション(新株予約権)に係る個人の課税関係は複雑であるため混乱される経営者が多い。 やや厳密な整理ではないが、課税関係の基本的なイメージは下記の通り理解するのが分かりやすい。 *課税関係は、設計条件等により相違が生じることがありますので、必ず専門家等へご相談下さい。 イメージ(税制適格ストック・オプション 又は イメージ(税制適格ストック・オプション 又は 新株予約権の有償時価発行の場合以外) 新株予約権の有償時価発行の場合) 株価価 株価価 課税対象額に対し、 課税対象額に対し、 譲渡益課税 (譲渡所得) 譲渡益課税 IPO 総合課税 IPO (譲渡所得) (給与所得等) 権利付与 権利行使 売却 時間 権利付与 権利行使 売却 時間 総合課税(給与所得等) ・・・累進課税により所得に応じ増加。最高で1,800万超の所得に対し住民税と合わせ 50%の課税 譲渡益課税(譲渡所得) ・・・株式の売却額と権利行使価額(有償発行の場合はオプション料の払い込み額を加える)の差額が 株式の譲渡益課税で、上場会社の場合は現行はキャピタルゲインに対して10%の分離課税(未上場会社では20%の課税) Openly and Not confidential 伊藤事務所 19 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 20. ストック・オプション税制(2) ストック・オプション(新株予約権)に係る個人の課税関係(続き) ● 税制適格ストック・オプションとは、下記の要件を満たしたもの。 1:適格対象者 会社又は子会社等の取締役・使用人。但し、大口株主は及びその配偶者その他の特別な関係がある個人は対象外 (大口株主とは、未公開法人において発行済み株式数の3分の1に超を有するもの) *発行済み株式数の3分の1超を保有する創業者・オーナー経営者、監査役、外部コンサルタントは対象にならない 2:年間権利行使限度額 (付与時に定める行使価額。権利行使する時の時価ではありません。) 年間1,200万円 3:行使期間 付与決議の日以後、2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過するまでの間 *2、3より、年間権利行使価額1,200万円と2年を経過した日から10年を経過するまでの8年間で9,600万円が権利の限度 4:行使価額 権利行使価額が発行時の株式の時価以上であること 5:発行価額 無償であること 6:譲渡制限 権利の譲渡制限を明文化しておくこと ● 新株予約権の有償時価発行とは、新株予約権の価値(オプション料)を評価して、新株予約権の権利を付与された者 が権利を受けた時点でオプション料を会社へ払い込むこと。⇒ストック・オプション税制(3)参照 ストック・オプションとは、一般にインセンティブ目的のために無償で与えられた新株予約権のことを言う。新株予約権は一 定価額で将来株式を購入する権利(コールオプション:買う権利)であり、本来、オプションの権利相当額の価値がある。 オプション料の価値評価モデルはいくつかの種類があり、市場で確立している方法としては二項モデルとブラック・ショー ルズモデルが有名。また、様々な付加条件が付いている評価においてはモンテカルロ・シミュレーションが採用されること が多いと言われる。 Openly and Not confidential 伊藤事務所 20 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 21. ストック・オプション税制(3) 例えば、ブラック・ショールズモデルによって新株予約権の有償時価発行のオプション料を算定した場合の 評価額は下記の通り。 ブラック・ショールズ式の導出過程には高度な数学が必要ですが、この式を利用しての計算は下記の要素の計算式への代入により行えます。 オプション料は、現在の株価、権利行使価格、満期までの期間、配当率、リスク・フリー・レート、ボラティリティ(株価変動)の指標を数式に入力 することにより計算出来ます。権利行使価格が低い、満期までの期間が長い、ボラティリティが大きいほど、オプション価値は高くなります。 例えば、下記の前提条件で計算してみた場合だと、権利行使価額の約20%がオプション 料の価値となり、オプション料相当額を権利付与時に会社へ払い込むこととなる。 原資産価格(株価) 100 円 <ブラック・ショールズモデル数式> C=e-qtSN(d1) - e-rtKN(d2) 権利行使価格 100 円 s Ln ( ) ( r  q + 2  2) t  1 d1= k 満期までの期間 5年  t d2= d1-  t 配当率 0% C:オプション評価額 e:自然対数の底(2.178・・・・・・・・) リスク・フリー・レート 1.2 % q:配当率 *日本国債の長期金利の大よその水準を参考に数値を使用。 t:満期までの期間(行使期間) ボラティリティ 20 % S:原資産(対象株式)の現在の価格 *未上場会社のボラティリティの測定に確立された方法はないが、類似上場企業のボラティリティを参考とする方法がある。 N(d1),N(d2):dの時の標準正規分布の あくまで参考値だが、新興企業の多いJASDAQ指数 2006/9/1-2011/8/31の週次ボラティリティより19.8%と算出されたため、 累積密度関数(累積確率) 例示では20%を使用した。 なお、上記と同期間同様の方法によったサイバーエージェントのボラティリティは、58.45%。選定方法により大きく変わり得る。 r:リスク・フリー・レート K:権利行使価格 オプション価値の算定結果 σ:原資産(対象株式)の価格変動性 (シグマ:ボラティリティ) 20.24 円 Ln:自然対数 Openly and Not confidential 伊藤事務所 21 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 22. 本日のポイント <資本政策の基本的な考え方>  創業初期の経営メンバーへ株式を分けるか?出資割合をどうするか?  どのタイミングでいくらの資金調達をするべきか?  創業者が維持したい持ち株比率は?  株主はVCにすべきか、事業会社にすべきか? <創業経営者が知っておきたい各種ファイナンス手法>  ストック・オプションの制度の概略と考え方  普通株?新株予約権?種類株? それぞれどのように活用すべきか Openly and Not confidential 伊藤事務所 22 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 23. 資金調達の各種方法とそのポイント 資金調達の方法には多様な手段が用意されているので、それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、最適 な手段で資金調達を行うことが出来る。ただ、日本のベンチャーで実際に使用される方法としては、銀行か らの借入(デットファイナンス)か、普通株式による増資(エクイティファイナンス)が大半となっている。 資金調達の方法 ポイント 性質 ・利子の支払いとともに元本の返済義務がある借金である 借入・社債 ・資金提供者は株式よりも高い優先順位で元本の返済を受けられる 負債 ・株式の持ち分(会社の所有権)の希薄化(創業者持分の減少)は生じない ・社債に新株予約権が組み合わされ、資金提供者の新株予約権の行使により社債の元本が株 新株予約権付社債 式へ転換するもので、社債と株式の両方の性質を持つ ・元本の返済義務があるが、株式への転換により、希薄化が生じるが返済義務がなくなる ・株式の発行について予め定めた権利を付与するもので、投資家は権利の行使にあたり会社へ 資金を投じるとともに株式の交付を受ける ・一括での資金調達を行わず、資金需要に応じて段階的に資金調達が可能な反面、一時に資金 新株予約権 が入らないたスタートアップでは不安定な状況が残ることになる ・新株予約権の行使の条件や行使価額の調整について、投資家が主導権を持つか、会社の要 請に応じて行使をするか等、柔軟な設計が可能 ・普通株式では出来ない議決権割合や残余財産の分配割合、譲渡や取得の条件設定等の株主 権の調整が可能な様々な特徴を持った株式を発行し、利害の調整を行いやすい 種類株式 ・投資家側にとっても、創業者側・会社側にとっても有利になるような柔軟な設計が可能 ・手続や発行コストの面、発行後の事務負担の面では普通株式よりもハードルが高い ・元本の返済義務がない(企業価値の向上によりリターンを返すことが期待されている) ・株式の希薄化が生じる。投資家は議決権等の株主権を保有し、会社の所有者となる 普通株式 資本 ・投資家は会社法上の株主権を有するが、投資契約の締結により、追加の条件の付加を要求す ることが出来る Openly and Not confidential 伊藤事務所 23 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 24. 新株予約権付社債(転換社債)の仕組み 貸借対照表(B/S) 貸借対照表(B/S) 【資産】 【負債】 【資産】 【 負債】 新株予約権付 返済 【純資産( 資本) 】 社債 社債⇒資本 【 純資産(資本) 】 株式へ 転換 <ポイント>  社債なので「借金」(「負債」)であるというのが基本だが、株式へ転換されると返済する義務のない「資本」になる。  元本の返済義務を負うものであるが、社債の元本分の「新株予約権」がセットであるため、投資家は株式へ転換する 権利を持つ。(株式への転換は、投資家の義務ではなく権利だというのが原則)  投資家が株式への転換権(新株予約権)を行使すると、社債の元本が資本に充当される(新規の資金流入はない)。 なお、転換価額は社債の発行時に条件を決める。  投資家は、株式よりも元本の回収可能性が高く、会社の価値が上昇すると株式への転換によりアップサイドを狙える メリットがある。  ベンチャーにおいては、社債の償還期日までに、事業が思うように成長しない、または事業の見通しが良くない場合、 元本の返済を迫られる可能性があるリスクを負う。  早期償還条項を付ければ、元本の返済により株式の希薄化を防止することが出来る。 Openly and Not confidential 伊藤事務所 24 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 25. 種類株とは 円滑な資金調達をなし得る可能性を広げるため、会社法では、多種多様なニーズをもつ株主に配慮し、普 通株式とは異なる定めをした内容の異なる株式(=種類株式)について定めている。 種類株式の種類 内容(会社法108条に規定) 剰余金の配当に関する種 剰余金の配当(優先、劣後、無配当) 類株式 残余財産の分配に関する 残余財産の分配(優先、劣後、無配当) 種類株式 株主総会において議決権を行使することができる事項の、全部又は一部を制限する事を内容とす 議決権制限株式 るもの 譲渡制限株式 ある種類に株式の譲渡について株式会社の承認を要することを定めたもの ある種類の株式について、株主が株式会社に対して株式を取得することを請求することが出来る 取得請求権付株式 ことを定めたもの ある種類の株式について、株式会社が一定の事由が生じたことを条件として株式を取得すること 取得条項付株式 が出来ることを定めたもの ある種類の株式について、株式会社が株主総会の特別決議によって株式の全部を取得すること 全部取得条項付株式 が出来ることを定めたもの 黄金株とも呼ばれる。ある株主総会決議事項について、通常の株主総会の他に、拒否権付株式 拒否権付株式 の株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とうすることを定めたもの 取締役・監査役選解任権 取締役・監査役選解任権付株式を持つ株主を構成員とする種類株主総会で取締役または監査 付株式 役を選任することを定めたもの Openly and Not confidential 伊藤事務所 25 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 26. 種類株の用途 種類株の活用例としては様々な用途があり得る。例えば、下記の方法等が考えられる。 (会社側・投資家側のどちらが有利になるかは種類株の設計次第で、条件は交渉の力関係によってきます。) ● 議決権制限株式 VC(ベンチャーキャピタル)等から多額の資金調達をしようとする場合に、経営者の議決権が支配力がなくなる程に低下してし まうことが見込まれる場合に、議決権比率の安定と資金調達の確保の両立として利用することが出来る。ただし、特異な能力 を有する経営者であると投資家に認められ、有望なベンチャーでない限り、現実に活用するのは難しいものと考えられる。 ● 残余財産分配優先株式 創業者が最初に資本金を出し、高い株価でVCが出資する場合、会社財産のほとんどはVCの出資だが、持分割合は大きく異 なることとなる(例えば、1000万円で創業者が会社を出資し、VCから10%の出資割合で9000万円の調達を行った場合、出資 割合は創業者90%、VC10%となるが、会社財産の90%はVCが出している)。このような状況で会社がつぶれた場合、会社 財産の90%を創業者が持っていくのではいかがなものかということで、残っている財産はVCが優先して先に分配を受けるよ うにすることにより、出したお金の金額割合による平等がある程度守られることになる。 ● 取得請求権付株式 VCが株式を会社に売却が出来る権利を付与することにより、VCが売却先をあらかじめ確保し、資金回収リスクを減らした形で の資金調達が可能となり、資金調達の実現可能性を高くすることが出来る。調達可能性をそもそも会社に分配可能額がない 場合には、あまり意味をなさない事も考えられる。 ● 拒否権付株式 VCが投資の条件として優先したい決議事項について種類株主総会の決議を要する条件を加えることにより、優先したい決議 事項以外については通常の議決権比率を維持しながらの資金調達が可能となり、資金調達の実現可能性を高くすることが出 来る。 また、創業経営者が少数の持株比率であっても会社の重要事項に係る意思決定に関与することを通じて会社支配を維持す るために利用することや、経営統合や取締役の選解任などについて拒否権を持つように設計し友好的企業に対して発行する ことによって敵対的買収防衛策に利用することも可能となる。 Openly and Not confidential 伊藤事務所 26 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 27. 優先株の仕組み 貸借対照表(B/S) 貸借対照表(B/S) 【 資産】 【 負債】 【 資産】 【 負債】 【 純資産( 資本) 】 【 純資産( 資本) 】 優先株 優先株⇒ 普通株式 普通株 普通株 へ転換 普通株 <ポイント>  優先株と普通株は、両方とも同じ「株主資本」の属性。  例えば、配当の優先権、残余財産分配の優先権、議決権はなし あるいは制限 または個別議案の承認権の付与という形が 考えられる。  優先配当とは、普通株式へは配当が支払われないが、優先株式へは優先株式1株につき年○円の配当で未払の配当額が 累積し、普通株式の転換時において優先株の払い込み額に上乗せされるイメージとなる。  残余財産分配の優先権のイメージ。創業者が最初に資本金を出し、株価を上げVCが出資する場合、会社財産のほとんどは VCの出資だが、持分割合は大きく異なることとなる。例えば、1000万円で創業者が会社を出資し、VCから10%の出資割合で 9000万円の調達を行った場合、出資割合は創業者90%、VC10%となるが、会社財産の90%はVCが出している。このよう な状況で会社が倒産した場合、会社財産の90%を創業者が持っていくのではいかがなものかということで、残っている財産 はVCが優先して先に分配を受けるようにすることで、出したお金の金額の割合による平等がある程度守られることになる。  ベンチャーにとっては、資本の性質をもった資金調達をしつつ、会社の所有権にはあまり関心がないが(議決権の制限)、経 済的利益には関心の高い(優先配当、残余財産の優先分配)投資家から投資を受け入れやすく出来る。 Openly and Not confidential 伊藤事務所 27 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
  • 28. Aa 終了です。 ありがとうございました!! Openly and Not confidential 伊藤事務所 28 引用元をご明示の上自由にご使用下さい
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